おもてなし受けるおっさん
おもてなしする子供達
100IQD=約10円 ※各詳細情報は文末
カルバラーからバスで1時間。古代都市・バビロンで有名なヒッラへ。ヒッラでは何とかカウチサーフィンを取り付ける事ができたのでひとまず安心。
ヒッラに到着してから待ち合わせ場所のサイバーカフェへ。すると
「待ってたよ~」
とハリウッド女優かと思ってしまう程の強烈な美女が私を待っていたと言うではないか! ハニートラップなのかと疑ってしまうほど。しかも日本のアニメシャツを着ている。美しすぎて顔を見ることができない。
すると
「お〜ドタバタ来てたね」
とサッカーフランス代表で活躍したベンゼマそっくりな男性が現れた。
「今日はうちに泊まるからな」
ベンゼマの家かい!
美女じゃないんかい!
いやウソウソ。宿泊させてもらうだけで嬉しいです。すると頼んでもないのに友人を紹介してくれると言うので別のサイバーカフェへ。てかサイバーカフェ何店舗あるんだよ。
もう一方のサイバーカフェには18-19歳の学生集団。
「それじゃ仕事があるからあとは楽しんで」
とベンゼマ。は? 彼等と遊ぶって歳の差やば過ぎでしょ! ジェネレーションギャップどんだけよ! 絶対に尾崎豊知らないでしょ?
とは言いつつもなんだかんだ楽しめた。ゲームが終わったらベンツでドライブ。
え!? ベンツって18歳がかよ!
何でも彼等は医大に通う学生で、親も医者とか結構な華麗なる一族。よって皆英語もかなり話せた。
「ベンゼマ仕事が遅くなるから僕の家に行こう」
とメガネをかけたベンツ運転手。通称ベンメガ。家へ行くとやはり大豪邸だった。
到着するやいなや、度の強いメガネをかけた弟と、完璧な挨拶をしてくれた妹がお茶を持ってきてくれた。これが俗に言う「無限チャイ」。断らない限り無限に出てくるチャイ。断ったって止むことがないことだってある。特に夜の無限チャイは辛い。一杯目は必ず飲まないと失礼にあたるわけだが、カフェイン摂取による睡眠障害という概念を知ってか知らずかお構いない。そもそもムスリムの夜は長く、睡眠をあまり重要視していない可能性が高い。それは日中暑すぎて行動ができないという環境もあるはずだが、1日5回お祈りするという習慣があるからだと推測できる。
しばらくするとデリバリーで夕食を頼もうということに。旅中ということもあり値段が気になったが、チキンバーガーとポテトを注文。デリバリー業者がやってきたので支払おうとすると
「支払いは僕達がするから大丈夫」
おいおいおい! なんでハタチにも満たない子達がおっさんの支払いをしてあげようなんて気持ちになるのだ! 凄すぎる。もしかして私のこと同世代とか思ってるのではないかと確認したら
「25歳くらいでしょ?」
偉いぞ! それ聞いて逆に奢りたくなったわ!
そんな好青年達と食後はバイクで街へ繰り出すことに。
ベンメガの後ろに乗り準備完了。すると急発進!そのまま細い道を大丈夫なのかと心配になってしまうほどのスピードで駆け抜けるベンメガ。
いや怖すぎるって!
大学時代にバイクで転倒して骨折し、病院に行かなかったせいでマジンガーZみたいな腕になった走り屋の友人の後ろに乗った時を思い出すわ!
「金返すから降ろしてくれ!」
なんて泣き言など言えるわけもなく
「東京ドリフトはこんなもんじゃないさ」
とか言ってマウントを取る。そのキメ顔で言い放った一言で全員複雑な顔をしていたのは、私の足が異常に震えていたからだろうか。
結局ヒッラでは古代都市・バビロンの遺跡入場料が25000IQDと高いので諦めることに。するとベンゼマが
「何しにヒッラに来たんだ!?」
言われて見れば何しに来たのかさっぱり分からない。学生達と遊びに来ただけみたいになっているよな。というかそもそもベンゼマの家に宿泊できなければ多分来なかった。しかし結果的にヒッラに来たおかげで何ともハートフルな人々に出会えたのだ。悪くないのだろう。もし学生達に会えていなかったらバビロンの遺跡に行っていたと思う。しかしもうお腹いっぱい。ヒッラの思い出をバビロンで上書きするよりは、学生達との楽しかった思い出のまま残しておきたかったのかもしれない。さあ、イラク最後の街・ナジャフに向かおう。
最後のおもてなし
シーア派聖地・ナジャフ。ここからインドへのフライトが安かっただけで来ただけであり、ここに何があるかさえ分からなかった。というか執筆している今も全く霊廟やモスクの名前すら覚えていない。それなら各必要ないかと言われると、やはりまたまたイラクのおもてなしがあったので、書かずにはいられない。
ナジャフもカルバラーと同じく大勢のイラン人とイラク人に溢れていた。カルバラーは特定の場所だけが人混みに溢れていたが、ナジャフは霊廟やモスクが点在していたのでどこまで行っても人混み。つまりどこまで行っても炊き出しの露店が並んでいるのだ! もはや無料バイキング。もう食べれないと思ってもどんどん配られてしまう。一旦避難しようとシェアタクシーに乗っても窓から渡されるのだ。もはや出された物を全て食べなければいけないという仕来りがある石原軍団だよこれじゃ。
時刻は21時を回っていた。そういえば翌日の正午にインドへのフライトが控えていたのだが、そういえばビザは印刷が必要なのかと調べたらまさかの印刷必須。もう店は閉まっている時間だよなと、誰かプリンターを持っている人の家を探していると、家の前でゲームをしている青年を発見。印刷できるか聞いたら店がまだやっているというのだ。場所が複雑だからとわざわざ1kmくらいを道案内してくれ、無事に印刷できた。代金を支払おうとすると首を横に振られ、いらないという。一体どこまで親切な人溢れているのだイラクという国は。
青年の家の方まで戻って思い出したが、青年がやっていたスマホのゲームは「eFootball」というコナミのサッカーゲームだった。イスラム圏ではなぜかこれが人気。私はこのゲームの大ファンで、基本的に毎日プレーしている。お礼になるか分からないが、試合相手になってあげたいと勝負をすることに。
正直相手にならず、何度やっても圧勝。終わりにしようとすると
「今日うちに泊まっていきますか?」
めちゃくちゃ嬉しいオファーだった。それでもちょっと迷った。24時に差し掛かろうとしていて、今から空港内に入り、寝れば結構ちょうど良さそうなんだよな。それに空港内に入るのにどれだけ時間がかかるかイラクといいこともあって未知数。
「ありがとう。でも空港に行くよ」
イラクの空港まで1kmもなかったのだが、3人の子供達がボディーガードとして付いてきてくれた。なんの役にも立たなそうなボディーガードだったけど、深夜に一緒についてきてくれるというその気持ちが何とも嬉しくてたまらず感極まりそうになった。
約2週間のイラク旅だったが、毎日何かしらのおもてなしを貰った。なぜイラク人達はこんなにも親切なのだろう。ここまで人に優しくされた国は他にない。彼等の持つ優しさで覆われたベールは一体どこに売っているのだろうか。心の余裕を常に持ち続けるという重要性を教えられた気がしてたまらない。
10カ国連続のイスラム旅終了
今から15年前、まだ大学生だった頃の話。初めてイスラム教の国を訪れたのががトルコだった。イスラム教とは何なのか全く分からず、知っていた知識は
「マホメットが1番偉い」
というアホまるだしの馬鹿だった。トルコでは特にイスラム教について触れることはなく、ただアザーンがうるさいなーという感じだった。しかしトルコからバスで向かったシリアは訳が違った。
街の人々の眉毛が両津勘吉なのである! 小学生の頃に眉毛でいじめられる典型的なつながり眉毛。そしてみんな髭を蓄えている。なんで整えないのかと不思議でしょうがなかった。
「豚肉食べられないことも知らないの!?」
トルコからシリアに入国する際にバスで一緒になった日本人。風貌は浅野忠信に似ていた。私は何の宗教でもないからそんなことに全く興味がなかっただけでなく、豚肉と牛肉、鶏肉の違いさえ言われなければ分からないほどだった。
「そんなこともわからないでイスラムの国を旅するのは危険。ここだけに限らず、新たな国に入る前に事前に勉強しておかないと駄目。君は何かと知識が無さ過ぎるから何でもいいから本を読むこと」
激しく怒られた。なぜ出会ったばかりの他人にこんなに怒られなければならないのかとこの言葉を右から左に受け流していたのだが、その後にあらゆるトラブルに直面し、浅野さんの言葉がずしりと重くのしかかった。
それから私は人一倍本を読み、社会人になっても毎日のように勉学に励んだ。歩いている時は耳から情報を取り入れるなど徹底。そしてようやく自分で納得できるくらいのとこまで来れたのではないかと感じているが、やはり勉強する重要性は大きく、まだまだやり続けないと駄目だなと思う。私を変えてくれたのは、当時憎くてしょうがなかった浅野さんであることは紛れもない事実。当時、浅野さんとまともに会話ができなかったが、今なら少しは会話ができるようになってるかな。
イラク情報
※イラク旅行の攻略法
①米ドル持参すべし=闇レートで10%上乗せ両替可
②キャッシングを有効活用すべし
③安宿ないのでcouchsurfin利用すべし
④遺跡入場料は25000IQD(約3000円)高いこと自覚すべし
⑤スマホアプリ「efootball」で対戦して仲良くなるべし
⑥アライバルビザ$75+$3程度は必ず持参すべし
・カルバラー→ヒッラ(2000IQD)バス乗り場(32.6104904, 44.0427991)
・ヒッラ→ナジャフ(3000IQD)シェアタクシー乗り場(32.4603391, 44.4099439)
以下イラク訪問者が受けたおもてなし
1「子供が道案内してくれて、スラムの一輪車を持った子供が集まってきて自分の周りを囲んでボディーガードしてくれてあそこは何屋であそこは何屋でとか教えてくれてみんなで写真を取る。レストランで自分と子供たちの飯を奢ってもらい散髪屋に無言で腕を掴まれて連れて行かれて髪の毛をセットしてもらった」
2「言語をやるアプリで知り合い「バグダッド行くんだけど案内してくれない?」と言ったら引き受けてくれ、お父様と一緒に空港までわざわざ迎えに来てくれ、家にも泊まらせてくれました。日本人が珍しいのかみんな凄い話しかけてくれましたし、日本人ってだけで警察と記念撮影も出来ました。最高でした」
3「友達の家に泊まりましたが、ドライブも部屋も全て準備してくれました。道ゆく人も日本人だと思うと『家に遊びに来てよ!』と言ってくれたり、お菓子をくれたりしました笑」