ストチュウ(ストチュー)とは
酢や焼酎など、虫が苦手な材料をまぜて作った害虫忌避剤が「ストチュウ(ストチュー)」です。化学的なものを使わないため、自然栽培にも向いています。酢、焼酎、木酢液のほかに虫が嫌がるトウガラシやニンニクなどを加えるのも効果的です。
ストチュウの使い方と期待できる効果
害虫が嫌う酢やアルコールを使うストチュウは害虫予防が期待できます。また、木を炭化する際に出る煙を冷却・蒸留して作られる「木酢液」には病原菌の増殖を防ぐ殺菌作用があり、含まれる有機成分によって作物の生育促進も期待できます。
しかし、ストチュウで害虫を完全に防げるわけではないので、日々の観察が大切です。
ストチュウのメリットとデメリット
ストチュウの一番のメリットは、スーパーや100円ショップなどで手に入る身近な素材で簡単に作れること。そして水で300倍ほどに希釈して使うので、低コストで作れるのも魅力です。
一方で、農薬や殺虫剤と比べると効果は低く、持続性もあまりないため、こまめに散布する必要があります。
ストチュウを使うときの注意点
ストチュウには害虫を遠ざける効果がありますが、殺虫効果はありません。そのため、すでに害虫被害が起きている場合には農薬などの散布が必要です。また、ストチュウを使いすぎると害虫だけでなく、害虫の天敵となる益虫も追い払ってしまうので注意が必要です。また、酢も焼酎も木酢液もにおいが強く刺激もあるため、散布の際に服や体につかないよう配慮が必要です。目や口に入ってしまった時は、速やかに水で洗い流しましょう。
ストチュウを作ってみた
今回は、実際にストチュウを作って、筆者がベランダ菜園で育てている作物に使ってみました。手順を解説するとともに、注意点もお伝えしていきます。
これまで使っていた薬剤
ネギやバジルなどの葉物野菜をベランダで育てている筆者。直接口に入る食材のため、できるだけ農薬は使わないようにしています。
しかしアブラムシやハダニなどに悩まされることもあるため、必要に応じて食品原料99.9%でできた殺虫殺菌剤を使うこともありました。
まずは材料をそろえる
お酢はスーパーで購入し、焼酎の代わりに自宅に眠っていたウォッカを使うことに。ウォッカも焼酎と同じ蒸留酒なので問題なく使えると判断しました。梅酒などに使うホワイトリカーでも代用できるそうです。木酢液は100円ショップで購入し、トウガラシの代わりに冷蔵庫にあったタバスコを使いました。
原液を保管しておくため、500mlのペットボトルも用意しました。
材料を混ぜ合わせる
酢、アルコール、木酢液を同量ずつ混ぜ合わせます。今回はそれぞれ100mlずつ入れました。
ストチュウ原液は常温保存が可能です。アルコールが飛ばないよう、ペットボトルのキャップはしっかり閉めて保管してください。
水で300倍に希釈する
ストチュウ原液を水で300倍に希釈して、ストチュウ水をつくります。スプレーボトルに300mlの水を入れたので、ストチュウ原液は1ml。計量には100円ショップで購入したスポイトを使いました。
ちなみにペットボトルのキャップ容量が7mlほどなので、2Lの水で希釈する場合はキャップ1杯弱のストチュウ原液を入れれば簡単に計量できます。
ストチュウ水をベランダのネギやバジル、レモンに噴霧しました。ハダニは葉の裏側に潜んでいることが多いので、裏にもしっかりと吹きつけましょう。
ストチュウの希釈濃度は100倍〜500倍ほどが一般的。作物の状態をよく観察して適切な濃度や頻度を考えます。
アレンジ版ストチュウの作り方
ストチュウは目的に合わせてさまざまなアレンジが行えます。ここでは、アレンジによく使われる3種の材料とその効果を紹介します。それぞれ原液を作って、水で希釈して使用します。
卵の殻を入れる
卵の殻に含まれるカルシウムがトマトの尻腐れ病や葉先枯れ、夏野菜の病気などを防いでくれます。卵の殻を細かく砕いて醸造酢に加えるだけで完成します。
苦土石灰を使う
苦土は「マグネシウム」石灰は「カルシウム」です。苦土石灰を散布することでマグネシウム欠乏を予防できます。
150mlほどの醸造酢に大さじ1杯の苦土石灰を加えます。散布するときは上澄み液を使ってください。
カキ殻石灰を使う
カキ殻にもマグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれているため、苦土石灰の上位版のようなイメージで使うことができます。150mlの醸造酢に1杯のカキ殻石灰を加えます。こちらも上澄み液を使って散布します。
ストチュウで予防できる主な害虫
ストチュウで予防できる5種の害虫をご紹介します。
どれも家庭菜園やベランダ菜園での被害が起きやすい害虫ですので、その忌避効果を一度試してみてください。
アブラムシ
小形のものは1~2mm、大形でも3mmほどの黄緑色をした害虫で、作物の茎や葉にびっしりついて汁を吸います。排泄(せつ)物がすす病を誘発させて葉や枝が真っ黒になって美観を損ねるほか、葉っぱを縮れさせるなどの被害を与えたりウイルス病を媒介したりすることもあります。
ハダニ
梅雨明けから夏に被害が多発するクモの仲間の害虫です。葉裏に寄生して汁を吸い、作物が黄色や白っぽくなって元気がなくなります。ハダニは水に弱いため、定期的に葉裏に散水するのが効果的。ストチュウ水を葉裏にもしっかり噴霧してください。
アオムシ
うねうね動く緑色のイモムシ。モンシロチョウの幼虫です。キャベツやハクサイ、カリフラワーなどのアブラナ科の植物が大好物で、移動しながら葉にたくさんの穴を開けます。特に5月から6月に多く、夏には一度減りますが秋に再び発生します。
カメムシ
種類が多く、色、形、大きさ、模様もさまざま。多くの夏野菜につく害虫として知られています。近年、各地で大発生してニュースにも取り上げられています。カメムシは作物の果実部分を好んで吸うため、若い果実を吸汁されると変形や落下の原因となります。
ヨトウムシ
ヨトウガの幼虫です。食欲が旺盛ですが昼間は株元に潜んで見つけにくく、夜に活動して被害をもたらすため「夜盗虫」と呼ばれています。キャベツ・ダイコン・ナス・ネギ・キクなど、非常に多くの野菜や花で発生する害虫です。
安心な食卓のために、安全な材料で害虫対策を
ホームセンターやドラッグストアで手に入る農薬や殺虫剤は効きがよく、効果も実感しやすいと思います。その一方で残留農薬が心配だったり、「⚪︎回まで使用可」「収穫前日まで使用可」といった注意事項を見落としがちだったりします。
その点、酢や焼酎、トウガラシなどの身近な素材で作れるストチュウは安心して使うことができます。害虫の駆除はできませんが予防には効果が期待でき、作物を元気にする効果も期待できます。ぜひ家庭菜園にご活用ください!