フリーライターの溝口省吾は、無差別通り魔事件の加害者・
小野寺圭一に事件のノンフィクションを出したいと持ちかけ
る。彼からの出版条件はただ一つ。自分を捨てた母親を捜し
出すこと。母親の行方を探るため、溝口は小野寺の生い立ち
を辿り始めるが‥。決して交わるはずのなかった人生が交錯
した時、慟哭の真実が明らかになる。衝撃のミステリー。
ー裏表紙よりー
被害者となった浜村明香里は十数か所小野寺に刺され、顔に
も傷跡が残ります。
明香里は誕生日に彼氏の東原航平と渋谷のレストランで食事
をする予定でしたが、航平に仕事が入りその帰りに事件に遭
遇します。
航平は自分のせいで明香里が事件に遭遇したと悩みます。
一方、明香里も航平のせいではないとは思いつつも航平と距
離を置こうとします。
明香里は事件のショックからなかなか立ち直れず家族の関係
もうまくいかなくなります。
このあたりの明香里の苦悩というのは読んでいて胸に迫るも
のがありました。
体の傷は徐々に回復するかもしれませんが、心の傷、恐怖心
は簡単に元に戻るものではないでしょう。
フリーライターの溝口は自分も犯人の小野寺と同じような境
遇だったため、小野寺に興味を持ちます。
こちらも幼少期から母親に虐待され大変な人生を歩んできた
というのは理解できます。
被害者参加制度により明香里は小野寺の裁判で小野寺の境遇
に同情しつつも小野寺に厳しい言葉を投げかけます。
もちろんどんなことがあっても人を殺してはいけないという
ことを明香里は訴えます。
私ももちろんそう思います。
ただ、虐待されて育った子どもの苦しみは少し違うのではな
いかなと思っています。
子どもは親を選べない。
いや、どんな境遇であっても他人を傷つけたりしてはいけな
い。それはわかります。
私には法廷での明香里の小野寺への言葉があまり響いてこな
かった。
解説も入れたら600ページあるので話が変に間延びしたよ
うな気も。
小野寺の母親の言い分もただの言い訳のような気がしてなん
だかなあと思ってしまいました。★★