2001年9月11日午前(日本時間12日午前)、米国国内線の飛行機4機が同時にハイジャックされ、そのうち3機がニューヨークの世界貿易センタービル、ワシントンのペンタゴンなどに突入するという、史上まれに見る大掛かりな同時多発テロ事件が発生し、多くの死傷者を出した。
世界貿易センタービルには、米国企業のみならず、世界の様々な国の企業の出張所や支店があった。
ハイジャックされ墜落させられた旅客機の乗客・乗員は全員死亡している。
この事件のあった9月に、私は欧州・米国へと長期出張の予定であった。多くの企業が欧米への出張を自粛していたが、私の場合は先方からの招待のため中止ができなかった。
国際ビジネスにとって最も重要なのは「信義」であるからだ。
今日、パソコンの中を整理したら、当時の日記が出てきた。
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早朝、6時に自宅を出て成田空港へ。
テロ対策で警備が厳しいと予想されるので、早めに出る事にした。成田空港の警備は思った程ではなかった。
というと誤解を招くが、ここは、もともと厳しいので特に大きな変化がないという事です。
予想が外れたのは「なんで、こんなに混んでるの」という事。
ハワイなんて、旅行者がこなくて困ってるのに、欧州便の混雑はなぜ。
まさか、米国に遊びに行く人が欧州に旅行を振り向けたのではないでしょうね?
航空会社はルフトハンザ。かつてマドリッドへの直行便があったのに、現在はなし。
日本からの観光客が減少しているので消えたのだという。
そこで、フランクフルトでイベリア航空に乗り換えてマドリッドに行くことになった。
私の乗るの飛行機はルフトハンザとイベリア航空と日本航空との共同運行便。
最近は乗客が少ないと、この手の共同運航便となる。
ありがたいのはANAのスチワーデスも乗っている事。
ドイツ、日本、スペインのスチワーデスが共同で面倒見てくれるのが嬉しい(それほどでもないか)。
それから荷物も、フランクフルトでピックしないでOK。これも共同運航便のいいところだ。
今回は初めてビジネスクラスを使う。
自分の会社では、当然、無理だが、今回は依頼されて講演に行くのだから、先方が持ってくれたのだ。
エコノミーのように行列しないでも、ビジネスクラスのカウンターで直ぐにチエックインできる。ちょっとした優越感に浸る。
チエックインは早かったが、手荷物検査と出国審査は大混雑。今年の夏頃から出国カードがなくなったので、手続きは簡略化しているが、出発する人が多くて。
それでも、なんとか出発時間に間に合い一安心(ああ、腹減った。コーヒーが飲みたい)。
毎日運行している10時5分初のルフトハンザ711便、成田発フランクフルト行きに乗り込む。
フライト時間は11時間45分。到着時間は現地時間の14時50分である。
機体はボーイング707-300。はじめてのビジネスクラスなのに、なぜかちょっと狭い気がするが、サービスは満点。お絞り、新聞、雑誌のサービス後にウエルカム・ドリンクはシャンペンである。
シートベルトサインが消えたと思ったら、隣の席では、もうパソコンを取り出し仕事を始めた人がいる。おっと、斜め前方の紳士もパソコンを取り出したぞ。斜め後ろでもやってるぞ。
やっぱりビジネスクラスのエグゼクティブの雰囲気はエコノミーとは違うようだ。
私はシャンペンをお代わりして、新聞に眼を通す。座席に取り付けられた専用のTVで、ニュース番組を見る。
しばらくすると昼食のメニューが配られる。和食と洋食のフルコースだ。
洋食を選べば、食前酒、ワインの種類、前菜、メインを選ぶことになる。
メインは洋食は魚と肉が選べる。肉の牛肉と羊が選べ、さらにベジタリアン用のメニューもある。
なお、牛肉は狂牛病の心配のない米国、豪州産を使用と記されている。(注・当時は米国で狂牛病が見付かる前である)
食後はチーズのデザート、食後酒、ケーキか果物、最後にコーヒーで締めくくる。
ワインはスペインかフランスの選択で、フランスはボルドーかブルゴーニュの選択だ。
なぜかドイツワインの選択はない。欧州では高級ワインはフランスとスペインだ。スペインの方が味が鮮やかで飲みやすく、日本人の味覚に合うように思う。
一休みすると着陸前に夕食が始まる。とはいえ、現地時間は午後3時頃なので、ちょっと軽い夕食だ。飛行時間12時間のうち、4時間近くは食事に費やしていることになる。
フランクフルトに到着すると、まず入国審査である。
フランクフルトは中継点でドイツには入国しない。
かつてならマドリッドで入国審査のはずである。
ところがEUはひとつの国なのだ。EUとしての入国審査を到着した空港で行うのである。
テロの影響で入国審査は厳しいかも知れない。
仕事できたと言うと「何の仕事だ」とか「お前の肩書きはなんだ」とか聞かれるかなあ?とか思っていると「ヤー」の一言でお終い。大丈夫か?
次のマドリッド便が出るまで空港内で約3時間も時間を潰す。ところがマルクが無いのでコーヒーも飲めない。
あと2か月でEUの通貨がユーロに統合される。
ここでユーロの両替すれば、欧州内はどこでも使えるのだ。今、ここでコーヒーのためにマルクに両替しても意味が無いと悩みながら時間を潰す。
マドリッド便は午後6時発のイベリア航空。
元の国営航空でスペイン人には評判が悪いが、先入観を無くせばまあまあだと思う(ノースウエストに比べれば何でも良い)。
飛行機はやっぱりエアバス300。
欧州諸国の共同開発機なので多用されている。
ここでも夕食が出て、ビジネスクラスはスペインの発泡酒から始まるフルコース。食事が終わったらマドリッドに到着だ。
マドリッド空港は標識が解りにくく、バゲッジクライムが解らずに迷った。
それでもなんとか、お迎えのS次長に対面でき、ホテルに送ってもらった。スペインはやはり遠い。西の果てに来た感じだ。早く眠りたいとひたすら思う。
(続く)