中国ドラマ 花の告発~煙雨に仇討つ九義人~ | 明日は明日の風が吹く  ~多発性筋炎の毎日~
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中国ドラマ 花の告発~煙雨に仇討つ九義人~

 

2023 全25話

原題 九義人

ウー・チェン(吳倩)

チャオ・ジェンユー(喬振宇)

フー・イーシュエン(胡意旋)

リー・ジャーハン(李佳航)

 

 

 

ドラマの構成が実に良くできてると思います。

 

発端の事件は7年前で復讐はその7年後の今。

時間が過去と現在を行き来するドラマは沢山有ります。

この過去と現在に往き来することが、わかりにくくなる

原因なのですが、このドラマは奇数話が過去、偶数話が

現在ときっちりと別れています。

 

 

それに併せて、現在話で新しくキャラが登場すると

次の過去回でその人物が過去にどういう関わりだったか

をきっちりと説明しています。

 

 

 

一言で言えば男がクズ。

 

 

しかしこのように連続というか、見境無しに女を襲うのは

"病気"と言うのは現代なら周知されてます。

ただし"病気だから"はやめてほしい。

よく性被害にかかわらず精神鑑定とか判断力がとか

言いますけど、凶悪犯罪者はみんな"病気"ではないですか?

まともならサイコな犯罪は起きないですよ。

病気だから、精神病んでるからと、それを理由に

許されてたら被害者は救われないです。

 

そもそも病気なんだから何を言っても通じないんですよ。

罪の意識なんてない。

常識も当てはまらない。

 

今回の犯人は連続なのも最低なら、それを隠す知恵が

普通じゃないのも見ていて呆れます。

被害者を追い詰めるその様がサイコパスそのもの。

 

 

そしてお決まりのセカンドレイプの問題。

現在でも問題視されるのに、女が軽く見られる時代

では話にならない。

役人の犯罪隠しも問題ですけど、役人が悪い

というのは古今東西お決まり。

 

見ていてそれ以上に辛いのは家族の対応です。

これ、見た人たちはどう思ったでしょうか。

これを読んでる人たちはこれから見るのかも知れませんけど、

環境や立場、時代、家族のことを一方的に酷いとか、

残酷だとか思いましたか?

もしも自分だったらは、もちろん被害者の女性たち

のことを置き換えるかも知れませんけど、もうひとつ……

もしも自分の家族がこんな目に遭ったら、

もしもこの時代だったら、どんな対応をしただろうと

考えてしまいました。

 

現代の正義感なら、訴えるべきだ!は正論です。

でも現代だって躊躇するし、それが昔だったらと

思うとこの家族たちのこともなんだか責められません。

親や兄妹はその殆どが、その立場で良かれと

思ってやっていることなんですよね。

でもそれは本人たちを傷つける行為だった。

被害に遭い、役所に見放され、家族にもわかって貰えない。

これは行き詰まって当たり前です。

 

見ていてもし自分が本人なら死ぬしか無いかも……

と色々考えてしまいました。

そしてそれが自分の娘だったら、妹だったらと

想像してみてください。

その時どんな言葉やどんな助けをあげられますか?

家族でも途方に暮れて何も出来ないかも知れないと

思ってしまいました。

 

 

犯人を憎むのは当たり前ですけど、犯人が死んでも、

牢に入っても、心の傷はそれとは別物ですよね。

自分が被害に遭ったら、自分の大切な家族や友人が

被害に遭ったら、自分はどんな言葉や態度を

あげられるんだろう……

と考えて虚しくなってしまいました。

 

被害に遭った主人公、藺如蘭@フー・イーシュエン

彼女は優しく、正しく、強く、何も悪くない。

どんなに酷い目に遭っても訴えることはやめないと

決めてるし、そんな辛い最中でも人を助ける。

傷ついた人に優しく、自分を信じて自分が正しいと

思っているから彼女を助けたいと思う人だって居る。

負けない彼女が方向転換をしたのは、やはり

正面突破では無理だと悟ってしまったからかも。

結果、彼女は自分の命をかけることにしてしまった。

 

 

そしてこのドラマの主人公、孟宛@ウー・チェン

彼女はそもそも最初から幸せではなかった。

死を選ぼうとしたその時に如蘭と出会い彼女に助けられた。

それからは何よりも彼女が大切な人になった。

 

 

彼女が被害に遭ってからも何とか助けたいと思ったのに。

彼女が死んでからは彼女の意志を継ぐことしか考えていない。

彼女は如蘭と同じく強く、そして周到に準備を進める。

頭が良く、リーダーシップもある彼女が迷いながらもクズ男を

追い詰めていくのを見ているこちらも同じように復讐心を

持って見るのがこのドラマ。

 

 

自分も名家の側室になり、奥様の世話をして見送り、

奥様の遺言で正室になった。

この辺りの詳細を描いていないのですが、奥様は

孟宛の復讐を聞いており協力してくれたようです。

夫の徐之暘は復讐のことは知らなかったものの、

孟宛の過去は聞いていたようです。

この徐之暘がいい人なんですよ。

 

 

彼にも妻の介護のために孟宛を娶ったという負い目が

あったのですが、誠実な人でした。

彼と幸せになってほしかったな。

 

離婚する必要があったのか・・・

すべて終わってから決めてもよかったのでは?

 

 

タイトルの九義人はその字の通りで、9人の義の人です。

孟宛と如蘭。

そして呉廉に復讐したい7人の仲間。

まずは仲間集め。

 

 

劉薪は元捕頭。

如蘭に呉廉を告発したいと言われて彼女から簪をもらった。

しかし一応は上司に言ったものの、知府は呉廉の仲間も同然。

聞き入れて貰えない。

のらりくらりとしてる間に如蘭が死んでしまう。

彼も口封じに足を折られて7年間牢に入れられる。

簪は彼の負い目になり、足の仕返しもしたい。

 

 

柳三娘も過去に呉廉に襲われ掛けたけど、世慣れてる

彼女は難を逃れた。

正義感の強かった彼女は7年前に如蘭の手助けをして証人になった。

しかし妓女の証言など信用できないと一笑に付され、大事に

してくれていた主人の元を離れたがその後、彼も呉廉に

陥れられていた。

そのことを知って再び復讐を誓う。

 

 

沈牧は7年前に新米の捕吏で如蘭に同情もし、正義感もあった。

しかし正義に訴えると仲間や知符の手先の上司にリンチされ

如蘭の死を迎えてしまう。

その後の彼は失望し職を辞め、戦に出て出世して、都で

皇城司になっていた。

心にはずっと不正と如蘭の死があった。

 

 

馮大は7年前にトラブルに遭い死にかけていたところを

如蘭に救われた。

彼女のことを恩人様と呼び、恩返しをと思っていたが彼女の

不遇の詳細は知らなかった。

7年後に孟宛と出会い、恩人様への恩返しの時と九義人になる。

 

 

 

黄嬌嬌は糸の商いをしていてその関係で呉廉のもとに

出入りしていた。

その時に重要な場面を目撃するのだけれど、彼女は商いの

ためにそのことを黙殺した。

そのことがずっと心に残っており、今では商売敵になった

呉廉を倒すために九義人に。

 

 

手癖が悪かった元書生の李春風は最初は劉薪に脅されて

仲間になったが、証拠を盗んできたときに自分の大事な

田小玲も犠牲者だったと知る。

彼女は今行方不明で李春風はずっと行方を捜していた。

 

 

田小玲は尼寺に籠もっていた。

復讐の説得になかなか応じなかったのだが……

最後に彼女が加わり証言者となる。

 

 

印象的だったのは三娘でしょうね。

彼女は強く、信念があり、矜持もあった。

袁家の主人に大事にされて幸せだったのに、証言者に

なったために彼のためを思ってそばを離れた。

それなのに彼は報復され犠牲になってしまった。

家を潰され精神を病んだ彼と再会したときの彼女の哀しみは

そのまま呉廉への強い復讐心になる。

仲間とぶつかるときも有りながら、命と引き換えても

復讐すると決意して本当に命を落としてしまう。

彼女の代名詞の孔雀の姿がもの悲しかったです。

 

袁家の主人と静かに暮らす道もあったのに、彼女は主人の

分も報復すると誓った。

思えば彼女は未遂だったし、最初は復讐の理由もなかった。

如蘭に出会い彼女の力になりたいと思ったことで

九義人へと繋がった。

正に義の人ですね。

 

 

みんなから憎悪を向けられても涼しい顔で悪事を重ねる呉廉。

14歳で家を出てから人を操ることはあっても操られたこと

はない、とか言っちゃってるわけ。

サイコな自分を自覚してるあたりタチが悪いよ本当に。

悪とか善とかをそもそも意識しない辺りが生来の

「悪」のような気がする。

こういう人間はもう矯正なんて出来ないと思う。

罪を自覚させるとが無理なのよ。

それが本人の快感なんだもの。

 

 

この本編は24話で終わりなんです。

25話はオマケというか、別物で、登場人物すべてが

幸せだったらこうなっていたというもしも話。

そんなの要らないとは思うんですけど、この世界では

みんな上手くいってます。

その代わりにみんな知らない同士、道ですれ違うことは

あっても交わることのない人生です。

みんな笑顔ですけど、九義人はただの他人でしかない。

言い換えれば、彼らは呉廉と言うクズ男が居なければ

知り合うことも無かったと言うことでしょうか。

 

 

 

このドラマはおそらく楽しむものではありません。

このドラマを見て感じて考えるのだと思います。

そう言うのもエンタメの意味だと思うのですよね。

 

 

ドラマのPRコメントに「痛快復讐劇」とかあるん

ですけど、ぜんぜん痛快じゃないですよ。

クズ男を最終的に追い込むのは24話だし、その間には

被害者は元より、九義人のメンバーも犠牲になっている。

クズ男呉廉が罪になろうと死人は帰ってこないし、

女たちの傷も元には戻らない。

スカッとするかと言ったら、そんなことはない。

 

 

23話の最後に孟宛が民衆に向かって問う言葉が

全てを語り、気持ちを代弁している。

その言葉を聞いて感じたことが見ている我々の

感想でもあると思う。

 

 

 

ウー・チェン