当院のカルテ収納棚は、番号を打ち込めば自動で出てくるシステムになっています。最近カルテを詰め込みすぎて詰まることが多くなってきたので、亡くなったペットや引っ越された方や何年も来院されない方のカルテを整理して、倉庫に持ってゆくことにしました。整理するカルテを一件一件見てゆくと、特に亡くなったペット達の思い出がよみがえってきます。長く通院された後亡くなったペットも多く、その子の顔が浮かんできては「もう一度会いたいなぁ…」と思わず呟いたりしてしまいます。

 

          

 

数年前、飼主さまが交通事故に遭ってしまい、長い入院の後もしばらくはペットの世話ができず、2ヵ月以上の長期間ペットをお預かりをしたことがありました。シャム猫くん2匹でした。幸いケージ生活にもそれほど不満な様子は見えなかったものの、できるだけストレスをかけないようまた運動不足にならないよう、他のスタッフが帰った後夜な夜なリードをつけて室内を散歩させたりしました。馴れてきたところで、監視の下に室内を自由にさせたリ、さらにリクライニングで休む院長の腹の上で寛いだりするようにもなりました。飼主さまは本当にお気の毒でしたが不幸中の幸いにもお命に別状はなく、数ヶ月の後無事シャムシャム’sはお家に帰る事ができました。その後二人とも持病で亡くなってしまいましたが、彼らと過ごした夜のひと時は今でも私たちの胸になつかしい思い出として残っています。彼らのカルテを見ていて、少し目頭が熱くなってしまいました。

 

もう10数年前、宮崎に家族旅行に行ったことがありました。小雨降る夏の夜換気のためにホテルの窓を開けていると、か細い何かの鳴き声が聞こえました。ここは4階だしまさかね?空耳だろうと思いこもうとしたのですが、断続的に聞こえる声が気になって仕方ありません。朝になってもかすかに聞こえたので、ホテルの庭に下りてその声の辺りを探ってみると、茂みの中に1~2ヵ月令ほどの仔猫が一匹潜んでいました。周囲には親や兄弟猫の姿も見当たらず、夕べからたった一匹で助けを求めていたようでした。どうしようかとホテルのスタッフに問い合わせても色よい返事はもらえず、仕方ないので旅行を中止して横浜に連れて帰ることにしました。子猫の生命力にかけて、空輸してきました。幸い健康状態もよく美しい子猫だったので、直ぐに貰い手が見つかりました。シンシア開院時に大変お世話になった建築士の方のお家が里親になってくださいました。それから10数年、本当に大切に可愛がっていただきましたが、先日闘病の末その子は亡くなりました。Sさんご家族には、言葉では言い表せられないほど感謝しております。本当にありがとうございました。