きっかけはSNSで見つけた牛の放牧風景。多品目経営ならではの農業体験が魅力
京都府北部の与謝野町は、百人一首で有名な大江山をはじめとする山並みに囲まれ、古くから農業が盛んな地域。近年ではこの地で育てたホップを使用したクラフトビール『ASOBI』の販売や、おからや魚のアラなど100%有機質肥料で作り上げた特別栽培米の『京の豆っこ米』など、新しい商品開発にも積極的に取り組んでいます。
リンゴの共同管理を目的に生まれた組合が発端の(有)あっぷるふぁーむは、与謝野町で水稲を中心に、麦や大豆、ホップ、トマト、キュウリ、根菜等の野菜、リンゴやモモ等の果樹、更には黒毛和牛の繁殖も行っており、現在は約20名の従業員が働いています。
山本さんは、「一つひとつの規模は小さいものの、扱う品目が多いため、一年を通してさまざまな仕事が発生するので、安定した雇用環境を作ることができます。今は米や野菜作り、和牛繁殖の他にも2頭いる馬を使って乗馬やホースセラピーなどの事業も準備しています。京地鶏の養鶏も始める予定なので、自分たちで鶏小屋作りにも取り組んでいます。当社へ農業インターンに来ていただく方には、いろんなことを体験してもらえると思います」と、穏やかに話します。
そんな同社をSNSで見つけ、未経験の農業の世界に飛び込んだのが永島さんです。自由に放牧されている牛の写真に惹かれ、ここでの農業インターンに参加してみたいと思ったそうです。
米も野菜も果樹も牛も。「ここなら自分のやりたいことを見つけられそう!」
工場や飲食店など、さまざまな仕事にチャレンジした永島さんですが、昔から畜産には関心があったといいます。
「祖母の家が京丹後市にあり、その近くにあった観光牧場によく連れていってもらいました。昔から牛が大好きで、農業高校への進学も考えたくらいです。バスケットボールをやっていたので、高校は別の道に進み、農業とはかけ離れた業界に就職しましたが、家族の病気がきっかけで自分が本当にやりたい仕事は何なのかを考えるようになり、改めて畜産の道に進みたいと考えるようになりました」
あっぷるふぁーむでは6頭の牛を飼っており、自由に放牧されてのびのびと育てられている点や、畜産以外のさまざまな農作業を体験できる点が農業インターンに参加した決め手だったと話します。2022年4月から約3カ月のインターン期間中には、ハウスで育てたイネの苗を運んだり、ホップ作りや農地の草刈り作業、野菜の収穫や出荷作業を手伝ったりと、幅広い作業に携わりました。
「農業は未経験で、何も分からない状態だったので、毎日が新鮮でしたね。先輩について教えてもらいながら少しずつ作業を覚えていきましたが、日々新しい発見があって楽しかったですよ。農業インターン中は給料が出ましたし、住むところも準備されているので、原付バイクで布団を背負ってきただけです(笑)。足りないものも揃えてもらえたので、何も考えずにチャレンジできました」と屈託なく笑います。
若い人の意見や最新の農業技術を取り入れながら、あっぷるふぁーむをアップデート
農業インターンを経験し、本格的に畜産がやりたいと考えるようになった永島さんは、近隣の大きな畜産農家を紹介してもらい、一度外で学んでから同社に戻ってくる約束をしました。しかし、2カ月ほどそこで働いた頃、あっぷるふぁーむで馬の事業を本格的に取り組むことが決まり、牛と馬の世話をする畜産部門の担当者として戻ってくることになりました。
「本当はもっと長期間学んでから戻るはずだったのですが(苦笑)、せっかくのタイミングだったので2023年1月に入社しました。やはり、さまざまな農作業の経験が積めるのと、会社の温かい雰囲気が気に入っています。牛の家畜人工授精師の資格を取ることが目下の目標で、馬の営業許可をもらったら、地域の子どもたちが馬と触れ合えるイベントなどを企画していきたいですね。将来的にはコンバインやトラクターなどの農業機械を誰よりも上手く扱えるようになりたいですし、あっぷるふぁーむを盛り上げ、人が集まる場所にしていきたいですね」と、今後の抱負を語ってくれました。
山本さんからは「当社はラジコン草刈機やドローンなど、スマート農業で効率化を図りつつ、土や動物と触れ合う泥臭い部分とのバランスを大切にしています。若い人の意見もどんどん取り入れ、多品目でますます頑張っていきたいと考えているので、SNSや農業インターンなど、どんなきっかけでもいいので、与謝野町のあっぷるふぁーむを知ってもらいたいですね。熱意があり、いろんな農作業をやってみたいと考えている方は大歓迎!」と温かいメッセージをもらいました。
与謝野町は地域活動も活発で移住環境はバッチリ!
新しい取り組みにもアグレッシブな与謝野町。町長も40代でバイタリティがあり、さまざまな動きが早いといいます。地域のイベントも盛んだということで、永島さんもすぐに知り合いができ、町に溶け込めたそうです。
『京都・農と暮らしのインターン』の制度を利用すれば、お試し住宅等の滞在施設付きで月3万円の住宅支援金も支給されます。興味はあるけど…と悩んでいる方は、海や山がそばにあり、移住者も住みやすい京都府の与謝野町での開放的な暮らしと農業に、まずはチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
<取材協力>
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