2023.06.29 カテゴリ: 小野寺史宜著
「本日も教官なり」 小野寺史宜著
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「本日も教官なり」 小野寺史宜著 角川書店 2017年9月1日初版発行
豊士の教習車には今日もさまざまな人が乗り込む。カレシに飲酒運転をさせまいと教習所に通う佳世。就職先で免許が必要な大学四年の七八。孫娘の幼稚園送迎のため69歳で免許取得を目指すしの。
彼ら教習生に対し紳士的に接することを心掛ける豊士。だが、それどころではなかった。17歳の娘が妊娠したというのだ。
若い男女の教習生は、ついつい娘とその相手に見えてしまう。加えて現カノジョ・万由とは徐々に疎遠に。
元妻・美鈴との再会がそれを加速させる!?どうなる、ロック中年・豊士!!
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主人公は34歳の時に転職して自動車教習所の教官になります。
転職前は電気機器メーカーに勤めていたけれど、営業ノルマがキツく人づかいも荒い。大卒入社後の3年で7割が辞めるという会社でした。26歳の時に結婚しているので会社を辞めるのはなかなか難しいところでしょうね。
無理をしていると身体に異変が出てきます。主人公はストレスで突発性難聴になり1年もしないうちに今度は帯状疱疹になります。
その間無理しても会社を休むことはなかったので妻には痛みが伝わらなかった。
会社を辞めることを妻に話してもアパレルメーカーで正社員として働いている妻からは冷ややかな目で見られる始末。
娘の美月は幼稚園の年長でしたが、結婚生活は8年で終わります。
転職後11年が経って主人公は信頼の厚い自動車教習所の教官になっていました。
「本日も教官なり」という題目ですから自動車の教習に通う人たちとの奮闘があれこれと語られます。
69歳の女性は孫の幼稚園送迎が目的だったりしますが流石にこれは危ないと思いました。
69歳という年齢のしのさんですが最終的には車の免許を取ることを断念します。物語りとはいえほっとしましたよ。
それも主人公が、免許を取ったとしても万が一お孫さんを乗せているときに事故にでも合ったら取り返しのつかないことになりますと助言したからです。実際はこんな助言はできないでしょうけどね。物語りということで助言できました(笑)。
他の教習生との話も面白く読みました。
自動車教習所での教官をしている日々の中、ある日突然元妻・美鈴から電話が掛かってきます。高校2年の娘・美月が妊娠したというのです。34歳で離婚したとき幼稚園の年長だった娘が今は高校2年生です。しかも妊娠したと言うんですから物語とはいえびっくりしましたね~😲まあ物語とはいえいろいろ思うところはあります(笑)
主人公の父親ぶりがなんとも微笑ましいのです。元妻・美鈴も離婚する原因は自分にもあったと思うんですね。夫の身体の異変に対して冷たかったと反省します。
娘の妊娠によって夫婦の再生が始まる予感がしましたよ。とは言ってもね~高校は自主退学して出産に備える毎日ですから現実の厳しさはこれからですね。
「本日も教官なり」という題目なので娘の妊娠問題は無くても~と思ったりしましたが面白く読めたのでいいかなぁです😅。
小野寺史宜さんの小説は会話文なども多くて読みやすく、さあどうなる?というわくわく感んもあるのでどんどん読み進めていけます。
思わずクスっとなったり楽しませてもくれます。
特に盛り上がりがあるわけではないのですがリアルな問題提起をしている感もありますね。
読後も余韻に浸っていると人生の指針のようなこともこの物語から感じることができるんですね。
小野寺史宜さんの魅力がそういうことなんでしょうね。だからまたほかの小説も読んでみたくなるんでしょうね。