アガサ・クリスティのエルキュール・ポワロが有名ですが、今回、その中でも屈指の名作と言われる「オリエント急行殺人事件」が映画になってまいりました。
原作は知らなくても「なんかオリエント急行は知ってるぞ!」「ポワロは知ってるぞ!」「アガサ・クリスティは分かるぞ!阿笠博士*1の元でしょ!?」といろんな話になると思いますが、今回はそんなオリエント急行殺人事件を見てきた感想を書いていきます。
ちなみに私は「そして誰もいなくなった」と「アクロイド殺し」が好きです。
取り敢えず言いたいのは悪いことは言わないからミステリーはネタバレ無しで見て欲しいので、見終わった人に読んでもらいたいなと思います。
オリエント急行の殺人
言わずともがなの名作ですね。
原作は1934年に発表された長編で、ポワロの作品としては8作目。
日本でのポワロ作品
日本ではつい数年前に三谷幸喜氏による「オリエント急行殺人事件」が実写でアレンジを加えて作られました。
野村萬斎をポアロの立ち位置にして、乗客に二宮和也氏や杏ちゃん等様々な人を選び作られた作品ですが、当時の思い出としては非常に三谷幸喜色が強いので好みはスッパアアアンと分断されることでしょう!野村萬斎氏の喋り方は最初のポアロの実写吹き替え版に併せてオマージュということでしたが当時の作品を見ていないので「喪黒福造みたいだな」と感じる人多数。どーん!ですね。
また、アニメにもポワロはなっており「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル 」という作品があります。NHKで放送されたアニメで、非常に個性が強い作品です。
里見浩太朗さんがポアロをやっていたり八千草薫さんが出ていたりと声優さんというよりも俳優さんな人たちがお仕事をされています。野島裕史さんが出ているのでその辺もチェックしてくれると嬉しい。
後折笠富美子さんが究極かわいい。芝居がかわいい。また、チョイスしている作品もABC殺人事件から短編まで結構幅広いので「よーし原作見てみるかあ」って気持ちにさせてくれる。
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海外での「ポワロ」作品
オリエント急行殺人事件は1974年に映画にすでになっています。
当時のこの作品を私は見ていませんが、すでに見ている人たち曰く「アルバート・フィニーいいよ」と聞かされています。当時の映画技術を持って、いかにして表現するかの様々な努力をして作られているのが分かるそうで……。なにそれみたい。
ショーン・コネリー出ていると聞いて更に気になっています。なにそれ気になる。
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さらに、ポワロとして「原作に一番近い!」と言わしめている俳優さんはデヴィッド・スーシェ氏。1989~2013もの長い間、ドラマシリーズ「名探偵ポワロ」でポワロを演じ続けてきた俳優さんです。
25年もの間ポワロを演じる中で彼はひたすら「自分という個性を捨て」て、ポワロになりきっており、そのことがロングインタビューからも窺えます。
作品における登場人物を「腹心の友」と呼び、ポワロらしかぬとなったときは断固として反対するというのは、本当にポワロをいかに「理解」するか、彼ならどんなことを考えるかというのを踏まえ続けていったからなのでしょうね。
ということであの、是非ともですね、「アクロイド殺し」を、全くのネタバレなしで見てもらいたい&読んでもらいたいです。
「あーそうくるー!ああああそうなのー!?」ってなれたことはとても私にとっては斬新だったし見て良かったなあと思えた作品でした。やはりミステリーはネタバレしないでみたほうがいいと思います。
映画版・オリエント急行殺人事件
今作では監督・主演はケネス・ブラナーが務めており、その配役も「うっわ見たことある人ばっかじゃん」ってなる人たちばっかり。
ケネス・ブラナーはこの作品を手がけるにあたり、ポアロのひげや細やかな部分について非常に掘り下げていることをインタビューで語っています。*2
確かにデヴィッド・スーシェのものとは全然違った。でもそれは私は別に良いかなと。だって個性だし、イラストっていうのはあくまでもイメージだから「彼が感じたポワロ」を作り上げていった形なのではないかと見ていて感じました。
ケネス・ブラナーといえばロックハート先生*3なんですけれど何が一番びっくりしたって「え!?あの人こんな雰囲気も出せるの?!」っていうこと。シェイクスピア作品に様々出演しており、興味津々。ヘンリー五世が非常に見てみたい。深みのある芝居がお上手な印象を受けました。
宣教師にペネロペ・クルス。パイレーツ・オブ・カリビアン生命の泉でジャックの元カノ役をしていましたね。「それでも恋するバルセロナ」等が挙げられるそうです。
ウィレム・デフォー、ジュディ・デンチ……と片っ端から「うっわこの作品のこの人か!」と調べてみると色々出てきて目からうろこ。
海外の俳優さんに詳しくなくても出演作を見て「あああああ…お世話になってます……」ってしか言えなくなりました。
そういえば吹替版だとジョニーデップの声はやっぱり平田広明さんでなんだろうこの安心感!!ってキャストを見たときに思いました。いや、字幕版で見たんですけれど(笑)
そんなそうそうたるメンバーの中に、スターウォーズの新作における主人公「レイ」を演じているデイジー・リドリーがいた事に驚きました。
同じ映画館で全く違うデイジー・リドリーが見られる幸せ。本当に彼女も芝居が上手というか、印象が全然イコールにならないお人ですね。
あらすじ
エルサレムで事件を解決した私立探偵のエルキュール・ポワロが乗車していたオリエント急行の車内で殺人事件が発生する。被害者はその前日にポワロに身辺警護を依頼してきた大富豪、エドワード・ラチェットであった。ラチェットは12カ所を刺されて死亡していた。ポワロが聞き込み調査を実施したところ、乗客乗員の全員にアリバイがあったことが判明する。
事件の捜査は暗礁に乗り上げたかと思われたが、ポワロは天性の直観と丹念な推理で事件の真相を暴き出していく。しかし、衝撃の真相を前にしてポワロは懊悩することになる。真実を優先すべきなのか、それとも、正義を優先すべきなのかと。やがて、彼はある決断を下すことになる。
感想
冒頭エルサレムのシーンが私はとても「エルキュール・ポワロ」という人間が面倒くさい、けれどどこかチャーミングで可愛らしい私立探偵ということを描写しているという意味で好きです。
それにしたって何にしたって映像がキレイなことこのうえない。え、何このセット超絶お金かかってるでしょって見てて思いました。
いわゆる密室の、車内で起きる殺人事件だからこそ若干の単調さがあり、ページ数のことも鑑みても「長い」って思われることは必至でその上で、殺人に至るまでを非常に長々と描いています。
他の方によるオリエント急行殺人事件を見ていないので何ともいえないのですが、一人ひとりに尋問して、話を聞いているところは非常に「おお…」ってなりましたし、正直ポワロの作品にあんまりアクションシーンがないため、ドンパチやる!とかそういう展開を期待している人にはあんまりおすすめできないですが、静寂の中で少しずつ波紋が広がって、違和感が少しずつ大きくなっていく姿は見ていて面白かったです。
アップになるたびにケネス・ブラナーのブルーの瞳が爛々と輝くさまが「キレイだなあ」とうっかり。
後BGMも邪魔をしない、ガチャガチャしたものではなく、聞き取りやすくスムーズに、それでいて雪の中で立ち往生するオリエント急行の空気感の張り詰めたものになっているのが印象的でした。
過去の殺人、今、そして彼らが抱えているものを一つ一つ吐露していくところは印象的でしたし、全員を集めての謎解きに関してはどこか宗教画みたいな形で(なんか見てたら最後の晩餐を思い出しました)とても私は好きだなと思いました。
いかんせん体感時間こそ長いですし、ミステリーを「どうやって楽しむか」によって印象は変わると思います。犯人を知っていたら「はいはいはいここでああいうこといってたのはねーそうだよねー」ってなるし逆に知らなくて殺人が起きた状態で、さて、どう推理しようってポワロが見つける証拠と一緒に考えていくのも楽しいと思います。
個人的に本当に「目の動きでものを語る」というシーンがそれぞれにあって、何気ないところなんだけれども、マダムとその従者の二人の視線でのやり取りがすごく良かったです。
見てきた。映像が真面目に綺麗すぎてふぁー…って変な声出た。ストーリーは言わずと知れているからこそどうやって作るのか、が難しい作品だと思うんだけどとても意識して作っているのがわかるものだった。目の動きがすごかった。 pic.twitter.com/48HvFCmuOd
— 甘夏@相当EXCITE→Life is beautiful (@amanatsu0312) 2018年1月1日
「気楽に映画見に行くか~」っていうよりもなんかぶあっつい、重厚感があるものを感じたいなっていうときにおすすめしたいなと思える作品でした。
次回作も検討中だっていうふうにインタビューで言っていたからちょっとうっかり自分の好きな作品やってくれたらいいな、なんてほのかな期待を寄せています(笑)