青山学院大学の研究最前線 | AGU NEWS
特集 1
Interview

青山学院大学の
研究最前線

研究力で注目を集める青山学院大学

理工学部の研究でも目覚ましい躍進を遂げる青山学院大学は、科学雑誌Newton(ニュートン)2021年5月号掲載の「理工系大学ランキング」で高い評価を獲得し、「有名企業400社就職率ランキング」と「「宇宙科学」研究力ランキング」の両部門においてMARCHの中で1位に輝きました。優秀な学生の育成と実用的研究をさらに進めるための施策や環境整備等について、学長補佐 産官学連携担当・黄晋二教授に聞きました。

理工学部 電気電子工学科 教授、学長補佐 産官学連携担当

黄 晋二

2000年、東京大学大学院工学系研究科 物理工学専攻 博士課程修了。東京大学 博士(工学)。東京大学助手、東北大学助手、奈良先端科学技術大学院大学准教授を経て、2013年、青山学院大学理工学部 電気電子工学科准教授に着任し、2018年から教授。ナノカーボンデバイス工学研究所長、総合プロジェクト研究所長、リエゾンセンター副センター長。専門は機能性材料の結晶成長、物性評価、デバイス応用。青山学院大学で本格的にグラフェン(炭素原子で構成されたシート状の材料)の結晶成長とデバイス応用に関する研究を開始し、現在、イリジウム上単結晶グラフェンの熱CVD成長、グラフェン透明アンテナ、グラフェンの電気化学デバイス等の研究開発に取り組んでいる。応用物理学会、電気化学会、ニューダイヤモンドフォーラム等の学会に所属。

柔軟な運用で研究を活性化する
総合プロジェクト研究所

2018年、当時副学長だった理工学部電気電子工学科の橋本修教授が中心となり、学長をトップとする統合研究機構が設立されました。その中に歴史ある総合研究所と両輪をなす形で新たに設置されたのが総合プロジェクト研究所(以下、総プロ研)です。橋本先生が所長の環境電磁工学研究所、私が所長のナノカーボンデバイス工学研究所も総プロ研に属しています。総合研究所が学内資金で運営されるのに対し、総プロ研は、中型、大型の外部資金を獲得した教員が、それぞれの研究内容に沿った名称を冠した外部資金プロジェクト研究所を設置できる制度であり、併せて予算的な支援も行っています。また総プロ研では学位が無くても実務業績での評価により、客員研究員、特別研究員としての任用を可能にし、外部の研究機関に所属する研究者をはじめ、幅広い人材が研究プロジェクトに参画できるよう設計されています。資金と人材の両面で自由度の高い柔軟な新体制を敷いた目的は、研究のさらなる活性化につきます。

全学を挙げての研究組織を構築

統合研究機構が創設された2018年度から各研究所の研究内容をはじめ、本学の研究活動全般を紹介する『AGU RESEARCH REPORT』というパンフレットを発行してきました。本学には世界トップレベルの研究を行っている教員も数多く在籍していますが、他の研究室がどのような研究をしているのか学内でも知ってもらい、何か新しい試みが生まれればという思いもこの冊子には込めています。私の研究所では、2014年から橋本先生の研究所と協力して複数の共同研究を行っており、最近そのうちの一つである「3層積層グラフェン透明アンテナにキャリアドーピングを施し高効率化に成功した研究」が海外の学術誌に掲載され、高い評価を受けました。グラフェンという極めて薄い炭素素材で透明アンテナを作製して高効率化に成功したのですが、この研究を進めた学生は今春、博士後期課程を修了し大手通信企業の研究職に就きました。彼の今後の活躍にも大いに期待しています。 特殊な炭素素材で作った
高効率の透明アンテナで
通信の未来を開く
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AGU RESEARCH REPORT 2019

産官学連携の橋渡し役を担う
リエゾンセンター

私は2018年から総プロ研所長として研究活性化を推進していますが、2017年から既にリエゾンプロジェクトという枠組みでも、教員リーダーとして産官学連携に取り組んできました。2017年に、リエゾンプロジェクト専属のURA(University Research Administrator)として馬場裕二氏を迎えてから「青学の研究を多くの方に知ってもらう」ために本学初となる「JST新技術説明会」の単独開催等の施策をいくつも行っています。産学連携イベント「Meet up in AGU」の実施や、地域の企業コンソーシアムである南西フォーラムと連携したイベント開催などにより、外部とのつながりを積極的に構築しています。また2018〜2019年度には国内最大規模の大学見本市とビジネスマッチングから成る展示会「イノベーション・ジャパン〜大学見本市&ビジネスマッチング〜」、2019年にはCPS(Cyber Physical Systems)・IoT(Internet of Things)分野の国際展示会「「CEATEC 2019」Co-Creation PARK」に出展し、大きな反響を得ました。

国際展示会「CEATEC 2019」 Co-Creation PARKにも出展

これら各種展示会にリエゾンプロジェクトの教員リーダーとして私自身がグラフェン透明アンテナ等の技術シーズを出展したところ、数十社から問い合わせをいただきました。実際に、いくつかの企業と共同研究を進めるに至り、大きな手応えを感じています。単年度プロジェクトであったリエゾンプロジェクトは、2019年に恒常的な組織リエゾンセンターとして統合研究機構内に設置されました。当センターを通し1人でも多くの教員の研究・技術を学外の方にも知っていただき、企業との共同研究のチャンスを増やしていきたいです。学長補佐としては総プロ研、リエゾンセンターの施策を引き続き推進し、新たなアイデアをもって本学の研究活動の活性化に貢献しようと考えています。

理工学部が取り組む
研究環境と学生支援策の充実

理工学部には、機器分析センター、先端技術研究開発センター(CAT)、先端情報技術研究センター(CAIR)、アイソトープ実験センター、機械工作室という5つを附置しており、それぞれ異なる役割を担い、研究活動を強力かつ効率的にサポートしています。例えば大型の分析器機などを集中管理している機器分析センターは各研究室が共用しており、私の研究室の学生たちもよく利用しています。これら研究環境の充実に加え、大学院進学者を増やす施策にも力を入れ、理工学部では博士前期(修士)課程への内部進学を上位50%から65%に増やしました。また優秀な学生が経済的事情から進学を諦めるというケースを減らすため、理工学研究科博士前期(修士)課程では、成績優秀者は授業料の全額もしくは半額を免除しています。博士後期課程では、「青山学院大学若手研究者育成奨学金」により授業料は実質全額免除となっています。

こうした仕組みのおかげで近年では大学院進学率が着実に上がっていますし、また理工学部の女子学生数も増加しています。特に女性の場合、出産、育児等に伴い仕事を離れ、その後の再就職が困難なこともありますが、専門性を獲得することで仕事への復帰もずっとスムーズになります。私の専門で言えば自動車は電気へ今後シフトしていきますし、通信はもとより医療、福祉など私たちの生活においてエレクトロニクスはもはや欠かせません。需要は確実にあり、今後さらに増えていくでしょう。男女問わず専門性を身に付け、高いレベルの研究に取り組むことで、人間性が磨かれ人として成長すること、そして修士、博士といった学位の取得は人生の大きな武器となります。さまざまな分野の専門性を習得できる本学理工学部で、新たなものを生み出す研究にぜひともチャレンジしてください。

先端技術研究開発センター(CAT)

大学院での研究活動等を支える制度

若手研究者育成奨学金

博士後期課程の標準修業年限、一貫制博士課程の3年次〜5年次(3年間)の授業料年額の全額を免除。
優秀で若い人材の学修支援を行う本学独自の給付奨学金で、本大学院の活性化と、高度な専門性と研究能力を備え社会に貢献する若手研究者の育成を目的としています。
入学時に満30歳未満で、本奨学金選考を通過した方が対象。

国際学会発表支援制度

支援金額・・・国内の学会参加:最大7万円、国外の学会参加:最大15万円
グローバル教育の支援、若手研究者育成を目的として、国内外で開催される国際学会で研究発表を行う大学院生に対し、発表経費(旅費を含む)の一部または、全額の支援を行います。

アーリーイーグル研究支援制度

<博士後期課程学生対象>*別途、助手、助教を対象とした支援制度もあり。
支援金額・・・25万円
若手研究者(博士後期課程学生)による独創的・先駆的な研究および、その創成に発展することが期待される研究を対象とします。
博士後期課程生として入学後、前期中に審査を行い、本学内で12件程度採択します。

院生助手制度

2020年度から博士後期課程や一貫制博士課程3年次以上の大学院生を「院生助手」として雇用する新制度を開始しました。本学の大学院生が本学の助手として雇用され、研究を優先しつつ、学部生の講義や実習、国際会議の運営など、高度な補佐業務を行う制度です。
助手として実務経験を積むことができる場を設けることおよび経済的支援を行うことにより、当該の大学院生が行う研究に専念できる研究環境を提供し、研究者としての能力向上の一助とすることを目的としています。

【奨学金制度・経済援助(在学生向け)】

*各制度の詳細は、ウェブサイトや募集要項等でご確認ください。