虫類の薬用 【虫類本草】

イボタカイガラムシ(イボタロウムシ)の薬効   その2

イボタカイガラムシ(イボタロウムシ)の薬効   その2
第277回   2016.11
会津の名産 会津蝋(あいづろう)  イボタの蝋(ロウ)は、疣取りの特効薬、

「最新薬用植物学」 刈米達夫、名越規朗 共著、1973年、広川書店  より

イボタノキ

イボタ蝋は、イボタ、オウイボタ、コバノトネリコ、ヒトツバタゴなどの枝幹にイボタロウカイガラムシの雄の幼虫が分泌する蝋を秋に成虫の羽化して飛去った後、乾燥したものである。本品は白色で大小不同の脆い粒状をなし、80~83℃で溶融し、特異の臭気がある。
虫白蝋は、イボタ蝋を溶融し、布漉しして夾雑物を除き型に注いで角板状にしたものである。

イボタロウカイガラムシは、東京付近では6月中旬、雌体の下にあった多数の卵から先ず雌の成虫が孵化し寄生植物の葉の裏面に移り、葉液を吸収して生育するが、7月中旬葉を去って枝に移り定着しはじめ笠状に、後に球状に変形する。
雄の幼虫は6月中旬~下旬に孵化し、雌幼虫と同じくはじめ葉面で葉液を吸って生活するが、7月上旬には2年~5・6か月の生の枝に移って群生し定着するが9月中旬まで生長を続け白蝋を盛んに分泌して体を覆い白蝋中の幼虫体は卵形に変じ、終に蛹化して白蝋の分泌を止める。
9月中下旬には多数の雄は羽化して出て、近距離を飛び拡がり、定着した雌体に達して交尾し、死滅するが、雌成虫は、肥大し生長をつづけ、翌年3月下旬には体は球状に膨大し、5月に老熟する。
雌は自分の体下に産卵後死し、卵は孵化し生活を繰り返す。
白蝋としての利用部分は枝に移って定着した雄の幼虫の分泌したものである。
薬用  民間:強壮薬として内用し、また止血薬として外用する。
用途・戸滑り、家具の艶出し料に用いる。

「民間薬用植物」梅村甚太郎先生、大正5年3月より、
いぼた Lygustrum Ibota Sieb.
漢名 水蝋樹。木犀科の落葉灌木であって、山野に広く自生する。茎の高さは、一丈余りに達する。
葉は楕円形、全邊にして対生している。五六月頃、小さな白い花を総状をなして開く。
果実は米粒大であって熟すれば黒色となる。樹皮に昆虫のために白色状の粉状物を、常に生ずる。これを蟲白蝋(いぼたろう)という。
蟲白蝋をとって、戸障子などの開閉が困難な時に敷居、鴨居などにぬれば滑らかになることにより、「戸すべり」と云う。
●疣のできたときは、その根を堅くしばり、この蝋を熱したのを一滴を落とせば、疣が抜け去るものである。
●この木の葉を食べる蜀候蛾(いぼたのむし)の幼虫は肺病、胃腸病に効があるとして、民間では炙ってたべる。あるいは、こうも云う。葉もまた焼いて食べれば肺病を治すと。
●弘前辺りにでは、イボタの実を、煎じて服用すれば、腹のカタマリを解き、葉を煎じて服用すれば、歯のゆるぎ痛むのに良いと云う。

「昆虫本草」梅村甚太郎先生、正文館書店、昭和18年11月
いぼたのらふむし Ericerus pela(Chavannes)  イボタノカヒガラムシ
○虫白蝋は、他の脂肪に比べれば融解点が高く、摂氏85.5度から83度の間にあるので、特殊の用途がある。
 中国では、四川、貴州、湖南、浙江、福建、安徽等の諸省にて、盛にこの虫を養殖している。
四川省に於ける年産額は、かって五百萬斤に達し、その多くは国内の需用に応じ、約五拾萬斤位は他国へ輸出されたが、現今は、その盛況は見られぬであらう。    
 虫白蝋の利用
○中国では、主として蝋燭の製造に用いる。又、丸薬の外皮に塗布したり、生絲織物の光沢をつけるのに用いた。
△民間にては打撲、切傷などに医用する膏薬に用いる事が多い。
△また、止血、鎮痛及び肉芽の発生を促す作用をもする。
○漢方医は、古来膏薬の原料として用いて来たが、我が国では、煎服して肺病、胃病に効ありとして、これらの疾病に使用してきた。又、疣取りに使用してきた。元来、いぽたの木と言う事は、疣とりの木と言う意味である。
○工業用としては、茶箪笥等のふきこみ、その他の木器具の表面に、これを塗布し琢磨して光輝を生ぜしめた。
又、朱に混じて模造珊瑚の製造の料に供し、書冊の表紙、靴の表面、磁器などの外用に塗布して光輝を附し、或いは、光沢布を作り、また一般家庭に於いては、敷居に塗って戸、障子の滑走を促すに用いる等、その用途は大変に多い。            `


「薬用植物図説」村越三千男、福村書店、1952年1月より
いぼたのき  水蝋樹
Ligus Ibota Sieb.var,augustifolium Blume.
(別名)イボタ・イボタラフ・イボノキ・イボトリ

産地・生態  北海道、本州、四国、九州、琉球、台湾などの林野に自生する落葉の灌木で、所によっては生け垣などの植栽している。幼條には短毛を生じ、幹の高さ1・5~1・9m位に達する。
葉は無柄で対生し、葉身は長楕円形、鈍頭である。
五月頃から梢の上方に白色の五弁花を総状に開き、花の後、小さな毬状をした黒色の果実を結ぶ。

薬用 この植物には一種の昆虫が白い巣を作りつけることがあるから秋冬の候に、その巣のある枝を取って天日に乾かしたものを「イボタ」蝋といって薬用に供する。
即ちこの「イボタ」蝋を煎じ服用すると水腫・利尿に効果がある。
また、手足等に出来た疣を細かい絹糸で固く結びつけてその上から「イボタ」蝋を熱して摘下すると、自然にこの疣を除き去ることが出来るのは不思議な位である。


「新編 中薬誌」 第四巻、肖培根主編、化学工業出版社、2002年12月

虫白蝋の項には、白蝋虫の寄生する植物として、白蝋樹と女貞があげられていますが、日本のとは、違うようです。1樹高が、全く違います。
白蝋樹は(学名が Fraxinus chinensis Roxb. 木犀科 Oleaceae)高さが16m、女貞は(学名 Ligstrum licidas Ait.f. 木犀科 Oleaceae)10mに達するとあります。

性味及び薬効  味は甘く、性質は温である。肌を生じ、瘡を斂する。血を止め、痛みを定める。
瘡瘍が久しく、潰れて斂しないのもの、金創出血等の症状に、用いる。
民間では、小量を内服すれば、強壮剤となり、外用で一は止血にもちいる。用量3~7g、外用は適量。

朝霞の漢方  昭和薬局  薬剤師 鈴木 覚
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イボタカイガラムシ(イボタロウムシ)の薬効  その1

イボタカイガラムシ(イボタロウムシ)の薬効  その1
    第276回   2016.10
会津の名産 会津蝋(あいづろう)  イボタの蝋(ロウ)は、疣取りの特効薬、

ある種の昆虫は、薬になります。薬用部位は、様々です。卵、幼虫、蛹、成虫などの虫の体そのもの。虫の排泄 物。虫の分泌物。
イボタカイガラムシでは、分泌物である蝋が工業用原料、薬用に用いられます。
イボタ蝋は、イボタカイガラムシの分泌物で、生薬名は、蟲白蝋といいます。

これについて、江戸時代に刊行された「日本山海名所図絵」(1、797年)に、興味ある記述があります。これによれば、会津(福島県)では、意図的に蟲蝋を生産、つまりイボタカイガラムシを養殖していたようです。また品質も良かったことが伺えます。
会津は、お種人参の栽培も、盛んでしたから、イボタ蝋の人工的な生産がなされても、不思議ではないでしょう。
また、今なお 市の中心部には、薬用植物を集めた「御薬園」があります。
イボタカイガラムシの生活史は、大変興味深いものです。この虫の雄は、完全変態し、雌は、不完全変態するという、極めて不思議なものです。しかしながら、昆虫関係の本などで、その生態を記述したものを、見たことが
ありません。あるいは、どこかにあるかもしれませんが。「薬用動物製造学」(沖田秀秋先生、大正10年、大倉書店)に、記載されていますので、後半で紹介します。

「日本山海名所図絵」(1,797年)より 
会津蝋(あいづろう)
本草 蟲白蝋(ほんぞうちゅうはくろう)といって、奥州会津(福島県西部の会津地方)に採れる蝋である。これは、イボタクライという虫を養い、水蝋樹(イボタ)という木の上に放せば、自然に枝の間に蝋を生じる。至って色が白い。その虫は奥州のみにあって、他国にはないので、形が正確にはわからない。今、他国に白蝋というのは、漆の木などの蝋を曝(さら)した白色のものである。また薬店にて外療に用いる白蝋というのも、蜜蝋(ミツロウ)の曝したものであって、これまた本物ではない。水蝋樹(イボタ)という木は、所々に多くあり、葉は忍冬(にんどう:スイカズラ)に似て小さい。夏は、枝の末に小さな白い花を開き、花の後、実を生じて、熟して色黒く鼠の糞のようであり、冬は葉が落ちる。
又、この蝋を刀剣に塗れば、久しく錆を生じない。また、疣(いぼ)に貼(つけ)れば、自然に落ちるので、「イボオトシ」の名がある。
今、蝋屋で売っている「会津蝋」という物は、その真偽がおぼつかない。

(編者注:黄蝋についての記述もあるので、ここに引用します。ついでながら、会津の養蜂所に蜂蜜を買いに行った事がありますが、片隅に蝋細工がおいてありました。黄色い蝋でしたので、ああ、これが本物の蜜蝋だな、と思いました。)

蜜蝋  一名 黄蝋(おうろう)
この蜜蝋(ミツロウ)は、黄蝋(おうろう)という物であって、蜂の巣である。その巣を絞りとった滓(かす)である。蝋をとるには、生蜜を採った後の蜂の巣を鍋にいれ、水にて煎じ沸騰した時、別の器に冷水を盛ってその上に籃(かご)を置き、あの煎じたものを移せば、滓(かす)は、籃(かご)に留まり、蝋は下の器の水面に浮かぶが、それをまた陶器に入れて湯煎をすれば自然に固まり蝋となる。
また、熟蜜をとる時、鍋にて沸かせば、蜜は上に浮かび、蝋は中に在り、脚の底にある。これを採って冷やしても、自然に黄蝋として固まる。

さて、
江戸時代に刊行された「本草綱目」の解説書、研究書である「重修本草綱目啓蒙」(小野嵐山先生口授、天保15年:1844年)の蟲白蝋の項には、
蟲白蝋の和名は、「イボタロウ」、「会津ロウ」とあります。このことから見ても、蟲白蝋の江戸時代における中心的な生産地は、会津であることが、判ります。
また、「中国にては、女貞樹に、この蟲を養う。それで、別名蝋樹(ろうじゅ)とも云う。」との記述もありますので、日本と中国では、樹種が違うことが既に判っていたようです。


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「鉱毒地鳥獣虫魚被害実記」  庭田源八 著  後書き

「鉱毒地鳥獣虫魚被害実記」  庭田源八 著

鉱毒地鳥獣虫魚被害実記   後書き
副題「北関東・渡良瀬川流域の昔の自然、特に鳥獣虫魚について」

                         第275回     2016.6.15
後書き

ここに紹介した「鉱毒地鳥獣虫魚被害実記」は、原文について、音については、一切手を加えていません。
方針として、音は変えないが、読みやすいように、理解しやすいように、手を加えました。
すなわち、庭田源八先生が、読み上げたであろう通りに、カナを振ったりしました。
また、分かりやすいように、漢字の一部を一般的な漢字に変え、旧かな使いを、新かな使いに変えました。
例として、本文中に「等 など」の字が多く出てきますが、原文では、すべて「抔 など」と表記されています。
「抔」の字が出てきたら、とても読めないし、読めたとしても、違和感があるでしょう。
それ以外にも、よく考えれば読める、と言うのが、多くあります。
しかし、大変読みにくいことが多いので、それらを、カナに変えたり、それらに、カナを振ったり、一般的な漢字に改めました。
句読点に関しては、一切手をつけていません。
その代わりに、意味が分かりやすいように、スペースを入れました。


二月の項の始めは、このようになっています。

「啓蟄二月の節に相成ますと、渡良瀬川をよび枝流川々には、多くハヤと云ふ魚が冬籠をなし深き淵に棲ましたのが、だんだん陽気に遊出しますと多くとれました。
夫に右申上げました川々枝流渡良瀬川に亀が多くおりました。
寒中は水中に穴を掘りまして、冬籠りをかくらの中でして居りまして、岸の古杭抔に、だんだん陽気に相成りましたから甲を干すと申しまして、樹根がけ崩抔に多く出て居りました。
只今にては、十四五歳位の童児抔は、亀甲と申す生きて居れるを見た者は少ないで御座りましょふ。
ありましてからが、三年に一度、五年に一度位でしか見へません。
即ち鉱毒被害なるべし。
魚は人々取り喰ふと云へ共、亀を喰ふ者は一人も御座りません。
然るに、種の絶ゆるは鉱毒被害たる為め也。
枝流川々にて、午後五時頃より八時迄は、川へ竹の簀を張り、中を三尺位の口明け置き、四つ手と申まする網を持ち居りますると、小魚が一日分二升も、二升五合、三升位迄は毎晩取れました。
只今では、鉱毒被害のため更に取れません。」

これを、
 「啓蟄(けいちつ)二月の節に相成(あいなり)ますと、渡良瀬川 及び 支流川々には、多くハヤと言う魚が 冬籠りをなし 深き淵(ふち)にすみましたのが、だんだん陽気に遊び出しますと 多くとれました。
それに 右 申し上げました川々支流 渡良瀬川に 亀が多くおりました。
寒中は水中に穴を掘りまして、冬ごもりを カクラの中でしておりまして、岸の古杭(ふるくい)等に、だんだん陽気に相成(あいな)りましたから 甲(こうら)を干すと申しまして、木の根 がけ崩(くずれ)等に多く出ておりました。
只今にては、十四五歳位の童児等は、亀の甲(カメノコ)と申す 生きておれるを 見た者は少ないでござりましょう。
(鉱毒被害が:注 原文になし)ありましてからが、三年に一度、五年に一度位でしか 見えません。
すなわち 鉱毒被害なるべし。
魚は人々 取り喰うと言えども、亀を喰う者は 一人もござりません。
然(しか)るに、種の絶ゆるは 鉱毒被害たるため也。
支流 川々にて、午後五時頃より八時までは、川へ竹の簀(す)を張り、中を三尺位の口 開け置き、四つ手と申しまする網を 持ちおりますると、小魚が一日分二升(注:1升は、約1.8リットル)も、二升五合、三升位迄は 毎晩取れました。
只今では、鉱毒被害のため 更に取れません。」
としました。この方が、読みやすく、意味が、理解しやすいでしょう。
こんな感じで、他の文章にも、手を加えました。


私が、この「鉱毒地鳥獣虫魚被害実記」に、注目したのは、以下のような理由からです。
私の先祖は、栃木県の谷中村の出身です。
母から、祖母(母の母で、旧姓は、鈴木)の一家は、足尾銅山の鉱毒被害にあって、先祖伝来の土地を失った、と聞かされていました。
また、田中正造先生についても、このように聞いています。
田中正造先生は、鉱毒に対する運動をしていて、支持者の家に泊まったりして、活動をしていた。当時は、祖母は、子供だったので、田中正造先生に背負われたこともあったとのことです。

とは、いうものの、子供時代や、若い時には、大して興味がありませんでした。
足尾鉱毒事件という言葉を見聞きしても、自分のこととは、捉えずに、他人事のように思っていました。
北関東の地図に、奇妙なハート型の湖があるのを、単に何だ、これは?としか感じていませんでした。

しかし、数年前に母が亡くなりました。
存命中に、谷中村を見せることが出来ずに、残念でした。
それで、「田中正造記念館」や、谷中湖に行ったりしました。
また、文献なども調べました。
事件の概要は、各種の文献である程度はわかります。しかしながら、先祖は、どのような自然環境に暮らしていたのだろうか?とも、思いました。

この、地区のかっての自然を知りたいものだと、思うようになりました。
それで、見つけたのが、庭田源八先生の「鉱毒地鳥獣虫魚被害実記」でした。
ここには、渡良瀬川を中心とした、両毛地区の自然(鳥獣虫魚など)が、活写されています。
私にとっては、見たことは、当然ありませんが、不思議にああ懐かしい、との感があります。
内容の虚実についても、考えなければいけませんが、多少の誇張と、記憶違いとが含まれるでしょう。
過ぎ去った昔を追憶した時に、思い出は美化されたり、不都合な部分は、忘れたりするのは、人間の常です。
多少の鼓脹や、記憶違いはあっても、記述の多くは、当時の自然を描写したものです。
また、その周辺の北関東の多くも、似た状態で会ったでしょう。
そういう意味では、大変貴重な記録でもありましょう。
副題として、「北関東・渡良瀬川流域の昔の自然、特に鳥獣虫魚について」としたのは、それを強調したかったがためです。

谷中村を含む両毛地区(鉱毒地の部分)は、水産資源に恵まれ、また上流から、土壌を肥沃にする物質が流れてきていました。多くの種類の淡水魚などの水産資源が豊かで、農作物も、生産量が多かったようです。
「エジプトはナイルの賜物」と言う言葉がありますが、「両毛地区は、渡良瀬の賜物」であったとの感を抱きます。

この「鉱毒地鳥獣虫魚被害実記」は、絶版になっており、ようやく、伝統と現代社、1977、1刊、「足尾鉱毒亡国の惨状 被害農民と知識人の証言 復刻」に収録されているのを見つけました。
一読して、大変心惹かれました。
しかし、今の若い人には、読みにくい文章です。また、著者の庭田源八先生は、明治30年で、60歳とありますので、もう既に、著作権は、切れています。
そこで、読みやすくして、ここに紹介しました。


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鉱毒地鳥獣虫魚被害実記 12月  副題「北関東・渡良瀬川流域の昔の自然、特に鳥獣虫魚について」

鉱毒地鳥獣虫魚被害実記 12月
副題「北関東・渡良瀬川流域の昔の自然、特に鳥獣虫魚について」

                 第274回     2016.6.15

小寒 十二月の節に 相成(あいなり)ますると、渡良瀬川筋 支流 川 沼にて、泥の厚くおります所に、ウナギ 土に差し(水底の泥土にもぐり込み)、冬籠りを致しておりました。
これを うなぎ掻きと申しまする、鉄を曲げて これにあきがありまして、掻きまして 取れました。
又 寒中でも、その厚き泥の中に、吹き穴と申しました穴があいてありました。後に針、蚯蚓(ミミズ) 刺しまして、穴釣りと申しまして、ウナギが釣れました。
これも、二十歳以下 青年諸君は知ますまい。
又 五六月時分、雨 降りまして川水 濁りました時には、苧(からむし)に 蚯蚓を刺しまして、これが たがみ釣り と申しまして、ウナギが蚯蚓をくはい(くわえ)引きまするを そろそろ 引上、急に 船の中へ 引き上げますると、釣れました。
これも鉱毒被害、二十歳位の青年、この例を知りますまい。
 
 大寒 十二月の節に相成(あいなり)ますると、狢(ムジナ)や狐等が多く、人家軒端(のきはし)や宅地等を 多く回り歩るきました。
狢(ムジナ)は、ガイガイガイガイと嗚き、狐は、コンコンコンコンと鳴き、インインインインと啼くもありました。
いずれも、耽(フケリであろうか?)もので 御座りまするよう、多くおりました。
鉱毒被害のため 野に鼠もおりません、虫類もおりません。又 魚類の少なき故(ゆえ)なるべし。
又 屋敷回り等に 人参等を取りまして、土に埋め置きますると、堀出し 多く喰うもので御座り升(ござります)が、二十歳以下の青年諸君は、右等の事は 御存知ありますまい。
次に 四五六七八九月に至る迄、種々 草が、その数 限りなく御座りました。
中にも圃(たんぼ)に 地ひばり(ジシバリ)、田で ヒルモと申しまして、最も 非常の悪草で ござりましたが、鉱毒被害のためには、影にだも 見えません。
筆紙難尽(ひつしに つくしがたし)、只今 あります分は、芝とスギナと申しまする草のみ 満々と延びまする。前条に付まして 御尋ねの御方様には 委細御答申上(いさい おこたえ もうしあげ)ます(この文章について、ご質問のある方には、詳しくお答えします。)。御推読 願います。
   明治三十一年旧二月十日
        栃木県足利郡吾妻大字下羽田第壱番農

庭田源八
    当六十歳

東京市芝区芝口三町目信濃屋方にて


〔中外新論社・大正十四年十二月十五目発行=栗川彦三郎編「義人全集」「鉱毒事件・上巻」所収〕

「足尾鉱毒 亡国の惨状 東海林吉郎、布川量 編・解説」 復刻 伝統と現代社1975.10.25


以上で、本文は終わりです。


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鉱毒地鳥獣虫魚被害実記 11月 副題「北関東・渡良瀬川流域の昔の自然、特に鳥獣虫魚について」

鉱毒地鳥獣虫魚被害実記 11月
副題「北関東・渡良瀬川流域の昔の自然、特に鳥獣虫魚について」

                 第273回   2016.6.10
大雪 十一月の節に至りますると、大根や牛蒡や葱、芋等が 多く取れました。
この芋等、いずれも 人々、野中(のなか) 又は 道路の端(はし)等に 穴を掘りまして、これに馬付き五駄も六駄も その穴に入れ、又は 車に積み等 致しまして、夥敷(おびただしく)収穫がありました。
五駄も七駄もその穴に入れ、来春(らいはる)まで ふせ置きました所、一戸に付きまして 三つ四つ五つもあります事 御座りますから、いずれ銘々(めいめい)我が家の印や名字(みょうじ)等を その塚の上に 土に置きまして、これに麦種を 蒔入(まきいれ)置きまする。

来春に 相成(あいなり)ます その麦が、青々とはい(生え)まして 心覚になりました程の物で御座升(ござります)が、その塚の数が 多う御座り升(ござりまし)た。
所が、只今に至りましては、鉱毒被害のため 芋がとれませんから、少も何所(どこ)歩きましても 御座りません。
 
冬至 十一月中の節、田面(たのも) 最早(もはや) 稲作も刈り取り 相成(あいなり)ますと、鳩が多く 田面(たのも)に出て、餌を喰ひに出ました。
これを 網を張りまして、鳥や猫耳鳥(注:猫耳の鳥は、フクロウだが、フクロウをおとりにするとは思えない。)等をおき、これをおとりと言う、鳩を多く取りました。これを鳩打ちと申しました。
午前六時頃より 日出より、又 午後五時位なるべし。
それより日の入る暮方(くれがた)、鳥が塒(ねぐら)に付きおりますと、道侍(不明)、樹木(森や林)等で 銃猟致すもあり、沼や川に、鴨やコガモが多くおりました。
棲みまして 魚を喰うておりましたが、只今では、魚も鉱毒被害の為、更におりません。
林の中や、藪や堤の腰等に、自然とはい(生え)ました 長芋が多くありましたが、鉱毒被害で ござりません。
 

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プロフィール

鈴木 覚

Author:鈴木 覚
埼玉県で薬局を開局しています。
漢方の勉強と趣味を兼ねて資料を集めている内、虫類にも面白い薬効があることに気がつきましたので2006年からブログをはじめ、今までご紹介してきました。
是非多くの方々に虫類の薬効を広く知っていただければ幸いです。
初めての方は【第1号】はじめに をご覧ください。

ご質問ありましたらtwitterにて。
ただし、虫に関する話題に限ります。



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