雑草マルチとは?
マルチングとは土が裸にならないように、畝の上を覆うように稲わらやビニールフィルムなどの資材を被せること。マルチングによって土の保湿・保温・雑草防除などの効果が期待できます。春から夏にかけて雑草の勢いが激しくなる時期には、長期間栽培する果菜類やサトイモ、ショウガ、サツマイモなどに用いて雑草を防ぎます。また冬場には、大根やニンジンを栽培する際などに地温を上げるために用います。
今回紹介するのは「畑に生える雑草を使ってマルチングをする」というものです。雑草とは言ってもさまざまな種類があり、マルチングに適したものもあれば時期的に適さないものもあります。そこを理解しておく必要はありますが、コストがかからないので、面積の小さい家庭菜園などではおすすめできる方法です。個人的にはマルチ資材がゴミにならない点も気にいっています。
雑草マルチならではの効果とは?
一般的にマルチングの資材としてよく使われるのは、ビニールフィルムだと思います。ですのでビニールマルチと雑草マルチの効果の違いについて紹介します。
ビニールマルチの優れている点
まずビニールフィルムがマルチ資材の中でも特に優れている点は、雑草防除と地温上昇の効果だと思います。稲わらや雑草のマルチではどうしても隙間(すきま)が空きますので、そこから雑草が生えてきやすくなります。またビニールマルチは地温を上げる効果が高く、冬から春先にかけての作物の生育を助けてくれます。
雑草マルチの優れている点
では雑草マルチがビニールマルチよりも優れている点は何かというと、まず通気性がよいため過湿になりません。雑草自体が水分を吸ってくれるので、土の水分量を調整する役割を果たします。
また土の温度の上がりすぎや下がりすぎといった変動が少なくなり、地温が安定します。
地温や湿度が安定していることは野菜だけでなく、土の中のミミズや微生物たちにとっても活動しやすい環境を作ります。敷いた雑草も彼らのエサとなり、良質な土が作られていきます。野菜を作りながら周囲に雑草を敷くことで、土作りも同時に行うことができるのです。半年間これを丁寧に行うだけでも土が団粒化してフカフカになっていきます。土に有機物が供給されることで栄養を保持する力も高まりますので、野菜がどんどん作りやすくなっていきます。
雑草マルチと稲わらマルチとの違い
ちなみにここまで述べてきた雑草マルチのメリットは、稲わらマルチでもほぼ同様の効果が得られますが、ちょっと違いがあります。
稲わらの場合は、種もみを収穫し終わった後の枯れた茎葉の部分を使います。この部分は炭素率が高く分解されにくい状態なので、長期間土を被覆してくれるというメリットはあります。その代わり種もみの方に栄養をほとんど使ってしまった状態なので、稲わら自体に栄養はほとんど残っていないと思われます。雑草の場合はその種類によりますが、種をつける前に刈って敷くことを繰り返すため、より土への栄養供給効果は高いようです。また雑草はその土地で生きていた植物ですので、土の微生物との相性も良いのではないかと思っています。
雑草マルチのやり方と注意点
では実際に雑草マルチを実践する時の具体的な方法や注意点などについて紹介していきます。
どんな雑草がマルチングに向いている?
雑草マルチを行う時に使う雑草は、基本的には葉の細長いイネ科雑草の葉が適しています。稲と同じように他の雑草に比べて水分量も少ないため乾燥しやすく、分解もしにくいため、長期間土を被覆してくれます。
ハコベ、ホトケノザ、シロツメクサなど葉が丸いタイプの雑草は水分と養分が多いので土への栄養供給効果は高いのですが、分解されるのが早過ぎる傾向があります。また、梅雨など雨の多い時期に野菜の株元にこれらの雑草を敷いていると、加湿の原因になることがあるので注意が必要です。湿気の多い時期は畝の端など少し野菜から離れた場所に敷くとよいです。また夏場に畑によく生えるツユクサ、メヒシバなどのほふく性の雑草は、地上部だけを刈って敷いても茎から根を出してなかなか枯れないことがあるので、特に梅雨時期は野菜の近くに敷かないようにしましょう。
またイネ科雑草などマルチに適した雑草が周りになかったり、畑に雑草を生やすことが難しい場合は、イネ科の緑肥作物を畑の周囲などに植え、その地上部だけを繰り返し刈って、畝の上に敷いていくのもおすすめです。
雑草マルチの刈り方・敷き方
雑草マルチに使う雑草は地上部のみを刈り取って使います。長い場合は20〜30センチ程度に短く切って畝の上に敷き詰めます。敷いた草が浮いていると強風の時に飛びやすくなってしまったり野菜の周囲の通気性を悪くしてしまったりするので、敷いた後は手でしっかりと押さえます。敷く厚さは状況にもよりますが、3センチ程度を目安とし、土が完全に見えなくなるまで被せましょう。土が見えているとそこから雑草が生えてきますし、土が乾燥してしまいます。
雑草マルチを始めたばかりのころは、せっかく敷いた雑草が風で飛んでいってしまうということもよくあります。雑草マルチを敷き続けてしばらく経ち土が良くなってくると、保湿された土と雑草マルチとがなじみ、多少の風では全く飛ぶことはなくなります。雑草マルチのためだけでなく、そもそも畑の風が強すぎるのは作物にとって良くありませんので、風が強すぎる場合は、風上に障害物となる背の高い樹木や作物を植えるなどして風を弱めるとよいかもしれません。
雑草の種は入って大丈夫?
イネ科雑草や多年生雑草など野菜の生育を阻害しやすい雑草の種は、できるだけ野菜の近くに持ち込まないようにしましょう。しかも種がついている野菜は種の方に栄養分を使っていますので、葉や茎の養分が少なくなり、土づくりの効果は低くなります。
春から秋にかけての半年やってみてほしい
今回は畑の雑草を利用したマルチングの仕方についてその方法や注意点について紹介しました。「雑草を刈って敷く」というとてもシンプルな技術ですが、とても奥が深く、そこを徹底するだけで雑草の生え方や野菜の生育がガラッと変わってきます。まずは雑草がたくさん手に入る春から秋にかけて半年間雑草マルチをしてみてください。目に見えて土質が変わってくると同時に、その後の秋冬野菜の出来も良くなっていくはずです。