映画『潜水服は蝶の夢を見る』★人が生きるということ
突然の病に、命をとりとめ、意識が回復したものの、ジャンは、
左目のまばたきだけが自分と外界をつなぐ手段になったことを知ります。
ひたすらアルファベットを聞いて、1文字ずつ瞬きして、意思を伝え
そのまばたきだけで、自分の意思を記録し、本を刊行した、というその事実に
まず敬意を表したいと思いました。
「死にたい。」
そう口にしたとしても、生きている限り、誰かにそばにいてほしいものでしょう。
誰かに、理解されたい、つながっていたい……。
それが、難しいことであっても、言葉にできない悲しみを背負った人の心にできるだけ
寄り添えたら……。
人の心の闇は、果てしなく深く暗く、届くことはできないかもしれなくても、そう願いたくなります。
ギョロギョロ動く、ジャンの左目。
それは、唯一、残された彼への入り口。
彼は、しがみつこうとしているようでした。
人とのつながりが、ごく細い糸でしかないとしても、それを逃さず、つかまえようとするように。
彼が、今、生きているすべてが、そこに凝縮されているように。
生きることは、美しく尊いものですが、
生きていくことは、綺麗事ではなく、
精神は、悩み、苦しみ、煩悩に惑わされ、
肉体は、垢にまみれ、分泌し、排泄します。
ジャンの口元から流れ出た唾液を拭いてあげるシーンは、
自分で、見づくろいが出来ないジャンを憐れむのではなく、
彼が、この世で生きている、ということを、むしろ、生生しく見せてくれたことで
人が生きる、ということの意味と価値を感じ、涙がこぼれました。
蝶の夢を見る、
タイトルのように、彼は、精神世界のなかで、解き放たれていたと思えるのは、
彼を外から見るものにとっては、救いかもしれません。
彼が、協力者を得て、外に向けて、自己を発信できたことは、
私には、救いでした。
このように生きた人がいる、ということを教えてくれたことに、
特に意味を感じた作品でした。
ちなみに、私は、この作品を知ったときに、ある思い出が頭をよぎりました。
http://blogs.yahoo.co.jp/yutake2415/MYBLOG/yblog.html?fid=0&m=lc&sk=0&sv=%A4%A2%A4%A4%A4%A6%A4%A8%A4%AA
それが、心にひっかかっていて、なかなか鑑賞出来ませんでしたが、
彼への敬意から、鑑賞しました。
観て良かったと思っています。
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