美しき愚かさを表現する。「Beautiful Foolishness展」作家紹介 | 藝大アートプラザ

美しき愚かさを表現する。「Beautiful Foolishness展」作家紹介

ライター
藝大アートプラザ編集部
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作品紹介

東京藝術大学美術学部の前身である東京美術学校の校長を務めた岡倉天心は著書「The Book of Tea(茶の本)」の第一章をこんな言葉で終えています。

”Let us dream of evanescence, and linger in the beautiful foolishness of things”
(しばしの間はかなさを夢見ようではないか。そして物事の美しい愚かさに身をゆだねようではないか)

”foolishness”という言葉は通常否定的な意味でしか使われません。その言葉を”beautifull”と形容することによって、天心は功利的には役に立たないことやものに、あるいは、社会の文脈や関係性から解き放たれた一見無価値な存在に対して、最大の賛辞を送っているように見えます。

また、日本におけるポップの帝王ともいえる後白河法皇が編んだ「梁塵秘抄」には「遊びをせんとや生まれけむ戯れせんとや生まれけん」というその後の文学作品に大きな影響を与えた一節が収録されています。

今回藝大アートプラザは「美しき愚かさ」「遊びをせんとや生まれけむ」という二つの言葉に注目しました。もしかしてそんな存在のアートがあってもいいのでは?と思うからです。

藝大アーティストが織りなす「美しくて愚かな」そして「遊びをするために生まれた」作品の数々にしばしの間身をゆだねてください。

ここでは、写真とともに出展作家をご紹介します。
※コメントは、Web担当による解説です。
※並びは展示風景のおおよその順路に従っています。
※写真にない作品もございます。ぜひ現地で全ての作品をご覧ください。

会期:2024年10月26日(土)〜12月8日(日)
※展示入れ替え無し

定休日:月曜日(祝日の場合は営業、翌火曜日が休業)

営業時間:10:00-18:00
※営業日時が変更になる場合がございます。最新情報は公式Webサイト・SNSをご確認ください

入場料:無料

会場:藝大アートプラザ(東京都台東区上野公園12-8 東京藝術大学美術学部構内)

公式Instagram:@geidai_art_plaza
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公式Threads:@geidai_art_plaza

加藤 健一


「AでもありBでもある」「AでもなければBでもない」というような、定義にはまらない存在の実践を、絵画表現において模索している。在学中は、画面の大部分が空白を占める抽象画や、視認できないほど微細に動く絵画のシリーズを発表。大航海時代オルテリウスの世界地図を描いている本作。地図という意味/用途のあるものを、フリーハンドで描き映すことで、無意味なものへと転化していく。同時に、絵画や歴史資料としての意味/意義も示唆している。

2021年 東京藝術大学絵画科油画専攻 卒業
2023年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程 絵画専攻油画研究分野 修了
【受賞歴】
2019年 藝大アートプラザ 猫大賞 準猫大賞
2021年 サロンドプランタン賞 台東区長賞

尾形 凌


高校在学中に居酒屋で開催した個展が作家デビューとなる、ユニークなキャリアを持つ作者。葛飾北斎や河鍋暁斎などの浮世絵に影響を受け、現代や都市における妖怪を描いている。アディダスのジャージを着たアディジャー仙人と猫の姿がユニークに描かれている本作。ギターの弾き方を教えたり、酒を酌み交わす様子など、作品の中には登場人物たちの会話が溢れている。居酒屋や寺院など人が集う場所での展示や、手描きのTシャツやバッグの制作など、自由自在に作品と社会を接続する活動を続けている。

2018年 清明亭(世田谷区深沢)にて屏風絵の発表
TOKYO2020イベント参加(浜離宮恩賜庭園)
2019年 [個展]First Exhibition 「おじさんin居酒屋」@うなぎ・やきとり鳥駒
     [個展]「月下老人」於:芝 正伝寺
2020年 東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科 入学
2021年 書籍「おじさん日記」を小学館集英社プロダクションより出版
[個展]「100FACES~100人の似顔絵」 @ esu gallery 祐天寺
2024年  藝大アーツイン丸の内 三菱地所賞 受賞

林 樹里


東京藝大の学部では芸術学を専攻。日本画を技法の側面からも研究するために、大学院では日本画の保存修復を学ぶ。琳派の絵師が多く用いた「たらしこみ技法」を研究。現在はその技法を応用した日本画を描き、作家として活動している。島根県の隠岐諸島でのリサーチによる連作。島から帰る船の上で描いたドローイング、現地の赤土による彩色など、その土地の場所性を手掛かりに制作している。「ドローイングの和紙は短冊にして、和歌をしたためるような気持ちで描きました」と語る。

2013年 東京藝術大学 美術学部 芸術学科 卒業
2018年 東京藝術大学大学院 美術研究科文化財保存学専攻 保存修復研究領域(日本画)
博士課程 取得
2022年「transient」個展( Gallery Art Composition・東京)
2023年 ポーラ美術振興財団在外研究員としてロンドンを拠点に欧州で研修滞在。
  「crossroads of landscapes; Dialogues」 (Atelierhaus Speicher ll・ドイツ・ミュン
スター)
2023年 「bruit dans l’ombre」個展 (Galerie Du Forez・パリ)
2024年 「noise in the shadow」個展 (Fitzrovia gallery・ロンドン)

須田 日菜子

綿布を貼ったキャンバスに、スプレーで人の顔や身体が描かれている。スプレーが生み出す線は、画面との距離や、腕の動きの速度、僅かな揺れなど、作者のアクションがダイレクトに反映していく。「からだがあること、ただその事を描きたい」と語る作者。顔文字のような単純化された表情や身体は、匿名性を帯び、イメージや意味性からの脱却を図る。

2023年 東京藝術大学美術学部油画専攻卒業
2019~2022年 個展(JINEN GALLERY)
2023年 「hip to face」(ART OSAKA expandedセクション)
2024年 「浮く肉」(NIGHT OUT GALLERY)
「存在が花する」(横浜マリンタワーアートスペース)
  「噛み合わない会話」(KATSUYA SUSUKI GALLERY)

倉敷 安耶


「GRAVE」とは墓を意味し、作品の厚みは墓石を連想させる。複数のスナップ写真を合成して作られたイメージが転写されているが、物質感の強い絵肌によって、その意味性は遠ざけられている。作者の絵画作品や儀式的なインスタレーションでは、断絶された他者とのコミュニケーションや、密接な関係性の構築が試みられる。「作品を媒介にして、遠い存在を自分に引き寄せられないか考えている。自分の近くに他者を引き寄せたい。」と語る。

1993年 兵庫県生まれ。現在は東京を拠点に活動。
2018年 京都造形芸術大学大学院修了
2020年 東京藝術大学大学院修了。
佐藤国際文化育英財団第26期生 。クマ財団3期生。2021年度VIVA AWARDアソシエイツアーティスト

主な個展に「BnA_WALL 3rd Mural A~ya Kurashiki Solo exhibition」BnA_WALL Art Hotel in Tokyo /東京/2021)、「そこに詩はない。それは詩ではない。」(myheirloom/東京/2021)、「浅はかなリ、リアルの中でしぜんにかえる」(和田画廊/東京/2022)、「腐敗した肉、その下の頭蓋骨をなぞる。」(銀座蔦屋書店アートウォールギャラリー/東京/2023)
、「あなたの髪のひとつ(だった)」(haku/京都/2023)、「百夜」(SOM GALLERY/東京/2023)など。

真田 将太朗


東京藝大では芸術学を専攻、現在は東京大学大学院学際情報学府修士課程に在学。風景を極度に抽象化する大型絵画を制作する傍ら、人工知能を用いた絵画制作による美学研究を実践している。画面を覆う垂直方向のストロークは、風景は下から上へ向かって伸びていくという、作者の考えを表している。

2023年 Google Japan × Z世代アーティスト 第一弾アーティスト採択
2023年 JR東日本 長野駅構内壁画制作・半永久常設
2024年 東京藝術大学 美術学部 芸術学科 美学専攻 卒業
東京大学大学院 学際情報学府 修士課程 入学
     JR東日本 上野駅構内壁画制作・半永久常設
個展「Solo Exhibition」台湾新光三越、台北、
「Process Landscape」GINZA SIX 銀座蔦屋書店、東京

松尾 ほなみ


歴史や民族学など、興味の対象をリサーチしながら、彫刻作品や漫画の制作を続けている。
栃木県那珂川町小砂でのアートプロジェクトKEATでは、都市の人々の姿を林の樹々に彫刻し、都市と里山の自然が交差する景色を生み出している。出品作は、現在リサーチを続ける三重県石鏡の漁港や人々がモチーフとなっている。

2016年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻 修了 
2020年 新宿眼科画廊 スペースM 個展よみかえり
2021年 THE POOL 広島 個展 変わり種
2024年 鳥羽短期地域おこし協力隊インターン
海女に興味を持ちインスタグラムで漫画を執筆

今井 完眞


京都市出身。伝統と現代アートの感覚をユニークに融合させ、洗練させた陶芸作品を数多く創作している。国立工芸館などで開催された「ポケモンx工芸展」(2023年)に参加するなど、注目が集まる一方、それぞれの作品は技能とディテールを突き詰めつつ、アヴァンギャルドであり伝統的で、デリケートな美しさと力強さを宿す。

2012年 京都商工会議所インターンシップ交流事業 京都代表として派遣
2015年 第63回東京
     藝術大学卒業・修了作品展(東京藝術大学美術館) 三菱地所賞 受賞 同校修了 
2018年 ゾクッとするリアリズム ゾウムシVSシーラカンス(茨城県陶芸美術館)
2019年 日本陶芸展 招待作家 出品
2021年 京都府新鋭選抜展 (京都文化博物館)NHK京都放送局賞 受賞
2023年 ポケモン×工芸展 美とわざの大発見 (国立工芸館・その後巡回)
(【所蔵】茨城県陶芸美術館(シーラカンス) 

浅野井 春奈


東京藝大では木彫を学び、現在は教員として彫刻科に在籍。貝殻の顔を持つ人物像は、ここ数年間ライフワークのように続いているシリーズである。一つひとつの貝殻の表情を起点に、木を彫り出し身体が作られていく。「葬儀場で初めて人の骨を見たとき、それは貝殻に似ていて海を連想させ、大きな繋がりを感じました。そうした感覚を作品化しています」

2012年 三菱地所賞受賞
2014年 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
2021年 個展「きらめくみみかざり」(Gallery FACE TO FACE/東京)
2022年 個展「Le Penseur」(東京日本橋髙島屋美術画廊X)
2023年 「浅野井春奈展」(新宿髙島屋/東京)

林 奈緒子


日常のなかで繰り返されること、それらが蓄積されて生じるモノ・ことに注目し作品化を試みる作者。東京藝大では先端芸術表現科で学び、現在は木材工房の教員として在籍。原始美術のように、生活と作る行為が一体である状況の実践と模索を続けている。「刺繍や絨毯の模様には、作り手の心情や感覚があって、その延長線上にモノがあるということを想像しながら、夢見ながら、自分がどこまでやれるのかを試している」と語る。

2012年  平山郁夫賞 受賞
2014年  卒業制作買い上げ賞 受賞
      アートアワードトーキョー丸の内 小山登美夫賞受賞
2015年  サロン・ド・プランタン賞 受賞、東京藝術大学 杜の会賞受賞
2018年  東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻 修了

会期:2024年10月26日(土)〜12月8日(日)
※展示入れ替え無し

定休日:月曜日(祝日の場合は営業、翌火曜日が休業)

営業時間:10:00-18:00
※営業日時が変更になる場合がございます。最新情報は公式Webサイト・SNSをご確認ください

入場料:無料

会場:藝大アートプラザ(東京都台東区上野公園12-8 東京藝術大学美術学部構内)

公式Instagram:@geidai_art_plaza
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