映画『男と女』★映画みたいな恋、という恋かも
作品について https://www.allcinema.net/cinema/3699
↑あらすじ・クレジットはこちらを参照してください。
映画レビューそのまま(ネタバレ)です。
夫を亡くした“妻”と、妻を亡くした“夫”は、
娘の“母” と、息子の“父”として、出逢った。
愛する夫や、愛しい妻がいた生活。
愛は、人間を特別な存在に変える、という。
親としての出逢いが、やがて
彼らを、”男と女”に変えていく。
二人の微妙な心情と関係が、モノクロとカラーの交錯した映像に、
重ねられていくのは、さりげなく、見事だ。
レーサーである彼の、レースの無事と勝利を祈りながら
「愛している」と電報した彼女。
祝勝会を中座して、彼女のもとへ走った彼。
少しでも早く逢いたい。
はやる気持ちが、アクセルを踏ませる。
加速された二人は、このまま新しい家族になるのか、
と予想していたら、
男と女は、そんなに簡単ではなかった。
愛しているから、肌を合わせたのに………。
彼の腕の中で、思い出してしまったのは、
今は、亡き人の鼓動……。
夫が口ずさんでいたサンバが、空耳のように流れる。
彼女の心までが、目の前にいる男のなかに、飛び込むのを
押しとどめようと、するかのように…………。
抱きしめた彼を背にした、
彼女の目の動き、瞬きが見せた表情…………。
そんな彼女に、気づかない彼ではなかった。
「なぜ?」
と聞いてしまうが、
多分、答えは、聞きたくなかった。
「夫が、私の心に生きているから。」
一人、列車に乗った彼女。
暗い窓には、自分の顔だけが見え、責めるように
自分を見つめ返していたはず。
後ろめたい気持ちは、夫に対しても、彼に対してもある。
なぜ?という、彼の問いが、いつまでも耳にこだまする。
愛している、と言った気持ちは、本当なのに……。
一方、彼は、雨のなか、車を走らせる。
ワイパーで、拭いきれない雨だれは、多分、彼の心そのまま。
なぜ?という問いは、自分には、どうしたらいいのか?
と問い返してくる。
「この列車は、パリまで直通?」
「いいえ、途中で、乗り換えるわ。」
それは、きっと
運命が残してくれた、チャンス。
彼女に追いつけるタイムラグ。
あなたを愛している、と言った、彼女に……。
「愛している。」
それは、彼も同じだ。
今、彼女を捕まえられるのは、自分だけだ。
今、生きて、彼女を愛しているのは、自分だけなのだ、と……。
ならば、
男と女は、簡単かもしれない。
愛している。
それだけでいい。
先に着いた彼が、入線した列車を迎える。
降車した彼女が、雑踏から少し遅れて、
ゆっくり、こちらに歩いてくる。
そして、彼を見つけた!
……そこにいるのは、
ただ抱きしめ合う、男と女。
♪ダバダバダ ダバダバダ………
フランシス・レイのテーマ曲は、
明るくアップテンポなのに、足踏みしたような旋律を奏でる。
それは、まるで、揺れている男と女そのもの。
逸るトキメキと、ためらいと…。
それでも、愛し合う男と女の旋律は、
リズミカルに、甘いメロディを奏でながら、
最高のラストシーンに、導いていく。
愛している
ただ、それだけの恋に、めぐり逢いたくなる………。
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