ギリシャ騒動雑感 マキャベリストがいた?
しかもギリシャが財政を誤魔化しているもの薄々承知の上です。
一体誰がこんな馬鹿なことをしたのでしょうか?
ワタシはマキャベリスト達が、素朴で善良な人々を騙くらかしてやらせたのだと思います。
ところで元祖マキャベリスト事、ニコロ・マキャベリの夢をご存知ですか?
彼は何の為に後世「不道徳の書」或いは「権謀術策主義」とも思われた「君主論」を書いたのでしょうか?
マキャベリが「君主論」に託した夢は、イタリア統一でした。
ワタシは思うのですが、実は現在のヨーロッパはマキャベリの時代のイタリアと同様な危機にあるのです。
マキャベリが生きた時代のイタリアは、ルネサンスの最盛期でした。 マキャベリはその盛期ルネサンスのフィレンツェに生まれたのです。 ミケランジェロは彼とほぼ同年、ダヴィンチはこの二人が活躍し始めた頃は、もうマエストロと呼ばれていました。 ラファエロは彼等より少し年少になります。
マキャベリが生きた時代のフィレンツェは、だからこうした天才達が、普通に市内を仕事をしている時代だったのです。
しかしこうした華やかな文化とは裏腹に、イタリアの独立は大変危うくなってきた時代でもありました。
なぜなら当時のイタリアはフィレンツェ始め、幾つもの小国に分裂していました。 これらの国々は小国とは言え、経済力は大変なモノでした。
ベネツィア共和国は人口は15万人程度でしたが、歳入ではオスマントルコ帝国とほぼ同等でした。
フィレンツェだって負けてはいません。
イギリスやフランスの国王は、フィレンツェの商人から融資なしには、国家を運営できない状態でした。
アルプスの北国々は、領土や人口では圧倒的でも、文化と経済ではイタリアの都市国家には遠く及ばなかったのです。
しかしマキャベリが生まれた頃までに、これらの国々は着々と王を中心とした中央集権体制を固めていきました。 そしてこうした王はイタリアの都市国家が想像した事もない程膨大な軍勢を集める事ができるようになっていたのです。
もしその軍勢がイタリアを襲ったら?
マキャベリの青春時代、1494年実際にこれが起きたのです。 フランス王シャルル8世がナポリ王国の継承権を主張して、大軍を率いてイタリアに攻め込んだのです。
その軍勢の通り道になったイタリアの小国はどれもなすすべもなく、大混乱状態になりました。 フィレンツェも全市パニック状態に陥ります。
しかしその後もフランス、神聖ローマ帝国、スペインなどが、繰り返しイタリアの支配権を求めて、攻め込んで来ると言うことが繰り返されるようになったのです。
イタリアの小国はその度に、自国の生き残りだけを考えて、あっちについたりこっちに着いたり、右往左往を繰り返すと言う始末です。
自国の生き残りの為なら、他のイタリア諸国を裏切ったり、敵に回して戦ったりして、唯自国の利益でけを確保しようとしたのです。
しかしそれが結局イタリア半島に住む人々全てを不幸にしたことは言うまでもありません。
盛期ルネサンスと言うのは、実はイタリアにとって非常に悲惨な時代でした。
そして1527年、ローマに攻め込んだ神聖ローマ帝国軍は、ローマを壊滅させて、遂にルネサンスの息の根を止めてしまいました。
こうした時代を生きたマキャベリが夢見たのが、イタリアの統一でした。
イタリアがこんな小国分裂さへしていなくて、スペインやフランスのような統一国家であれば、経済力で圧倒するイタリアがこんな野蛮国に翻弄されるはずもないのです。
マキャベリはフィレンツェ共和国の書記官の仕事をしている間い、その夢を叶えてくれそうな人物に巡り合う事ができました。
それはチェーザレ・ボルジア、時のローマ法王アレッサンドロ6世の息子でした。
法王の息子?
勿論法王は結婚してはいけないので、非嫡出子です。 ホントは結婚だけじゃなくて、女性と交わるのもダメなはずですが、当時の人々はそこまでは問題にしませんでした。
ともあれこの法王の息子は、抜群の軍事的才能と政治的才能に恵まれており、法王を後ろ盾にして、武力によるイタリア中小都市国家を侵略して、イタリア統一に向かいだしたのです。
しかしこのチェーザレ・ボルジアはイタリア統一半ばで挫折します。 父だったローマ法王が死に、自分も病に倒れている間に、彼の敵達が一期に襲いかかって、その政治生命を断ったのです。 そしてその後間もなく彼の命そのものも尽きてしまいました。
まだ30代になったばかりだったのに・・・・・。
マキャベリもまたその後間もなく、フィレンツェ共和国の書記官の職を追われました。
失業したマキャベリが、書記官時代に間近にみたチェーザレ・ボルジアを通して、君主のあるべき姿を描いたのが「君主論」なのです。
彼は理想的な君主がイタリアを統一して、イタリアの主権を守ってくれる事を夢見たのでした。
そうでもしなければ、早晩イタリアは、スペインやフランスなどの支配下に置かれてしまうだろう。
これが君主論を書いたマキャベリが、感じ続けた危機感でした。
その君主のモデルだったチェーザレ・ボルジアが、目的の為に手段を選ばず、権謀術策何でもアリの男だったので、マキャベリストと言えば、権謀術策主義のように言われるようになったのです。
で、それがユーロとどういう関係?
それは現在のヨーロッパを当時のイタリア半島と考えればわかります。
ヨーロッパ諸国は20世紀半ばまでは、世界を支配していました。
それが第二次大戦後は、唯の中小国の集団になってしまったのです。
それでも70年代ぐらいまでは、経済力と軍事力でアジア・アフリカ諸国を圧倒していました。
しかしその経済力も軍事力を、未来永劫維持できる保障はありませんでした。
実際、70年代ぐらいからアジア諸国は少しずつ経済力を伸ばし始めました。 アジアには人口ではヨーロッパ諸国を圧倒するメガ国家が幾つもあるのです。
またアメリカの力は既に第一次世界大戦後から、ヨーロッパを圧倒しています。
こうなるとヨーロッパはいつまでこの優位を保てるのでしょうか? ヨーロッパ諸国が今のまま中小国の群雄割拠では、これから世界に出現するであろうメガ国家に対抗できません。
それどころか第一次世界大戦や第二次世界大戦のように、ヨーロッパの国同志で戦って自滅する危険もなくなりません。
そこで考えたのがヨーロッパ統一です。
しかしチェーザレ・ボルジアのような君主が武力により統一する事は不可能なので、話会いによる統一、段階的な統一を考えたのです。
それがEU、そしてユーロなのです。
最終的にヨーロッパ全土がヨーロッパ国と言う一つの国になる事が目標なのです。 勿論これはどの国も皆納得しているからEUとかユーロとかができたのです。
しかしこれってイザとなるとどの国も総論賛成、各論反対、利害の調整は凄く難しいでしょう?
だからそれぞれの国の国民一人一人の意見を尊重して、全員に納得してもらうなんて不可能なのです。
そこでユーロを作ったマキャベリストは考えたのです。
だったら先に金で縛ってしまえ。
甘い言葉で吊って、「通貨だけだから。 ユーロにすれば皆強い通貨が持てて、欲しい物なんでも買えますよ。 でも国家主権はそのまま尊重しますからね。」
しかし通貨発行権を失い、財政政策に枷を嵌められたら国家主権なんか半分吹き飛んだ同じでしょう?
その上関税自主権も外国人の出入国管理権は既にEU加盟で喪っているのです。
しかもユーロには一度加盟した出口がありません。 一方ユーロ側も一度抱え込んだ厄介者を追い出す方法がありません。
だから厄介者でも何でも入れてしまえばオシマイ。
後はもう皆で苦労して、仲良くやっていくことを考えましょうね。
で、でもそれじゃ国民が大変でしょう? ギリシャのように破綻する国の国民も大変だし、それを面倒見る国の国民の大変です。
こうした人々の苦しみはどう考えているのですか?
そんなこと知るかい!!
だってボク、マキャベリストなんだから。
だからギリシャだけでなく、ルーマニアとかもう、一体何を考えるの?と思うような国だってドンドン入れたのです。
一方ハラグロ・サクソンはさすがにマキャベリストなんぞには騙されませんでした。
さてこのマキャベリストの目標は達成できるのでしょうか?
そもそも話し合いて多数の国家をまとめて統一国家を作るなんてことができるのでしょうか?
でも一応成功例はあります。
それはスイスです。
あれってつまりミニ・ユーロです。
つまりスイスって中世の半ばに、アルプスを抜ける街道沿いの都市国家が、話し合いで関税同盟を作り、それが主体となって、独立して作った国です。
その同盟にさらに民族を超えて幾つもの都市国家が加わって今のスイスができたのです。
武力統一をしたわけではないので、今もそれぞれの地域の自治権は非常に強いままです。 言語も統一そのまま維持しています。
それでも400年間安定した国家を維持できたのですから、ヨーロッパ全体でこれが不可能とは言い切れないでしょう?
少なくともマキャベリス達はそう思っているのではないでしょうか?
ちなみにこうなるとスイスが加盟しないわけもわかります。 だってミニユーロスイスが、ユーロに加盟して通貨発行権を失えば、国家として統一を保つ理由がなくなってしまいます。 そうなるとスイスと言う国が解体してしまいます。
でもマキャベリスト達はいずれスイスも飲み込む気なのでしょうね。
だってニコロ・マキャベリの感じた危機感は、その後現実の物になりました。
イタリア諸国が自国だけの国益に固執して、お互いに対立している間に、スペイン女王と神聖ローマ帝国皇帝のこども達の結婚が成立して、そこから生まれた子供が神聖ローマ帝国とスペイン双方の支配者になったのです。
こうして出現した超大国にイタリアは北部と南部を支配されて、独立性完全に失いました。 そしてその後19世紀末まで統一国家になれませんでした。
そしてそれと共にヨーロッパを圧倒していた経済力も文化も衰退して、19世紀にはヨーロッパの後進国になってしまったのですから。
ギリシャ騒動雑感
それでワタシは今までのギリシャ騒動について、自分の考えをまとめがてら書いてみます。
ギリシャはこの200年に何と100回もデフォルトしている国です。 つまりオリンピックの倍の頻度で、国の借金が払えなくって破産すると言うことを繰り返してきたのです。
個人なら二年に一度の割合で、破産するほど出鱈目な事はできません。
しかし国の場合は外国からの借金を踏み倒しても、戦争でもしない限りその借金を力づくで取り立てる事はできません。
また国内の通貨は自国で印刷すれば済む事なので、国内に回るお金には困らないのです。
一方、二年に一度借金を踏み倒す奴に、お金を貸すような奴はそういないし、貸したとしても大した額ではありません。 そもそも貸す方だってホントに返してくれるとは信じずに貸したのでしょう。
だからギリシャは200年間、気楽に借金をしては踏み倒してきたのです。 そしてそれが世界経済の問題になるような事にはならなかったのです。
一方ユーロと言うのは、借金をしてはいけないシステムです。
ユーロと言うのは緊縮財政、財政均衡を維持しないと維持できないシステムなのです。
放漫財政をやって一番困るのは、通貨の信任が失われて、通貨の価値が下がる事です。 まして借金がかさんでデフォルトなんて事になれば、通貨は大幅に下落して、ハイパーインフレなんて事にだってなりかねません。
これがそれぞれの国の独自通貨であれば、財政出動は自己責任です。 だからそれぞれ自国の経済事情と自国通貨価値の維持を考えながら、節度をもって財政出動をするでしょう。
その場合はギリシャのように、デフォルト常習で、だから通貨価値なんかこれ以上下がりようのない所を、ウロウロするだって自由なのです。 (これ以上下がりようのないところをウロウロしているなら、鶏の飛行みたいなモノで墜落しても怪我もしないわけです。)
「自国の通貨は自国で守るのだから、他国の通貨なんかそれぞれ好きにすれば良い」で済むのです。
しかしユーロのような共通通貨にすれば、そうはいきません。 共通通貨の価値は皆で守るしかないのです。
その場合、それぞれ節度を持って財政出動と言うのは、大変難しいです。
だから一律緊縮財政とするしかないのです。
ところがギリシャはこの規則を綺麗に無視して、今まで通りの気楽に借金を続けた・・・・・と言うよりも、今までできなかった程の借金をしまくったのです。
そうです。
今ではデフォルト常習国と言う事で、ギリシャに金を貸す奴なんか滅多にいなかったのです。
それなのに財政赤字を誤魔化してユーロに加盟したお蔭で、それまで全く信用の無かったギリシャ国債がドンドン売れるようになったのです。
「ユーロ加盟できたのだから、これまでみたいにデフォルトしないんじゃないだろう。」
そう思い込む人達が沢山出てしまったのです。
だからユーロ加盟していから暫く、ギリシャは夢のような好景気が続きました。 オリンピックを開催したり、勤労者の4割を公務員にして給料を払ったり、勤労時と9割を超える年金を払ったり・・・・・・、これで国民が喜ばないわけはないのです。
それでも今までのように直ぐにはデフォルトはしませんでした。 だってユーロですから借金を返すための借金は幾らでもできました。
しかしそれでもその借金天国は永遠には続きませんでした。
2009年リーマンショックで世界中が金詰まりになった時に、ギリシャの膨大な借金に皆気付いたのです。
そしてそうなるともうギリシャに金を貸してくれるわけもなくなり、借金を借金で返し、借金を拡大しながらリッチな借金ライフを続けると言うギリシャ経済はストップしてしまったのです。
後に残ったのは、それまでの作った膨大な借金です。
そしてユーロ加盟国は激怒しました。
皆で守っていたユーロの通貨価値を、ギリシャが一人で食い潰そうとしていたのですから、当然ですよね?
でもそもそもこんなデフォルト常習国をユーロに入れたのは間違いではありませんか?
多重債務者や破産者はクレジットカードだって持てません。 それなのに、二年に一度破産と言う超悪質な、奴を仲間に入れたのが根源的な間違いなのです。
高橋洋一氏によると、マンデル・フレミングの最適通貨圏説と言うのがあって、文化・経済・地理などの要件から、一つの通貨でカバーできる経済圏を判定する事ができるのだそうです。 ギリシャはどう計算しても、他のユーロ加盟国と違って、この最適通貨圏からはみ出すと言うのです。
だから高橋氏は「ギリシャはユーロに加盟するべきではなかった。 今後ギリシャ経済が再起するためには、EUには留まっても、ユーロからは脱離するべき。」と言います。
ギリシャがユーロに留まる限り、ギリシャは独自の通貨政策を取れないし、財政政策もとれません。 何よりユーロはギリシャの経済力からすれば強すぎる通貨なので、産業競争力が常に劣性になってしまうのです。
だから早くユーロを脱離して、通貨を安くして、産業競争力を回復させるべきだと言うのです。
しかしこれってギリシャ人が全然望んでいないのですよね?
何しろギリシャの財務相は、ギリシャの通貨を刷れないように輪転機を壊したと嘯いて、国民が喝采する有様ですからら。
国民からすれば、自国の産業競争力の回復よりも、自分達の消費生活を考えているのでしょう。 消費する分にはユーロの方が快適ですから。
ギリシャ国民は最初からユーロ加盟で自国の産業競争力が失われる事なんか全然眼中になく、ひたすら自分達の通貨がユーロになって、自分の貯金がユーロになって、ドイツやフランス並みの豊な消費生活ができる事だけを考えていたのではないでしょうか?
生産なしで消費が続けられる事はあり得なのですが、しかしそこはデフォルト常習国の国民ですから。
そしてギリシャの政治家も、最初からユーロ加盟した時点で、ユーロになれば今までと違って盛大に借金をできて、ばら撒きができて、国民の人気が得られて選挙に有利、ぐらいにしか考えていなかったのでは?
少なくともユーロ加盟を決めた政治家は、自分の任期中は気楽に借金ができて、国民に人気のばら撒き政策ができればそれで良く、その後の事なんかどうでも良かったのではないでしょうか?
その意味で古代ギリシャを滅ぼした衆愚制の伝統をギリシャは今も守っているのです。
そしてこの借金発覚後の混乱が続く中でも、その伝統を守り続けています。
だからこれはもうどうしようもないでしょう。
これからユーロ加盟国は延々とこの厄介者を抱え込んで苦労する事になるのです。
それではホントに何でこんなどうしようもないギリシャをユーロに加盟させたのか?
ワタシはマキャベリストがいたのだと思います。 それについては次回で書きたい思います。
キプロス騒動雑感
キプロスの金融危機の話は結構難しいのですが、tna6310147さんや三橋貴明さんが繰り返してエントリーして解説して下さったので、ワタシにも少しずつわかってきました。
それでワタシが理解した事をここで整理してみます。
キプロス共和国は人口110万人、山形県と人口も面積もほぼ同じぐらいの国です。
しかしGDPは山形県の半分ぐらいです。
2004年にユーロに加盟しました。 この加盟には結構問題があったのですが、ギリシャが強引に執拗に加盟を求めた事で実現したのです。
キプロスは第二次大戦後、ギリシャとトルコがその領有権を巡って紛争を繰り返した経緯があります。 そしてその紛争の結果、ギリシャ系の住む地域が分離独立してできたのがキプロス共和国です。
一方トルコ系の住民の住む地域は、やはり独立国を名乗っています。
またイギリス領になっている部分もあります。
地理的に地中海の軍事的要衝なので、このようなややこしい事になっているのです。
ギリシャが何としてもキプロスをユーロ加盟させようとした背景も、経済だけではない事がわかるでしょう。
GDPが山形県の半分以下の貧しいキプロスは、豊かになる為に金融立国を目指しました。
つまりキプロスの銀行は、ユーロ圏内の他の国々のような喧しい事は言わずに、マネーロンダリングとかタックスヘブンとかで怪しいお金を気持ちよく引き受けて、ユーロ内外から膨大なお金を集めたのです。
特にロシアの大富豪たちからは贔屓にされたようです。
こうして集めた預金量は何とキプロスのGDPの835%!!
これだけ集めた貯金をキプロスの銀行が上手く運用していれば全然問題はなかったでしょう。
しかし投資なんかそう簡単に成功するわけもないのです。 スイスのように金融立国の歴史や伝統があるわけでもないキプロスに、そんなノウハウがあったわけでもないのです。
ユーロがバブル景気に浮かれる間、キプロスの銀行は怪しい不動産関連の債権を買ったり、金利の高いギリシャ国債を大量に買い込んだりしました。 ギリシャ国債だけでGDPの160%も買い込んだのです。
またこれらの怪しい債権を担保にして、EU内の他国の銀行から金を借りて、それをまた怪し所に投資すると言う事もしたようです。
つまり利益を最大化する為に超リスキーな投資をやりまくったのです。
そしてバブルが弾けると、当然のこととして倒産の危機に陥ったのです。
キプロスの銀行は膨大な不良債権を抱えてしまい、優良な債権を処分しても、他国の銀行からの借入金を返す事は出来なくなったのです。
普通の国なら銀行が不良債権を抱えて倒産の危機に陥れば、その国の政府が何とかします。 自国通貨で国内預金者への返済分なら、お札を摺って銀行に貸します。
日本でもバブルの時に銀行が無謀な貸し出しをやって、北海道拓殖銀行や長期信用銀行が潰れました。
そしても他にも多くの銀行が経営危機に陥りました。
拓銀や長銀が取り付け騒ぎになった時は、日銀の職員が膨大なお札を抱えて乗り込んで、預金者達にドンドン預金を返しました。
日本政府は全部で49兆円もの資金を、不良債権処理に使いました。 つまり潰れそうになった銀行に国がお金を貸してやったのです。
また外国への負債ならば、政府が返済を保障するなどします。
けれど銀行の対外債務が自国のGDPの数倍にもなるとなれば、もう政府にもどうしようもありません。
しかもキプロスはユーロ圏で政府は通貨を摺れないので、小口預金者の取り付け騒ぎを鎮める事さへできなず、銀行を閉鎖するしかありませんでした。
http://ecodb.net/country/CY/imf_gdp.html
しかしEU諸国、と言うかEUで支援する能力のある国々は、キプロスを快く思ってはいませんでした。 そりゃタックスヘブンとかマネーロンダリングで集めた金を、無謀な投資で溶かした国を快く思うはずもありません。
それにキプロスの銀行の大口預金者と言うのは、ロシアの大富豪など怪しい連中なのです。
何でそんな奴らの貯金を守る為に、善良なドイツ人勤労者の税金を使うのか?
だからキプロス政府に支援するにあたっての条件をイロイロ付けたのです。
そしてその条件を巡って、この2週間ぐらいヨーロッパを挙げてすったもんだの大騒動をやっているのです。
それでその支援って幾らぐらいかと言うと…・170億ユーロです。
日本円で2兆円ぐらいです。
2兆円だって??
日本政府は朝鮮銀行にだって国民が知らないうちに1.5兆円くれてやったんじゃないか?
朝鮮銀行を救済する必要なんか全然なかったけれど・・・・・と言うより是非とも潰すべきだったけれど、日本の経済規模から言えば、1.5兆円を銀行救済に使うのは殆ど問題にならなかったので、マスゴミが共同正犯で沈黙して誤魔化したんじゃなかったっけ?
それを思えばユーロの経済規模から言って、高々2兆円を惜しんで、ユーロ全体の信任を危うくするなんて愚かの極みジャマイカ?
けれどユーロってそう言うシステムなんですね。
ユーロは共通通貨を作り、その信任を守る為に加盟国の財政に関して、色々な制約を付けたけれど、しかし加盟国は国家主権は堅持しているのです。
だからおきて破りやインチキをやっても、それを処罰する方法もないし、またおきて破りとインチキの挙句、借金達磨になってもそれを救済する為のルールもないのです。
それでユーロ全体のGDPは日本の3倍もあるのに、日本で言えば旧地方銀行レベルの破綻で、全ユーロの首相や大統領が集まって大騒ぎする事になるのです。
しかもキプロスのような国の銀行が海外から膨大な貯金を集める事がでできたのは、キプロスの銀行にルーブルを持って行けば、ユーロと言うハードカレンシーに変えて貰えて、ユーロで貯金できる事になったからではありませんか?
2年に一度デフォルトしていたギリシャの国債を、ジャンジャン売れたのだって、ギリシャがユーロ加盟してユーロで国債を発行できるようになったからではありませんか?
でもユーロ加盟した国は、関税自主権も失って全ユーロ圏共通ルールで競争しなければならないのです。
ドイツのように競争力の強い国は良いですよ。
でも農業も工業も脆弱で、殆ど競争力のない国はどうしたらいいんですか?
子供や老人とプロレスラーが、ハンディキャップ無しで勝負するような話ではありませんか?
インチキでもしない限り、ボロンチョにやられちゃいます。
しかもインチキをしても直ぐにバレて、ボコボコにされちゃったのですから悲惨ともなんとも言いようがありません。
キプロスはこの騒動を鎮めるにあたって、銀行からの預金の引き出し制限をするとともに、資本移動の規制と言う措置をとりました。
こんな制限でもしなければ、キプロスの銀行は取り付け騒ぎで瞬間消滅し、キプロスの貯金は全部ドイツの銀行にでも逃げてしまいます。
そうなるとキプロスの経済は破綻して、キプロス人の年金基金も消滅しちゃうようです。
銀行から引き出せるお金は1日300ユーロ、5000ユーロを超える国外送金には政府の許可が必要になりました。
しかしこれって大変ですよね。
個人生活だけなら良いですよ、1日300ユーロ(3万6千円)もあれば、大家族でも大丈夫です。 でもこれだと中小商店や飲食店でも仕入れの支払いに困るんじゃないですか?
それに海外への送金制限も大変です。
日本だって昔々、昭和30年代は海外への送金制限や、日本円の持ち出し制限はありました。 当時の日本は経常収支の赤字に苦しんでいましたから。
でも当時の日本で、海外に送金しなければならないのは、海外から資源を買わなければならない製鉄会社など一部の企業や、一部の輸入業者ぐらいでした。
当時の日本は農産物さへ殆ど輸入せず(高価なアメリカ食品なんか庶民は食べられなかった)、日用品も殆ど国産で賄っていたのです。
けれど今のキプロスは違います。
そもそも山形県ぐらいの国なのです。 日用雑貨も食料も殆ど全部外国から買っているのではないでしょうか?
普通の個人商店だって海外からの仕入れなしには営業できないだろうし、そのような商品なしには人々の日常生活も成り立たないでしょう。
それを5000ユーロ60万円以上は政府の許可が必要となると、実に大変な事になるでしょう。
しかも同じユーロ圏内、ユーロと通貨で送金規制が入るのです。
三橋さんはこの話を北海道から本州への円の送金規制に例えているけれど、北海道ならまだましです。 だって北海道は食料生産ができるし、GDPだってキプロスの9倍もあるのです。 凄いでしょう!!
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/page-1.html#main
けれどこんな目に遭わされてもキプロス共和国にユーロ離脱の選択肢はないでしょう。
勿論ユーロ離脱でハイパーインフレとかと言う問題もあります。
けれどそれだけではありません。 対トルコ防衛を考えると、キプロスは何としてもEUの懐に入っていたいのです。
何としてもEUの中で発言権を確保して、EUが親トルコ政策をとるのを阻止しなければならないのです。
そもそもギリシャやキプロスがEUに、そしてユーロに加盟したのは、対トルコ防衛の為だし、他のEUとユーロ諸国が怪しい経済状態に目を瞑って加盟を許したのは、キプロスやギリシャが地中海の軍事的要衝だったからです。
だから今後もキプロスとギリシャは延々とユーロ諸国に厄介をかけるし、一方キプロスもギリシャもどんなに苦しくてもユーロ離脱をできないでしょう。
ホントに大変ですね。
他に言いようがありません。
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Author:よもぎねこ
平凡な猫の退屈な日常生活
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