【レーベルカラー分析】各ライトノベルレーベルの特徴と歴史 | とあるワナビーのライトノベル作家になるための追憶
【レーベルカラー分析】各ライトノベルレーベルの特徴と歴史 | とあるワナビーのライトノベル作家になるための追憶

とあるワナビーのライトノベル作家になるための追憶

ライトノベル作家・小説家・脚本家・ゲームシナリオライターになるために、ワナビーが日々精進するサイト。ライトノベルの感想。おすすめのライトノベルの紹介。

ORICON  NEWSで発表された2016年年間ライトノベル作品別ランキングは

1位 小説 君の名は。  (角川文庫) 推定売上部数 1,417,661部

2位 この素晴らしい世界に祝福を! (角川スニーカー文庫) 推定売上部数 1,174,562部

3位 ソードアート・オンライン (電撃文庫) 推定売上部数 1,020,673部

4位 Re:ゼロから始める異世界生活 (MF文庫J) 推定売上部数 1.007,381部

5位 オーバーロード (KADAKAWA) 推定売上部数 711,154部

6位 魔法科高校の劣等生 (電撃文庫) 推定売上部数 602,256部

7位 ノーゲーム・ノーライフ (MF文庫J) 推定売上部数 562,187部

8位 <物語>シリーズ (講談社BOX) 推定売上部数 450,791部

9位 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫) 449,192部

10位 告白予行練習 (角川ビーンズ文庫) 推定売上部数 435,482部

 

となっている。加えて少し情報が古いが、

 

ラノベレーベル別売上額ランキング(2015年)(※ラノベ年間売上上位1万作品対象)
 

1位 電撃文庫(42.5億、11.9%)

2位 Jump j books(22.8億、6.4%)

3位 富士見ファンタジア文庫(20.4億、5.7%)

4位 GA文庫(19.4億、5.4%)

5位 MF文庫J(17.6億、4.9%)

6位 アルファポリス(16.0億、4.5%)

7位 エンターブレインBC(14.6億、4.1%)

8位 講談社BOX(12.8億、3.6%)

9位 ガガガ文庫(11.9億、3.3%)

10位 角川スニーカー文庫(9.0億、2.5%)
11位 MFブックス(8.9億、2.5%)

12位 ファミ通文庫(8.4億、2.4%)

13位 角川ビーンズ文庫(7.5億、2.1%)

14位 レジーナブックス(5.3億、1.5%)

15位 講談社ラノベ文庫(5.3億、1.5%)

 

では、各ライトノベルレーベルの特徴と歴史をさらに詳しくまとめる。

 

【電撃文庫】

1993年に創刊された、ライトノベルを読む人なら誰もが知っているレーベル。売り上げ、知名度共にライトノベル市場では最大手。

このレーベルの電撃大賞は今まで多くの優秀な作家を輩出してきた。それらの作家は一般文芸へと移っていった人も多いし、今なおライトノベル市場で精力的に本を出し続けている人もいる。

メディアミックスにも力を入れていて、漫画化、アニメ化される作品も多い。

書店での棚占有率も高く、かつ刊行点数も多いので、他のレーベル作品よりも多くの人の目につく可能性が高い。

レーベルの特徴としても、ファンタジー、青春もの、ラブコメ、SF的なものなど幅広いジャンルの作品を出版していて、面白ければなんでもありという意気込みが伝わってくる。

電撃文庫MAGAZINEというライトノベル雑誌を隔月で刊行している。短編部門で受賞した作家も作品を発表できる場所がちゃんとあるというのは心強いだろう。

 

しかし、カリスマ編集者として有名だった三木一馬が2016年に退社して、今までの勢いがなくなるのではと不安視されている。

 

そもそも編集部としての力量はどの部分を見ればわかるのか。

これには色々とあると思うが、ここでは三つの点を考えてみる。

 

一つ目は、面白い作品がちゃんと売れているかどうか。これは編集部が面白い作品がどういうものかちゃんと理解していて、しかもそれを売ろうとしている姿勢を感じられるかどうか。逆に面白い作品が埋もれていたら、それは編集部が何が面白いのかわかっていない可能性が高い。その点では、電撃文庫では面白い作品を宣伝しようという姿勢が見られる。

 

二つ目は、出版されている作品がある程度の完成度に達しているかどうか。面白いかどうかはやはり編集者ではなく作家の責任が大きい。しかし、それが独りよがりになっていないか、分かりにくくなっていないか、そう言った客観的な視点を編集者がコントロールできているかどうかは作品の完成度に大きく関わってくる。この点では最近の電撃文庫はちゃんと編集の目が通っているのかと疑いたくなる作品もある。

 

三つ目に、新人賞作家を育てられているかどうか。新人賞を受賞した作家は数冊は出している。二作目以降を出せていない作者もいるが、それでも他のレーベルに比べたら生存率は高いと言えるだろう。しかし、最近の新人賞受賞作品は評価が低いものが多い。あれだけ多くの応募作の中から選ばれた作品が本当にこの小説なのかと疑いたくなる。もしかしたら、応募数が多すぎて、面白い作品の取りこぼしがあるのかも。

 

しかし、総合的に考えれば漫画でいうところの週刊少年ジャンプのような地位を電撃文庫は築いているので、これからも面白い新人や作品が出てくる可能性は高いだろう。

 

 

【スニーカー文庫】

1989年に創刊。KADOKAWAから刊行されているレーベルのひとつ。『ロードス島戦記』や『涼宮ハルヒの憂鬱』など、ライトノベルに詳しくない人にも知名度がある作品を出版してきた。

以前はライトノベル市場で大きな力を持った大手レーベルだった。けれども頼みの『涼宮ハルヒの憂鬱』も続巻がなく、他に爆発力のある作品も出てこなかったので、今ではレーベルの力も落ちている。

 

新人賞ではとにかく大賞が出ないことが有名で、大賞が出るとちょっとした話題になる。2011年から2016年の間も一度も大賞は出ていない。『涼宮ハルヒの憂鬱』のあとの大賞作品『シュガーダーク』に対する期待は特に大きく、記者会見まで行われた。ライトノベルで発売記者会見が行われたことは初めてだった。しかし高すぎる期待を作品が上回ることはできず、評価は最悪とは言わないまでも高くはなかった。そして作者は続巻が書けずにその後何年も本を出版することはなかった。現在では講談社ラノベ文庫で何冊か本を出しているが、その完成度は高くはない。

 

そして以降出版される作品も話題に上ることが少なく、長い低迷期に突入する。

300万円という高額の新人賞の賞金も、今では100万円になってしまった。

 

しかし最近になり、徐々にまた力を取り戻している。小説家になろうの作品を書籍化した『この素晴らしい世界に祝福を!』のアニメ化、『終末なにしてますか?』シリーズのアニメ化、『サクラダリセット』のアニメ化、実写化などなど色々な作品がメディアミックスされ始めている。

スニーカー文庫は派手な展開が少なくとも、魅力的な世界観や、丁寧なストーリー展開など完成度の高い作品を刊行してきたので、それらの作品が日の目を見るようになってきた。

 

まだまだ新人賞受賞作で面白くて話題に上るような作品は出てきていないが、レーベル内で人気作が出てくると応募される作品の質と量も上がっていくので、もしかしたら今後再び大手としての力を取り戻すことができるかもしれない。新人賞を受賞する作品は青春もの、一般文芸に近い雰囲気のものが好まれる傾向にある。しかし、ラブコメやファンタジーものなどもちゃんと受賞している。

 

統括編集長の森井巧はファンタジア文庫でも統括編集長をしている。

カクヨムのインタビューで現在編集部に7人在籍していると述べた。

 

 

【富士見ファンタジア文庫】

1988年に創刊された。角川系列のレーベル。電撃文庫、スニーカー文庫と並ぶ、ライトノベル界の老舗。『スレイヤーズ!』『フルメタル・パニック!』などの有名作品を刊行してきた。

以前はファンタジー色の強い作品を多く出版してきたが、最近では色々なジャンルの小説を刊行している。硬派なファンタジーよりも、ギャグ系、キャラクターの魅力で物語を進めていく作品が多い。

新人賞を受賞した作家は一冊で切られることもないが、二作目で力を伸ばしてくるような作家もいない。WEBなどで宣伝もされるので、新人を売り出したいという気持ちは感じる。応募総数も多いし、受賞者も毎回五人程度出している。

レーベルとしての売り上げも良い。ただ、無難な作品が多く、飛びぬけた個性を発揮する作品がない。ファンタジー、学園、ラブコメといった定番の、よくいえばライトノベルの人気要素を詰め込んだ作品が多い。

 

未経験者可の求人を出していることもあり、編集の入れ替わりも多い印象。よく言えば新しい風がどんどん入ってくるが、悪く言えばレーベルとしての個性が育たない。

 

『ドラゴンマガジン』というライトノベル雑誌を刊行している。出版業界が衰退していっているなかで隔月でも雑誌を出し続けているというのは評価されるべきだろう。雑誌があるので短編などを発表する場所を持っていることになる。第30回ファンタジア大賞では短編募集が行われているので、さらに広い範囲で新人を発掘できる。

 

 

【星海社FICTIONS】

星海社FICTIONSは株式会社星海社のレーベル。

星海社とは講談社100%出資でつくられた子会社。2010年に設立された。

レーベルカラーを分析するなら、そのレーベルから出版されている小説を読んでみるのが一番早いだろう。有名なもので言えば、アニメ化もされた『レッドドラゴン』。この作品は三田誠、虚淵玄、奈須きのこ、紅玉いづき、成田良悟と、ある程度小説やゲーム、アニメをみる人ならよく知っているだろう人たちが創作した。内容はファンタジーだが、それぞれのキャラクター同士の策略や騙しあいが面白い作品。

さらには筒井康隆による『ビアンカ・オーバースタディ』。ライトノベル調でありながら、SF的な面白さも混ぜ込んだような作品。

独特な作風からコアなファンが多い、唐辺葉介による『ドッペルゲンガーの恋人』『死体泥棒』などもある。

さらに新人賞受賞作品を見れば、新人としては完成度が高く、作者らしい特徴も現れている第一回受賞作の『ブレイク君コア』などがある。

 

ここまでを見ると、星海社FICTIONSはそれなりに自社のレーベルカラーをちゃんと持っていると言えるだろう。特徴としては、一癖、もしくは二癖あるような作品を好んで出版している。悪人が誰も出てこない爽やかなラブストーリーよりは、個性的すぎる面々がおりなす群像劇。誰もが望むハッピーエンドよりは、読者にトラウマを残すような終劇。アニメ映画で言えば、100人が1回見る宮崎駿ではなく、1人が100回見る押井守のような作品を目指しているのだろう。

これには、編集長である太田克史の好みが大きいだろう。太田克史は以前講談社に勤めていて、文芸雑誌『メフィスト』や『ファウスト』に関わっていた。講談社内で異例のスピードで出世していったやり手。

『メフィスト』はメフィスト作家なる、作者一人一人が強烈な個性を持った作家たちを生み出してきた文芸雑誌。普通の文学賞では日の目を見ることがなかったであろう作家たちがここから輩出された。

『メフィスト』がミステリー色が強かったので、太田克史もミステリー調のものを好んでいるようだし、そのカラーは星海社にも反映されている。

 

以上のことから、星海社レーベルの特徴としては、他の文学賞では引っかからなかったり、他のレーベルでは出版されないような個性的な小説を出版しようとしているレーベルと言える。

 

しかし、レーベルができて5年も経つというのに、誰もが知る作品が一冊も出てきていないことはかなり厳しいと言わざるをえない。

 

問題はどこにあるのか。一つ目としては編集者が育っていないことが原因の一つだろう。レーベル設立当初にいた優秀な人材も他に移り、今では太田克史以外はまだまだ実績がない編集者ばかり。年齢も若い人が多いので、それらの人たちが能力を培うまでは、編集部としてもまだまだ円熟したとは言えないだろう。言ってしまえば今は力を溜めている時期とも言える。

 

さらに、この編集部は小説も漫画も新書もイベントも企画できるような編集者を育てようとしている。なので必然的にどれか一つができるスペシャリストが育つというよりは、どれもある程度できる平均して能力値が高い編集者が育っていくので、星海社FICTIONSだけにさけるリソースが少ない。

 

では、星海社FICTIONS新人賞に応募する人の目線に立つとどんなメリットがあるのか。

一つ目としては、癖のある小説でも受賞できる可能性が高い。他の新人賞で個性的すぎるとか、賛否両論ありそうな作品でも受賞できる可能性が高い。

また、このレーベルから誰もが知る有名な作者はまだ生まれていないので、もしこの新人賞を受賞し、本が出版され、その本がヒットしたら、編集部から大切に扱われるだろう。自分が見つけたヒット作を出せる新人。そういうのを編集者は大切にする。

さらに、太田克史がいるということで、なんだかんだいってこのレーベルに期待している読者は一定数いる。有名な編集者がいるというだけでそのレーベルに応募する価値はある。なぜなら、デビューしたあとは結局どれだけいい編集者に出会えたかでかなり方向性が変わってしまうだろうから。

 

レーベルの特徴をきちんと打ち出しているし、新人の発掘にも精力的なので、ひとりの天才がぽんと現れたら爆発的な力を発揮できそうなレーベル。結局ヒット作を生み出せる作者をひとり発掘できただけで情勢と言うのはころりと変わるものなので、これからに期待できるレーベル。

 

 

【オーバーラップ文庫】

2012年12月29日、出版、映像、音楽、ゲーム、グッズなどエンタテインメントの総合事業を掲げる株式会社オーバーラップが、新たな出版レーベルの立ち上げを発表した。2013年4月25日に、オーバーラップ文庫を創刊する。

 

メディアファクトリーに勤務していた人たちが中心となって立ち上げたレーベル。なのでMF文庫Jのようなメディアミックスを得意とする印象を受ける。実際オーバーラップ文庫設立当初も、メディアファクトリー在籍時に関わっていた『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』を引き継いで刊行することで話題を集めた。

さらに『STEINS;GATE』などで有名な志倉千代丸の作品も出版している。

オーバーラップはアニメ事業も行っていて、自社レーベル作品以外のアニメにも関わっている。なので、面白い作品が書けるならメディアミックスまでの道は近いかもしれない。

 

しかし、外から連れてきた作家以外の人たちがまったく売れていない。新人賞も積極的に行っているが、今まで新人賞を取って有名になれた人がいない。それどころか新人賞を取ったのに1冊出しただけでそのあと音沙汰なくなった作者が多くいる。次作が出てこないということは、新人を育てる力がないのか、それとも新人が書きにくい環境なのかもしれない。

小説家になろうと提携してWEB小説大賞も行っているが、成果はあまり現れていない。しかし、アニメ化作品以外ではWEB小説から引っ張ってきた作品しか売れていないという現状。

 

出版されている小説も異世界ファンタジーが多く、レーベルとしての特徴がない。

後発のレーベルだから独自色を出すか、どこかで冒険しない限りヒット作を生み出すことは難しいのだが、そこに挑む姿勢は今のところ見られない。

 

ただ、新人賞ではすべての応募作品に評価シートを返し、その評価シートの内容はかなり丁寧に書かれている。なので、いつかその地味な活動が芽を出して、優秀な新人が出てくる可能性はある。まだ有名な人が出てきていないので、面白い作品が書けたら編集部が大きく売り出してくれて、レーベルの看板作家になれる可能性がある。

 

 

【集英社ジャンプ j BOOKS】

ジャンプJブックス編集部署は集英社のジャンプ・コミック出版編集部に所属しているレーベル。1993年に設立された。

新人賞では村山由佳や乙一を輩出している。

しかし最近、数年前までは新人賞をやっていてもほとんど受賞作を出さず、かつ受賞した作品が出版されることも少なかったので、やる気があるのかないのかわからないレーベルだった。

ただ漫画界の王者と言える週刊少年ジャンプのノベライズをしているので、売上自体はかなりよかった。オリコンのデータでも富士見ファンタジアと同程度の売り上げを出していた。刊行が少ない中でこの結果は見事だ。

ノベライズを多く出していることから、新人賞はノベライズを書ける作家を探しているだけなのではと揶揄されるほどだった。

けれど、最近徐々にやる気を見せ始めている注目のレーベル。

 

まず、新人賞に対する力の入れ方が変わった。年に三回行われているのだが、毎回複数の受賞者を出すようになった。そして書籍化やWEBでの掲載、電子書籍化なども積極的に行うようになった。

長編は枚数制限がないし、短編部門もあるので作者志望の人にとっては送りやすいレーベルとなった。

 

理由の一つとして考えられるのが編集長の存在だろう。

浅田貴典。週刊少年ジャンプ編集部に配属されているときに、『ONE PIECE』(尾田栄一郎)、『ZOMBIE POWDER.』『BLEACH』(久保帯人)、『Mr.FULLSWING』(鈴木信也)、『アイシールド21』(稲垣理一郎、村田雄介)、『タカヤー閃武学園激闘伝―』(坂本裕次郎)、『切法師』(中島諭宇樹)、『P2!―Let’s play pingpong!』(江尻立真)の立ち上げに、担当編集として携わっている。

見ればわかる通り、かなりの敏腕編集者であることがわかる。

 

オリジナル小説の出版も積極的に行い始め、個性ある作家が少しずつ集まっている印象。

なによりも、同じ集英社のDX文庫がライトノベルらしいライトノベルを出版しているので、それとは違った毛色の作品が刊行されているのが特徴が出ていていいだろう。

 

刊行されている作品の雰囲気は、ホラー物から青春物、ラブコメ、ミステリー調など色々。

これから盛り上がっていくことを期待したいレーベル。

 

 

【講談社ラノベ文庫】

2011年12月に創刊された講談社のライトノベルレーベル。ライトノベルレーベルとしてはかなり後発にあたる。創刊が発表された当時はライトノベル自体がかなり人気のジャンルとなっていたので、それに講談社が参入することに多くの人が期待していた。ラノベ文庫編集部が文芸局ではなく漫画部門のなかに置かれていることからも、メディアミックスに力を入れていることがわかる。

 

創刊同時の期待はかなり大きかった。第一回講談社ラノベ文庫新人賞では300万円という高額な賞金に加えて、アニメ化されるという告知もされたので、多くの人が驚いた。それは応募総数が1000作を超えたことからもわかる。しかし、その期待は見事に裏切られた。大賞を受賞した作品がお世辞にも素晴らしい作品とは言えなかったからだ。これが大賞なのかと、期待していた分落胆も大きかった。そして第二回から大賞作品をアニメ化することをやめ、それ以降も新人賞作品の質が高くなく、新人賞の応募数も激減していった。第五回では293作まで落ちている。

 

刊行作品の中でも人気が出るものは少なく、今のところ目立った成果は収められていない。

 

しかし、良い部分もかなり多くある。

まず刊行点数が多い。毎月5作以上刊行していることが多く、10作以上になることもある。

そしてなにより、新人賞を受賞した作家を大切にしている印象がある。新人賞を受賞しても、受賞した作品の売り上げが悪かったらそのまま音沙汰がなくなるレーベルも多いなか、講談社ラノベ文庫は、新人賞を受賞した作家が、2作目、3作目と作品を発表している。

なので、新人を使い捨てるのではなく、大切に育てようとしている編集部の考えが窺える。

刊行作品も流行りの異世界ファンタジーだけでなく、青春ものや、ラブコメなど多彩なジャンルを出版しているので、面白い作品が出てくる土台がある。

 

新人賞を年二回開催し、しかもどんどん新人の作品を発表していっているので、この状態をそのまま続ければ、いつか新人が芽を出したり、もしくはいい新人が入ってくる可能性は高い。

 

編集長は元漫画畑の人で、副編集長は元MF文庫J編集部副編集長だった。何も考えずにライトノベル市場に参入したわけではなく、ちゃんと地盤と整えてから望んだことがわかる。

 

講談社ラノベ文庫の看板作家はまだ生まれていないので、我こそはという人は応募してみるのもありかもしれない。

 

 

【ガガガ文庫】

小学館が2007年に創刊したライトノベルレーベル。創刊の理由は小学館のコミック編集局がアニメ化やキャラクター展開の中心となるコンテンツを探していて、ライトノベル市場に参入することになった。

最初のスタッフは二人で、初代編集長は『IKKI』の編集長だった人物。創刊当時から新人を育成することに力を入れている。他のライトノベルレーベルとは違った分野を開拓していきたいようで、新人賞受賞作品もいい意味で癖がある作品が多い。新人も何作か出させてもらえているようで、面倒見はいいと言えるだろう。

萌えを打ち出す作品が少ない。しかし個性的な作品を出し続けた結果、ガガガ文庫というレーベル自体にファンができ始めている。しかし、癖が強いだけでハチャメチャな作品もたまにある。

 

レーベルとしての個性が打ち出しにくいなかで、きちんとガガガ文庫という特色を出せている。

 

ガガガ文庫だからと期待を込めて新人賞受賞作品を手に取っている人もいるようで、これから伸びる可能性を秘めている。

ただ、刊行点数があまり伸びない。ライトノベルは書店でどれほど棚を確保できるかが売り上げに直結してくるので、そこが多くならないので書店で目につく機会が少なくなってしまっている。

もしもこのまま刊行点数を増やさないのならば、一冊で話題を集められる爆発力があり、かつ完成度の高い作品を出版していく必要があるだろう。

量より質で勝負するのも戦略としてはありだと思うので、これからどのような成果をあげることができるか気になるところ。

アニメ化、実写映画化する作品も出始めて、今後躍進することができるかどうか。

 

 

【GA文庫】

SBクリエイティブから刊行されているレーベル。2006年1月に創刊された。ライトノベルレーベルとしては後発にあたる。

 

創刊当時は『神曲奏界ポリフォニカ』文庫などと揶揄されて、他の作品はまったく人気がでなかった。けれど新人賞を受賞した『這いよれ! ニャル子さん』や『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』などがアニメ化され、かつそのアニメの人気が出たのでレーベルの知名度があがった。アニメ化という戦略を見事に成功させたレーベル。

2015年の売り上げでもレーベルとしてかなり上位だった。

 

新人賞ではTwitterで編集が投稿作品の感想をツイートするので、応募者にとっては応募したあともワクワクドキドキできる。評価シートが丁寧で、応募作品すべてに送られる。新人の育成にも力を入れているようで、新人賞を受賞した作家が徐々に芽を出している。

全体としてはコメディー系の受賞作が多く、かつパロディネタがふんだんに盛り込まれている作品が沢山。しかし、それだけでなく青春ものや、ファンタジー系の作品もちゃんと受賞している。

WEBサイトに編集部のメンバー紹介があり、Twitterなども活用していることから、読者、新人賞投稿者、編集者の距離が近い。編集部のメンバーも変わらず、かつ新しい人が増えているので、徐々に力をつけている印象を受ける。

ここの新人賞もスニーカー文庫と同じく大賞が出ないことが有名で、第8回までで、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のみが大賞受賞作だ。

もし大賞を受賞できれば話題になり、編集部も力を入れて宣伝してくれるだろう。

 

しかし、アニメ化作品WEB小説以外のヒットが少ないのが苦しいところ。最近では新人賞を受賞した作品の人気がでることもない。どの作品もこじんまりとした印象を受ける。

大手レーベルの仲間入りができるか、それともこれ以上の進展はないのか、今後が気になるレーベル。

 

 

【ファミ通文庫】

1998年7月に創刊された。角川系列のレーベル。第1回の新人賞で桜庭一樹が受賞した。桜庭一樹は直木賞を受賞したので、直木賞作家を生み出したレーベルともいえる。

元々オリジナルでそこまで有名になるものはなく、ゲームのノベライズがレーベルとしての柱だった。『モンスターハンター』『グランブルーファンタジー』など有名作品が多く、売り上げも人気も高かった。

 

しかしその流れを変える作品が現れる。それが第8回、2006年の新人賞で編集部特別賞を受賞した『バカとテストと召喚獣』だ。この作品がシリーズ累計で550万部を超える売り上げを叩き出す。この作品によって爆発的なヒット作が一本でも出ればレーベルの価値ががらりと変わることが証明された。そして『バカとテストと召喚獣』に続くように2年後に『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』が受賞し、その後コアなファンがつくことになる石川博品を世に出した。

 

そして有名作品が生まれたことで新人賞を受賞する作品の質があがった。このままレーベルとして上昇し続けるのかもと期待していたが、その願いは叶わなかった。

 

ひとつの原因として8年ぶりの新人賞大賞受賞作品の『龍ヶ嬢七々々の埋蔵金』があまりにも出来が悪かったことがあげられるだろう。ファミ通文庫も大賞をあまり出さないことで有名で、久しぶりの大賞ということで嫌にも期待があがってしまった。『バカとテストと召喚獣』、『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』という面白い作品ですら取れなかった大賞。きっとこの2作品以上のものに違いない、少なくとも編集部はそう判断したんだと読者は期待した。そして見事に裏切られた。キャラクターも、ギャグも、ストーリーも、設定も、何一つ褒めることができない作品だった。そしてそれを補うように次の年に連続して出された大賞受賞作品『四百二十連敗ガール』がこのレーベルにとどめを刺した。安易に大賞を出すことのリスクを身をもって証明したレーベル。

 

一時期、青春小説の色が強いものを多くだし、思春期の恋愛やら奮闘やら挫折やらをテーマにしているものならファミ通文庫というようにレーベルとしての良い特徴が出そうな時期があった。それこそ学園もので質のいいものがファミ通文庫に集まっている印象すら受けた。けれど今では、森橋ビンゴも野村美月だけが奮闘しているのみ。

刊行している作品もゲームのノベライズか、流行りの異世界ものばかり。

 

レーベルとして上昇する気配や、編集部の努力も今のところは見えないが、再び起死回生の一作が送られてくることがあるのだろうか。

 

 

【ダッシュエックス文庫】

集英社が刊行しているライトノベルレーベル。2014年11月にスーパーダッシュ文庫を継承して創刊された。スーパーダッシュ文庫は2000年7月創刊。

スーパーダッシュ文庫は集英社内の第2編集部に所属していた。第2編集部には他に『みらい文庫』、『コバルト文庫』が所属している。そこからダッシュエックス文庫創設にあたり、ジャンプ・ノベル編集部へと異動になった。ジャンプ・ノベル編集部には『JUMP j BOOKS』も所属している。同じ階に『少年ジャンプ』が所属する第3編集部があるので、より漫画化などのメディアミックスに力を入れやすくなっただろう。

 

という期待を抱かせる創刊だったが、蓋を開けてみたらリニューアルした効果はまったくと言っていいほど現れなかった。『小説家になろう』から引っ張ってきた作品や、スーパーダッシュ文庫の頃から書き続けている作家の新シリーズだけが話題になる程度。

 

創刊同時の編集長である清宮徹も現在は第4編集部に移動となっている。

 

新人賞もまったく盛り上がらない。受賞した作家も1作か2作出した後、続きを出すことなく消えている。新人を育てる気も、売り出す気も、チャンスを与える気もないのではと疑いたくなるほど。

新人賞受賞作品の宣伝もほとんどしていない。

 

悪いところばかりが目立つダッシュエックス文庫だが、表紙のイラストはなかなか良い。売り上げがイラストで左右されることも多いライトノベル。その中で、買ってみようかなという表紙が沢山ある。

 

『All You Need Is Kill』というハリウッド映画化されたライトノベル作品を出版したレーベルなのに、その話題性や経験をレーベルとして活かせなかったことが残念。

 

 

【HJ文庫】

HJ文庫はホビージャパンが刊行しているライトノベルレーベル。2006年7月創刊。

ホビージャパンはTRPGやボードゲーム、模型、玩具などの開発、販売を行っている。

『僕の妹は漢字が読める』や、『せんせいは何故女子中学生にちんちんをぶちこみ続けるのか?(刊行時に改題された)』など時折その個性的な設定やタイトルで話題になることが多いレーベル。

 

刊行点数は毎月5作程度。異世界、ハーレム、ファンタジーが多い印象。

新人賞を受賞する作品はその時に流行りになっているジャンルのものか、もしくは癖のある作品が選ばれているようだ。

応募数はそこまで多くないが、それでも毎回5作程度の受賞作を出している。そして新人の面倒見がいいことでも有名。出版された作品が大して売れていなくても次回作を書かせてもらえているようだ。しかし、一方で刊行される作品の完成度が低いのも事実。序盤からどうでもいいエピソードが続く作品、中盤から物語の流れがぐちゃぐちゃになる作品など、編集部がきちんとアドバイスをしたらもっと面白くなったはずなのにと思える小説が多い。作家に的確なアドバイスができないのではと疑いたくなる。

 

書店での棚占有率も低い。小さな書店ではそもそもHJ文庫の作品が置いていないこともある。

 

アニメ化される作品も少なく、今後の成長があまり期待できないレーベル。

 

しかし、ある意味で新人賞では完成度が低くても、なにか一つ武器になるものがあれば受賞させようという気概がみえる。なので、時代の流れに乗らずに、ぶっ飛んだ作品が応募され、かつその作品が大勢の目につくことができれば今後上昇していく可能性もあるだろう。

 

 

【KAエスマ文庫】

京都アニメーションが2011年に創刊したライトノベルレーベル。京都アニメーション大賞を開催していて、その受賞者の本を刊行している。受賞した作品は高確率でアニメ化されていることから、一番アニメ化に近い新人賞と言えるだろう。

しかし毎回必ず受賞者が出るわけではないので、狭き門ではある。出版された小説の内容をそのままアニメ化するのでなく、アニメに適するようにかなり内容が変わっている。

簡単に言ってしまえば、京都アニメーションがオリジナルアニメを作るための題材集めの新人賞とも言える。なので、作者が二作目、三作目と出すこともなく、面倒見がいいレーベルとは言えない。小説を書き続けたい、また小説家としてレーベルに育ててもらいたいと思っている人には向かないだろう。

 

そんなKAエスマ文庫だが2016年末から大きく動き出した。まずはレーベルサイトのリニューアル。そして、次々と発表される新刊の情報。今までは片手間で行われていたレーベルとしての活動が、本腰を入れて行われようとしている。

以前は書店でも見かけず、Amazonでも購入できなかったが、今ではその両方で本を購入することができる。

 

レーベルとして攻勢にでた2017年。今後に期待できるレーベル。

 

 

【ヒーロー文庫】

2012年9月に創刊された主婦の友社のライトノベルレーベル。編集は高原秀樹さんという人がたった一人で行っている。『小説家になろう』に掲載されている作品を出版している。

新人の新作を最も売っている。重版率100%という宣伝を行っているが、それは編集部の力というよりも『小説家になろう』の力が大きいだろう。

 

新人賞を開催したときの応募作の評価シートがあまりにも劣悪で評判になった。基本的に新人を育てる余裕があるレーベルではなく、すでに人気があり、一定数の読者がついている小説を出版していっている。

 

レーベルとしての力があるわけではないので、『小説家になろう』が下火になってきたら、このレーベルも一緒に傾いていくだろう。しかし、それが悪いのかと言われたらそうでもなく、少ない労力で最大限の利益を上げている商業的に成功しているレーベルと言えるだろう。

 

 

【MF文庫J】

2002年7月創刊のライトノベルレーベル。元々はリクルートの子会社だったが、2011年から角川系列となった。とにかく萌えに特化したレーベル。萌えといえばMF文庫Jと言えるほど独自のレーベルカラーを打ち出している。メディアミックスに強く、人気作品は漫画化、アニメ化されるのが早い。創設された当時から新人賞の応募作全てに評価シートを返している。

 

最初は新人の育成にも力を入れている印象だったが、最近になってその勢いが陰っている。まずは評価シートそのものの質が下がっている。そして新人賞を受賞する作品もあまり話題にならない。

 

毎月の刊行数も減っていて、かつ内容もパッとしない。

 

別のレーベルに異動した編集者もいて、レーベルとしての力が落ちているのかもしれない。

また萌え自体に読者が食傷気味なのも原因の一つだろう。

 

他のレーベルと同じように『小説家になろう』の人気作品を出版していて人気が出ているが、オリジナル作品で話題になる作品が出てこなく、踏ん張りところだと言えるだろう。