百合漫画『やがて君になる』の作者の新作。
ほぼ現代の日本。世界は少し、おかしくなった。
異常気象ならぬ、異常現象・超常現象が断続的に起こるように。
「周期性例外事象」、通称「バグ」。
ある時は1日が27時間になったり、ある時は人類全員が突然迷子になったり。
大規模・影響大なバグは短期で収束し、逆に小規模・影響小なバグは長期化する傾向に。政府の「例外庁」が収束予測を発表する世界。
主人公の中学生男子の"紺"は親元を離れて(?)シェアハウスに下宿。
ヒロインの、シェアハウスの大家の美女"かさね"は、兼業で大学の教員・バグの研究者。
世界規模で起こるバグは当然、彼らが暮らすシェアハウスや紺の通う中学校でも発生し、今日も紺はかさねの助手として、バグの不思議と向き合うのだった。
という、非日常を舞台にした日常もの。
今のところ発生するバグは人死にが出たりする深刻なものではなく、「神様が地球にいたずらしたような」ものが中心。
作品全体のテイストものほほんとした日常ものテイストで、主人公たちが解決に向けて活躍する、というよりは「わー、ちょっと困るけど、おもしろーいw」とリアクションしてる間にバグが勝手に解消するものがほとんどです。
『猫が西向きゃ』を読んだことがあれば、「ああいう感じ」で通じるかな。
ざっくり言うと「おねショタSF日常もの」、と形容して良いと思います。「おねショタ」という言葉が想起させるほど恋愛要素はなく「仲良し」ぐらいの匙加減。
今巻のバグのお題は
・すべて(?)の民家の部屋数が増殖しダンジョン化
・あらゆる物体が壊れなくなる
・すべての人類が眠れなくなる(眠る必要がなくなる)
・特定の種のミジンコが縞模様になる
・(回想エピソード中編)紺とかさねの出会い
いや、びっくりしましたね。
叙述トリックではないけれど、「叙述トリック的」とでもいうか。
「狂言回し」自身が狂言だった、「観測者」自身が事象そのものだった、みたいな展開。
我々がなんの疑問もなく信じている、実はあやふやな「実存」のあり得る可能性、存在のスリリングな真実。もう一つの特異点。
正直、1〜2巻を「前後編」「上下巻」として、このまま完結としてしまっても、フリが効いたショートSF中々の良作であるように、最後のページに「完」と描かれていても自分は満足したように思います。
終わったと解釈できなくもない今巻の終わり方でしたが、「完」の文字もあとがきもなかったので、おそらく3巻も出るんだろうと思いますが、これ以上なにを描くのかな、と思わないでもないです。
「成人と中学生のおねショタ匂わせなSFラブコメ日常もの」として続いていくのかしらん。
それとも今回提示された「設定」を活かした更なる展開が待っているんでしょうか。
特異点ヒロイン・かさねの、特異点たる由縁が、まだ謎と言えば謎ではあるんですが。
aqm.hatenablog.jp