「前向きな農家」での研修が原点
岩城さんは1949年生まれ。非農家出身だが農業を志して帯広畜産大学に進み、いったんジャスコ(現イオン)に就職。7年ほど勤めて脱サラし、1980年に新規就農して養豚農家になった。子豚を肥育農家に提供する繁殖養豚からのスタートだった。
その後、営農の形はさまざまに変わった。子豚の相場が落ちると繁殖から肥育まで手がける一貫経営に乗り出し、豚肉の価格が下がると和牛の繁殖経営にも着手。その後、和牛は約20年前に、養豚も体力的に負担が大きいので2年ほど前にやめ、いまは50代半ばで始めたアスパラに絞って栽培している。
現在75歳。目標は10年先まで続けること。もし可能なら、90歳までやろうと考えている。これまでハードルに直面する度に作戦を考えて乗り越えてきた。いまの課題はアスパラを連作したことによる生育の悪化。そこでハウスの中に新しい土を盛り、苗を植え替えようと考えている。
何がその原動力になっているのだろうか。そうたずねると、「大学時代の経験が大きい」という答えが返ってきた。夏休みなどに研修の一環として広島や秋田、栃木など各地の畜産農家を訪ね、働かせてもらっていたのだ。
研修先は農業紙を読み、「成功している農家」(岩城さん)をピックアップした。そこで畜産の技術を学んだが、より重要なのは出会った農家が「前向きな人ばかりだった」ことだ。岩城さん自身ポジティブな性格だが、彼らと接することで大きな刺激を受けた。このときの経験が活力の源という。
新規就農者の組織を立ち上げ
岩城さんの営農で一貫しているのは、常に挑戦心を失わないという点だ。その思いは、新たに農業を始めようとする人を応援する取り組みにもつながった。2011年に「新規就農者ネットワーク糸島」を立ち上げた。