【執筆者】松尾 祐孝(CARS幹事/作曲家 / (特非)日本現代音楽協会理事)

 

 『音楽は木の文化の一部である!』と聞くと、皆さんは訝しく思われるでしょうか。実は、筆者はここ数年、音楽を木文化(木の文化)の重要な分野と位置づけた国際的な活動に関わっています。そして今年2025年、<EXPO 2025 大阪・関西万博>の開催にほぼ並行して、木の文化の国際フェスティバル《ワールド・ウッド・デー2025日本大会》を開催することになりました。私はその実行委員長を務めています。
 3月21日は「ワールド・ウッド・デー」 (World Wood Day) です。また同日は2012年12 月の国連決議された「国際森林デー」(International Day of Forests)でもあります。国際木文化学会(International Wood Culture Society / 在USA, CA州)は、2007年に創設された、木の文化の研究・教育・促進における非営利・非政府組織です。“木は良い(Wood is Good)”というコンセプトを紹介し、自然と人間が調和、共存することを促進していく活動を展開しています。そして2013年から、人々に木の文化を発見し体験するプラットフォームを提供するために、3月21日を中心とした会期で国際フェスティバルを開催しています。2013年から2019年まで、タンザニーア、中国、トルコ、ネパール、アメリカ、カンボジア、オーストリア等、世界を巡って毎年開催してきました。その初回となった2013年開催大会の成功を契機として、同年にワールド・ウッド・デー基金会(World Wood Day Foundation)も創設されました。
 そして、東京オリンピックが開催される予定であった2020年の3月に第8回ワールド・ウッド・デー東京大会を準備しましたが、開幕直前にCovid-19パンデミックが発生してしまい、已む無く開催中止を決断しました。その後2021年からはオンライン開催を行なっています。2023年に入った頃からコロナ禍の状況に落ち着きの見通しが出てきたため、大阪・関西万博2025の開催に合わせて、あらためて2025年内の開催を目指して日本大会の準備を始めることになりました。そしていよいよ、今年の開催が間近に迫ってきたという訳です。
 目下準備を進めている2025年の日本大会は、コロナ禍を経た上での開催ということで、従来一箇所の会場で短期間に集中して実施する“集中開催方式”に拘らず、概ね大阪・関西万博の会期に沿って、2025年のワールド・ウッド・デー(World Wood Day) 3月21日の前後から10月8日(十と八を組み合わせると木になるということで  “木の日”)の前後までを総合的な会期として、その中で、木に関係するさまざまな分野の催しの開催を、関係協力者・機関との連携・協力の基に分散して実施する“分散開催方式”を採ることにしました。海外各国からも日本国内からも多くの専門家や職人や芸術家が集まり、木材と持続可能な未来を促進する文化的なプレゼンテーションを多数展開するフェスティバルとなります。催しによっては、ご家族連れでもお楽しみいただける木の文化の祭典となります。
 《ワールド・ウッド・デー2025日本大会》の全体像や各分野の催しについては、本稿の文中や末尾に各種WEBサイトのURLを記載しておきますので、そちらのリンクからご確認ください。また、先行案内総合チラシの画像も掲載しておきますので、ご参照いただければと存じます。
参考までに音楽分野の主要イベントについて概要を記載しておきます。
 

《World Wood Day 2025 Opening Concert》                 

 2025年3月20日(木祝) 洗足学園 前田ホール 入場無料                                 (洗足学園音楽大学「邦楽 第15回定期演奏会」との連携開催)

 

《木の文化の音楽祭》2025年10月7日(火)〜 9日(木) 

EXPO 2025 大阪・開催万博 ポップアップステージ北 万博入場券でそのまま来場可


 筆者がこういった木文化の普及啓蒙活動に関わることになった切掛は、前述の2020年に予定していた《ワールド・ウッド・デー2020東京大会》の準備段階に遡ります。2019年夏に、縁あってその準備の途中から実行委員長をお引き受けしたことから始まりました。その時、IWCS国際木文化学会が展開して来られた活動の全容と、その中で音楽も重要な位置づけとなっていること知るところとなりました。確かに、音楽を奏でる楽器の大半は“木”や“竹”を材料としていますし、楽譜を記す紙もまた木や草の繊維質を原料としていますから、大きな意味で考えると“音楽も木の文化の分野の一つ”と認識できる訳です。また、その準備活動の中で一般社団法人日本木文化学会(JWCS)の設立もあり、私が代表理事を務めることになり、今日に至っています。
 ところで、国際的な見地から、日本が木の文化の大国と目されていることをご存知でしょうか。考えてみれば、国土の多くが森林に覆われていますし、木や竹を用いたさまざまな産業や美術・工芸も多岐にわたっています。宮大工の技術、神社仏閣等の木造建築の伝統、伝統工芸、浮世絵等の伝統木版画、邦楽器の数々、産業界における木材の新技術の開発、木の素晴らしさを活用した教育活動(木育)などなど、日本におけるさまざまな木文化に関係する伝統や教育や産業などの展開は、世界から熱い注目を集めているのです。そのため、2020年東京大会が開催直前に中止が決定となった直後から、『コロナ禍後の対面開催復活は是非とも日本での開催から再スタートをしたい!』という声が上がり、それが今回の2025年日本大会を決意する原動力になったことは否めません。日本に住む者として、木を含む自然に恵まれ、木文化が多様にしかも高水準に育まれている日本の環境を、あらためて見つめ直して自覚したいと考える次第です。
 更に申し上げるならば、木や竹や森林の保全や持続可能な活用は、地球環境の保全や人類全体の持続可能な社会の創出に直結しています。IWCS・JWCSの活動は、SDGsにも密接に関わっているのです。
 以上のような経緯をご理解いただいた上で、【World Wood Day 2025 Japan】にご注目をいただき、各種催しに足を運んでいただきますよう、本稿をもってご案内申し上げます。

 

参考WEBサイト:
ワールド・ウッド・デー2025 日本語サイト 

https://worldwoodday.jp/

 

World Wood Day 2025 Japan 英語サイト 

https://www.worldwoodday.org/2025/

 

《ワールド・ウッド・デー2025日本大会》チラシ1(2025年1月現在)画像

 

《ワールド・ウッド・デー2025日本大会》チラシ2(2025年1月現在)画像