本・精神病でありながら精神科医として生きたある女性医師の波乱の人生
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図書館の新着紹介で見つけて、予約し借りたのが 久遠 悠 著
「精神病でありながら精神科医として生きたある女性医師の波乱の人生」
という長いタイトルの本。
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本の作りも少し違和感があり、文章も一人称語りのエッセイですが少し雰囲気が違うと思ったら、自費出版から始まった本のようです。
というのも本のタイトルでも分かるように、精神病でありながら精神科医として働いてきた半世紀であり、ご自分の経験を語り残す事で、同じ病気に苦しむ人たちやその関係者にアドバイスができ、精神病への偏見に対する誤解を解いていきたい事から書き残すとありました。
当然ながら精神病の要素の1つに家庭環境もあり、そのことにも触れていますが、子供の頃から優秀でスポーツも勉強も良くできる子でありながら、人との交流が苦手で登校拒否になった経験も持っています。
ある意味ギフテッドとしての要素も持っていただろう優秀な方ですが、高校3年生の頃から精神に変調の兆しが現れ、病院にも行くものの病名は付かない範囲。
その後の体験から双極性障害と統合失調症の合併型で統合失調感情障害に当たるとご自身が顧みています。
その症状を学ぶ意味でも精神科医となられたようですが、大学院時代に出合った院生と結婚もし、子供は遺伝性を考慮し作らないまでも現在に至るまで別居婚を続けてこられたようですが、実際は1度入籍を済ませた後に(仕事柄)戸籍名を変えたくないという判断で戸籍上は離婚しての事実婚を選んだそうです。
その暮らしは文字通り波乱万丈なのですが、仕事に関しては優秀でもあり、キャリア志向も強く問題を感じるとうつ病になることもあって、何度も退職と再就職を繰り替えしつつキャリアアップするという結果を導き出していったようです。
実際自分の病気経験が治療にも役立ち、患者さんにより添えた部分が大きかったと思えますが、日進月歩して来た治療薬の効果も自らの体験が役立つ部分もあった様子。
昔の精神科は世間も医者も偏見がまかり通っていた時代背景があり、最近は精神病による脳の仕組みが理解され治療できるようになってきた事もあり、まだ偏見が残るとはいえ随分改善されているそうです。
一般的に統合失調症というと危険な人という偏見が残っていますが、実際は幾種類ものパターンがあり同一症状では語れないと分かります。
また精神病の症状として共通しやすいのが躁鬱症状でもあり、医師として働く中でご本人も含め、同僚や患者さん、友人など大勢の躁うつ病の方がいたそうです。
症状が発症すれば離職せざる得ない人も多く、一度完治してもその後も再発の気配と向き合う暮らし。
うつ症状が重症化すると自殺するので、そのために亡くなった方をたくさん見て来た現実もあり、更に繰り返すうつ病の後遺症で能力低下が見られるため、優秀な人が普通になるという範囲ではあるものの、知的能力の低下や鬱自殺などが自分自身を襲わないうちに、この体験を記録して置こうと書いた本でもあるようでした。
精神科医としての難しい専門用語もありますが、自分自身が人との交流を極限に抑えてきた事から、この体験記は自分以外残せる人がいないという現実に気づき、まだ書けるうちに書いておこうとなってのパレードブックスでの自費出版でありましたが、増刷にも繋がり一般書店でも取り扱われているようです。
彼女の生い立ちとしての部分も読みごたえがありますが、小説のように簡単に思いを書ける内容でもないので興味のある方は是非読んでいただければと思った1冊です。
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