映画から学ぶ副業・起業向けアドバイス『愛と哀しみの果て』 |起業・スタートアップ経営者の学校ABS
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映画から学ぶ副業・起業向けアドバイス
『愛と哀しみの果て』

掲載:2021/8/9

最終更新日:2021/08/09

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、スタートアップを目指すシニア・女性・ミレニアル世代などへの映画から学ぶ副業・起業アドバイスのコラム。今回は、起業家にアントレプレナー・スピリッツについて教示してくれる『愛と哀しみの果て』について、将来の起業家・投資家であるみなさんと共に見ていきましょう。

副業・起業を目標とする方への『愛と哀しみの果て』の概要

『愛と哀しみの果て』は、1910年代にケニアでコーヒー農園を経営したイサク・ディーネセンの回想録をまとめた小説「アフリカの日々」をシドニー・ポラック監督が映画化した1985年の作品です。アカデミー賞とゴールデングローブ賞ドラマ部門の作品賞を受賞した、傑作です。

イサク・ディーネセンとは、デンマークの女流小説家カレン・ブリクセンの男性名でのペン・ネームです。ブリクセンはデンマークの紙幣に肖像が用いられるほどのデンマークを代表する作家で、短編の『バベットの晩餐会』が同名で映画化され、アカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞しています。ケニアには現在でもこの『愛と哀しみの果て』の舞台となった家が現存し、公開されています。

シドニー・ポラック監督は、ダスティン・ホフマンの女装が話題となった『トッツィー』(82年)、トム・クルーズ主演の『ザ・ファーム 法律事務所』 』(93年)などでも知られる巨匠です。しかし何といっても ロバート・レッドフォードとのコンビが有名で、『雨のニューオリンズ』(66年)、『大いなる勇者』(72年)、 『追憶 』(73年)、『コンドル 』(75年)と、名作を世に送り出してきました。その名匠ポラック監督が、このコンビによる6作目となる『愛と哀しみの果て』で、念願のアカデミー監督賞受賞を果たしました

デニスがカレンの髪の毛を洗うシーンは、二人の愛を象徴する名シーンです。『007』シリーズなどで知られるイギリスを代表する映画音楽家ジョン・バリーのオスカーを受賞した音楽が、作品をさらに崇高なものにしています。

米国最大の映画批評サイトRotten Tomatoes視聴者40,329人による平均スコアは、4,11という高評価となっています。

主人公のカレン・ブリクセン役が、メリル・ストリープです。アカデミー助演女優賞を受賞した『クレイマー、クレイマー』(79年)、ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞した『フランス軍中尉の女』(81年)、アカデミー主演女優賞を受賞した『ソフィーの選択』(82年)、ロバート・デ・ニーロ共演の不倫ながらも純粋な愛を描いた名作『恋におちて』(84年)、などで当時実力・人気共にトップの地位を確立していました。

ブリクセンが恋に落ちる冒険家デニス役が、60年代から70年代を代表する人気俳優のロバート・レッドフォードです。当時48歳でしたが、前年にも35歳でデビューする元天才野球選手の活躍を描いた『ナチュラル』(84年)に主演するなど、そのかっこよさは健在でした。

起業家・アントレプレナーを目指すみなさん向けの『愛と哀しみの果て』のネタバレなしの途中までのストーリー

ネタバレなしの途中までのストーリーは、デンマークで始まります。外の世界に憧れる富裕な独身女性だったカレンはスウェーデンのブロア・ブリクセン男爵と結婚することとなり、1913年、アフリカのケニアの中心地ナイロビヘと旅立ちました。彼女の所有する農園を、経営することとなったのです。ナイロビに向かう途中でデニス・ハットン(ロバート・レッドフォード)という冒険家と出会い、友人のコールへの届け物を頼まれます。ナイロビで女性禁制のクラブへ乗り込みブリクセンとの結婚式をあげたカレンは、クラブのデニスの部屋でコールから彼の話を聞き、興味を持つのでした。

酪農を行う予定でいたカレンでしたが、ブロアがコーヒー農園の経営に話を勝手に変えていたことに激怒、口論となり、ブロアは出て行ってしまいました。そんな時、カレンはライオンに襲われかけたところをデニスに助けられます。ブロアとカレンの平穏な生活も、カレンがブロアのせいで梅毒にかかりデンマークに帰国すると、終わりを告げました。

その後アフリカに戻ったカレンは、デニスとサファリを楽しみ、ブロアは女遊びを続けてカレンに家から追い出されました。そうした時期にコールに死期が迫っていると聞いたデニスは、カレンに一緒に住もうというのでした。そしてブロアが借金のために離婚を申し入れたのを機会に、カレンはデニスに結婚を申し出るのでした…。

『愛と哀しみの果て』を観て起業・スタートアップを目指す方に気づいて頂きたい点

カレンはデンマークに留まれば莫大な財産と共に幸せな、裕福な暮らしをできたはずでした。その平穏な約束された将来を投げ捨て、アフリカのケニアにわざわざ移り住む道を選んだ事からも、カレンの冒険心と好奇心の強さが理解できるでしょう。そして、女性禁制の英国流のクラブに女性ながら侵入したことは、旧い価値感への嫌悪と強い意志が読み取れ、古い因習に縛られた旧態依然としたヨーロッパからの脱出を欲していたのかもしれません。自由な生き方を求めたわけです。

このカレンの性格や生き様は、まるで新天地を求めて起業するアントレプレナーに重なって見えます。起業家を目指すみなさんは、彼女の冒険心にアントレプレナー・スピリッツを見出すことができるのではないでしょうか?

カレンが、旧態依然のヨーロッパの象徴であるような男尊女卑の夫のブロアに反発を強めるようになるのも、当然でしょう。それに対し、デニスは自由に、自分の思うままに生きています。まさに、カレンの理想の男性であり、惹かれていったのも頷けます。

ヨーロッパの上流階級であるというアドバンテージを投げ捨て、女性でありながら勇気を持って、自由に生きることを選んだカレン。その姿は、ジョン・フォード監督による西部劇の古典『荒野の決闘』(46年)で、東海岸のお嬢様だったクレメンタインが愛するドク・ホリディを捜し求めて銃が支配する西部にやってくる勇気と重ねあわされます。このカレンの自由を求めた、開拓精神に満ちた、勇気のある生き方が、アメリカ人から好意と尊敬をもって受け取られるのは当然のことでしょう。ナイロビのカレンの家にも多くのアメリカ人観光客が訪れていたのが、思い出されました。特に現在の西部開拓ともいえる、未知の世界に挑む起業家ならば、この作品は起業家精神を学ぶために必見の映画と言えるでしょう。

小説も映画も原題は『Out of Africa』で、小説の邦題は「アフリカの日々」と直訳になっています。作品はアフリカの大地と人々への愛に満ち溢れた内容となっており、「アフリカの日々」という直訳のほうが、よほどピッタリきます。「愛と哀しみの果て」に主人公が決断をするということなのでしょうが、この『愛と哀しみの果て』という邦題は、全くいただけません。陳腐な上、『愛と…..』という邦題が当時流行していたようで、思い出しただけでも 『愛と喝采の日々』(77年)、『愛と青春の旅だち』(82年)、『愛と追憶の日々』(83年)などなど多数あり、どれがどれだか分からなくなってしまいます。

陳腐な邦題はともかく、世界中で1番美しいアフリカの自然の素晴らしさとアカデミー美術賞を受賞した装飾を堪能でき、恋愛映画としても楽しめ、人生の生き方も学べます。アカデミー作品賞・監督賞にふさわしい名作といえるでしょう。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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