栽培時期
枝豆の発芽温度は25〜30度、生育適温は20〜25度で、暖かい気候を好み寒さは苦手です。まだ冷える時期に種まきをする場合は、ビニールでトンネルをかけておきましょう。早生(わせ)品種は4〜5月に播種(はしゅ)し、収穫までの期間は80〜90日ほどです。中生(なかて)は5〜6月に播種し、収穫まで90〜110日程度、晩生(おくて)は6〜7月まきで、120日ほどかかります。晩生品種を早く播種しても葉が茂るだけなので、品種による播種時期をきちんと守って栽培するようにしましょう。
土づくり
土壌pH6.0を目標に石灰を散布して耕うんしておきます。それから1週間あけて、元肥を施し畝を立てます。枝豆には「根粒菌」という微生物が根に寄生して窒素を供給してくれるので、窒素肥料は控えめにしておきましょう。ただし供給してくれるとは言っても窒素ゼロでは育ちませんので、あくまでやりすぎに注意ということです。畝の高さは10〜15センチ程度とします。
播種
播種は畑に直まきしてもいいのですが、「ハトマメ」と言われるように、とにかく鳥は豆が大好き。まさか食べられまいと思っていても、どこからか種まきの様子を見張っていて、人がいなくなるとすかさず食べにやってきます。そのため苗を作ってから畑に定植した方が鳥害のリスクは少ないでしょう。また、大豆は栄養豊富な分、土の中で腐りやすいという特徴があります。大雨にあうと豆が腐って発芽できなくなる恐れがあるのも、移植栽培をおすすめする理由です。苗作りはセルトレイ、ポット、地床などが利用できます。
直まきの場合
まず土の表面を平らにならし、瓶の底などで深さ2〜3センチのくぼみをつくります。そこに3〜4粒ずつ種をまき、土をかぶせて、元の面と同じ高さになるようにします。穴を深くしすぎたり土をかぶせすぎたりすると、発芽に時間がかかりすぎて、豆が腐る確率が高くなってしまいます。水をかけるときはじょうろの蓮口をつけ、種が水圧で流れてしまわないように優しくかけてあげましょう。種まき後は必ず防虫ネットを張るか、不織布をべたがけして、鳥よけの対策をしておきます。
苗を作る場合
セルトレイの場合は土をたっぷりとトレイにいれてから、指で2センチくらいのくぼみをつけ1粒ずつ種をまきます。ポットの場合は3〜4粒まきましょう。上から土を1~2センチかけて豆が完全に隠れるようにします。畑で育苗するときは4〜5センチ間隔で均一にばらまきし、平グワで鎮圧してから覆土します。こちらも忘れずに鳥よけのネットをかけておきましょう。
間引き
直まきの場合もポットまきの場合も、初生葉が展開したら間引きを行い、1カ所に1〜2本とします。手で引き抜くと隣の株まで抜けてしまうことがあるので、はさみで切るといいでしょう。初生葉が展開すれば鳥にも食べられなくなるので、不織布をベタがけしている場合は取り除きます。
定植
セル苗は初生葉が出たら、ポット苗と地床苗は本葉が展開したら定植します。根がちょっとくらい切れてもまた生えてくるので問題ありません。むしろ、根をすべて切ってしまう「断根」という苗づくりの方法もあるくらいです。断根にさらに「摘心」も加えて、がっちりとした苗を作る方法はこちらの記事から詳しく見ることができます。
追肥・土寄せ
本葉が4枚の頃と、6〜8枚の頃に追肥と土寄せをします。土寄せは除草の効果があるほか、土をかぶせると茎からも根が出て倒伏防止になります。枝豆の実がつくと重みでふらふらして倒れやすいので、とくに栽培が台風の時期にかかる場合はしっかりと土寄せをしておきましょう。また、花が咲く時期に肥料が足りないとさやができないので、追肥も忘れずに行いましょう。
摘心
枝豆栽培でよく聞くワード「摘心」ですが、やたらなんでもすればいいというものでもありません。摘心とは、てっぺんの葉っぱを取り除くことでわき芽の成長を促す方法で、枝をたくさん作って実を多く取ることができます。しかし、早生品種は摘心してもたいして収量は増えないと言われています。摘心をするなら晩生品種がおすすめです。また、肥料が多くて葉が茂りすぎているような場合も摘心することで実のつきがよくなるので摘心しましょう。やり方は簡単、本葉5〜6枚の頃に、頂上の芽を手で摘みとるだけです。
開花から収穫までの管理~乾燥とカメムシ対策~
乾燥対策
枝豆にさやを多くつけるために大切なのが水です。枝豆は非常にたくさんの花をつけますが、その半分以上は落花していまいます。水が不足すると、さらに落花数は増え、結実率が低下します。開花時に畑が乾燥している場合はぜひ水やりをしましょう。また、開花から10〜15日で、さやは急速に大きくなります。この時期も水が必要です。水がなければいつまでもさやはぺったんこのままです。さやの中身の豆が大きくなるのにも水が必須なのです。ぷりぷりの枝豆が食べたければ水やりしましょう。
カメムシ対策
開花から収穫までの管理でもう一つ重要なのがカメムシ対策です。カメムシはさやに口針を刺し、豆から栄養を吸い取ります。カメムシに刺された実は大きくなることができず、また、大きくなってからさされた豆はまずくなります。カメムシを予防するには防虫ネットをかけるか、農薬を散布するしかありません。地道に手で捕るという方法も不可能ではありませんが、カメムシの繁殖スピードは非常に早く、人間とカメムシの激しい戦いとなります。
防虫ネットをかける場合は、発生し始める前からかけておいた方がいいでしょう。発生後にかけると、カメムシを巨大な虫かごで飼育しているような状態になってしまいます。農薬を使う場合は開花時期に散布し、小さなさやができた頃にまた散布します。農薬の使用回数を抑えるためにも早期防除につとめましょう。
収穫
枝豆の収穫適期は3〜5日と非常に短いので、取り遅れに注意が必要です。枝豆の花は一斉に咲かずにだらだらと咲いて実がつくので、すべてのさやがパンパンになるのを待たずに、全体の8割程度のさやがぷっくりと膨らんできたら収穫しましょう。収穫が遅れると鮮やかな緑色だったさやは黄色くなり、味も落ちてしまいます。ひどく黄色になってしまった場合はそのまま待って大豆にするという手もあります。収穫方法は、家庭菜園ならば膨れたさやからはさみで切ってもいいですし、株ごと刈り取って収穫してもいいでしょう。
主な病害虫
害虫はアブラムシ、カメムシ、マメシンクイガ、ハスモンヨトウなどが発生します。病気はモザイク病、立ち枯れ病、紫斑病などがあります。アブラムシはウイルス性の病気を媒介するので、種まきや定植の時に浸透移行性の農薬を土壌に混和しておくと効果的です。また、畑周りの雑草は刈り取り、害虫の温床を作らないようにしましょう。
とれたての枝豆は常温に置きっぱなしにせず、すぐに塩ゆでして食べましょう。鮮度が味を大きく左右する枝豆は、家庭菜園で育てるにはうってつけの野菜といえます。収穫時期が短いため、ずっと枝豆を収穫したければ、品種を変えながら10日くらいの間隔で種をまいておくといいでしょう。よく見る緑色の普通種の他にも独特の風味のある「茶豆」や、甘みの強い「黒豆」など、枝豆にはさまざまな品種があります。栽培に慣れたらぜひいろいろな品種を育てて食べ比べてみてくださいね。