梅雨時期に発生しやすい病気は?
梅雨時期は雨が多くなり常に湿気のある気候がつづくことで、湿気を好むカビや細菌の仲間などの病原体が繁殖しやすくなります。また水分を媒介して傷口から侵入したり、土壌水分の流れにのって移動することもあるため、病気が感染拡大しやすい環境になってしまうようです。ここではまず梅雨時期に特に発生しやすい代表的な4つの病気をご紹介します。
うどん粉病
うどん粉病は特にキュウリ、カボチャなどのウリ科野菜に多く見られる病気で、葉の表面に白い粉がちらばっているような症状が表れます。これによって光合成を阻害する他、野菜の栄養を奪うので野菜の生育を阻害し、症状が進むと発症した葉がそのまま黄色くなって枯れていくこともあります。カビの仲間が病原体となって発症する病気で、梅雨時期に多く発生します。
べと病
べと病もうどん粉病と同じくカビの仲間を病原体とする病気で、梅雨時期に多く発生します。葉脈にそって角ばった病斑が現れ、症状が進むと葉がそのまま褐色になって枯れていきます。梅雨時期はキュウリやカボチャ、ネギなどでよく発生します。胞子を飛ばして広がり、水滴が葉についているとそこから感染が広がりやすくなります。
疫病
疫病はトマトやジャガイモなどのナス科野菜、キュウリ、カボチャなどのウリ科野菜やイチゴなどで発生しやすい病気で、茎や葉、果実部分に黒っぽく油が染みているような病斑が現れます。症状が進行すると白いカビのようなものが生じることもあり、最終的には株ごと腐ったように枯れていくこともあります。疫病もカビの仲間が病原体で、15〜20度ほどの比較的低い温度帯で発生しやすいのが特徴です。また土壌伝染するため連作すると被害がさらに拡大しやすい病気です。
青枯(あおがれ)病
青枯病はナス科やウリ科野菜などさまざまな野菜で発生する病気で、これが発症すると晴れた日などに野菜が急に青いまましなびてしまいます。曇りの日や夕方以降に回復することがありますが、また晴れるとしなびてしまうというのを繰り返した末に株ごと枯れてしまうということが起こります。青枯病は細菌の仲間が病原体となって起こる病気で、野菜の傷ついた茎葉から水を媒介にして侵入するため、水分の多い梅雨時期は特に注意が必要です。
発症した野菜の処理方法は?
発症した野菜を見つけた時は、できれば病名が特定できるとよいですが、わからない場合も多いと思いますので、ある程度共通する基本的な処理方法をご紹介します。
まず葉に病斑が現れている時など、その葉を取り除くべきかどうか悩むと思います。その葉がすでにほとんど枯れている場合や、腐っている場合は取り除いてしまってよいですが、基本的にまだ葉が緑色の部分が残っている場合はできるだけ取り除かないようにしています。なぜかというと梅雨時期はただでさえ日照が少なく、光合成がしにくい時期です。あまりに緑色の葉を取り除いてしまうと光合成がさらにできなくなり、栄養不足で余計に株が弱ってしまうことがあるためです。ただ野菜がすでに大きく、多少取り除いても問題ないなと判断する場合もあります。
次にその株全体が枯れた場合や腐ってしまった場合ですが、基本的には畑の外や端の方に持ち出して埋めるか、焼却処分するのがよいとされています。僕の場合は例え病気の株であっても、そこの土に返すことで、その病原体に対する拮抗(きっこう)菌(後述)が増えるのではないかと考えているので、野菜の近くでなければそのまま畝の上に刻んで敷いておいたり、雑草堆肥(たいひ)に混ぜ込んだりして処分しています。どちらにせよまだ栽培している野菜の近くにその残渣(ざんさ)を置いておくのは、病気を拡大させる要因になりかねないので注意しましょう。
梅雨に発生しやすい病気の予防・対処法
では次にこれらの病気に対して共通する、予防方法や対処方法をご紹介します。
マルチングをして泥はねを防ぐ
病気の病原体は土の中にいることも多いため、この病原体が雨のときにはねた泥の中に含まれていると、それが茎葉に付着してそこから感染していくことがあります。特に野菜の株元は土を露出させないようにマルチングしておくとよいでしょう。一般的にはビニールフィルムなどでマルチングすることが多いですが、身近な雑草でもマルチ資材になりますので、ぜひ活用してみてください。
通気性・水はけ・日当たりを良くする
家の中におけるカビ対策と同じように、野菜を植えている環境も通気性・水はけ・日当たりを良くすることが最も基本的なカビ対策になります。より具体的には水はけの悪い畑では畝を高めにしたり、株元近くの余計な葉や脇芽は剪定(せんてい)しておいたり、間引きを早めに行ったりするなどです。ただし、雨の日に野菜の手入れを行うと、その際に傷口を作ってしまい、雨を媒介して病原体が侵入してしまうことがあるため、その点は注意しましょう。
初期症状なら自然農薬で治ることも
うどん粉病やべと病などカビを病原体とする病気の場合、初期症状であれば重曹やキトサン溶液、木竹酢液などの自然農薬を発症した部分に散布することで治ることがあります。
重曹の場合は500倍から1000倍ほどに薄めて、葉に直接散布してください。
キトサン溶液は甲殻類の殻や昆虫類の外殻などに含まれるキチンという物質から取り出されたもので、これを散布することで放線菌という抗生物質を作り出す細菌が増えるため、カビの病気を発症しにくくなると言われています。土に散布して予防的な使い方もできます。
他にも木竹酢液やお酢などでも効果が出ることがあるようです。いずれにしても発生初期段階であれば治ることもあるという程度ですので、確実ではありませんがぜひ試してみてください。
根本的にはやっぱり土づくりが大切
病気対策においても、根本的に解決するためには結局土づくりが大切になってきます。
その理由はまず、そもそも人間と同じで、野菜自体が健康的に育っていれば病原体がいても発症しないこともあるということが1つ。
2つ目に、カビなどの病原体は土の中にいることが多いわけですが、その病原体を殺したり減らしたりする効果のある拮抗菌と呼ばれる微生物が土の中には存在していて、微生物数の多い土づくりをすることで、病原体が一気に増えるということが抑制されるためです。
そして3つ目に、野菜と共生する微生物がいるのですが、この微生物と野菜が共生している状態にあると病気にかかりにくくなるということがあるためです。微生物の餌となる有機物豊富な堆肥などを用いて土づくりをしていきましょう。また、同じナス科野菜を毎年同じ場所で栽培するなど、連作を行うと土の中の栄養素や微生物のバランスが悪くなり、病気の発症につながりやすくなりますので注意しましょう。
予防や早期対策が大切
野菜の病気は一度症状が進んでしまうとどうしようもないものが多いです。特に梅雨時期の雨はどうすることもできないものですので、できるだけ今回ご紹介した予防方法を行った上で、症状が出た場合は早期に自然農薬などで対処してみましょう。