クラミジアなどの感染でお腹の中に炎症を起こすと、抗生剤での治療が必要になったり、入院が必要になったりする事があります。


そういった状態を

PID: 骨盤内炎症性疾患

と呼ぶのですが、今回はそのPIDが卵巣癌のリスクはなるかどうかを検証したものを見ていきたいと思います。





この論文では、1999年〜2020年にかけて、スウェーデンで卵巣癌と診断された女性について、過去にPIDになったことがあるかどうかを検証しています。


対象

卵巣癌と診断された15,072人と、卵巣癌と診断されていない141,322人


結果

過去にPIDと診断されていた割合

・卵巣癌と診断された群: 1.1%(168人)

・卵巣癌と診断されていない群: 0.9%(1,270人)


卵巣癌を顕微鏡で詳しく調べた場合の組織型で比較すると、PIDによる卵巣癌のリスクは


・上皮性卵巣癌: 1.39倍

・漿液性癌: 1.46倍


と高くなっていました。2015年〜2020年のデータでは、


・高異型度漿液性癌: 1.43倍 


と高くなっていましたが、その他の類内膜癌、粘液性癌、明細胞癌といったタイプでは、リスクは変わりませんでした。


また、PIDの回数が多いほど、上皮性卵巣癌のリスクは高くなっていました。



以上のことから、PIDは卵巣癌のリスクになり得る、ということが言えそうです。



以前、卵巣癌を早期発見する検診というものがないことについてブログを書きました。








そのため、PIDで治療した事があったとしても、検診を受けましょう、とは言えないのですが、卵巣癌が見つかるきっかけとしては、お腹の張りや痛みがあるので、そういった症状がある場合には、一度は婦人科で相談するようにしてくださいね。