2008年、中学3年の少女・くるみの母親は、単身赴任の夫に内緒で家計をFXの豪ドル円につっこみ、リーマンショックによる金融危機で2000万円の損失を出して自殺した。
2014年、20歳の大学生となったくるみは、母が失った2000万円を取り戻すべく、バイトで貯めた30万円を元手に母を殺したFXに挑む。
絶望の地獄と、父のタンス預金を盗んでまでロスカットを回避した上での天国との、その両方を経験したくるみは、沼のようなFXの魔性に囚われていく…
という、美少女FX漫画。
癒し系の萌え漫画と勘違いして買わないように気をつけましょう。恋愛要素も百合要素も、自分の目から見るとほぼ在りません。
例えこの漫画が大ヒットしても、影響されてFX始めて破産して「作者を●して俺も◯ぬ」なんて奴が万が一にも現れないよう、FXにのめり込む初心者の心に生じる闇が念入りに描かれた作品。
人間の自制心が溶けていく、ほとんどサスペンス・ホラー。
主人公のくるみを傍観者の立場に差し置いて、ぶっちぎりの愚かしさと心の弱さの「見世物」として作品を引っ張ってきた「意識だけ高い系」のイキリ小娘・芽吹がFXの沼から借金の沼へ沈んでいく様子がじっくり描かれた、「4人娘」編?が今巻冒頭でエピローグ的な打ち上げ。
投資の成績云々以前に、一時期は「たぶん死んじゃうんじゃないかな」と読者に思われた芽吹でしたが、打ち上げの焼肉に顔を出し、今後の予定・展望を語れるぐらいには立ち直った様子。
良かった、FXの失敗で借金背負って自●する女の子はいなかったんや!
という感じで、4人娘も成仏したり漫画家目指したり利確したりで、気がつけばFXやってんのは、タイトルロール、メインヒロイン、主人公たるくるみだけに。
この巻、このエピソードのために作品が始まったのであろう、「スイスフランショック」編。
人間を壊して溶かす、孤独と恐怖を伴う生々しい絶望の描写・表現を、原作者の肝煎り・入魂にして新機軸の演出を混じえて、じっくり、たっぷり、ねっとり、と。グロい。
芽吹のエピソードの余韻を蹴散らすような、暗黒のグロい輝きを放つタイトルロール主人公ヒロイン、さすがの貫禄。
いやもうコレ、作者とヒロインのSMプレイだろ。グロい。
完結を待たずに、「絶望ポルノ」(そんなジャンル在るんですか)の名作・傑作に。グロい。
今巻は原作者・作画家の作家キャリアのハイライトの一つになる一冊になるんだと思いますし、逆に「まだ描くのか?」「まだ描きたいことがあるのか?」と思うぐらい「人間の願望と欲望と絶望」を描き切ったと思えるこの作品に、自分はもう満足です。
「商品としての漫画作品にはエンディング(オチ)が必要」
という理由であれば、普通に考えたら次巻で完結なんでしょうが、
さて?
aqm.hatenablog.jp