退屈な日々 / Der graue Alltag

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将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画鑑賞】『ドクトル・ジバゴ』(1965) / 歴史に翻弄された男の壮大な物語

近くのシネコンで映画『ドクトル・ジバゴ』(1965年、監督: デヴィッド・リーン)を鑑賞。「午前十時の映画祭」のプログラムの一本。原作はボリス・パステルナークの同名小説。

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第1次世界大戦からロシア革命にかけての歴史の荒波に翻弄された男・ユーリ・ジバゴ(オマー・シャリフ)の壮大な物語。大作監督として知られるデヴィッド・リーンの監督作品。本作も上映時間200分近い長尺作品であり、途中インターミッションがあった。長尺ながら登場人物は少ないし筋を追うのに苦労はない。

本作は基本的にベタなメロドラマ。ジバゴとラーラ・アンティポヴァ(ジュリー・クリスティ)の恋愛ドラマだが、どちらも既婚者でW不倫である。それでいいのか。モーリス・ジャールによる挿入曲「ラーラのテーマ」はつとに有名。映画を知らなくても、この曲は知っているのではないか。この楽曲だけで評価アップ。

本作最大の見どころは、ジュリー・クリスティの美貌もさることながら、壮大なロシアの景色だろう。とくにユーリ一家が列車でモスクワから辺境のベリキノの別荘に疎開するあたりの景観は素晴らしい。作品内容からソ連領内での撮影は許されず、スペインで撮影したとのこと。雪などはすべて作りものだというから驚くばかりだ。


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歴史的背景を考えると、本作は反共映画と捉えることもできる。たしかにソ連に生まれなくてよかったなと思わずにはいられない。ちなみに原作者のボリス・パステルナークは、ノーベル文学賞が決まるものの当局の圧力により受賞辞退に追い込まれている。あら、おそロシア


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この映画をひさしぶりに見たが、ベタなメロドラマに留まらない魅力はある。こうした大作は今後撮られることはないだろう。歴史的な古典的映画を大きなスクリーンで見る価値はある。