まだまだ桜を引っ張りますけども。
中目黒で夜桜を楽しんだ翌日のこと。
下町の桜の名所・谷中霊園をブラブラ歩く女子4人。
谷中在住のモモレンジャーの案内で、花見+やな散歩(○やなか散歩・×いやな散歩)をするのだ。ミドレンジャーはどうしても抜けられない用事があるので後から合流の予定。
それまでは「谷中霊園で桜見て~そのへん適当に見て~……」トいうなんともきっちりしたスケジュール。
谷中霊園といえば、有名人のお墓もいくつか。
その中でも特に有名な「徳川慶喜」の墓を目指してブラブラ。
「一度行ったんだけど、迷ってたら着いたって感じでさ全然覚えてないんだよねー」トいうモモレンジャーに、「そのへんに看板とかあるでしょう」トいうアカレンジャー。「行けばわかるんじゃない?」トいうアオレンジャー。「お!川上音二郎の墓!」トいうキレンジャー。……まとまり一切なし。
お墓のわりに変なカタチ。
「コレ、上に銅像が乗ってたんだって。戦争の時に出されちゃったみたい」と、キレンジャーが横の説明書きを読むと、アカレンジャーが「ああ台座なんだ、コレ!」ト納得。
その会話を横で聞いていたヨソのオバチャンが「これの上に銅像があったんだって。戦争のあれやこれやで…ねえ~~」ト大声で説明。そして「あー!台座なのねー!これが」ト大きくうなづくヨソのオバチャンズ。
ワシらが言うたまんまやないかい。おまけに「あれやこれや」ってなんだ。
谷中は野良猫が多い町らしい。町だけじゃなく霊園にもたくさんいた。かわいがられているせいか、人が近づいても全く逃げる気配もなく寝ているノラ。
みんなでっぷりしている。
「わーーー!体格いいねえ~~!」ト、カメラでバシャバシャ撮りまくるキレンジャー。
「なに?猫写真撮りに来てるの?」ト通りすがりのおっさんに声をかけられている。
カラスを先頭に一列に並ぶ猫。それを狙う、それこそ猫を撮りにきている人。一番奥の猫のむこうに足だけ見えている人なんか、首からカメラを3台もぶらさげていた。本気や。そんな空気をまったく気にせず、カラスのこっちから「わー!いいねえ~!そのままそのまま!」ト無遠慮に撮るキレンジャー。猫本気撮りの人、ごめんなさい。
ホントに丸いなあ。
「頭ごりごり~ってしてる!」「かわいいなあ」「かわいいよねえ~」
うむ、かわいいじゃないか。
ってゆーか、ホントに行く気あるのか徳川慶喜の墓。
「何やった人?徳川慶喜って」全く知らないキレンジャー。「篤姫のダンナさん?」「ちがうちがう!」「じゃあ誰よ、慶喜って!」「誰って!」「最後の将軍でしょ?」「何やった人?」「………」
こんな人たちが行ってもいいのか、徳川家の墓。
たまに出て来る看板を見ながらぼんやり進んでいると、突然後ろから「この先なんじゃない?!」ト、舞台俳優のような声が。ビクッとする4レンジャー。
「ああ!この人たちも行くみたいだから、後ろをついてゆこう!」
……なんでこんな大声なん……。腹から声出し過ぎ。絶対肉食だなキミは。
「ついてゆけば間違いないな!はっはっは!徳川家の墓といえば…」
って、後ろをついて行くどころか、ぴったりくっつき過ぎて、まるで一つのグループのようになってしまっているじゃないか。いやだ!こんなのと連れになるのは!うるさいっっ!
「あ、あたしたち場所知らないんで、どうぞお先に」
さすがモモレンジャー!
「あ!そうですか!じゃあ僕らは場所知ってるんで先に行きますねっ!どーもどーも!お先に!はっはっは!」
…知ってるんなら先に行けばいいのに…最初から。
なぜか申し合わせたように足取りが遅くなる4レンジャー。なるべくヤツと距離が置きたい気持ちがみえみえ。
「……苦手だわー」アカレンジャーの言葉に深くうなづく3人。
「あ!こんなところに猫がいる!やあやあ!この猫は僕が昔住んでた家にいた猫にすごく似ている!チョッチョッチョッ!」
むこうのお墓の陰から彼の芝居がかったような大声が聞こえてくる。最後の『チョッチョッチョッ!』は、どうも猫を呼ぶ舌打ちのようだ。舌打ちですらこんな遠くまで聞こえるなんて……。お、おそろしい。
「……うざい……」ため息まじりのアカレンジャー。
またしても全員深くうなづく。
ト、いろいろありつつも無事徳川慶喜の墓に到着。
徳川家のお墓にしては思ったよりも質素。
「貞子の井戸、埋めたみたいだねえ」トいうキレンジャーの言葉で、そこを立ち去ることに。
元の桜ルートに戻るためまたブラブラ歩き出す4人。すると、
「それにしても、お墓なのに鳥居があるってめずらしくない?」ト、アオレンジャーが言い出した。
「そうだね、仏様なのにね。鳥居ってことは神様?」アカレンジャーもまわりを見て言う。
「ほんとだー…ってゆーか…お墓に鳥居があって不思議だねって気がつくってのも…なかなか…トシを感じ……」キレンジャー、それは言っちゃ駄目。
…ああお墓だけでこんなに引っ張っちゃった…。どうしよう。
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タナ坊みたいなポヤーンとした猫はさすがにいない谷中。
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ごめんごめん、タナちゃん。タナちゃんじゃない猫の写真、いっぱい載せちゃった。
「オカアサンのばかーーーーーっ!」
あっ!で、で、でも!タナちゃんがいちばんカワイイってば!
「あたりまえにゃーーーーーっ!!」