新日本酒紀行 地域を醸すもの・こんにちは 料理酒 NO.340 – やまもとようこのマクロビーノライフ
新日本酒紀行 地域を醸すもの 日本酒

新日本酒紀行 地域を醸すもの・こんにちは 料理酒 NO.340

新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
奥州街道旧矢吹宿に立つ大木代吉本店 Photo by Yohko Yamamoto

新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」

福島県西白河郡矢吹町

 料理人から圧倒的な支持を得る「こんにちは料理酒」は、大木代吉本店の代表作だ。
創業は1865年で、初代代吉さんが醤油蔵から分家し、福島県西白河郡矢吹町で開業。

 町は江戸時代に奥州街道の宿場として栄え、明治時代に宮内省の御猟場が設置された。
猟に訪れた朝香宮が2代目代吉さんの酒を気に入り、随行した雅楽師の「酒造りも楽器を奏でることも、神様へのささげ物」の言葉から「楽器正宗」と命名。

 1974年、後の4代目、一也さんは農薬不使用の米で純米酒「自然郷」を醸し、その酒を基にアミノ酸量が3倍以上の無添加料理酒を開発。すると、料理人や食品加工業者、自然食品店が大注目。

 2007年に、息子の雄太さんが父の思いを継いで5代目に就任したが、11年の東日本大震災で、15棟あった蔵の8棟が全壊。

 蔵人も被災し、雄太さんは自ら杜氏になると決意。
 県の清酒アカデミーに通い、酒蔵を巡り、高い酒質を目指して蔵を再建した。

 改善を繰り返し、16年に県開発の酒米、夢の香で、清らかな甘味と酸味が調和する「楽器正宗」を世に送り出す。

 国内外の日本酒評価会で上位に受賞し、高評価を受けて人気酒に。

 雄太さんは休耕田の復活にも尽力し、6反の圃場で夢の香を育む。

 また「酵母ではなく、原料から香りを表現したい」と、低グルテリン米やホップを加えた酒にも挑戦。

 料理酒も環境保全型の夢の香を使ってプレミアム版を開発した。自然を守り、醸造文化を次世代へと、さらなるおいしさを目指す。

新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
↑「こんにちは PREMIUM料理酒」
大木代吉本店・福島県西白河郡矢吹町本町9
●代表銘柄:こんにちは 料理酒、自然郷、楽器正宗
●杜氏:大木雄太
●主要な米の品種:夢の香、山田錦、酒未来、愛山、雄町
新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
古い梁や柱を生かしたおしゃれな売店 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
5代目の大木雄太さん Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
売店の奥が、醸造棟 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
蒸し米作業。 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
蒸し米作業。甑は改造した2段式 Photo by Y.Y.
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甑は改造した2段式 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
麹室の壁は清潔なステンレス製 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
代表銘柄。今や大人気銘柄となった「楽器正宗」Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
「こんにちは 料理酒」右の黄色いラベルがプレミアム版 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「こんにちは 料理酒」
黄色いラベルのプレミアム版。コクある深みが特徴。このまま飲んでも美味。お燗酒にもぴったり。 Photo by Y.Y.

(酒食ジャーナリスト 山本洋子)

週刊ダイヤモンド2024年4月20日号より転載

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