元外務省ノンキャリで、ラスプーチント呼ばれた男・佐藤優氏が、
自爆テロについて書いている。
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なぜパレスチナの若者は命を捨ててまでテロ行動に走るのか。
イスラエルには頻発する自爆テロリストの内在的論理を研究する
「反テロリズム国際政策研究所」というシンクタンクがある。
同研究所の調査結果によれば、自爆テロはビジネスとして成り立つのである。
自爆テロは狂信者や精神に変調を来した人物が行う現象ではなく、政治目的によって緻密(ちみつ)に人材養成がなされている。
テロ組織にとって自爆テロは成功の確率が高いことと、テロリストが死亡してしまうので退路を確保する必要もなく、また犯人が捕まることもないので、情報漏洩(ろうえい)も防ぐことができるので魅力的だ。
パレスチナでは産業が十分育っていないので、高校を卒業してもなかなか就職できない。
ハマスはここに目を付けて、中高校生でまじめな生徒を学習塾に誘い、一般の勉学とともにイスラム原理主義教育を行う。
その中で、口が堅く、まじめそうな人材を発掘し、「シャヒード(殉教者)」になるための特殊教育を行う。
イスラム教は自殺を禁じている。
しかし、信仰のために戦って死ぬことは、それが無謀な戦いであっても、自殺ではなく「殉教」だ。
ハマスの学校では「殉教者」になれば「天国で永遠の命を授かる」
「アッラー(神)の顔を拝むことができる」
「七十二人の若くて優しい処女とセックスすることができる。
この処女はセックスをしたあとも再び処女に戻るので、永遠に処女とのセックスを楽しむことができる」
「七十人の親戚(しんせき)に天国に入る資格を与えることができる」と洗脳教育を行う。
自爆テロリストとなるのは十七-二十七歳の貧困家庭出身の独身男性が大多数だ。
ただし、高校までの教育は終えている。
洗脳教育は段階的に行われ、最後の仕上げは墓場で死体とともに寝て、死に対する恐怖を取り除く。
そして最後に喜んで「殉教」の旅に旅立つとの決意を表明する姿をビデオに撮影する。
そしてTNT爆弾を三-十五キロ身体に巻き付けた「動く爆弾」ができあがるのだ。
自爆テロ決行後には、「殉教者」の家に親戚や近所の人々が集まり「立派な息子さんをもってうらやましい」と褒めたたえる。
さらにハマスに連なる福祉団体が自爆テロリストの両親に終身年金を支払う。
イスラム福祉団体の財源は主にサウジアラビアからのオイルマネーであるが、最近の原油高を背景に資金は潤沢だ。
家族にとっては「殉教者」のおかげで社会的地位も経済状況も改善するのである。
このように自爆テロはビジネスとしても十分成り立つのだ。
イスラエルの専門家は、自爆テロを対症療法で防ぐことは不可能と考えている。
対策としては、いかに自爆テロが繰り返され、殺戮(さつりく)が続こうとも、テロリストの要求をのまず、自爆テロが政治戦術として有効でないようにすることと、パレスチナに産業を興し、自爆テロビジネスに頼らなくても低所得者層が生活できる環境を整備することだ。
産業振興で日本にできる貢献もあるはずだ。