こんにちは、久々のブログだよ。
今日は、最近観た映画の中でダントツの音の良さを誇る『TAR』について書いていこうと思います。
文章だけだとさみしいので、なんかこんな感じだったなって適当な落書きも付けました。
個人的に感じた事やそう思った事をただ綴るだけなので、作った人たちやプロの人たちから見ると実際は違うかもしれないのでそこはご容赦くださいませ。
あとちょっとネタバレしてます。
『TAR』はめちゃくちゃ音が良い
さて、僕が一番言いたい事は、『TAR』のサウンドデザインが凄すぎるという事。
トップガン・マーヴェリックやザ・フラッシュのような煌びやかな派手な音ではなく、本当の質のいいサウンドデザインの映画だということ。
冒頭から引き込まれる作品になっているけども、サウンドの構成が良いだけではなくて、単純に録音の質が高い。OPの音楽で「あ、これ音いいやつ」って認識させられるぐらい録音が良いです。
そもそも、録音の質が良いというのはどいうことかという話なのだけど、スペック的にみればサンプリング周波数とビット数が大きければ大きいほど強い!音が良い!というイメージがあると思う。でもそれはスペック上の音が良いであって実際に聞いたときの音が良いとはちょっと違うと思っている。
この辺は趣味と好みがあるので、一概に押し付ける事はできないのであくまで僕の話という前置きで、「音の重心」を僕はかなり重視した見方をしている。
周波数が高い低いとかではなく、純音以外の音には重心があってその重心が据わってるか正しいと音がいいなぁと僕は思う。
武術とかでの丹田の下あたりに重心がある動きが美しく感じるような感覚だろうか。
これはメディアに収録されている音でもそうだけど、音響システムの音でも重視している。
というか各ユニットの位相角がしっかり合っていいて音軸もしっかり通っているスピーカーは勝手にそんな音になる、と思っている。
そして重心が据わっている音は聞きやすい。耳疲れもしない。
『TAR』はそんな録音。
この映画は音での表現もすごいと感じた。
ツイッターでも少し触れたけど、ケイト・ブランシェットがメトロノームの音に気付いて目を覚まして探すシーンがある。
その最初、目を覚ますまでは音が目の前で鳴っていて、目が覚めたらメトロノームのある方向から小さく聞こえる。
アラームで起きるときって音の認識ってそんな感じだなと思って、謎にそこにとても感動した。
あと部屋の暗騒音がシーンが切り替わってもBGMのように続いているシーンがある。
あれ、その暗騒音続けるのかと思ったんだけど、これ暗騒音と見せかけて心情の表現なんだ!と思ったときおぉすげぇと思ってしまった。
映画は映像と音が50:50だというスピルバーグだかルーカスだかの名言があるけどもこの映画はさらに上の表現に到達しているようにも感じる。
画の色ってその時の役者の心情だったり場面だったり合わせて表現としてライティングとかで色を乗せていることが多い。
音もそうなんだけど、めちゃくちゃこの『TAR』はその音の色が見える。
画というか役者やストーリーに合わせて色がどんどん変わる。
そのせいで没入感があり、映像から目が離せなくなるわけだ。
これはディスクが発売されて、ステレオで見るテレビやヘッドホン・イヤホンだとちょっと体験しがたいと思う。
音の引き算も凄く緻密に計算されているなと思う。まったくガチャガチャした音を感じさせない。
あととても、当たり前のようで、出来ている映画って結構少ないのだけど、画面の音の発生源の方向から音がちゃんと鳴っている。
どいうことかというと、オーケストラの練習シーンなんかで、楽器の位置と出音がちゃんとあっている。
チェロが画面中央で音を出しているときはちゃんと画面中央から音がしていて、若干難しいCchとLとかRchの間当たりの空間に音を出している物があるときは、しっかりその間に音がでている。これはドルビーアトモスでつくられている恩恵かもしれない。5.1chでもしっかり表現されている。
よくありがちな、なんでそうなったっていうケースがある。
セリフはCchから出ていて歌う人が中央にいるのに歌唱シーンになったとたんステレオでLRからボーカルが聴こえる。台無しやんけとよく突っ込んでいる。
楽器も同じケースが多い。おいおいそのピアノ画面の中央に見えるけど画面の両サイドから音がしてんぞ、みたいな。
主に邦画や邦アニメでこのケースはべらぼうに多い。最近ちゃんと作ってきたぞ!と感動する作品もよく目にするようになったけど、とにかく多い。まあ色んな大人の事情があるのだろう。でもこれ映画なんだよテレビじゃないんだよと言いたい。
ちょっと脱線したけど、『TAR』は音が出てきてる方向と画が本当にうまく嫌味なく重なっている。
サラウンドでの音もいかにもSEですみたいな音ではなく、自然に音の方向だけを意識させて物語から意識が途切れない作られ方がされていて、2時間30分超えている映画に思えない没入感がある。
まあ話が抽象的だったり理屈で理解しにくい部分があってそこでダレる人もいるだろうなとは思う。
ダイナミックレンジも広く、小さい音と大きい音のバランスが素晴らしい。微細な音の変化を楽しめる高能率のスピーカーがとても重要になると思う。
音も立体的で箱の壁を感じない録音となっている。感じる場合は劇場のシステムを少し見直した方がいいかもしれない。
『TAR』の再生で劇場の音響システムの良さがわかる
といろいろ書いたけど、あまりにもデザインがいいので、この映画で音響システムの良しあしがある程度わかってしまう。
ちなみに僕のいる映画館でも完全に鳴らしきれているかと言うと、NOであり、まだまだ改善しなきゃいけないポイントがあるなと再認識させられた。
映画の音は派手なだけじゃないのだよ、とも思った。
ウチは完璧に鳴らせているぜっていう映画館があったら是非教えてほしい。
でも2時間40分弱は何度も見るのしんどいな...
あとあまりに長くなるから触れてないけど、映像も凄く綺麗です。
あのシネマティックレンズのフィルター(適当写真アプリのフィルターを指して言ってるので違うかも)の権化みたいなブルーやグリーンみあるグレーの色彩を表現できる劇場って少ないと思うよ。色が付きすぎるか全然色がでないかという結構難しいいやらしい色していると思う。
ではまた。