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効果的な鳥獣害対策とは~被害が軽減している地域が実践していること~

効果的な鳥獣害対策とは~被害が軽減している地域が実践していること~

イノシシやサル、シカなどの野生動物が田畑に侵入して農作物を食い荒らす被害が大きな社会問題になっています。全国で起きている野生動物による農作物被害は年間約200億円にもなります。そんな中、被害の減少に成功している地域とそうでない地域があることが分かりました。それぞれの特徴をもとに、効果的な対策をお伝えします。

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被害が減少しない地域の特徴

近年、被害を減らすことに成功している地域と、被害が減少しない地域の二極化が起きています。「総合対策」を実施して被害が減少している地域と、「捕獲」に頼って被害が減少しない地域です。ここで総合対策について解説します。

総合対策

  1. 野生動物を人里に誘引する最大の要因である餌(放任果樹、作物残渣<ざんさ>等)の除去
  2. 野生動物の行動を考慮した正しい柵の設置と点検・補修
  3. 加害個体を対象とした捕獲

農作物の鳥獣被害はなぜ起こる?~野生動物の素顔を知ろう~ 」と「駆除しても被害が減らないのはなぜ?~“捕獲による対策”の落とし穴を知ろう~」で述べてきたように、被害の発生要因を理解すれば、環境管理が大切なこと、農地を柵で囲い、必死に餌を探す野生動物から作物を守るのは当たり前のこと、と理解できるでしょう。それぞれの対策について具体的に見ていきましょう。

環境を改善する具体的な方法

放任果樹は伐採するのが好ましいです。
家族用に少しだけ収穫していた果樹が農地周辺にある場合は、農地とともに柵で囲います。一緒に囲うのが難しい場合は、果樹を金網等で囲います。
自家消費用で全ての果実を収穫しないのであれば、枝打ちをしたり、樹高を低くしたりして、果実の量を調整して野生動物の口に入れないことが重要です。
枝打ちは、柵で囲う範囲を縮小できるのでより守りやすくなります。

放任果樹は伐採するのがベスト

野生動物は果実が熟す前に食べに来ることもあるので、早めに柵で囲うと良いでしょう。作物残渣やクズ野菜も放置せず、コンポストの利用や地中に埋める等の対策を行います。その際、農地を囲った柵の外側ではなく柵の内側で行い、野生動物に触れさせないことが重要です。

作物残渣やクズ野菜は野生動物の手の届かない所に保管

また、耕作放棄地の茂みは野生動物の潜み場所になります。
イノシシなどの野生動物は本来臆病ですが、茂みに潜んでいると人間に発見されにくいことは学習できます。
田畑周辺の放棄地の草を刈り払って、イノシシが隠れられないようにすることで、柵に近寄りにくくなります。
たとえ近づくことができても、誰かに見つかるかもしれないという警戒心をあおることができるので、柵に対する学習を遅らせることもできます。

野生動物が隠れやすい茂み

野生動物の侵入を防ぐ

放任果樹や作物残渣は除去できます。しかし、農作物を除去するわけにはいきません。
幸い、さまざまな侵入防止柵が開発されており、正しく設置すれば、被害は減少します。柵は対象となる動物の行動特性を考慮する必要がありますが、現場では7~8割の柵が正しく設置されておらず、野生動物の侵入を許しています。柵自体に問題はなく、柵の設置の仕方によって、柵の効果がないと評価されてしまいます。

イノシシやシカは優れた跳躍能力を有しています。しかし、基本的にイノシシ・シカは障害物を飛び越すよりもくぐり抜けることを優先します。
イノシシ・シカは柵の切れ目や隙間(すきま)、あるいは地際から侵入します。侵入防止柵は高さを気にするより、地際の固定と、隙間などの補修に力を入れましょう。

侵入防止柵にも気を配る

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被害を減少させるための捕獲方法

捕獲については、捕獲数ではなく、被害を引き起こす個体を効率よく捕獲することが被害軽減につながります。しかし、正しい知識と技術を持ち合わせなければなりません。

野生動物を追い込む銃猟は、動物をかく乱・拡散させ、新たな加害個体を作るなど、いわゆる取り散らかしの原因になります。その上、加害個体を捕獲できる確率は非常に低いです。
加害個体が多く潜んでいる集落内では銃を使用できません。くくりわなにおいても、技術に熟練を要します。また、毎日の点検を怠れば、足を引きちぎって逃げ出し、手負いの個体となって民家をさまよい人を襲うなど、人身事故を引き起こすこともあります。

このような状況を考えると、被害対策のための捕獲には、檻(おり)わなが良いでしょう。しかし、檻わなも対象動物の性別、年齢、家族構成、群れ構成、被害の強度、対象動物の繁殖特性などを考慮して実施します。
農地の横に捕獲檻を設置するだけでは、野生動物は、怪しい捕獲檻に対して見向きもせず、これまでに繰り返し侵入した新鮮でおいしい作物がある農地を選択するでしょう。このように加害個体の捕獲は容易ではなく、設置された捕獲檻の半数が年間に一頭も捕獲できないことが報告されています。たとえ一頭だけ捕獲できても、その家族を取り逃がすことによって、檻を回避する加害個体を増やしてしまいます。総合対策を取り入れ、農地への侵入を防止し、周辺の環境管理を行うことで、捕獲檻の餌の価値が相対的に高くなり、野生動物の檻への誘引が容易になります。

被害対策とジビエ事業の関係性

近年ジビエが話題に出るようになったのは、「いくら捕獲しても被害が減少しないので、もっと捕れ」、「それでも被害が減らない」、「それならもっと捕れ」、「もう駆除した動物を埋める場所もない」、「じゃあ、食べよう、ジビエだ」という流れからです。
そもそも捕獲依存の対策では被害は減少しません。
また、鳥獣害対策の事業費で「ジビエ」というワードだけが先走りし、鳥獣害対策と関係ない商業的な活動に利用される事例も多々あります。

現に、冬の狩猟で捕れる脂の乗った肉が重用され、被害対策として捕獲した夏や秋の有害駆除肉は低級品となり、ほとんど消費されません。
冬肉の安定供給のためには農作物被害はやむをえないと発言する研究者も現れており、本末転倒な状況も散見されます。
何のための被害対策なのかを今一度考え直すためにも、被害対策とジビエ事業は切り離して考える必要があるでしょう。


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