翻訳者にとっての「日本語力」とは?
通訳翻訳ジャーナルのWinter号が出ました。今回は「日本語力」徹底強化
特集ということで読んでみると、こんなことが書いてありました。
「日本語力」は(外国語力、専門知識を含めた翻訳者の必須能力とされる)三つの中で一番ないがしろにされがちな能力ではないかと思います。
だからこそ、プロとして一番差が出やすい、言い換えれば差別化しやすいのは、この部分ではないでしょうか。
将来的には機械翻訳との差別化にもつながると思います。マシンの翻訳というのはせいぜい数文単位で行われた置き換えのつなぎ合わせです。原文の要旨や段落の要点、文の流れといったものに沿った訳にするには、文単位での翻訳力だけでなく、文章を自ら構成する力が求められます。
えっ、この人めっちゃいいこと言ってない?誰だろう??
あっ、僕か
でも(探すのが面倒なのでリンクはしませんが)十年前からここで同じことを言ってきたはずです。
日本語力が何よりも大事、というご意見もありました。これについては、ある意味反対、別の意味では賛成です。
英日翻訳にしても、英語レベルという面では翻訳者と遜色ない翻訳講座受講生でも、たとえば英字紙のコラムのようなハイレベルな読解力を要する文章になると、なかなか正確に解釈できません。解釈できなければ、日本語力がいくら高かろうが無駄です。たしかに現場の文書ではそれほど高い読解力を求められないというケースもあるでしょうが、そういう仕事は機械翻訳に浸食される可能性が高いはずです。
一方で、日本語力がないと英日翻訳で支障が出るだけでなく、英文を書くこともできません。日本語原文の読解力や根本的な文章力という問題もあるでしょうが、それ以前に、辞書や訳語集を正しく使えないからです。
たとえば「全社的に」という言葉は「全部署で」「全社員が」「一丸となって」など、文脈に応じていろんな意味をとり得るわけですが、多くの人は(プロを名乗る翻訳者さえ?)そんなことは考えず、ジーニアスが、あるいは英辞郎さんがそう言っているからというだけの理由で on a company-wide basis としてしまいます。
ん、これって日本語力の問題なのか?まあまあまあ。。
というわけで、そんな大事な日本語力を特集している通訳翻訳ジャーナル2022 Winter号をぜひごらんください。もっといいことをおっしゃっている方もいます。
ほかにも「日本語力訓練法」を1ページ担当しておりますのでぜひ!