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涙には、潤滑剤や保護膜として眼球の健康を守ると共に、悲しみや喜びといった感情を表現する時にも流れてくる。
だが、涙腺の機能が衰えてしまうと、目が乾燥してしまいドライアイになってしまい、泣きたいときに涙がでてこなくなる。
ドライアイを治す方法は目薬や外科手術などがあるが、人工培養された涙腺を移植するという技術も注目されている。
オランダ、ヒューブレヒト研究所が開発した人工涙腺は、感情的な涙をながさせることもできるという。
人工培養した涙腺で涙を作る
オランダ、ヒューブレヒト研究所のヨリック・ポスト博士によると、成人の少なくとも5%はドライアイと推測されるという。その多くが、涙腺で涙が作られないことと関係しているそうだ。
これまで、涙腺の仕組みは完全に理解されておらず、限られた治療手段しかなかった。そこで今回開発されたのが人工培養された涙腺だ。
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感情で出る涙を流すことができる人工涙腺
『
Cell Stem Cell』(3月16日付)で発表された研究では、マウスの幹細胞から作られた「
オルガノイドが紹介されている。
オルガノイドとは、小さいながら本物の構造をそのまま再現した3Dミニ臓器モデル、つまり人工臓器のことだ。
今回の培養された涙腺オルガノイドは、涙腺全体の構造が見事に再現されているばかりではない。感情が揺れ動くと涙を流すことができるのだ。
涙を分泌させる神経伝達物質「ノルアドレナリン」をくわえると、涙で風船のように膨らむことが確認されたそうだ。
credit:Cell Stem cell
涙が失われる症状の解明に
この研究はもともと、
シェーグレン症候群といったドライアイを引き起こす病気の研究にあった。
たとえば涙腺オルガノイドから、目などの感覚器官の発達を制御する「PAX6」という遺伝子を取り除いたところ、細胞がきちんと分化されなくなることが判明した。シェーグレン症候群の原因は、かねてからPAX6の欠陥にあるのではないかと推測されている。
さらに、これまであまり理解されていかなった涙の成分についても新たに分かったことがある。それは導管細胞と腺房細胞から化学成分が異なる液体が分泌されており、これが混ざって涙になっているということだ。
将来的な再生医療に期待
この研究では、将来的な涙腺移植治療の可能性を探るために、人間の細胞からオルガノイドを作り、それをマウスの涙腺に移植するという実験も行われている。
移植後2週間もすると、オルガノイド細胞は管状構造を作りあげ、2か月以上そこにとどまり続けたという。また、その内部では涙のタンパク質も検出された。
将来的な涙腺の再生医療へ向けた大きなステップと期待される成果だ。だが、こうした知見が得られたことと、それを実際に実行に移すことにはまだまだ大きな隔たりがあるとのこと。
失った涙を取り戻せるようになるまではもう少し時間がかかるようだ。だからこそ、涙は美しいと言えるのかもしれない。
References:eurekalert/ written by hiroching / edited by parumo あわせて読みたい 女性の涙には無臭の化学物質が含まれており、男性のテストステロン濃度を下げる沈静作用がある(イスラエル研究) 本物の毒を分泌する、ヘビの毒腺のミニチュア版の培養に成功(オランダ研究) 人工的に作られたヒトの大脳で神経活動が確認される(日本研究) ホムンクルスかな。人工培養したミニ脳を約1年で乳児の脳に成長させることに成功 3Dプリンターでちゃんと機能するミニ肝臓の作成に成功(ブラジル研究)
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