ラセングルがスタッフを大規模募集中だ。同社はディライトワークスとして『Fate Grand/Order』(以下、FGO)の開発運営で成功を収め、事業承継により今年2月にアニプレックス傘下となりラセングルとして再出発した。ラセングルとなったことで組織も大きく変更され、そして今回スタッフを大規模募集しているという。業界経験者だけでなく未経験も含めて、志あるメンバーを広く募っているとのこと。
・スクリプター
・ゲームディレクター
・ゲームプランナー
・2Dキャラクターアーティスト
・UIアーティスト
・背景美術アーティスト(マップ)
・SREエンジニア
上記以外のポジションも数多く募集中。以下の求人サイトをチェック
「株式会社ラセングルリクルートサイト」
新しい人材に門戸を開く一方で、ラセングルには謎めく部分も多い。ラセングルとはどういう組織なのか。また『FGO』は実際にどういう体制で開発・運営されているのかなど、気になっている人もいるだろう。そこで現在のラセングルを担うキーパーソン4人に話を訊いた。組織の上層部でありながら、とにかくゲームと『FGO』が好きな4名たち。ラセングルの現状と、彼らの夢想するラセングルの未来をあわせて聞いていただこう。なお、同社はリモートワークを推進しており、以前にはそうした体制についてお訊きした(関連記事)。
新生ラセングルを担う4人のキーパーソン
──自己紹介をお願いします。
叶良樹氏(以下、叶):
叶と申します。最初はプログラマーとしてキャリアを始めて、セガで15年ほど勤めました。セガではリードプランナーとディレクターを担当。その後GameBankで1年ほど新規未発表タイトルのディレクションをした後、前任者の塩川さん(塩川洋介氏・FGO PROJECT クリエイティブプロデューサー。かつてディライトワークスに所属)から将来的にディレクターをしてほしいと言われディライトワークスに入社しました。その後プロジェクトマネージャーを経て、2018年から第2部 開発ディレクターを担当。そして現在に至ります。
宮前公彦氏(以下、宮前):
宮前です。1999年に当時のスクウェアに3Dデザイナーとして入社しまして、ゲーム背景の制作を担当していました。『FF9』『FF10』『FF11』に関わり、その後『アンリミテッド:サガ』『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』、『ラストレムナント』にリードデザイナーとして関わった後、名古屋のエイチームに転籍し、モバイルゲーム開発のマネージャー、部長としてディレクター、プロデューサーの役割を担っておりました。
その後、ディー・エヌ・エーに転籍し『メギド72』のプロデューサーとして、企画の初期から開発に3年、リリース後の運営に3年の計6年関わらせていただいた後に、ディライトワークスに入社しました。
ちなみに、直良さん(後述の直良有祐氏)とは『FF10』に一緒に参加しました。その繋がりがありご飯を食べに行った時に、庄司さん(庄司顕仁氏・ディライトワークス代表取締役)と小野さん(小野義徳氏・ラセングル代表取締役社長)を紹介されました。いろいろお話をするうちに、いつの間にか履歴書送ってくれと言われて……今に至ります。(笑)
現在はGame Design Studio(ゲームデザインスタジオ)というプランナー組織を発足しまして、そこのジェネラルマネージャーと、クリエイティブDiv.という開発組織全体の統括を担当しております。部門としては叶さんと同じところにいます。『FGO』にも関わってはおり、ゲームの面白さの部分は叶さんがリードしており、施策をどういう体制で回すかといった計画や開発コストなど、組織的なマネジメントなどは私が総合的に見ております。
直良有祐氏(以下、直良):
直良です。1991年に東亜プランに入りまして、1993年にスクウェアに入りました。それから『FF』シリーズのアートディレクションを担当して、その後は宮前くんと一緒に『SaGa』チームに入って、『ラストレムナント』にも関わりました。『FF15』発売後にスクウェア・エニックス(以下、スクエニ)を退職し、2016年に地元の島根県・出雲市に帰って独立してIZM designworksという会社をつくりました。その後庄司さんからデザイナーの話相手になってほしいと言われまして……。
お手伝いのはずがその後「『FGO』の概念礼装1枚描いてみないか?」と打診を受け仕事をしました。(笑)そういった流れから、リーダーの会議に出てアドバイスをしたりしているうちにディライトワークスに合流し、今はクリエイティブアートオフィサーとして、デザインのクリエイティブを統括する仕事をしています。
廣重演久氏(以下、廣重):
廣重です。2000年にエニックスに入りました。エニックスでは最初はMMORPGを中心に『クロスゲート』などに関わりました。その後アーケードの『三国志大戦』にハマって、それには車が買えるほど投資して……。そういったゲームが創りたいと思って『悠久の車輪』というゲームを創りました。庄司(※)さんとの付き合いも『悠久の車輪』が最初でしたね。
※庄司顕仁氏はかつてスクウェア・エニックスに在籍し『悠久の車輪』『LORD of VERMILION』などにも携わっていた。
その後スクエニでのキャリアを経てコーエー(現コーエーテクモゲームス)に転職しました。そこでもMMOの『三國志 Online』の運営開発に関わっておりました。Yahooモバゲーで『のぶニャがの野望』というゲームも創りましたね。その後転職活動をしていたらディライトワークスを見つけて、庄司さんに連絡をとるうちに誘われ入社しました。
今はプロデュースDiv.を統括しており、各プロジェクトを俯瞰的に見てたり、組織力の強化などを行っています。
変えにくかったディライトワークス時代から変わるラセングル時代へ
──ラセングルとなり行った組織変革について、まずは概要を教えていただけますか。
廣重:
これまでも開発部門が複数あったり、デザインやアートを独立部門にしたりなど、組織の試行錯誤は続けていました。ラセングルになって、我々は「パブリッシャーとしてきちんとした会社にしよう」という目標を立てまして、その目標に合わせて習熟度、現場の練度に合わせた体制をつくっていこうと考えました。
開発組織としては、半年ほど前から直良さんがDesign Studio(デザインスタジオ)を立ち上げ、その後プランナーがいるGame Design Studio(ゲームデザインスタジオ)、Tech Studio(テックスタジオ)というプログラマー・エンジニアの組織も立ち上げてと、8月から正式発足しています。この3つのスタジオをまとめてクリエイティブDiv.とし、トップは宮前さんが務めています。
一方でプロデュースDiv.もありまして、そこには開発スタッフはおらず、プロデューサーとそのサポート、あとはマーケティング、QA(品質保証)、CS(カスタマーサポート)もプロデュースDiv.に入っています。ものを創っていくメンバーのブロックと、プロジェクトをIPとしてつくっていくブロックを切り分けて、縦と横の関係できちんとしたものづくりができるパブリッシャーになろうという考えで進めています。
叶:
ディライトワークス時代は、プロジェクトで部を区切るという縦割り的なグループでやっていたので、プロジェクトが塊として動けるといういい面もありましたが、横のつながりをつくりづらい状況がありました。
ラセングルになり小野体制になってからの最初のオーダーが「横のつながりを強くしてくれ」というものでした。それであれば、プロジェクトごとの機密情報はしっかり管理する前提で、プロジェクト間の横断的な情報交換をしやすくする組織の形を議論した結果、プロジェクトの垣根を超えたプランナー全体をまとめる組織をつくろうという考えに至り、Game Design Studioを立ち上げることになりました。
宮前:
組織は会社の成熟度や成長に応じて変わるべきで、正解はないと考えています。ラセングルの今の状況においては、技術力をしっかり高めていくことが直近の取り組みです。『FGO』は長く続いているプロジェクトなので、専門性を高め、開発力を底上げしていくという方向に注力していきます。
Game Design Studioでは企画のコンセプトや仕様を詰める、Tech Studioはサーバー・クライアントの技術、ビジュアル的なプログラムも強化していく。Design Studioはゲームグラフィックをいかに端末性能に合わせて良いものを作れるか、ブラッシュアップするかという面と、より効率的に作れるかなども含め、技術的な向上を意識して進めています。
叶:
今は各スタジオの中にマネージャーを立てるようにしました。所属メンバーに対して、組織上の相談役になるのと同時に、メンバーのキャリアをプロジェクト横断型で見ていける存在です。もちろんプロジェクト内にも業務を行ううえでの上長的存在がいて、タスク管理やスキル面なども見てもらっています。こちらは、たとえばスクリプトやレベルデザインのような工程を通じて、プロジェクト側で彼らのスキルアップをメインにしたメンター的な動きをしていく。つまり、今は1人のメンバーをスタジオ側のマネージャーとプロジェクトの上長によって、異なる側面からフォローしていっている感じです。
廣重:
働き方の環境やキャリアや勤怠も含めて見ている人、すなわちスタジオの管理者と、スキル面で見ている人、プロジェクトの管理者がそれぞれのスタジオにいる構造です。
叶:
これに加えて個別面談をやっています。上司、部下ともに最低でも月1回、一対一で話す機会をつくっています。そこで各スタッフに対してプロジェクトの話も、勤怠や今の働き方、これからチャレンジしていきたい事などの話も含めて、それぞれのメンバーの成長をサポートしていくのがラセングルらしさですね。
直良:
もともと、ディライトワークスの成り立ちでいうと『FGO』を創るためにメンバーが集められてできた会社でした。そのため、スタッフの評価やキャリアパスは『FGO』に紐づいたところから抜け出しづらかったんです。『FGO』は会社の柱ですし、開発体制に大きなメスを入れる事は踏み込みが浅かった。
けれど、拡大路線を取るときに、完全な縦割りだと問題があった。横の繋がりをつくるところは私が最初に注力していたところで、それで一足先にDesign Studioを立ち上げました。選択と集中で、『FGO』は『FGO』で強固な開発・運営体制を保持しながら、新たな開発力を強化していこうということでスタジオ化を推進しました。
みんなTYPE-MOONが好きで、みんな責任を背負っている
──ここからは『FGO』についてお聞かせください。まずは開発・運営メンバーの人数と職種ごとの人数を教えてください。
宮前:
社内のメンバーは300名ほどです。職域は企画が3割、エンジニアが2割、デザイナー3割です。またマーケティングやカスタマーサポート、QAと分析などの開発外メンバーが2割程度。この他に外部の会社にも協力をしてもらっております。
──やはり、スタッフは皆さんTYPE-MOON作品や『FGO』が好きな方が多いのでしょうか?
宮前:
TYPE-MOONさんの作品が好きなスタッフは多いですね。
直良:
社内でグッズの争奪戦もありますね。
宮前:
ですね。社内の懇親会でグッズを景品にする、でみんな満足。(笑)
宮前:
ちなみに、僕は関わるようになってから本格的に『FGO』を知った側です。もちろん存じてはおりましたが、いわゆるコアなファンではない状態でした。入社後に関わるようになってからはしっかりプレイしてますし、ストーリーも最新までやってます。周りのスタッフがいろんなことを教えてくれるし、話していて楽しいですね。そして、みんな本当に好きなんだなと……。
直良:
概念礼装を描いたという話をしましたが、その時関わったスタッフの愛情がすごくて。これは迂闊な絵を出せないなと思って、しっかり勉強してから書こうと思い「衛宮切嗣」を描きました。また勉強のために『Fate/Zero』を全部観て漫画版も読んで。もっと早く知っておけばよかったなと。
廣重:
私はディライトワークスで最初に関わったのが『MELTY BLOOD: TYPE LUMINA』や『月姫 -A piece of blue glass moon-』なので、キャラはそちらの方を知っていました。先日『FGO』にアルクェイドこと「アーキタイプ:アース」が入ったので、めっちゃ召喚を回しました。幸い引けました。(笑)
一同:
(笑)
廣重:
ディライトワークスに入った当初は『FGO』のヘビーユーザーではなかったんですが、関わる中でどんどん好きになっていきました。とにかくキャラ愛が強くなりました。
叶:
自分はもともと好きでしたが、ディライトワークスで一緒に開発に携わらせてもらってから、より好きになったのは間違いないです。『Fate』だけではなく、『Fate』に関わるTYPE-MOONさんも好きになっています。奈須さんや武内さんらと直接接する機会が多いので、そうした中で「こういう想いでこのキャラを創ってるんだな」と感じたり、シナリオのポイントが分かったりとか。コメントが書いてあるシナリオを確認できたり、事前にプロットも見せてもらったりする中で、「この時のセリフは、実はこういう想い・背景から」というのも書いてくれていて理解が深まったりすることも!役得ですね。
その作品の奥深さを近くで感じているので、より『Fate』が好きになっています。またTYPE-MOONの皆さんの人間性にも惹かれるところがありまして。なので、イベントや生放送などに出たときに一番気にしているのは、ちゃんとTYPE-MOONさんたちの想いや熱を代弁できているかという点です。そうした場所では僕はTYPE-MOONさんの代弁者という気持ちで出演しているので、絶対にミスできない。開発としても、TYPE-MOONさんが伝えたいものを100%もしくはそれを超えるくらいで、ユーザーの皆さんに伝えたいという想いが年々大きくなってきています。
──開発者でもあり、ファンでもあると。ちなみに叶さんが一番好きなシーンはありますか。
叶:
ひとつを選ぶのは難しい……。第1部終盤でのマシュのシーンは完全に泣きました。ただ最近でも第2部 第6章で何回か泣いてます。あ、第2部 6.5章でも泣いてるな……。泣いた数でいうと数え切れないんです。第2部 6.5章でも、あるバトルに向けて、マスターが「来い、■■■―――■■■■■■■■!」って言ったシーンがあって、そこでも泣いていました。
──今仰ったように、「TYPE-MOONさんたちの想いや熱」をユーザーに届けたいと考えているスタッフは多いですか?
叶:
チームとしてもTYPE-MOONの皆さんの想いをしっかり形にしたいですし、自分たちがその形を見たいという想いもあります。よくインタビューで言わせていただいていることは、『FGO』らしさを創るためには、ラセングルでしかできないモノの創り方が不可欠だと思っています。開発することは大変ですけど、でもその原動力の根底は「『FGO』が好き」ということ。自分たち自身もこの作品を楽しみにしているし、イメージしている形でユーザーの皆さんに届けたいという気持ちは強く、それに全力で取り組む体制が重要だと考えています。
宮前:
『FGO』チームはみんな開発者としての責任と愛で、ユーザーの皆さんに良いものを届けたいと考えています。そういう想いがあって苦しいタイミングを乗り越えていく。開発者として敬意をもてるメンバーが多いです。
直良:
補足としてリクルートの観点から言うと「『FGO』の熱狂的なファンじゃなきゃ創れない」わけではないです。そこは作品やゲームへのリスペクトがあればよいと思っています。
ラセングルだからこそできる『FGO』の開発・運営体制
──『FGO』について、開発・運営体制について教えてください。直近のイベントやシナリオでは、どういった流れで実装まで動いていくのでしょうか?
叶:
最初に年間スケジュールが決まります。TYPE-MOONさんとの会議で、スケジュールを年単位で協議して調整します。どのサーヴァントを配置するかを決めて、1年とか1年半前からサーヴァント制作は始めていきます。シナリオの構成としてこのサーヴァントは出せる、となったところでプロットができて、シナリオができ、メイン章での遊んでもらい方をどうするかを決めて、開発に落とし込んでいくような流れになりますね。
──数年先くらいまでは考えているイメージでしょうか。プロジェクト自体のロードマップ自体も大きいと思いますが。
叶:
先まで見通していますが、きっちりしきれない部分もあります。たとえば第2部 第6章のタイミングでユーザーにもお伝えすることになりましたが「2021年の水着は(例年と異なり)9月に開催します!」となる時も。ただし、ユーザーの皆さんと歩調を合わせる必要がある場合には「想定と変わったけどこうするよ」というのは、伝えるようにはしています。
スケジュールのために、内部的には順番を入れ替えたり調整をしたりしています。様々な要因はありますが、開発都合のほか、「ここでサーヴァントを先行登場させて、次のイベントで実装しよう」みたいなことがあると、サーヴァントにとって最適なスケジュールに組み直したりします。
──開発の怖さでもあり、面白さでもあったりしそうですね。
宮前:
『FGO』にかぎらず、開発初期段階ではある程度は完成形を想像していても、形にしてみたときに「ありきたりだな」とか「既知感がある」と感じることは結構多いんですよ。そのままじゃだめだとなった時に、そこと向き合い、こだわって変えるべきだ、と開発の立場から言えるのが『FGO』チームの一番の強みだと思います。こうした苦しい時も乗り越えて結果に繋げていくところを、組織的な開発体験として別のプロジェクトにも発展させたいですね。そして、他のタイトルでは体験できない面白さを創り出したいと思っています。
直良:
自分はプランナーではないですが、エピソードごとにゲームをワンオフで作り直しているような仕組みは常軌を逸しているなと思いますね。
廣重:
毎回新しいものを創るというのが一番の特徴ですし、これはゲーム業界において結構ほかと違うと思います。
直良:
ゲーム開発が大規模化する中で、会社に入ってからリリースまで数年経つことがザラです。でも『FGO』は昔のアーケードみたいに、いろんな遊びのジャンルが実装されていて、ひとつのゲームの中でトライアル、イテレーションが回っている。こういうゲームに携わるというのはキャリアや経験という意味では良いことだと思います。
──エイプリルフール企画もすごいですよね。
宮前:
あれは費用もそうですが、時間と労力もとにかくすごいですね。
叶:
エイプリルフール企画は何本かディレクションやりましたけど、かなり力を入れさせていただきました……。つい、やりたいことをすべて盛り込んでしまったり。「1日じゃ終わらない」って多くのご意見いただいており恐縮ですが……。(笑)
直良:
やりすぎてちょうどいいくらいが、クリエイターのモチベーションなのかもしれません。
叶:
度を越してはいるかもしれませんが、そこも『FGO』らしさでもあるので、機会をいただける限りチャレンジしていきたいと思います。
──若いメンバーも新しいイベントや取り組みに積極的に参加されているのでしょうか?
叶:
毎回私が全部ディレクションをやっても会社のためにはならないので、ゲームデザイナーの中でエイプリルフール企画をやりたいメンバーを募集し、企画書を提出してもらいディレクターを任せて私はサポートに回っています。
エイプリルフール企画はキャリア問わず少人数でやるので、若いメンバーがバリバリ仕様書を書いてますね。まぁただ、エイプリルフール企画は毎年やるかやらないかは決まってはいないのでチャンスは限られるかもですが……。
廣重:
エイプリルフール企画についてはTYPE-MOONさんに「来年こんなのはどうですか?」っていう企画書10案とか持っていって提案しているんです。
叶:
社内のゲームデザイナーやほかのセクション、宣伝チームも企画アイデアを出してきたりとか、いろんな発想があるのが良いと思いますし、みんなで考え、いろんな視点で議論しながら創っていくのが良いのかなと。
『FGO』しかやりたくない人でも、そうでない人でもいい
──改めて、今回の求人背景を教えてください。
宮前:
『FGO』自体もまだまだこの先を目指していますので、より安定的な開発体制をつくっていくと考えると、メンバーはまだまだ足りていない状況です。ですので、これからラセングルの仲間となるメンバーを広く募集したいと考え、現在大規模に募集しています。
──『FGO』のプロジェクトでは、どういったキャリアの方が活躍していますか。
叶:
ゲーム業界出身者が多いですが、たとえば遊技機メーカー出身者やポジションによってはゲーム業界以外のメンバーもいます。ただし、たとえばレベルデザインでいうと、ゲーム業界での経験がないと難しい場合もあるため、業界経験重視の職種もあります。
宮前:
サーバー系エンジニアなどは、キャリアのスタートはゲーム業界じゃないメンバーは多いですね。ITやWeb業界出身者もいますね。
直良:
そうですね。それとアニメ業界の制作進行を担当していたメンバーは修羅場くぐっているので強いですね。映像系出身者もいますし、デザインは多様ですね。
宮前:
我々4人はコンシューマーの会社出身ですが、キャリアのスタートがゲーム会社であるべきというふうには限っていません。
──『FGO』しかやりたくない人よりは、視野の広い方の方が良いと。
廣重:
『FGO』も毎回新しい施策にチャレンジしています。ですので、人が足りているわけではありません。より面白いもの、より新しいものを創ろうとするとなおさら。際限なくというわけではないですが、フレキシブルに色んな要求に答えていくのが『FGO』の理想です。まずそこに応えられるメンバーを増やしたい。まだいろいろやりたい、もどかしいという想いもあります。
また、パブリッシャーとして『FGO』以外のコンテンツで世界に通用するゲームを創ってユーザーの皆さんにお届けしたい。『FGO』も盛り上げつつ新しいものを創っていくという意味では、どっちも足りていない。応募動機は『FGO』に対する熱意でも良いし、新しいものを創りたいという熱意でもいいんです。
「いろんなものを創ろう」「『FGO』でもっと面白いことをやろう」「プロモーションも必要だし、分析ももっと必要」と考えれば、いっぱい椅子が空いていました。その椅子に座ってくれるメンバーが必要です。
パブリッシャーにはプロモーションも営業も担当がいて、クオリティ管理者もいる。ラセングルは『FGO』を創る会社という意味で開発メンバーはある程度いますが、パブリッシャーとしての部分で足りてないピースがまだまだある。ようやくゲームを創るだけの会社から、世界で戦えるパブリッシャーになれそうというところまできました。
直良:
今ラセングルの仲間として来てもらうことのメリットは、クリエイティブの根幹を見られること。『FGO』でのゲーム開発は、開発スキルだけではなく表現力も含めて勉強になります。そういう意味で自身のスキルや視野の栄養があり、筋肉を増やしていけるような場所になると思っています。
──そういった開発の過程で、IPコンテンツの創出の管理・ノウハウを得てきたと。
宮前:
自分もこれまでRPGの開発に多く関わってきましたが、その中でもこの1年の『FGO』に携わって得た経験は非常に大きかった。この経験があれば、もっと面白いゲームを創れていたかもとまで思うくらいです。今まで自分は必死にやってきてキャリアを積んできましたが、ラセングルにはまだ新たな発見や経験があります。
門戸は広く、熱意は高く
──改めて、今回求める人材像を教えてください。特に欲しているポジションなどはあるのでしょうか?
叶:
ポジションでいうと全部となってしまいますが……。その中でも私としては特にゲームデザイナーが欲しいと思っています。やりたいことがたくさんあるので、まずは彼らが形を作らないと何も進まない。優先的に欲しいなと思っています。
また、スクリプターももっとほしいと思っています。近年TYPE-MOONさんは『月姫』リメイクなどアドベンチャーゲームもリリースされていて僕らも遊んでいるんですが、そのスクリプト演出に衝撃を受けているんです。私たちもまだまだだなということを痛感しまして、より演出力を高めるためにスクリプターも募集しています。
また、ゲームバランスの設計や調整を行うレベルデザイナーも欲しいですね。『FGO』ではイベントごとに新しい遊びを創っているので、常にクオリティを探求するうえで、必要不可欠であり拡充したい職種の一つです。
宮前:
Tech Studioでは、社内環境を整えるメンバーですね。エンジニアの開発環境をいかに整えていくか。サーバーとクライアントだけじゃなく、SRE(Site Reliability Engineering)などサービスの品質向上や開発環境の効率化のアップデートするためのメンバーも必要ですね。
開発は実データを作るだけではないんですよ。コミュニケーションの仕方も多様化しており、直接話してホワイトボードで書いて進めていたところから、リモート下で資料などでコンセンサス取って進めていくことも多い中で、アイデアを出すところからデータを作る間の橋渡しも必要です。そうした開発環境をより効果的にする職種も求められてきます。あとはグラフィック面でいうと、『FGO』は背景やマップのクオリティは求められているので、そうした部分のメンバーが欲しいです。
叶:
UIとかサーヴァントを作りたい人も。もう本当全部ですよね。
──求人ニーズが高いとはいえ、入りたい人が全員入れるわけではないと思います。一緒に仲間として働きたいと思うポイントは?
廣重:
大きな歯車よりも、小さくてもモーターとして動くことができるメンバーが必要です。何かを生み出せる方ですね。
叶:
そうですね、自分で動けることは重要ですね。
廣重:
特に求めるのは、頭を使うだけでなく、出されたものに自分のなにかを付け加えようという意思がある方ですかね。
宮前:
クリエイティブはある意味、独りよがりになりがちなんですよね。自分の若い時にも経験ありますけど、独りよがりの「これ綺麗でしょ」「かっこいいでしょ」は、全体から見るとずれている場合もあります。そこで、プロジェクトと個人のズレにぶちあたった時に、ちゃんと軌道修正が出来るマインドがあること。そして、プロジェクトの方針をしっかり理解をして前に進めることが重要だと思います。
廣重:
駄目でも諦めない。駄目って言われた理由を考えられるか、ということが重要ですね。
叶:
あとは、なにかひとつ大事なことを持っていること。「『FGO』大好きです!だからこそここで働きたい!」でも、ゲーム開発でもいいし、それ以外の分野、アニメーションの技術だけを貫いて来ました、でもいい。最終的に僕らのベクトルに合うかどうか。
──僕らのベクトルというのは。
叶:
『FGO』も含めて、ゲームに登場するキャラクターを大事にし、ユーザーの皆さんへ最高の形で届けることにこだわることです。
直良:
「キャラクター」ってワードだと見た目のデザインや絵を想像しがちですが、キャラクターの見た目は全体の印象の一部でしかないんですよ。言動や生き様、使う技、声などキャラクターの構成要素は多様にあります。それらのキャラクター同士が織りなすドラマというのが『FGO』の良いところだし、それらを創れるのがラセングルの強みです。
『FGO』はUIやフォントの世界観、背景のすみずみまでしっかり見られるタイトルでもあるので、ひとつひとつすべてが必要な要素、すなわちすべてがキャラクターを活かすための要素なんですよね。
叶:
『FGO』をプレイされている方には伝わりやすいかもしれませんが、バトルの中では、サーヴァントがとる行動ひとつにおいても、その個性を表現するためにAIやギミックなどを、こと細かく設計し実装していたりします。
宮前:
性能もキャラクターの重要な要素ですからね。それぞれのパートの仕事を組み入れて、みんなでキャラクターを創っていく。他パートの担当者のこだわりを理解して、そこに自分のこだわりも乗せて一緒に創っているという感覚をスタッフの多くが持っているなと思います。
面接は個別にしっかり見る
──ものづくりに関して、キャラクター軸のマインドが重要というのは感じましたが一方においてスキルとマインドのバランスはどう考えていますか。スキルがそれほどなくてもマインドがあればいい?
叶:
いわゆるオープンポジションで応募される方もいますけど、希望されている職種ごとに最低限のスキルは必要です。例えば、『FGO』のレベルデザイナーだと深層部分になるので、ある程度の経験が必要です。
宮前:
中途採用において、30代で即戦力となると当然勘所やスキルは見させていただきます。若いメンバーたちは経験を通じて成長することに期待しますし、第二新卒以降の若手を採用して育てていこうという指向性もあります。
叶:
最近採用した方も業界歴4~5年でしたね。
宮前:
小野さんからは「ちゃんと育つよう、キャリアを含めて考えて」とも言われました。なので、しっかりキャリアプランもつくりました。
──どのような育成システムや方針があるのでしょうか。
廣重:
プロデュースDiv.でいうと、プロデューサーを募集しつつも、プロデューサーを育成するという方針もあります。現役バリバリのプロデューサーが欲しい訳ではなくて。プロデューサーにはビジネス感覚が必要なので、そこの素養があれば経験は積ませようという意思はある。海外に向けて開発をしていく部門のトップはそれなりに経験が欲しい……などはありますが、若手スタッフでも育成できると思っています。
また、新企画プロデュース局では、「小さく作ってたくさん失敗しよう」という仕掛けになっています。ゲームは100本作って1本当たればすごいという領域なんですよ。うちも、小さいものをいっぱいトライアンドエラーして、そして大きくなったものを伸ばすということを進めている。ラセングルの将来も含めて、ラセングル育成計画という流れに入っている。そうした観点では、ゲームを創れる人を育成するという環境はあると思います。
叶:
スタジオというスタッフそれぞれの家を用意したので、そこを拠点に育成していきます。また私たちは親であり、スタッフの育成・成長にも責任を持って、ともに取り組んでいきます。
宮前:
Tech Studioも、それぞれのメンバーがもっている課題感が違うので、僕らが先導しながら教育しています。
──若手もベテランもウェルカムと。
叶:
面接では個別にしっかりとお話を聞かせていただきます。ゲームを創りたいという熱意があれば誰でもチャンスがあります。キャリアやスキルだけでは判断しないので、まだ経験の浅い若い方もベテランの方もぜひ応募していただければと思います。
──ありがとうございました。
[聞き手・執筆: Daiki Kamiyama]
[聞き手・編集: Ayuo Kawase]
[協力: Aya Furukawa]
[撮影: Maho Ikemi]
募集職種(一部)
・スクリプター
・ゲームディレクター
・ゲームプランナー
・2Dキャラクターアーティスト
・UIアーティスト
・背景美術アーティスト(マップ)
・SREエンジニア
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