ジャワの休日（６）　ラウ山麓に建つ神秘の寺院　チュト、スクー寺院

５月５日（日）
古都スラカルタの王宮、マンクヌガラン王宮の見学を終え、１０時１５分、ソロ・バラパン駅に戻ってきました。

ここからは、東へ約36km、ラウ山の麓に建つチュトとスクーの両寺院目指して、ローカルバスの旅となります。

ラウ山方面へのバス発着所となるティルトナディ・バスターミナルへは、駅南口の向かって右側にある連絡通路を使って行きます。

線路の上に架かる連絡通路は、このとおり、新しめできれい。

駅の北側に至るまでの通路はけっこう長め。

“本当にこっちでいいのか”と思うくらいほとんど人通りがない中を、ずんずんと進んでいきます。

空の道を５分ほど歩き続け、ようやく通路を抜けたと思ったら・・・そこは広々とした屋上駐車場。

ここから下へと向かう階段を見つけ・・・。

降りていくと、飲食店などのお店がいくつも建ち並ぶ、デパートのようなところへ。

ここを奥へ奥へと進むと、ようやくバスの発着所を発見。

案外と長い道のりでした・・・。

発着所の近くには、バスの運賃表のようなものが。

これを見ると、ラウ山方面の“カランバンダン”（Karangpandan）行きは、下限2,940ルピア、上限4,800ルピアと書かれています。

しかし、実際バスに乗ってみると、請求されたのは15,000ルピア（約120円）。

ぼったくられたのか、それとも、外国人料金ということなのか・・・。

１０時４０分、カランパンダン行きのバスは、スラカルタのティルトナディ・バスターミナルを出発。

東へ向かって、バイクの多いローカルな幹線道路を走っていきます。

出発から１時間近くが経過し、周囲はこんなのどかな農村風景に。

道路はきちんと舗装されていて立派ですが、どこか懐かしさが漂うカントリーロードですね。

スラカルタから１時間２０分後の１２時、バスはカランパンダンのターミナルに到着。

ここでングロロッ（Nglorok）行きのミニバスに乗り換え（運賃5,000ルピア＝約40円）。

ターミナル内ではお節介焼きのおじさんが“チュト”とか“スクー”とか言ってくれているので、その指図に従い、停まっていたバスに乗り込みます。

１２時１０分、ミニバスはカランパンダンのターミナルを出発し、さらに東へ。

山の天気になってきているようで、雲がだんだんと厚くなっていきます。

高度もだんだんと高くなっていき・・・。

すっかり山中の景色に。

道路は相変わらず立派ですね。

１２時３０分、ミニバスはングロロッの停留所に到着。

ここは三叉路になっていて、一方はチュト寺院、一方はスクー寺院への道になっているようです。

“地球の歩き方”によると、ここで“オジェッ”（バイクタクシー）を利用するのが最安の行き方だそうですが、案の定、停留所でウロウロしていると、それらしき人が近づいてきました。

寄って来たのはそれほど若めでもなさそうなお兄ちゃん。

チュト、スクー両寺院への送迎に、まず、最低相場と思われる“100,000ルピア”（約790円）と言って見ると、“200,000ルピア”（約1,570円）との返事。

こちらは“150,000ルピア”と値下げ交渉を試みますが、頑として譲らず・・・。

周囲を見ても、ほかに交渉相手が見当たらず、いたずらに時間を消費するのももったいなかったので、チップ込みと思い、ここは200,000ルピアで妥結。

写真は、チュト寺院からの帰り道に撮ったドライバーの写真。

がっつりポーズを決めちゃって、高い金を払ってるんだから、安全運転でお願いしますよ～。

オジェッの後ろに乗って山道を駆け上がっていくと、ちょっぴりコワさもありますが、風が身体を吹き抜けて、何ともたまらないいい感じ。

２０分ほど走り続け、１３時、お目当てのチュト寺院入口に到着。

受付で入場料25,000ルピア（約200円）を支払い、参拝者の“しるし”である、白と黒の市松模様の腰布を巻いてもらいます（別途寄附が必要、わたしは500ルピア（約5円）を支払い）。

ドライバーには入口近くで待っていてもらって、いざ、チュト寺院へ。

地元インドネシア人にとっても人気の寺院なのか、同じ腰布を巻いたたくさんの観光客が参道を行き来しています。

参道の階段を上っていくと、インドネシアの他の地域では見かけないような奇妙な姿の石像と、バリ島の割れ門のようなモニュメントが。

このチュト寺院、１５世紀のマジャパヒト王国（1293-1478年）時代に建てられた、一応はヒンドゥー教の寺院とされますが、土着ジャワのアニミズム信仰（精霊信仰）が入り混じった神秘の寺院として、地元インドネシア人の注目を集めているようです。

入口の方を振り返るとこんな風景。

遠くには山並みが見え、だいぶ高いところまで上がってきた感です。

このチュト寺院、標高1495mの地点にあるそうで、少し前のカランパンダンのバスターミナルにいた時とは打って変わって非常に涼しく、半袖シャツでは肌寒さを感じるほどです。

さて、この見事な“割れ門”をくぐって進むと・・・。

さらに本堂へと続く一本道が。

この辺りは平らなスペースになっていて、地元インドネシア人の観光客が写真を撮り合ったり、芝生で横になったりしてくつろいでいます。

寺院のすぐ脇には曲線が美しい青々とした畑が。

本堂へと続く一本道は、このように、ところどころ段差があり、石造りの階段が備えられています。

こちらの階段の前には、こんな奇妙な石陣が。

手前から、リンガ（男性器）、ヨニ（女性器）、亀を表わしているそうですが、正統なヒンドゥー教とは違う、土俗信仰の匂いを感じますね。

振り返ると割れ門の向こうは一面雲海のような感じ。

このチュト寺院の敷地が宙に浮いているようでもあります。

まさに、チュト寺院はインドネシアのパワースポット的な場所ですね。

若者がたむろしているこちらの石段を上り・・・。

細い割れ門のすき間の道を通り抜けると・・・。

寺院の最奥部にある本堂に到達。

この菱形状のかたち、これまでのヒンドゥー教寺院では見たことがないような姿で、ヒンドゥー教寺院というよりはマヤ文明のピラミッドを想像してしまいます。

まさに、“なぜこんなところに？”というような、神秘の寺院です。

マヤのピラミッドの周囲には、こんなリアルなリンガ様の像や・・・。

こんな神様の像が。

雰囲気が日本の路傍のお地蔵様に似ていますね。

ここで小雨がポツポツと。

遠くの方は晴れているのに、この辺りだけ異空間な感じです。

雨も降って来たし、このあたりで下山。

時刻は１３時２０分。

最奥部には１０分ほどの滞在時間でした。

ひと一人擦れ違えないような、狭い割れ門の間を下りていき・・・。

１３時３０分、チュト寺院の入口に戻ってきました。

ここまで来ると雨は止んで・・・何とも不思議な天気。

さて、腰布を返して、オジェッのドライバーと落ち合い、次のスクー寺院を目指します。

チュト寺院からの帰り道、ドライバーにオジェッを停めてもらい、山道から眼下に広がる街並みをパチリ。

ジョグジャカルタのような都会からこんな山奥までやって来たんだなあと感慨もしきり。

こんな山奥でもやはり道はきれい。

インドネシア、案外道路事情はいい？

チュト寺院を出発してから４５分後の１４時１５分、ラウ山麓にあるもうひとつのヒンドゥー教寺院、スクー寺院に到着。

こちらはチュト寺院に比べ、奥行きはありませんが、何やら小さな城塞のような雰囲気。

早速入場料（25,000ルピア＝約200円）を払い、本堂に向かって歩いて行くと・・・。

見えてきたのはチュト寺院と同じ、菱形状のマヤのピラミッド！

しかもその周りには、亀だったり奇妙な神々の像だったりと、雑多な感じのモニュメントやら構造物がたくさん。

なんだかカオスな感じのする寺院です・・・。

先が崖となっている敷地の端には、こんな幾つもの石板に刻まれたレリーフが。

ヒンドゥー教の物語でしょうか、謎の文字とともに何人もの人物の姿が刻まれています。

顔は北部インド人のようなアーリア系ではなく、インドネシア土着のオーストラロイド系といった感じですね。

こちらはヒンドゥー教の神鳥ガルーダか？

腕を横に広げる仕草は確かにガルーダですが、顔や体つきはこれまで見てきたガルーダとはかなり違和感がありますね・・・。

まるで仮面ライダーに出てくる怪人もしくは小林幸子のよう（笑）。

【酷暑のバンコク（４）　ワット・プラケーオのガルーダ】
https://4travel.jp/travelogue/10895966#photo_link_34003635

【震災１年後のネパール（２）　パタン博物館のガルーダ】
https://4travel.jp/travelogue/11150258#photo_link_44652128

こちらはガネーシャと思われる、ゾウの顔をした神のレリーフ。

“おきゃん”な動きがガネーシャっぽくないんだよなあ・・・。

極め付きがこちら。

リンガ像のつもりなのでしょうが、あまりにも即物的・・・。

自由な発想でたいへん面白いのですが、本当にこの寺院が造られた１５世紀当時のものなのか、それとも、現代人が観光客目当てで宗教心のカケラもなく造ったものなのか、思わず勘繰ってしまいますね。

さて、こちらのマヤのピラミッドは、上に登ることができます。

登って正面方向を見てみると・・・崖の上に建っているせいか、先ほどのチュト寺院と同様、敷地が宙に浮いているような感じも。

スクー寺院の敷地の端から外を覗くとこんな感じ。

まさに下界を見下ろしているような感じです。

スクー寺院訪問の最後に、現在では崩落の危険があるため使われていない門を見学。

ブルーの突っ支い棒で支えられた狭い門の中を覗いてみると・・・。

地面にはリンガとヨニの交接の様子を描いたレリーフが。

この寺院、子宝に恵まれるご利益でもあるのでしょうか？

いずれにしても、ヒンドゥー教と原始的な土俗信仰が混ざったような、オカルティックな感じの寺院でした。

時刻は１４時４０分、これにてスクー寺院の見学を終了。

駐車場で待っていたドライバーのオジェッに乗り、１５時、ングロロッのバス停に戻ってきました。

これにてオジェッによるチュト、スクー寺院のツアー終了。

１２時３０分から１５時まで、２時間半ドライバーを拘束していたわけだから、今回の報酬が200,000ルピア（約1,570円）だと、１時間あたり約630円で、日本の最低賃金（790～1,013円）よりは割安・・・と思っていたら、中部ジャワの最低賃金は100円未満だそう・・・。

彼には２時間半で２日分くらいの稼ぎを渡してしまったわけね・・・。

まあ、こんなところでオジェッでの移動を希望する外国人観光客に出会う確率なんて、滅多にないのでしょうが（この日はわたしのほかには外国人観光客の姿は見かけませんでした）。

別れ際、ドライバーはカランパンダンのバスターミナルまで送ろうかと言ってきて、“いくら？”と聞くと、ニヤリとしながら、“100,000ルピア（約790円）だ”とのこと。

これはさすがにお断りですね・・・。

ングロロッからは、往路と同様、ミニバスを利用し（運賃はたったの5,000ルピア＝約40円）、１５時２０分、カランパンダンのバスターミナルに到着。

スラカルタ行きのバスはまだ到着していなかったので、ターミナル内の売店でペットボトルのお茶を購入して（7,000ルピア＝約55円）ぐびぐび飲んでいると、売店の女性が英語で、“日本人？”と話しかけてきました。

“イエス”と答えると、ドラゴンボールやNARUTOなどの日本のアニメや漫画が好きだとか、若めに見えるのにお子さんが二人もいるとか、今はラマダン中で５時から１８時までは水も飲めないとか、とりとめのない話で盛り上がり。

それにしても、こんな外国人がたまにしか来ないような田舎で英語がペラペラとは・・・インドネシアは経済成長著しい国、やはり教育熱心な国なのでしょうね。

＊インドネシアの2018年の経済成長率は＋5.2％（世界39位）でマレーシア（＋4.7％、同49位）、タイ（＋4.1％、同61位）より上位（日本は＋0.8％で同170位）。

【世界経済のネタ帳（経済成長率ランキング）】
https://ecodb.net/ranking/imf_ngdp_rpch.html

１５時４５分、売店の女性に別れを告げ、やってきたスラカルタ行きのバスに乗り込みます。

帰りの運賃は10,000ルピア（約80円）。

往路が15,000ルピア（約120円）だったことを考えると、外国人料金は適当に設定されているのかな。

カランパンダンから１時間１０分後の１６時５５分、バスはスラカルタのティルトナディ・バスターミナルに到着。

南半球のため５月のジャワ中部は日の入りが早く、１７時前にしてだいぶ日が陰ってきました。

ソロ・パラバン駅へとつながる連絡通路から市街をパチリ。

スラカルタではだいぶ遠出をしましたが、この日ももう終わりかという印象です。

１７時０５分、ソロ・バラパン駅に到着。

駅の窓口でジョグジャカルタに戻る乗車券を購入しようとしたところ、４つある窓口に対して、それぞれ１０人超の行列。

１０分ほど並んで待ち、なんとか帰りの乗車券をGET。

いちばん早いのが１７時３０分発の特急で、運賃は55,000ルピア（約440円）でした。

１７時２０分、到着していた列車に乗り込みます。

車内は、運賃が高いだけあって、かなりきれいですね。

そして１７時３０分、列車は定刻通り、ソロ・バラパン駅を出発。

１８時２５分、ソロ・バラパン駅から１時間弱で、列車はジョグジャカルタ・トゥグ駅に到着。

構内ではこんなフォークグループの演奏も。

ラマダン中の夜の楽しみというところでしょうか。

インドネシアはイスラム教国とはいえ、こういうところはだいぶ西洋化している感じです。

夜になって騒がしくなったジョグジャカルタ・トゥグ駅を後にし・・・。

この日はどこかビールが飲めるところはないかと探していたら、マリオボロ通りに面した建物の上の方に、いかにも外国人向けという感じのレストランがあるのに気付きます。

そして横道に入ったところに、上へと続くささやかな入口を発見。

階段を上っていくと・・・客はガラガラでしたが、期待していたとおりのお店にたどり着くことができました。

やはりこのあたりはイスラム教国、大っぴらに酒が飲める店を構えるのは難しいのでしょうね。

ここは“LEGIAN”という名前の外国人向けレストラン。

メニューには、恋焦がれていたビールが。

もちろん、いの一番に注文です（笑）。

（ビンタンビールのSサイズで35,000ルピア＝約280円）

食事はインドネシア風焼きそばのミーゴレンをオーダー（30,000ルピア＝約240円）。

２日前に食べたレストランよりも安くて量がたっぷりで、味も良くて満足のいく食事でした。

“地球の歩き方”には載っていなかったものの、我ながらいいお店をみつけられたものです。

さて、この日はこれにて終了。

翌日は、ジョグジャカルタ郊外にあるこれまた神秘の洞窟、ジョンブラン洞窟を探検します！

（ジャワの休日５日目～ジョンブラン洞窟観光に続く。）