さて。
六波羅蜜寺のすぐ近くにもうひとつ行きたいお寺があった。
『六道珍皇寺』。
六道ってのは仏教用語で、
人間は天界・人界・畜生・修羅・餓鬼・地獄、の6つの世界を生まれ変わる存在である
トいう考え。
でまあ、その生まれかわる交差点?みたいな意味合いの言葉が『六道の辻』。
その昔このあたり一帯は鳥辺野の葬場で、
この六道珍皇寺はその入り口に建っていたことから、
あの世とこの世の接点、つまり『六道の辻』って呼ばれるようになったらしい。
京都のヒトにとってはホントにあの世への入り口だったわけか。
そりゃ、なんとなくトメ子がビビってるわけだ。
なんつっても冥界へ行き来したっていう井戸もあったりするらしいし。
夕方。
だーーれもおらへん。
さらにビビるトメ子。
ん?なんとなく通り過ぎたけどこれなんだ?
閻魔堂…。
格子の奥になにかあるぞ。
『小野篁卿木立像』。
ここから覗けト。
ちなみに小野篁(おののたかむら)ってのは閻魔大王に仕えて
井戸から冥界に行ってたっちゅー噂のシト。
ほほぅ、どれどれ。
………わ…デカイ…実物大らしいけどマジか。
2mくらいあるけども…。
で、隣りが閻魔さまか。
どひーー。
すっげーーー!!
この閻魔さんすごい。なんというか迫力がスゴイ。
国宝級だわ、このググッと来る感じ。
オイラに触れたらケガするぜ、みたいな感じ。
すごいよ!ほらほら!
ト、呼んだのだが、まったく寄って来ないトメ子。
……ビビっておるな。
なにコレ、鐘?この中に鐘があるの?ここ引っ張ればいいのか?
どれ。
………。
いやもう……。
ホントすごいから!音、すごいから!
この迎え鐘の音は冥土まで響き霊を現世まで呼び戻す…ト言われている
らしいけど、絶対ホントだと思う。
それくらい響き方がスゴイ。
普通のお寺の鐘の音を想像してたらかなりびっくりするはず。
でもって、本堂の裏庭には小野篁がココを通って冥界に通ったトいう
井戸が。
もうひとつ、黄泉がえりの井戸、トいうのも2011年に発見されたらしいのだが
見えんかった…残念。
あっちだこっちだト、アグレッシブにのぞきまくるわしに反して
まったくNOのぞきのトメ子。
もちろん鐘も撞かず。
六波羅蜜寺に続き、この六道珍皇寺のおいちゃんもすごく親切だった。
拝観時間を過ぎていたにもかかわらず、本堂をあけてご朱印を書いてくれたおいちゃん。
冥界とか六道の辻とか閻魔さんとか、
話だけ聞くとなんだかおどろおどろしい雰囲気に思うかもしれないけども、
おいちゃんは江戸っ子みたいなシャキシャキしたカンジのヒトだったし
境内はぽかーんとしたのんびりした場所だった。
すぐ近くの大通りにはあんなに観光客がうじゃうじゃいるというのに、
そんなの信じられないくらいの静けさ。
それもイヤなカンジの静けさじゃなくて、田舎の親戚の家にいるみたいな
なんとなく懐かしいような気持ちになっちゃう静かさ。
だがしかし、このあと予定していたうどん屋さんに行くのに
また祇園を通過しなくてはいけなかった。
バス、あいかわらずぎっしり。
「もう歩いていこ!バス待っとるよりそっちのが確実やし」
そ、そうやね…。
歩くのがまったく苦にならないサニーと、
ちょっと苦になるわしとトメ子。
でもどう考えても歩いていくのがいちばんの得策のようだった。
だって途中の八坂神社、相変わらずのうじゃうじゃ感。
てくてくてくてく、ひたすら歩くオバ3人。
うどん屋さん、すいてるといいなあ。
「そうだねえー」
ここまで歩いて来て混んでて入れない、とかだったらちょーショックだよ。
陽が落ちる。
あーーおなか減ったー。
「今日、買い食いもしてないし」
だよねーーー、すぐ座れるといいけどなー…。
「この角曲がったあたり…のはずだよね?」
ト、期待にドキをムネムネさせてのぞきこむと、歩道に座り込む行列発見。
!!!!
「……わ…うそやん」
マジか?!
「…でもちょっと地べたに座らせるって…イメージと……」
「うん」
ゴニョゴニョ言いながら、おずおずと店に近づいて、はーー。
ワシらの目的のうどん屋さん…ではなくそのお隣のうどん屋さんの行列だった。
ラーメン屋??ト思うような、イマ風な造りのうどん屋さん。
どうやらお若い人に人気のようで行列のほとんどがヤング。
そりゃヤングは地べただろうが座るわなあ。
無事ありついたうどん。
『岡北』さんの天とじうどん。
このピンとたった2匹のエビ天とおつゆを埋め尽くすふっわふわのたまご。
ナニコレ!!うますぎる!
おいしいおいしい!
細めの京風うどんにダシのきいたおつゆ。
いやもうひさびさにこんなにおいしいうどん食べたわ。
京都のおうどんっておいしいんだなあ。
今回のキーワードは「大人」。
前回のような伝説は生まれなかったけど、
ものすごい充実した大人の遠足が楽しめた今回。
東寺のブツを観てイケメンだとささやき、
ご朱印帳選びに『どれが大人っぽい?』『大人っぽすぎない?』ト
いいトシをして悩み、
腹を盛大に鳴らして大徳寺の見学をさっさと切り上げ、
あまおうパフェに身震いし、
バスで降車スイッチを先に誰かに押されて舌打ちをし、
満員のバスで人並みに埋もれて見えなくなり、
六道の辻でオバケいるのか?トきょろきょろし、
かと思えば口数を減らし、
わざわざ20分歩いて一杯のうどんを食べに行く。
大人ってやっぱり楽しい。
そんな充実した遠足だった。
つきあってくれてありがとう。
サニーとトメ子、またいこねー。
春の京都遠足、これにて終了です。
長々とおつきあいありがとうございましたー!