シーズン中は連日の完売御礼、和光市の人気イチゴ農園のこだわり
埼玉県和光市の「とりかいさん家のいちご園」は、2012年冬に開業した市内初のイチゴ観光農園です。代表は鳥飼純一さん。大学の農学部を卒業後、人を楽しませることがしたいと、埼玉県農業大学校でイチゴを勉強されたそうです。1600㎡のハウスでイチゴ狩りと直販を開始すると、瞬く間にイチゴが足りなくなるほどの人気を博し、3年後にハウス500㎡を増設しました。
イチゴ狩りを楽しんでもらおうと、空間にも工夫を凝らしています。ハウスには手作りのカウンターとテーブルが並び、鳥飼さんが「農家っぽくない」襟付きシャツと綿パンにギャルソンエプロン姿で迎えてくれます。栽培品種は、イチゴ狩りで人気の「あきひめ」、「紅ほっぺ」、埼玉県の専用品種で試験栽培から取り組んでいる「あまりん」、「かおりん」。赤い実を付けた高設栽培のハウスは圧巻です。
年間の集客数は販売で約4000人、イチゴ狩りで約2000人。午前10時の開店で、販売分は午前中には売り切れるそう。朝7時から並んで待つ人もいるほどの人気ぶりです。苗づくりから販売まで、鳥飼さん、妻の愛子さん、お姉さんの3人を中心として他数人のパートスタッフが従事しています。
鳥飼さんに栽培のこだわりを伺うと、「年末年始の需要に対応できるように、毎年12月10日前後をオープンと決めて、常に管理に集中し続けています」との答え。繊細な野菜だけに確実にスケジュールを遂行する必要のあるイチゴの観光農園。妻の愛子さんは、夫の姿を「ストイック」だと言います。
そんな鳥飼さんが、「これはいい」とほれ込んだのが、育苗資材『ジフィーセブンC』でした。
育苗ポットの根腐れを防ぎたい。長年の課題をこれで解決
イチゴは、親株のランナーから翌年に使う子苗を増やします。鳥飼さんは10年来、ポリポットに土を詰めてランナーを受ける方法で育苗をしていましたが、2021年、全量の2万株を一気に『ジフィーセブンC』に切り替えました。きっかけは、埼玉県内の生産者からなる「養液いちご研究会」で紹介されたことでした。
『ジフィーセブンC』は、ココピートを不織布で包んだ育苗資材。鳥飼さんは「それまではポリポット以外に選択肢がありませんでしたが、研究会で紹介された後に2020年秋に親株の栽培で試して、絶対にいい資材だと確信しました」と力を込めます。
鳥飼さんが全量切り替えを決めた理由は、大きく二つありました。
一つは育苗環境です。イチゴの苗は病気にかかりやすく、頭上灌水で菌が飛ぶ恐れがあるため、鳥飼さんはポットの底穴から水を吸わせる底面給水方式を採用しています。しかし、夏場のハウス内は気温40℃、湿度90%に上り、ポットに熱がこもって根腐れを起こすことが心配でした。『ジフィーセブンC』は、薄い不織布を使用しているので通気性がよく、気化熱で培養土の温度が下がり、根も呼吸がしやすくなります。
もう一つは、作業性です。2万株分のポリポットに土を入れるのは、機械作業といえども手間と時間を費やします。しかも、それらの運搬には重機を使うので作業できる人員が限られ、危険も伴います。『ジフィーセブンC』は、圧縮・乾燥された状態で軽く容易に持ち運びができます。
使用する際は、40個が入る育苗トレーに並べ、水を張ったおけに1分程度浸して材を膨らませるだけ。愛子さんは「水を含んだ状態でもポリポットより断然軽くて運びやすいです」と満足した様子で話してくれました。
活着の早さと作業効率を実感、全量切り替えに大きなメリット
『ジフィーセブンC』の効果について、鳥飼さんは「ランナーを受けてからの根の活着が非常に早い」と高評価。苗づくりのスピードアップにつながり、ロスも削減できたと言います。「定植作業もしやすくなりました。以前はポットを外して根の状態を見て苗を選別する必要がありましたが、不織布が透けているのでそのまま根張りを確認することができ、工数が大幅にカットできました。」
苗7割、管理3割といわれるイチゴ栽培で、鳥飼さんが最も重要視するポイントは「9月の定植から12月のオープンまでにいかに株を育て上げるか」だと言います。
「弱い苗は収穫の中休みが多くなりますが、しっかり育った状態でスタートダッシュを決めれば、シーズンを安定的に乗り切ることができます」と鳥飼さん。2021年12月から翌5月までの今シーズンの総収量は約12tと過去最高を記録。『ジフィーセブンC』が一役買っているかもしれません。
鳥飼さんに今後のビジョンを伺うと、「規模拡大よりも品質を大事にしたいです。埼玉県全体でイチゴをレベルアップできるように、よい資材を実証して情報を共有していきたいですね。『ジフィーセブンC』はその代表例です」との言葉。鳥飼さんが6代目会長を務めた養液いちご研究会でも、徐々に『ジフィーセブンC』のユーザーが増えているそうです。
現在懐妊中の愛子さんは、「生まれてくる子どもにイチゴを好きになってもらいたいと思っています。これからも夫と一緒においしいイチゴを栽培していきたいです」と語ってくれました。
農業課題を苗づくりから解決したい サカタのタネの思い
販売元のサカタのタネは、花と野菜の苗づくりに100年の知見を持っています。『ジフィーセブンC』が、海外でイチゴの採苗、果樹や林業の挿し木に使われている成功事例が多いことから、国内のイチゴ生産者に育苗用の資材として提案を進めてきました。
同社ソリューション統括部の坂田渉さんに同資材の特長を聞くと、「イチゴは育苗期が真夏に当たるので、ポット内が高温になり根にストレスがかかります。不織布は植物の温度上昇を防ぎ、根が巻かずに真っすぐに伸びることが最大のポイントです」と答えてくれました。ポット内で根が巻くのは、すでに株の老化が始まっていることを意味するのだそうです。
また、苗をポットから抜いたときに土が崩れるのも植物にとってはストレスです。同資材で育てた苗は資材ごと植えるのでそのストレスがなく、定植後の活着が圧倒的に早くなります。材料は国際認証のココピート(ココヤシ繊維)100%で、不織布はPLA(生分解性プラスチック)で脱プラスチックにも貢献。つくり自体は単純な資材ですが、生産性や環境への影響など、大きな効果が期待できます。
坂田さんは、「人材不足の解消や経営者の時間的余裕につながる提案を、これからも進めていきます」と思いを語ってくれました。
苗づくりの悩みや課題は、サカタのタネに相談してみてはいかがでしょう。
【取材協力】
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