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益虫とは? 害虫との違いや代表的な種類を紹介

益虫とは? 害虫との違いや代表的な種類を紹介

虫は、その見た目や動きなどから苦手という人が多いでしょう。家の中や畑で見かけたら、すぐに殺虫剤などで駆除してしまいがちです。しかし、虫の中には、害虫を退治してくれる「益虫」と言われる虫も存在します。益虫は、さまざまな形で人間に恩恵を与えてくれています。もし益虫を退治すると、かえって他の虫を増やす結果を招く可能性があります。
本記事では、人の役に立つ「益虫」と、駆除すべき「害虫」に関する基礎知識を解説します。

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益虫(えきちゅう)とは? 意味や主な役割など

益虫とは、人間の生活に役立つ虫のことです。農業に限らず、さまざまな業界や日常生活などでよく使われる害虫と対をなす言葉で、人になんらかの利益をもたらす虫を益虫、害のある虫を害虫と呼んでいます。

益虫の働きはさまざまです。害虫を食べるクモやカマキリのほか、植物の受粉やはちみつの生産をするミツバチや、絹糸を作るカイコなど、人の資源に利益をもたらす虫もいます。

益虫のどういうところが人間の役に立つかは、虫の特性・習性はもちろん、人間の立場や業界などによっても変わってきます。まずは益虫の働き方の具体例を見ていきましょう。

害虫の捕食

害虫を捕食する虫は益虫とされます。人間にとって好ましくない害虫を食べてくれるので、結果的に人間の利益となる働きをしてくれます。

この例としてよく知られているのがクモでしょう。クモは粘着性の高い巣を網の目状に張り、人間にとって厄介な存在であるカやハエなどを捕食します。

農業においては、益虫が植物に被害をもたらす虫を食べてくれると、食害や病気といった被害が少なくなったり、害虫に使用する殺虫剤の使用量を減らすのに役立ったりします。「生物農薬」「天敵製剤」という分類で、製品として販売されているものもあります。

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植物の受粉

植物の受粉にも虫の働きが役立っています。
植物は受粉によって果実をなし、種をつけますが、植物は自ら動くことができないため、何かに花粉を運んでもらわなければなりません。ミツバチやチョウなど、植物の蜜に集まる虫は、花粉を媒介してくれるのです。

特にミツバチは、植物への悪影響がなく飼育もしやすいことから、受粉のために養蜂家が農家にレンタルすることもあります。

食材や素材の生産

虫の作る物質が、そのまま人間にとっての経済的な資源となる例があります。代表的なものが、ミツバチによるはちみつと、カイコによる絹糸です。

ミツバチもカイコも、昔から人間が飼い、共に生きてきた生き物です。カイコに至っては、ガの一種を数千年かけて家畜化した生き物であり、人が世話をしなければ生きられず、野生には存在しない虫です。

フンや死骸の分解

虫の中には、動物のフンや生物の死骸、枯れた植物などを分解する働きをするものがいます。

有機物を分解する機能を持つものでは微生物がよく知られています。しかし、微生物の分解能力には限度があり、大型動物のフンや死骸などは、大きすぎて分解するまでに時間がかかってしまいます。そこで、フンや死骸などを食べて細かくする虫の存在が必要となります。

そういった観点から、ハエやゴキブリなど、動物性の有機物に群がり分解する生き物も、一種の益虫として考えられることがあります。

益虫と害虫の違いとは?

益虫は人の生活に役立つもの、害虫は被害を及ぼすものとして認識されています。

しかし、益虫か害虫かは、それを判断する人の立場や場面で変わるものであり、虫の存在自体が益または害の性質を持っているわけではありません。
ある場面では益虫とされている虫も、場面や見方を変えた時に害虫とされることもあるのです。

害虫といっても種類はさまざま

害虫と一言で言っても、その種類は数えきれないほどいます。どのような場面で虫が害虫とされるのか、その分類の仕方の一例を紹介します。

農業害虫

農業害虫とは、農作物について食害をもたらす虫や、菌やウイルスなどを媒介して病気をもたらす虫を指します。植物の病気には菌やウイルスなどの感染性によるものが多く、その対策として殺虫剤などの農薬が使われます。

(例)
・バッタ
・イナゴ
・カメムシ
・アザミウマ
・ウンカ
・アブラムシ
・ハスモンヨトウ
・ハダニ など

貯穀害虫

貯穀害虫とは、米などの穀物類や、小麦粉などの製粉した粉製品など、貯蔵している穀物・穀物製品について食害を与える虫です。

(例)
・コクゾウムシ
・ノシメマダラメイガ
・ノコギリヒラタムシ
・コクヌストモドキ
・チャイロコメノゴミムシダマシ
・シバンムシ など

衛生害虫

衛生害虫とは、人間や家畜に疾病などの害を与える虫のことです。毒や吸血などにより、直接人間に害を与える虫、菌やウイルスなどの病原体を媒介する虫などがあります。

(例)
・カ
・ハエ
・ノミ
・ダニ
・ハチ
・ケムシ
・ムカデ
・ゴキブリ など

食品害虫

食品害虫とは、人が口にする食料品について被害をもたらす虫のことです。貯穀害虫など穀物につく害虫に加えて、加工品など広く食料品につく虫も含めます。

(例)
・ゴキブリ
・ハエ
・カツオブシムシ
・ヒラタムシ
・チビタケナガシンクイ
・メイガ
・チャタテムシ
・トビムシ など

財産害虫

財産害虫とは、家屋などの建築物や、家財道具などの財産について被害をもたらす害虫のことです。

(例)
・シロアリ
・フナクイムシ
・シバンムシ
・カツオブシムシ
・ヒメマルカツオブシムシ
・紙魚(しみ) など

家畜害虫

衛生害虫の中でも、特に家畜に被害をもたらす害虫を家畜害虫と言います。吸血や病気の媒介といった直接的被害に加えて、害虫の加害行動による家畜のストレスといった被害もあります。

(例)
・ダニ
・アブ
・カ
・シラミ
・ハエ など

不快害虫

不快害虫とは、人に対して実質的な被害はもたらさないものの、姿や形、行動などから心理的に不快感を覚えさせる虫を言います。

(例)
・クモ
・ヤスデ
・ゲジ
・セミ
・カマドウマ
・ゴキブリ など

益虫と害虫の立場が入れ替わることも多い

益虫と害虫はあくまで、人間の都合によって分類されたもの。同じ虫でも益虫とされたり害虫とされたりするなど、人間との関係性で判断が変わってきます。

そのため、益虫か害虫かは、それを判断する人間の立場や場面によって異なり、同じ虫でも、益虫とされることもあれば、害虫として嫌われることもあります。

例えば、モンシロチョウは植物の受粉をしてくれる益虫とされる反面、作物に食害をもたらす幼虫の卵を産みつける害虫としても扱われる場合があります。

また、ミツバチは受粉をしたり、はちみつを作ったりする経済的な益虫として知られていますが、時に人を刺す虫として一般生活からは忌避される存在です。

このように、益虫と害虫が入れ替わる例はいくらでもあります。益虫・害虫という分類は、あくまで便宜的なものなのです。

代表的な益虫一覧

ここからは、益虫として知られる代表的な虫を紹介します。特に、植物を栽培する上では、害虫を捕食してくれる益虫を覚えておくようにしましょう。植物についている虫が益虫であれば、あわてて殺虫剤を散布する必要はありません。

ただし、益虫に分類される虫の中でも、細かく種類を見ると、植物や益虫も食べてしまう害虫とされるものもいるので注意が必要です。

名称 説明
テントウムシ 幼虫の時からアブラムシをたくさん捕食します。
トンボ さまざまな害虫を食べる肉食昆虫です。幼虫であるヤゴの時からボウフラなどを捕食します。
クモ 不快害虫として扱われることもありますが、ほとんどが人には無害で、害虫をよく捕食します。
ゲジ 不快害虫として扱われますが、ゴキブリを捕食することで有名です。一般的にゲジゲジと呼ばれます。
ゴミムシ 土や下草などに生息し、さまざまな害虫を捕食します。一部の種は食害をもたらす場合も。
ミツバチ 植物の花粉を媒介して受粉をします。はちみつを作ることからも、農業とは深い関係にある益虫です。
ミミズ 土の中に生息し、有機物を食べて良質な土壌を作るのに役立ちます。
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畑や田んぼに発生する代表的な害虫一覧

反対に、畑や田んぼに発生する害虫の代表例を紹介します。
地域性も関係しますが、植物を栽培する上で多く発生する害虫は、おおよそのパターンが決まっています。時々、特定の害虫が大量発生することがあるので要注意です。

発生時期と対策をしっかりと押さえて、植物への被害を最小限にとどめる準備をしておきましょう。各都道府県の病害虫防除所がその時々で注意すべき情報を定期的に公開しているので、チェックしておくとより適切な対策を取ることができます。

名称 説明
アブラムシ 若い芽、枝、茎などに口針を差し入れて汁液を吸います。繁殖力が非常に高い害虫です。
ウンカ イネの葉や茎について汁液を吸い、イネを枯らしたり、ウイルスを媒介したりします。
カメムシ 4~10月に畑に発生し、実のほか新芽や茎葉にもついて吸汁します。養分を吸われた作物は生育不良や変形を起こします。
テントウムシ 虫を食べる肉食の種類は益虫ですが、草食の種類は害虫にも。ニジュウヤホシテントウはナス科の野菜の葉を食い荒らすので注意。
ナメクジ やわらかい芽や若葉、花、果実などを食べます。キャベツやハクサイは玉の内部にまで入り込んで食害を与えます。
ハダニ 5~10月に発生し、葉裏について養分を吸います。吸われた部分はかすり状に白い斑点となり、進行すると枯れることも。
ハモグリバエ 幼虫が葉の中をジグザグに食べてまわります。食べられた跡が白い筋状の模様となり、進行すると落葉して生育が悪くなります。
ヨトウムシ ガの幼虫で、野菜の葉を食べる害虫です。夜行性のため「夜盗虫」と言われます。

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あの虫は益虫?害虫?

先述のように、益虫か害虫かはその時々によって判断が分かれます。
屋内外でよく見かける虫を例に、益虫か害虫かの判断の仕方を考えてみましょう。

ミツバチ

ミツバチは、農業においては益虫と考えていいでしょう。ミツバチは植物の受粉やはちみつの生産といった働きをしてくれます。

一方で、人を刺したり、ハチの巣から出る虫の死骸などで家屋が汚されたりと、一般生活においては悪影響が出ることもあります。
家のすぐ近くに野生のミツバチが巣を作り、大量発生している場合には、駆除を検討する必要があるかもしれません。

スズメバチ

スズメバチは、植物の受粉や害虫の捕食などで農業に役立つ益虫としての役割を担っています。

しかし、ミツバチと比べて攻撃性が強く、刺されるとアナフィラキシーショックを起こして重症化することがあります。また、スズメバチの中にはミツバチを捕食する種があるため、養蜂家にとっては天敵とも言えます。
家や畑などの近くで巣を見つけた場合は、危険なので業者に駆除してもらうようにしましょう。

テントウムシ

テントウムシにはいくつかの種類があります。ナナホシテントウなどの肉食のテントウムシは、幼虫の時から害虫を食べてくれる益虫です。一方で、テントウムシダマシなど草食の種類は、植物について葉や実を食べる害虫となります。

種類により異なるため、よく見かけるテントウムシについては、益虫か害虫かの知識を持っておくようにしましょう。

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クモ

基本的に、クモは益虫に分類されます。クモは粘着性の強い網目状の巣を張って、さまざまな虫を捕食してくれます。ごく一部の種類を除いて、日本で見られるクモは人に害を及ぼすことはありません。

ただ、家の中にクモの巣が張られていたり、姿が不気味だったりなどの理由から、不快害虫として扱われることもあります。

ゲジゲジ

ゲジ(通称ゲジゲジ)は、害虫を食べてくれる益虫です。ゴキブリの捕食者として知られ、人にはほぼ害はありません。

ただ、その見た目から嫌われることが多く、不快害虫として駆除の対象とされがちです。捕食者であるゲジゲジを駆除すると、ゴキブリなどの害虫が増える可能性もあるので、家の中で見つけた時は、殺さずに外へ逃がすくらいでいいでしょう。

カマキリ

カマキリは肉食性の昆虫です。幼虫時にはアブラムシやダニ類、成虫時にはバッタやカメムシなどの害虫を食べてくれます。
ただし、カマキリの捕食対象は害虫とは限らず、益虫か害虫かの区別なく食べてしまいます。害虫の多い圃場(ほじょう)であれば益虫になり得ますが、生態系のバランスが維持されている圃場では、増えすぎると悪影響を与える可能性があります。

トンボ

トンボは幼虫(ヤゴ)の時から肉食であり、草食の害虫を食べてくれる益虫です。秋の田んぼによく見られ、イネの大敵であるウンカなどを好んで捕食します。

殺虫剤の使用により虫のいなくなった田んぼでは、発生数が少なくなったという声が多く聞かれます。そのため、トンボが集まる圃場では生態系が保持された有機農地である証とする考え方があります。

カエル

カエルは虫ではありませんが、害虫を捕食する小さな生き物として益虫と呼ばれています。水中に卵を産むため、水田や水田に近い畑などに多く生息します。

カエルは虫の捕食者である反面、鳥やイタチなどの小動物のエサにもなります。そのため、カエルは豊かな生態系の象徴として捉えられることの多い生き物です。

ムカデ

ムカデは肉食性の虫で、特に生きた昆虫や小動物を食べます。ゴキブリやネズミなど、一般家屋にすみつく害虫・害獣を食べてくれるという点では、益虫と言えるかもしれません。

一方で、その見た目から気味悪く感じられる不快害虫として扱われます。また、かみつかれると炎症を起こすこともあります。

ミミズ

ミミズは土づくりには欠かせない生き物です。土の中で虫の死骸や枯れた植物片などを食べて分解・排せつし、ふかふかで肥沃(ひよく)な土壌に変えてくれます。
ミミズがいる土に食物残さを入れると堆肥(たいひ)化してくれることから、手製のコンポストのためにも用いられます。

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正しい知識で益虫の有効活用を

虫は、その見た目から苦手な人が多いかもしれません。しかし、中には人間の生活に役立つ益虫が多くいます。家や農地にすみつく益虫は、殺虫剤を使わずに放置することで、他の害虫の異常発生を抑えることができるのです。

しかし、同じ種類の虫でも、判断する人の立場や場面などによって益虫か害虫かは変化します。どういう習性がどう役に立つのかは、正しく理解しておくことが必要です。

また近年では、地球環境への負荷低減の観点から、化学合成農薬の使用を控える動きが加速しています。植物に害を与える害虫を退治する手段として、従来の農薬から、捕食性のある虫(天敵)に置き換える考えが広がりつつあります。

とはいえ、益虫であっても増えすぎると生態系のバランスが崩れ、結果的に「害虫」として扱われかねません。益虫を利用する際には、他の生物への影響を考える必要があるでしょう。

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