わたしのとっておき
『風立ちぬ/菜穂子』
堀辰雄
作品概要、あらすじ
堀辰雄 著『風立ちぬ/菜穂子』(小学館刊)
150
『堀辰雄詩集』は180部限定、うち画家の深澤紅子肉筆水彩画1葉とカット挿入30部、同手彩デッサン1葉挿入150部です。堀は、どの本も装丁に心を尽くし、少数部数で出版しました。本当に自分の作品を理解する読者に届けたいと考えからです。その後、堀の作品は多くの読者に求められようになり、さまざまな出版社から再版されました。小さな灯をともすことの大切さとその力強さを堀の本は教えてくれます。堀が制作し続けたのは戦争の時代でした。
高等部、大学生、大学院生に読んでほしい本です。
自分が「独り」と感じるような時に読んでほしいと思います。2017年に、単身ロンドンに国外研修に行ったときに持っていった本です。「風立ちぬ」は婚約者の最期を看取る物語ですが、「独り」となった主人公が婚約者の存在を身近に感じ続ける「死のかげの谷」の章は、心を打ちます。
青山学院大学教授/前国際センター所長
小松靖彦
文学部
東京大学文学部国文学科卒業。東京大学大学院人文科学研究科国語国文学専攻博士課程修了。博士(文学)。専攻は『萬葉集』を中心とする日本文学、書物学、文学交流。現在は、文学を通じて海外の人々との相互理解を深める「文学交流」の研究と実践に力を注いでいる。著書に『萬葉学史の研究』(おうふう/上代文学会賞、全国大学国語国文学会賞、青山学院学術褒賞受賞)、『万葉集と日本人』(/古代歴史文化賞(優秀作品)受賞)、『戦争下の文学者たち―『萬葉集』と生きた歌人・詩人・小説家』(花鳥社)など、編著書に『文学交流入門』(武蔵野書院)など。アメリカ合衆国、インド、ポーランド、セルビアなどの大学で講演・研究発表・講義。年に大英図書館で客員研究員として敦煌写本を調査。