岸田首相はアベノミクスを息の根を完全に止めました。
これが8月2日の歴史的株価暴落を招いた神田財務官の言葉です。
日本の株価は円ドルの為替相場と、アメリカの株式相場に連動しています。
簡単に言えば、円安になれば日経平均が上がり、円高になれば下がります。 またダウ平均やSP500などアメリカの株式相場が上がれば、日経平均は上がり、これらが下がれば日経平均は下がります。
このアメリカ株式の方は、先週からAIバブルが弾けて急落し始めていました。 その状況で7月30日、アメリカ連邦準備銀行(FRB)が利下げを決定しました。
これに先立ってアメリカの雇用統計が発表されたのですが、これが予想外に悪い数字でした。
そこでFRBとしては今後雇用を守る為には、利下げをしなければならいと決断したのです。
コロナパンデミックが収束してから、アメリカ経済は絶好調で、完全雇用状態でした。 しかし今年の年初頃からは、クレジットカードの返済不履行の増加など、景気への赤信号になる経済指標が色々と出ていました。
景気循環のサイクルから言っても、そろそろ景気に陰りが出てくる時期でした。
それでもアメリカの株価が上がり続けたのは、AIバブルのお陰でした。 エヌビィデアなどAI関連株が物凄い値上がりをして、それがダウ平均やSP500を滅茶苦茶に引き上げていたのです。
しかしいくら何でももう無理、これはバブルでは?と言う懸念が出ていた所で、雇用統計の悪化が明らかになり、FRBもアメリカが既に不況の入り口にいる事を確信せざるを得なかったのです。
因みに、インフレも既に終息しています。
だから利下げを決断したのです。
一方、ドル円相場は日米金利差で殆ど決まります。
円安について「日本の国力が下がった!!」「貿易赤字が!!」とか言う人がいますが、これは殆ど関係ありません。
円はこの1週間足らずで1ドル161円から、150円割れになりました。
今週1週間で日本の国力が7%も上がったのですか?
今週1週間で日本の貿易赤字が7%も減ったのですか?
この1週間内で変わったのは、日米金利差だけです。
アメリカの7月30日、FRBが利下げを決断し、更に今後も利下げを続ける事が確実になりました。
一方、日本銀行は8月2日に利上げをすると発表しました。
つまり日米の金利差は縮むのです。
これまでの円安はFRBが利上げを続け、一方日銀はゼロ金利を維持したことから来る、日米金利差の拡大によるものでした。
それが今後は日米金利差が縮む事が明白になったのですから、円安が終わるのは当然です。
そしてこのタイミングで財務省が、為替介入をしたのです。
つまり日本政府手持ちのドルを売って円を買ったのです。
これだけの条件が揃っているのですから、ドル円相場が劇的に動くのは当然でしょう?
それでもワタシも驚いています。
ワタシも幾ばくかの株とドル建債券を持っているので、為替相場は毎日確認しているのですが、しかしここまで劇的な円高は経験したことがありません。
しかしこれでもう円安が終わったのです。
というか財務省の介入を認めたという事は、岸田政権は円安を終わらせたのです。
岸田文雄が総理大臣になれたのは、安倍総理のお陰でした。 しかしキッシーは外交防衛政策では安倍総理の方針を継承したものの、経済政策では増税緊縮以外に興味はなく、アベノミックスをジワジワと絞め殺しているとしか思えませんでした。
それでも岸田政権下で日本のGDPが拡大し、雇用も極めて順調だったのは、円安とアメリカ経済の好調さのお陰でした。
円安のお陰で日本の輸出企業は競争力を取り戻し、デフレ時代に海外逃避した生産拠点の国内回帰も進んでいました。
その為、求人も順調に増えていました。
そして大企業だけとは言え、賃金も上昇し始めていました。
このため税収も爆上げしました。 税収は昨年に比べて72兆円もふえて過去最高になったのです。
勿論円安による弊害はありました。
円安は輸出企業には有利なのですが、輸入企業には大変です。 そして輸入品の値段が上がるので、燃料や輸入食品等の価格も上がり、一般国民の生活も圧迫します。
これは神田財務官の言う通りです。
しかし「急にバーンとエネルギー価格とか食べ物の値段が上がったらそれは容認できない」なら、政府が財政支援をすれば済んだ話でしょう?
だって税収が72兆円も増えているのですよ、更に昨年の為替介入だけでも政府は10兆円儲けたのです。
だったらガソリン税の一時廃止、電力やガス料金の減免、所得税減税、社会保険料の減免や一時支払い猶予、定額給付金の支給など、何でもやりたい放題にやる予算があるのです。
神田財務官も財務省の官僚ですから、これは十分承知でしょう?
ところがキッシーは賃金の上昇を根拠に、子育て利権増税を行い、更に森林税、再エネ賦課金の3倍増などで国民からの収奪を続けました。
一方2022年のロシアのウクライナ侵略戦争以降、日本も物価がそれなりに上がってきたのです。 そして賃金上昇は物価上昇に追いつかず、結局実質賃金は以降ひたすら下がり続け来ました。 これは戦後最長です。
2022年年初からの物価上昇に賃金上昇が追い付かず、その為国民の多くが貯金を取り崩して生活費を補填してきました。 その為、勤労世帯の貯金額が減少してきました。
本来であればこのような場合、政府は減税その他、国民救済措置を取るべきなのです。
ところがキッシーはこのような政策は一切取らず、ひたすら国民から収奪を強めています。
これでは支持率が下がるのは当然です。
円安のお陰で雇用が増えた事は、失業者や新卒者には、大変な恩恵ですが、しかしそもそも日本の場合、第二次安倍政権の成立以降、失業率は2%台、新卒者の就職内定率も95%超えになっていたのです。 これでは岸田政権以降の雇用改善は大多数の国民に殆ど意味がないのです。
しかしキッシーはこの円安と言う幸運も、幸運と理解できないまま、国民から収奪を増やす事だけに熱中しました。
もしキッシーがこの幸運の成果を国民救済に生かしていたら、今頃キッシーの支持率も自民党の支持率も第二次安倍政権を抜いていおり、選挙は連戦連勝だったでしょうに。
しかしこうしてキッシーが国民への収奪を続けた事は、選挙なんかよりもっと深刻な問題を産んでいました。
実質賃金は上がらない、キッシーが収奪を強める、その為、消費が全く増えないのです。
下の図は2019年度の日本のGDPの内訳ですが、この配分は現在も殆ど変わっていませんから、これを参考に考えましょう。
これを見ると日本のGDPの54%は民間最終消費、つまり一般国民の家庭生活、個人生活での買い物なのです。 と、言う事は民間最終消費が増えない限り、GDPは成長しません。
これだけでも日本経済は結構厳しい状況で、経済成長が難しい状況でした。
しかもGDP25%に相当する公的固定資本形成+政府最終消費支出、つまり政府や自治体の予算から資質について、キッシーはビタ一文増やしたくないのです。
これではもう経済成長は不可能でしょう?
それでも去年は円安のお陰で、GDPは増加し続けていました。
しかし今年以降は無理でしょう。
だってもう円安の恩恵は受けられないのですから。
そして実質賃金が下がり、消費が減ってきた事の影響は既にジワジワと来ているのです。
鉱工業生産その他の経済指標がすでに下がり始めているのです。
実際政府や日銀のGDP成長予想は、今年になってから下方修正を続けています。
尤もお陰で物価上昇率は低下しました。
GDPは成長率は下方修正、実質賃金は下がり続け、消費は増えず、そして物価上昇率は予想を下回る。
これって普通、不景気始まりのフルセットでしょう?
ところがここで日銀がやらかしたのです。
物価上昇率が予想を下回った7月31日の翌々日、8月2日、日銀は0.25%の利上げを発表しました。
しかもその理由が「物価抑制」です。
イヤ、もう物価上昇終わったでしょう?
そもそもインフレ目標は2%なのですから、2.5%の上昇率てってインフレ目標ギリギリです。 これで円安がなくなり、アメリカも不景気になったら、日本経済は益々厳しくなるのは自明でしょう?
これについて高橋洋一がボコボコに批判しています。
勿論、利上げを称賛する意見も沢山あるのですが、しかしワタシは色々な情報を見る限り、彼の批判が一番正しいと思っています。
だって利上げを称賛する意見は、どれも至って抽象的で意味不明なのです。
「物価上昇は止まったけれど、雇用環境は良いから、利上げしても良い」と言う意見もあるのですが、しかし賃金は上がっていなし、雇用って遅行指数、つまり景気が良くなり始めてから最後に良くなる指数なのです。
実際1989年のバブル崩壊後も、その後数年は雇用環境は良かったのです。 そして1993年からは就職氷河期になったのです。
だから現行で雇用が良くても、足元の景気が悪化している可能性は非常に高いのです。
そして経済指数から解説を見ると、日本の景気の先行きが思いやられる事ばかりです。
これだと本来なら利上げどころか、国債の買い入れ増大などマイナス金利政策に転換するべきでしょう?
それでも何でも日銀が利上げをしたのは、高橋洋一が指摘しているように、銀行の利益の為としか覆えません。 民間銀行って日銀職員や財務官僚の天下り先なので、彼等はひたすら銀行を優遇するのです。
それにしても銀行の日銀当座預金に今も金利がついていたなんて・・・・・。
当座預金って元来金利はつかないでしょう?
でも白川総裁時代に日銀は銀行当座預金に金利をつけたのです。 これは「ミルク」と呼ばれた銀行救済策でした。
それが今も続いているだけでも驚きなのですが、今度の利上げでこの当座預金の金利は総額8000億になります。 そしてそれがそのまま銀行の利益になります。
もう、何と言ってよいのやら・・・・。
実はワタシは高橋洋一の経済解説を一番信用していて、毎日彼のYoutubeチャンネルを見ているんですが、この数か月見るのが段々辛くなってきました。
だって今後の経済見通しについて暗い話ばっかりするんだもの。
でも結局彼のいう事が一番当たっているし、経済見通しの理由も一番論理的、具体的なので信用するしかないんですよね。
そして結局彼の予想は当たるのです。
で、結局高橋洋一の話やその他を考え合わせると、今回の日銀の利上げで、キッシーは遂にアベノミックスに留めを刺したのです。
アベノミックスは以下3つの政策のセットでした。
① 規制緩和
② 財政出動
③ 金融緩和
しかしこのうち①規制緩和はモリカケ騒動などの官僚とマスコミが結託した抵抗で、殆ど進みませんでした。
②財政出動も安倍総理の思うようにはできませんでした。 自民党の緊縮派・官僚・マスコミが結託して必死に反対したので、安倍総理は消費税増税のように財政出動に反する政策も通さざるを得ませんでした。
この中で唯一成功したのが、③金融緩和でした。 これは黒田東彦氏を日銀総裁にし、更に金利政策決定に権限のある日銀審議員にリフレ派の経済学者を送り込む事で、ゼロ金利政策、日銀の国債買い入れの増加によるマイナス金利政策を続ける事ができました。
お陰で第二次安倍政権成立前には80円を割っていた円が100円台に戻り、日本経済は何とか息をつくことができました。
また低金利が続いた事で、企業活動や住宅建設が盛んになりました。
例えば現在マンション価格はバブル期の2倍程度、住宅価格も4000万近くでバブル期なら超豪邸の物が一般化しましたが、これは金利低下の為、ローンの返済が非常に容易になっているからです。
しかし日銀は今後は金利をさらに上げていくと言われています。 国債買い入れは既に減らしています。
つまりこれでもう完全にアベノミクスの③金融緩和の息の根が止められたのです。
日銀がこのような決定をしたのは、岸田政権になってから、安倍政権時代に任命された日銀審議員が任期切れになる度に、次々と緊縮派に取り換え、さらに日銀総裁に上田総裁を選んだからです。 彼は「政府」を忖度する人なのです。
こうやってキッシーは日銀から金融緩和派を放逐したのです。
これでキッシーはアベノミックスを完全に殺したわけです。
そうなると今後の日本経済は非常に厳しくなると予想されます。
アメリカ経済の方は、不景気になっても大丈夫です。
だってリーマンショックの時もそうですが、アメリカの場合は、株価暴落から不況に陥っても、政府とFRBがきちんと対応して、数年内には経済を元に戻しました。
しかし日本はひたすら緊縮政策を続けた事で、80円割れの円高を招き、シャープやエルピーダなど多数の企業が倒産に追い込まれました。
ワタシは今回の株価暴落と円高騰がこの悪夢の再来になるのではないかと非常に心配です。
だってキッシーの姿勢はあの時の日本政府と同じですから。
ワタシは高齢者特権で1989年のバブル崩壊時を覚えています。 バブル崩壊とその後30年間続いた日本経済の低迷の原因は、当時の日銀の金融引き締め政策です。
しかし当時の新聞・テレビは、この金融引き締め政策を取った三重総裁を「平成の鬼平」と称えました。
神田財務官が「令和の鬼平」と称えられない事を祈ります。