【農業weekレポート】人気製品のアップデートも! 圃場の見える化サービス4選
2022/11/06
2022年10月12日(水)~14日(金)、第12回農業weekが千葉県幕張メッセで開催された。ここでは、そんな農業Weekの展示物のなかから編集部の注目アイテムを紹介しよう。
農業Weekが開催
全国の新製品が集結
農業weekは、国際農業資材EXPO、国際スマート農業EXPO、国際6次産業化EXPO、国際畜産資材EXPOの4展で構成される展示会だ。同時に、国際ガーデンEXPOとツールジャパンも開催されており、農業関連としては日本最大級である。
12回目となる今回は、3日間で合計32,863名が来場した。前編となる本稿では、スマート農業サービスをピックアップして紹介する。
1. BASF・JA全農『xarvio® FIELD MANAGER(ザルビオ フィールドマネージャー)』
2. サグリ『デタバ』『サグリ』『アクタバ』
3. ソフトバンク『e-kakashi(イーカカシ)』
4. ウォーターセル『アグリノート』
AIを活用した栽培管理支援
圃場に合った管理を提案
最初にご紹介するのは、BASFとJA全農のコラボレーションにより提供されている、スマート農業を支えるツール『xarvio® FIELD MANAGER(ザルビオ フィールドマネージャー)』(以下『ザルビオ』)。2021年4月にリリースされた同サービスを大々的にPRしていた。
日本農業における農地集約は年々加速しており、大規模営農が増加している。ところが、圃場一筆の大きさは従来と変わらず小規模なまま分散しており、このような環境下でいかに効率的に圃場管理を行うか、が課題となっている。そこでJA全農とBASFが協業して、この課題の解決策として提供しているのが『ザルビオ』だ。
今一度『ザルビオ』を復習しておこう。それは人工知能(AI)を活用した栽培管理支援システムのこと。グローバルとしては2017年にサービスが開始されており、2022年の時点で世界18ヶ国・1400万ha以上の農地で活用されている。作物や品種、気象情報、人工衛星画像の解析データなどをAIが解析して、自分の圃場に合った最適な管理を提案してくれる。
こう書くと、『ザルビオ』が高機能であることは伝わるだろうが、「なんだか難しそうだ……」と感じないだろうか? 実際は、まったく逆なのだという。BASFジャパン ザルビオ デジタル農業ソリューション マネージャーの有松潤二さんが説明してくれた。
「スマート農業の初心者や中級者にこそ使ってほしいサービスなんですよ。確かに『ザルビオ』は多くの機能を搭載していますが、初心者の方にとっては【確認】を、中級者の方にとっては【判断】を、上級者の方の【作業】をスマート化できるのです」
初心者は、地力マップと生育マップを使いこなせば良い。地力マップは、過去15年分の衛星画像データから該当圃場の生育傾向をAIが分析して、圃場の地力を色分けして表示してくれる。これを元肥設計に活用しよう。生育マップは追肥設計に活用できる。日々更新される衛星データをもとに生育状態を濃淡で示してくれる。
ここで重要なのは、『ザルビオ』は衛星画像の購入やドローンを飛ばして画像を分析する、といった必要がない点だ。圃場や作物といった簡単な基本情報を登録すれば、PCやスマホで簡単に地力マップと生育マップを見ることができる。
中級者ならば病害リスク予測・防除推奨アラート・施肥推奨アラートなど『ザルビオ』が提供する情報を活用して防除や施肥の作業の判断をすることができる。上級者であれば、マップのデータを可変施肥機や農薬散布機に落とし込み、精密施肥・散布が可能。中級者・上級者にとっては、より使い応えがあるサービスである。
「世界的に高く評価されているサービスの日本版ですから、とにかく使ってみて良さを体感して欲しいです!」とは有松さんは力を込めて語ってくれた。
今なら、2圃場で全ての機能を試せる無料プランを用意しているほか、月額1,100円で100圃場まですべての機能を使うことができる。スマート農業の入り口として、特に将来的な本格的な使用を視野に入れている方には是非、導入を検討していただきたい。
DATA
農地パトロールを軽労化
衛星データで農業を変える
続いてご紹介するのは、兵庫県丹波市を本拠地とするサグリ。衛星データ×AI×区画(ポリゴン)技術を活用した3つのサービスを提供する。
一つ目は『デタバ』。想定ユーザーは地域再生協議会である。ご存知のとおり、作付調査には膨大な時間と労力がかかる。これを軽労化するサービスだ。二つ目が社名と同じサービスである『サグリ』。生育状況の確認と土壌分析ができる。
注目したいのは三つ目は『アクタバ』。膨大な時間と労力がかかる農地パトロールを圧倒的に軽労化できる。農業委員会を想定ユーザーとしており、パトロールだけでなく、調査後のデータ管理をアプリで完了できる。
ご存知の通り、農業従事者の減少と高齢化が同時進行しており、耕作放棄地は増え続けている。『アクタバ』はターゲットを明確に農業委員会に絞り、その業務負荷を低減させることを狙っている。
サグリによると、今後10年で発生し得る農地集約化の面積ポテンシャルは、なんと東京都1個分にもなるという。耕作放棄地管理のスマート化を実現したい地方自治体の方にとって、嬉しいサービスではないだろうか?
DATA
栽培の役に立つ収穫適期や
病害虫の発生リスクなどを通知
ソフトバンクが展示していたのは、「儲かる」を支援する農業AIブレーン『e-kakashi(イーカカシ)』だ。『e-kakashi』とは、電源不要・独立駆動型で設置できるセンサーとAI技術を駆使したシステム。だから水田以外にも、露地や施設(ハウス)にも設置できる。計測されたデータは、データそのものだけでなく、栽培に役立つ形で分析され、農業生産者にフィードバックされる。
「栽培に役立つ形」というのは、収穫適期や病害虫の発生リスクなどの通知を意味し、『e-kakashi』は栽培の判断を手伝ってくれるのである。
『e-kakashi』は2015年にサービス提供が開始され、2021年10月に機能拡充&リニューアルを受けた。このリニューアル時に、端末にソーラーパネルとニッケル水素電池を搭載し、外部電源への接続が不要な完全独立駆動式に刷新された。
コロナ禍も一息ついた今回の展示では、この機能拡充による効果=どこにでも設置できる=水稲・露地・施設に対応する、という点を明確に打ち出していた。ゲートウェイは、デジタルとアナログ、それぞれ2ポートずつ装備しており、最大4種類のセンサーを接続可能だ。
今回の展示の特徴は、水稲・露地・施設、それぞれの成功事例=儲かった実例が明確に打ち出されていたこと。例えば、北海道でトウモロコシ、レタス、キャベツを栽培している黒田牧場では、『e-kakashi』のデータを活用することで収穫量は1.3倍となり、初年度で初期投資を回収した、と紹介されていた。他にも、収量1.6倍、反収80万円に向上した例、今年度導入した個人農家で100万円以上の増収を達成し初年度で投資を回収した事例も紹介されていた。『e-kakashi』は確かに「儲かる農業」をサポートしているようだ。
ご興味を持たれた方は是非、ご確認いただきたい。
DATA
スマホ入力から自動入力へ
アップデートした営農支援サービス
カエルのロゴマークでお馴染みの『アグリノート』は、作業内容を可視化して効率化につなげる、営農支援サービスだ。航空写真をベースに圃場マップを作成しておき、作業者が作業を入力することで、作業進捗の確認・作業記録・生育記録・収穫記録・出荷記録などが、圃場マップ上で分かりやすく確認できる。農薬や肥料、その他の資材の使用量と単価も入力できるから、これらデータと出荷記録とを組み合わせて、圃場や作付ごとに収支バランスを見ることもできる。
そんな『アグリノート』はサービス提供開始から10周年を迎え、さらに進化するようだ。お話してくれたのはサービスを開発・提供しているウォーターセルの執行役員でありサービスデザイン部長の金子雄一さんだ。
「『アグリノート』のサービスを開始した当時は、『スマホで入力できるから便利』という感覚でしたが、時代はさらに進みましたよね。もはや入力すら面倒……という時代です。そこで開発したのが自動記録機能です。そもそも作業者が何処にいるのかは端末を持っていればGPSでわかるわけです。そこに目をつけて、『誰が・いつ・どこで作業をしたのか』を自動で記録できるようにした機能です」
これはサービス利用者にとって嬉しい機能に違いない。『アグリノート』の進化はまだまだ続いている。