環境保全型農業に対応した天敵農薬「カメノコS」とは?
サステナブルな製品ニーズの高まりに伴い、環境保全型農業に対応した天敵農薬の開発・製造・販売に力を入れている住化テクノサービス。天敵農薬とは、自然界にもとから存在する害虫の天敵を大量増殖して製品化したものです。
2014年に農薬登録した『カメノコS』は、アブラムシの天敵であるヒメカメノコテントウを有効成分とする製剤。
高知県では生産者自らが土着天敵を採取し、アブラムシの防除に利用している事例がありました。しかし採取には多くの手間がかかり、特に冬場は採集しにくくなる問題があります。「安定して入手できるように商品化して欲しい」という声に応えて誕生したのが『カメノコS』です。
現在、日本で販売されている天敵農薬の多くは海外からの輸入製品ですが、住化テクノサービスは在来種天敵を日本国内で製造しています。『カメノコS』は多種のアブラムシを捕食するので、圃場で発生したアブラムシの種類に関わらず使えるメリットがあります。
幅広い種類のアブラムシを捕食してくれるヒメカメノコテントウ
鹿児島県志布志でピーマンのハウス栽培をしている下前さん。39歳で農業の道に進み、IPM研究班員としてJAそお鹿児島や県の指導機関、農研機構と連携しながら天敵利用の技術開発に取り組んできました。
最優先で防除しなくてはいけないコナジラミとアザミウマの天敵防除に成功した後、アブラムシも天敵防除したいと考えるようになったそうです。
アブラムシの天敵昆虫は大きく分けて2種類あります。1つはコレマンアブラバチやギフアブラバチなどの「寄生蜂」。もう1つはテントウムシやヒラタアブなどの「捕食性天敵」で、『カメノコS』はこちらに該当します。
「寄生蜂」はアブラムシの体内に卵を産み付けて、幼虫が寄主であるアブラムシを食べながら発育して殺し、「捕食性天敵」はアブラムシを捕食すると教えてくれたのは、住化テクノサービスの巽さん。
ヒメカメノコテントウは寒いのが苦手で、アブラバチは逆に寒いのが得意。両方使うとうまく機能するようになりましたね。
バンカー法による生物的防除の仕組み
下前さんはバンカー法という使い方でアブラムシを防除しています。バンカー法では、ピーマンを食害しない種類のヒエノアブラムシと、その寄生植物であるソルゴーをあえてハウス内に導入。天敵であるヒメカメノコテントウを放飼して、1つの生態系を作り出します。
10月下旬頃にヒエノアブラムシが付いたソルゴーを抜いて、ハウス内に植えておくんです。また、ハウス内にソルゴーの種を撒いておき、12月頃にソルゴーが生えるようにしておきます。
すると、新しく生えたソルゴーにもヒエノアブラムシが付いて、ハウス全体に増殖。もちろん、ヒエノアブラムシはピーマンを食害しないので作物に害はありません。
ハウス外から侵入してくる、食害痕を残すようなジャガイモヒゲナガアブラムシもひとたまりもなくなりますよ。『カメノコS』 を導入してから、ジャガイモヒゲナガアブラムシのコロニーも見なくなりました。
『カメノコS』の導入で大幅な省力化に成功
ハウス内で天敵が活躍する仕組みを確立し、あとは天敵にお任せ。『カメノコS』の導入で農薬散布の重労働から解放され、作業も大幅に省力化されたようです。
ピーマンが生長してくると、ハウス内でまんべんなく薬液を枝葉に付着させるのは難しく、より神経を使う作業に。『カメノコS』はさっと撒くだけで、ヒメカメノコテントウがアブラムシを見つけて捕食してくれる上、卵を産んで増えていくため、長期間安定して防除できます。
技術は使いこなした人のもの
天敵の利用技術は、開発よりも普及が難しいと考える下前さん。自身で「大隅半島土着天敵活用の手引き」を作成し、必要な人に無償で配って周知に努めています。
「技術は多ければ多いほど選択肢が増えていいと思う」と語るのは、農協指導員の徳留さん。
だからこそ早い段階、手に負えなくなる前段階で天敵農薬の使い方、技術を普及していきたいですね。
『カメノコS』 を導入してみませんか?
農林水産省は2021年5月に「みどりの食料システム戦略」という長期的なビジョンを策定しました。SDGsや環境保全の動きが加速する中で、持続可能な食料システムを構築することが急務となっています。
そんな中、ハウス内にひとつの生態系を作り出して、天敵の力で生物的防除をするバンカー法は、これから増々注目されるでしょう。ハウス内の害虫対策に殺虫剤以外の選択肢を持つことは、リスク対策につながるだけでなく、大幅な省力化も期待できます。
これを機に『カメノコS』を使ったバンカー法を試してみてはいかがでしょうか?
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