「壁越しの彼女」(2023)

 

KARAのハン・スンヨン主演のラブコメをU-NEXTで観ました。

 

 

監督はイ・ウチョル。予告編はコチラ

 

激安家賃のアパートに引っ越したばかりスンジン(イ・ジフン)は歌手デビューを目指していて、オーディション番組『ドリーム・アゲイン』の二次審査を控えている無職の31才。引越し初日の夜、どこからともなく聞こえてくる女性の泣き声にビビッて部屋を飛び出します。声の主は隣室に暮らす女性ラニ(ハン・スンヨン)。といっても、住んでいるのは別のアパートの一室。それぞれのアパートの壁が激薄で防音対策がなされていないため、音がダダ洩れ状態。部屋をアトリエにして引き籠って孤独にオブジェを作っているラニたまに姉が顔を出す程度で、なにかの薬をいつも飲んでいます。穏やかに暮らしたいラニは"隣人"が退去したくなるまで嫌がらせをしている性悪女でした。しかし、彼女の妨害工作に対抗心を燃やして騒音バトルで応戦するスンジン。手強い相手だと判断したラニは休戦協定を持ちかけます。好きに音を出していい時間帯を4時間交代制で割り振って生活することになった二人は、お互いに顔合わせもしないままで気遣いながらの日々が続きます。

 

スンジンの部屋にはまともな社会人となっている昔のバンド仲間がちょくちょく飲みに来ていて、ある夜、酔っ払いの醜態を夜通し聞かせてしまったことを謝るスンジン。うっすらと互いの日常を共有するうちに、ケンカ腰だったラニも寛容な態度になっていたため、大事には至らず。それどころか、スンジンがオーディション二次審査を突破するアドバイスを送ったり、元カノの結婚話を聞いてショボンとしているスンジンを励ましたり壁越し飲み会を開催したり、徐々に打ち解けていく二人。ラニの元職場でのトラブルを聞いたスンジンがラニに代わって仕返しをした頃にはさらに親しくなって、ベッドをくっつけてそれぞれの部屋にいながら趣向を凝らした仮想デートを重ねていきます。一度も会わない状態でもプラトニックな恋人同士になっていた二人でしたが、結婚話が破談になった元カノがスンジンの部屋にやって来たあたりで雲行きが怪しくなっていって・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「빈틈없는 사이」。"隙間のない関係"といった意味。2015年のフランスのラブコメ映画「ブラインド・デート」のリメイク作。オリジナルでは、クイズ作家をしている男性が住む部屋の隣にピアニストの女性が転居してくるという設定。本作では、隣の部屋に転居してきた歌手志望の無職男と衝突しながらも親密になっていくデザイナーという設定に変更されています。主演の片方はKARAのスンヨン。歌手スンヨンの固定ファンだけを集客できれば御の字という安直な代物じゃなく、なかなか丁寧な作りでした。頑固で信念を曲げないキャラはスンヨンのパブリックイメージに合っているかと思います。一方の相手役のイ・ジフンはソフトな顔立ちで、コミカルさもシリアスさも出せる魅力があり、カップリングとしてはいい感じ。この二人がずっと会わないままの状態が続くところがユニークで、どういうシチュエーションで顔を合わせるのかというのが見どころ。

 

ネタバレをすると・・・、スンジンの親友の一人が弁護士で、ラニが対立している前の職場の社長の契約案件を担当する弁護士事務所に働いていることがキッカケで、スンジンはラニの名前を知ることになります。弁護士の守秘義務を破ってカンタンに親友に情報を漏らしてしまう展開にはちょっとガッカリ。この弁護士の友達は、スンジンが社長を懲らしめるために下剤を飲ませてウンコを漏らさせるアホなお仕置きにも加担していて、もっと弁護士らしい知恵をスンジンに与えてあげてほしかったです。スンジンがお腹を下す場面もあるので、作り手が下痢好きなのかもしれません。で、いよいよご対面するクライマックスでは、それぞれの夢に対して決着をつけた後、愛に向かって走り出す二人は根拠ゼロでも目が合っただけ当人同士だと分かり合います。サブキャラたちもそこそこ効果的に機能していて、そこそこに爽やかなラブコメでございました。