全従業員が女性、半数は子育て中
ウーマンメイクは大分県国東市にある80アールの園芸施設で、リーフレタスとホウレンソウを生産している。創業したのは平山亜美さん。雇用している従業員は26人で、すべて女性だ。年齢は26歳から69歳まで。従業員の半数は子育て中だという。
重量があるパレットを前が見えないまま運搬する苦労
リーフレタスとホウレンソウは水耕で栽培している。水槽に浮かべたパレットに等間隔で開いた穴に苗を植えて、育てる。収穫する際にはいったんパレットを水槽から引き上げて、別の棟にある調製施設に運んでいく。この時に使うのが、課題となっている台車だ。
台車には幾層もの棚があり、そこにパレットを上から下まで積んでいく。各棚はパレットと作物に覆われるので、前方の見通しがきかなくなる。おまけに台車の高さは大人の背丈を超えるほか、重量がある。女性でなくても運搬するのは重労働だ。
運搬を難しくしているのは、栽培している園芸施設と収穫物を調製する棟とが離れていることも理由としてある。道中はコンクリートで舗装したものの、直角に曲がる箇所がある。平山さんは「見えにくい中でカーブを曲がるとき、人手で押していくと、ふらついて壁にぶつけかねない心配が常にある」と打ち明ける。
忙しい時間帯に不足する人手を補填する
運搬が難しい理由はもう一つある。ウーマンメイクは勤務開始時刻を8時からと9時からの2部制にしている。もっとも忙しい収穫作業は8時から始まるが、子育て中の従業員は、子どもを幼稚園や学校に送った後に職場に来るので、どうしても8時に出勤することはかなわない。このため8時から出勤するのは、毎日5、6人にとどまっている。
「しかも8時に出勤できるのは年配の人ばかりなので、力と人数の両面で足りていない。それを補填するものとして期待するのがロボットなんです」
平山さんが語るロボットとは、トヨタL&Fが製造するけん引式の「キーカート」だ。9月から走行の実験をしている。
このロボットを走らせるため、台車に改良を加えたり環境を整備したりした。まずは台車に運搬ロボットと連結させる器具を取り付けた。
環境面では先ほど触れた通り、調製をする棟と栽培棟との間が砂利道だったのをコンクリートで舗装した。そのコンクリート道にはロボットが走行する経路を感知する磁気テープを埋め込み、屋根を設置して雨天でも走れるようにした。かかった費用は、ロボットに加えて、コンクリートの舗装や屋根などを含めて総額で約1000万円強である。
実用化に向けて課題も
肝心なのは問題なく自走できているかどうかだが、現在のところ、すんなりとはいっていない。パレットを載せる台車は4輪。この車輪の軌道が直角の進路で曲がる際にぶれ、「台車がふらついてうまく回れない」と平山さん。
対処として検討していることはある。ロボットに運搬させながらも、人が付いていき、曲がる際だけ台車の動きがぶれないように押さえておくこと。あるいは車輪を加工して、ぶれを抑えることである。
こうした課題を乗り越えながら、平山さんは「年内には実用化できるようにしたいですね」と話している。