日本野鳥の会 : 北海道伊達市「(仮称)伊達風力発電事業拡張計画」に対する室蘭支部の取り組み

北海道伊達市「(仮称)伊達風力発電事業拡張計画」に対する室蘭支部の取り組み

平成19年エコパワー社が伊達牧場に10基の風力発電計画を出してきました。当支部も野鳥に対する影響を憂慮し、会社側と渡りの調査等を実施し協議を重ねてきましたが、平成20年環境影響評価書(案)を作成したところでエコパワー社は諸般の事情により計画から撤退しました。
その後平成21年3月にユーラスエナジージャパンがその後を受け継ぐ形で事業再開となり4者での話し合いも持たれました。新しい計画では大幅に事業規模を縮小し鳥の渡りのルートを避けて建設するというものでした。
そして2年後平成23年11月営業が始まりました。平成24年3月伊達市ホームページに「(仮称)伊達風力発電事業拡張計画 環境影響評価方法書」の縦覧のお知らせが載りました。計画は、25基を追加して合計30基に拡張する計画でした。
平成20年のエコパワー社が作成した環境影響評価書(案)では当初30基の風車建設を計画したが、計画地の環境に与える影響が大きいため10基にした旨の記述があり、今回の計画はそれに矛盾する内容でした。
8月に環境影響評価準備書の縦覧が行われましたが、環境影響評価準備書としてはあまりにもずさんなものでした。
ユーラスエナジー社は、今シーズンの鳥の渡りの調査を実施しないとのことでしたので、当支部では建設予定地が野鳥の渡りにどのような役割を果たしているのかを解明するため9月上旬から2カ月間に渡って本格的な調査を実施することを決定しました。
この渡りの調査によってますます、風車建設予定地が鳥の渡りにとっての主要なルートであり、渡りの拠点であることが明らかになりました。
日本も生物多様性条約を批准し、生物多様性基本法が制定され、北海道でも生物多様性保護条例の策定が進められている現在、野鳥全体の渡りを遮断し、生態系をもかく乱する今回の拡張計画は、環境及び生態系に重大な影響を与えると判断されるものです。

室蘭支部による秋の渡り調査結果報告書

平成24 年11 月23 日

「伊達風力発電拡張計画予定地における野鳥の渡り調査報告」

(公財)日本野鳥の会 室蘭支部
支部長 篠 原 盛 雄

1.はじめに

平成24年3月28日突然の拡張計画方法書縦覧が始められた。3月26日室蘭民報朝刊に掲載したとのことであったが、一般には十分知らされてはいなかった。伊達市HPにも掲載されたが、ほんの数日でHP表紙から見出しが消えてしまった。当支部はさっそく方法書を入手しそれに対する意見書を締め切り前の5月9日に提出した。ところが十分な方法書の検討がなされないまま、7月5日伊達市役所会議室にてユーラスエナジー社より当支部への説明が行われた。(その時すでに準備書を作成していた)その時説明の資料を配布されたが当支部の計画・準備書に対する意見は多岐にわたっており、それに対する意見は後ほど検討して提出する旨言い添え意見交換して会議を終えた。ところが7月末ユーラスエナジー社の担当者から8月の伊達市広報に8月7日から環境影響評価準備書の縦覧を掲載する旨の連絡があった。(8月1日方法書の説明に対する再質問書をメールでユーラス担当者に送った。)準備書を至急送るよう依頼したが、8月7日伊達カルチャーセンターにて直接準備書が渡された。
それを点検すると環境影響評価準備書としてはあまりにもずさんなものであった。10月からの改正アセス法施行前の駆け込みであることが明らからものであった。
環境保護に対する姿勢が問われると判断し9月19日に準備書及び拡張計画に対する意見書を会社社長宛、及び準備書を作成した気象協会理事長あて直接簡易書留で送付した。10月11日ユーラスエナジー社から準備書に対する説明会が伊達市役所会議室で再び行われたが、説明された内容は当支部の意見に対する回答ではなく、準備書に掲載するため縦覧で出た意見に対する回答原稿のコピーでの説明であった(9月30日に準備書は関係機関に提出済み)。方法書の当支部意見書に対する説明時(7月5日)も準備書の時(10月11日)も当支部の意見に直接回答するのではなく、準備書を作成する側で勝手に意見を要約し、それに対する回答をするという形式をとった。
そのため、本質的・重要な部分についての回答がなく、再質問をしなければならなかった。方法書の時に提示された回答が当支部の意見書のどの部分かを探して、未回答の部分、回答不十分な部分の再回答を求める再意見書を提出したが、(方法書の意見書の締め切りは5月に終わったので回答しないという姿勢をとり、回答を求めるもいまだに回答はない)準備書に対する意見書はさらに多岐にわたっているため、10月11日の回答では十分でないため、11月4日ユーラス社担当宛に、準備書への当支部の意見書に対する回答が不十分なので再度誠意を持って当支部の意見に対する回答を求めるメールを打った。経営責任者である社長名で文書回答するように再度求めた。
11月26日現在、まだ何の回答もされていないが、申請した拡張計画のほうは道の環境審議会に議題としてかけられ、さらには経済産業省の環境審査顧問会風力部会の議題にもかけられる。

平成19年エコパワー社が伊達牧場に10 基の風力発電計画を出して当支部も野鳥に対する影響を憂慮し、会社側と渡りの調査等を実施し協議を重ねてきたが、平成20 年環境影響評価書(案)を作成したところでエコパワー社は諸般の事情により計画から撤退した。
その後平成21年3月ユーラスエナジー社がその計画を引き継ぐ形で風車建設に乗り出した。それまで計画の環境影響評価について協議してきた当支部もユーラス社からの説明を受けた。その時点では当支部が主張していた小鳥の渡りルートを避けるべきとの意見を取り入れ5基を建設したいとの説明であった。
建設後も影響について調査するとの約束であった。

今回の準備書は平成20年エコパワー社が作成した環境影響評価書(案)の調査資料をベースとしてそれに追加の調査をしたものである。今回の拡張計画地域は平成20年の環境影響評価書(案)(10基建設)での建設予定地の倍以上の広さがあり、山全体に風車建設が計画されている。ベースにしている平成20年のエコパワー社が作成した環境影響評価書(案)では当初30基の風車建設を考えたが、計画地の環境に与える影響が大きいため10基にした旨の記述がある。これを作成したのは今回の準備書を作成した同じ気象協会で、担当者も同じである。計画地域での風車建設が環境に重大な影響を与えることを知りながらあえて拡張計画を推進してくるところに企業としての社会的責任の自覚が問題となってくる。準備書に対する意見ではその点についても問いただしたが全く責任を持った回答はないままで、計画は進行している。
ユーラスエナジー社は、今シーズンの鳥の渡りの調査を実施しないとのことであったので、当支部では建設予定地が野鳥の渡りにどのような役割を果たしているのかを解明するため9月上旬から2カ月間に渡って本格的な調査を実施することを決定した。
平成19年の調査からでは不十分な部分を明らかにするため、調査地点を風車全体、室蘭岳、絵鞆半島を見渡せる室蘭市石川町浄水場付近と拡張計画地からの渡りの出口である新茜ゴルフ場門前で実施した。これにより渡りのルートと、渡りの鳥の量的な把握をしようと考えた。
基本調査は石川町浄水場付近としハチクマの渡りが始まる9月13日から実施し、ノスリの渡りの終わる10月末まで計画したが、今年の秋の気温が高めに推移したため、渡りの時期も2週間ほど遅れ気味となったため新茜ゴルフ場門前は10月10日から11月16日までの間で8日間、石川町では11月15日までの間に19日間実施した。
約2カ月の間に27日間調査を実施しておおよその渡りの様子が把握できた。

2.観察・調査結果から判断される建設予定地の渡りに果たす役割

  1. 建設予定地の気仙川上流域の谷の林は渡りの鳥も含めての休息地である。
  2. タカ目のハチクマ、ハイタカ、ノスリ等の渡りのためのねぐらとなり、気象条件によって、本輪西、絵鞆半島へ移動する。西風が谷の稜線にあたって上昇気流が上がる時は風車建設予定地で500m以上上昇して直接対岸に渡る拠点にもなっている。
    27日間の風車建設予定地と周辺1キロで観察されたタカ目の合計数は845羽であった。昨年はハチクマがほとんど観察できなかったが、今年のピークは9月15日、16日、室蘭市マスイチ浜で50羽±程度。ノスリのピークは10月27日今季最大との情報があったが、行事があって調査が出来なかった。(平成23 年、平成19 年の気象協会の調査では風車建設予定地に1200~1300ものノスリの観察記録がある)
  3. タカ目のハイタカ、ノスリは陸ルートで渡る場合もあり、その場合風車建設予定地の北半分がそのルートとなっている。
  4. シジュウカラ、カワラヒワ、マヒワ、ベニマシコ、アトリなどの小鳥は風車建設予定地の南側三分の一を通過し、陸ルートのメインルートとなっている。
    27 日間の午前中の調査で把握した小鳥の数は4万5千羽を超え、シーズン中で通過する小鳥は数万以上と推測される。
  5. 風車建設予定地周辺には気仙川、稀府川、チマイベツ川などの上流部で谷が自然林になっているそのため、夏鳥の繁殖地にもなり、ノスリの繁殖地でもある。周辺のところどころに牧草地、ゴルフ場などの開けた所が点在し、そこがハヤブサ、オオタカ、ハイタカの狩り場となっている。(小鳥の逃げ込むところがない草地で追い込む)
    特にハヤブサは毎日風車建設予定地内で飛翔を繰り返し、狩りをおこなっている、観察では一度に3羽の確認をしている。
  6. 終盤の調査の中で大型の鳥、オオハクチョウ、ヒシクイ、オジロワシの飛翔も風車建設予定地内で観察され、渡りのルートとしての役割についてさらに詳細な調査が必要とされる。

3.不足している調査

  1. 夜間の渡りの量的な把握をすることが重要である。地球岬で実施された夜間調査では驚くほどの渡りが観測されたとの情報もあり、陸のメインルートでも夜間の渡りが行われていると考えられ、レーダー観測を実施し正確な渡りの量的な把握をすることが求められる。
  2. 周辺地域でのエゾライチョウ、オオジシギの調査が不十分である。
    稀府岳の西側の谷藤川で今年4月16日エゾライチョウのつがいが観察されている。風車建設以前は風車建設地及び拡張計画地域周辺はオオジシギの繁殖地域でもあり今後詳細な繁殖調査が必要とされる。
  3. オジロワシ等越冬期の猛禽類の調査も不十分である。今回の調査終盤でオジロワシが2度観察されており、オオハクチョウ等の大型の鳥の移動にも注目する必要がある。
  4. 夏鳥の繁殖についても種名だけではなく量的な把握が必要である。
    風車建設後風車建設地域での野鳥の減少が報告されている。

4.風車25基建設が野鳥に与える影響について

  1. 鳥は生まれたところに戻ってきて繁殖をする。風車建設に伴い繁殖地が奪われることとなる。特に準絶滅危惧種であるオオジシギの繁殖に大きな影響があると懸念される。
  2. 建設予定地は現在もハヤブサ(絶滅危惧II類)、オオタカ(絶滅危惧II類)ハイタカ(準絶滅危惧種)の狩り場となっており、狩り場の喪失、繁殖への悪影響が懸念される。
  3. 渡りの時期、建設地及び建設予定地のほとんどが渡りの主要なルートとなっており風車建設による渡りへの障壁は、鳥の生態に重大な影響を与えると判断される。
  4. ハチクマ(準絶滅危惧種)、ノスリ、ハイタカ等は気仙川上流、チマイベツ川上流の沢の自然林を渡りのためのねぐらとして利用し、さらに上昇気流の状況が良い場合そこから上昇し直接対岸へ渡る場所となっている。拡張計画による25基の設置は渡りのねぐらと、渡りの拠点を奪うことになりタカ目の渡りへの重大な影響がある。
  5. 平成19年の秋の渡りの調査でも風車建設予定地の南側は小鳥の渡りのルートと判断された。当時建設計画を進めていたエコパワー社との話し合いの中でも、渡りの時期に風車を止めて対応したいとの回答も得ていた。
    平成19年当時は9月から11月まで10回の調査であり小鳥の量的な把握は不十分であった。今年の秋の調査では9月中旬から2カ月の間に27回の調査を実施し、小鳥の量的な把握に力を入れた。100%のカウントはできなかったが、午前中の観察の結果ではあるが小鳥の総数は4万5千羽以上となり、風車建設予定地南側がメインの陸ルートであることが明らかになった。
    (周辺海岸地域では多くて1日数百羽)
    今回の拡張計画はこのメインルートを完全に遮断する形になり、小鳥の渡りに重大な影響を与えることになる。小鳥は標高100m~200mの山麓に残された林の上を飛び石のようにたどりながら(猛禽の襲撃から身を隠す逃げ場を確保)東山山麓沿いを西へ移動している。チマイベツ川、気仙川などの沢の林が小鳥たちのねぐら、採餌場ともなっており、その点からも小鳥の生息に影響を与えることになる。
  6. 伊達風力発電拡張計画の再検討について
    平成19年伊達牧場内で10基の風力発電計画が進められたが、その当時はまだ風力発電の環境に対する影響について十分な情報もなく、バードストライクだけが問題視されていた。そのため鳥の渡り調査を春・秋実施し、バードストライクを避けるための協議が当支部も交えて行われた。しかし近年各地に風車が建設され、徐々に風力発電の影響について問題点が明らかになってきている。今年10月から改正アセス法が施行され建設計画前にも十分な調査検討が義務付けられた。
    しかし、法の施行前に経過措置が設定されたため、手続きを簡略化するため、駆け込みの風力発電計画が進められた。
    原発の廃止風潮の中で再生エネルギーの一翼を担うものとして、風力発電が国策として進められ、伊達風力発電拡張計画もその流れの中で立案された。
    平成20年のエコパワー社が作成した「伊達ウィンドファーム事業 環境影響評価書案」ではP234・・(2)環境の保全のための措置 (a)計画規模の縮小・・・「当初案では30基の建設を計画していたが、環境への配慮から最終的に10基に規模を縮小した。」と記載されている。
    平成19年の計画立案時点で30基の建設は、建設地域への環境に対する影響が大きすぎるとの判断をしていたということになる。当時調査を請け負った気象協会が作成した事業環境影響評価書案に明確に記載されている。
    調査をし、環境影響評価書を作成する業者も担当者も変わらないというのに、計画を立案する企業が変われば、建設予定地の環境に与える影響の評価が変わるというのはどういうことなのか・・・。
    環境に対する影響は無視して風車建設をするという経営方針と判断せざるを得ない。当支部が今シーズン実施した秋の渡りの調査によってますます、風車建設予定地が鳥の渡りにとっての主要なルートであり、渡りの拠点であることが明らかになった。
    日本も生物多様性条約を批准し、生物多様性基本法が制定され、北海道でも生物多様性保護条例の策定が進められている現在、野鳥全体の渡りを遮断し、生態系をもかく乱する今回の拡張計画は、環境及び生態系に重大な影響を与えると判断される。社会的責任を持った企業であるならば勇気を持って今回の計画そのものを根本的に見直し再検討することが正しい選択である。
野鳥調査地:新茜ゴルフ場門前 (1)
月 日 10/10 10/15 10/16 10/17 10/24 11/9
調査時間 6:15 ~9:35 6:10 ~11:15 6:13 ~10:20 6:08 ~10:25 6:30 ~11:00 6:15 ~7:30
気象状況 雨・東風
6~7m
12℃-16℃
晴れ・西風
4~10m
11℃―15℃
曇り・西風
5~7m
12℃―14℃
晴れ・東風
3~10m
10℃―17℃
曇り・西風
2~6m
8℃―14℃
雨・無風
10℃
ミサゴ            
ハチクマ            
トビ       11  
オジロワシ            
オオタカ        
ツミ          
ハイタカ 10 25  
ノスリ 16 36 10 70  
ハヤブサ  
チゴハヤブサ            
不明のタカ        
タカ目合計 26 57 15 110
その他の鳥 497 1,313 3,009 1,341 1,441 135
大型ガンカモ            
野鳥調査地:新茜ゴルフ場門前 (2)
月 日 11/13 11/16 10/10~11/16
調査時間 9:00 ~12:10 6:05 ~10:30 8 日間集計
気象状況 曇り・西風
0~2m
7℃-11℃
晴れ・西風
2~3m
6℃―8℃
 
ミサゴ      
ハチクマ      
トビ   15
オジロワシ
オオタカ  
ツミ    
ハイタカ     41
ノスリ 31 171
ハヤブサ 24
チゴハヤブサ      
不明のタカ  
タカ目合計 39 11 263
その他の鳥 99 53 7,888
大型ガンカモ      
野鳥調査地:室蘭市石川町チマイベツ浄水場付近 (1)
月 日 9/13 9/16 9/21 9/22 9/23 9/26
調査時間 6:10 ~11:00 6:45 ~11:12 6:30 ~11:00 5:55 ~10:30 6:25 ~11:00 5:25 ~10:20
気象状況 晴れ・北北東の風
微風
18℃-25℃
時々雨・西風
0~3m
23℃―28℃
曇り・東風
0~2m
16℃―21℃
晴れ・東風
0~2m
13℃―23℃
晴れ・東風
2~7m
16℃―24℃
晴れ・東風
0~1m
13℃―20℃
ミサゴ            
ハチクマ   13
トビ  
オジロワシ            
オオタカ            
ツミ            
ハイタカ  
ノスリ 31 26 22 17
ハヤブサ  
チゴハヤブサ          
不明のタカ      
タカ目合計 36 28 32 29 33 18
その他の鳥 245 147 523 485 121 202
大型ガンカモ            
野鳥調査地:室蘭市石川町チマイベツ浄水場付近 (2)
月 日 9/30 10/2 10/7 10/13 10/21 10/22
調査時間 6:25 ~11:55 5:55 ~10:30 6:25 ~10:55 6:10 ~11:20 6:30 ~11:10 6:45 ~10:30
気象状況 雨・東風
1~6m
21℃-19℃
晴れ・東風
0~2m
12℃―24℃
晴れ・西風
3~8m
10℃―17℃
晴れ・西風
0~5m
8℃―15℃
曇り・西風
12~15m
10℃―11℃
晴れ・西風
5m~8m
9℃―11℃
ミサゴ          
ハチクマ          
トビ
オジロワシ            
オオタカ            
ツミ            
ハイタカ   13
ノスリ   13 11
ハヤブサ    
チゴハヤブサ            
不明のタカ    
タカ目合計 15 11 34 14
その他の鳥 224 928 745 9,435 1,193 13,987
大型ガンカモ         ヒシクイ 2  
野鳥調査地:室蘭市石川町チマイベツ浄水場付近 (3)
月 日 10/26 10/30 10/31 11/4 11/5 11/8
調査時間 6:15 ~11:08 6:05 ~10:30 6:08 ~11:07 6:00 ~10:30 6:00 ~10:55 6:15 ~10:35
気象状況 曇り・西風
3~8m
11℃-14℃
曇り・西風
1~3m
6℃―13℃
晴れ・西風
1~4m
1℃―10℃
晴れ・西風
0~5m
8℃―15℃
晴れ・北西風
0~1m
3℃―10℃
晴れ・西風
5m~8m
9℃―11℃
ミサゴ            
ハチクマ            
トビ 18   21
オジロワシ            
オオタカ        
ツミ            
ハイタカ    
ノスリ 50 18   25 118 20
ハヤブサ
チゴハヤブサ            
不明のタカ    
タカ目合計 70 22 11 39 126 46
その他の鳥 7,117 1,178 618 227 465 88
大型ガンカモ   オオハクチョウ5 オオハクチョウ8 ヒシクイ16    
野鳥調査地:室蘭市石川町チマイベツ浄水場付近 (4)
月 日 11/15 合 計 新茜ゴルフ場門前 石川町・ゴルフ場門前
調査時間 6:30 ~10:40   10/10~11/16
8 日間 集計
9/13~11/16
27 日間 集計
気象状況 曇り・北風
0~4m 3℃-5℃
     
ミサゴ    
ハチクマ   27   27
トビ   83 15 98
オジロワシ    
オオタカ  
ツミ    
ハイタカ   28 41 69
ノスリ 385 171 556
ハヤブサ 33 24 57
チゴハヤブサ    
不明のタカ 22 27
タカ目合計 582 263 845
その他の鳥 69 37,997 7,888 45,885
カラス合計 448 304 752
大型ガンカモ 31   31
鳥の総合計 39,058 8,455 47,513

渡りコース

渡りコース

渡りコース

渡りコース

渡りコース

平成24年9月19日

(株)ユーラスエナジーホールディングス様

(公財)日本野鳥の会 室蘭支部
支部長 篠原盛雄

「(仮称)伊達風力発電事業拡張計画環境影響評価準備書」及び計画に対する意見書

1準備書までの経緯について
今回の拡張計画については貴社の準備書によると平成24年3月26日付の室蘭民報朝刊に方法書の縦覧について掲載した旨の記載があります。当支部から方法書に対する意見書の中でも述べましたが、伊達市のHPへの掲載もすぐに表紙からは消えてしまい、検索しなければ見ることができない状態でした。こちらからの問い合わせによって今回の拡張計画の方法書を入手した次第です。方法書意見提出締め切り前の5月7日貴社国内事業部宛に当支部の意見書をメールで送りました。その意見に対しての説明ということで7月5日伊達市役所会議室にて気象協会、貴社から意見書に対する説明を受けました。説明は各項目に渡ることから後日さらに精査し再度当支部の意見をあげる旨申し添えました。7月5日の説明に対する当支部の再意見書を8月1日に貴社宛メールにて送りました。ところが貴社は方法書を充分に検討しないまま、すでに準備書の作成にかかっており、広報が出る直前に電話がありましたが伊達市広報8月号に「(仮称)伊達風力発電事業拡張計画環境影響評価準備書」の縦覧の告知、説明会の開催を掲載しました。8月7日貴社より直接今回の準備書を入手し、8月27日の説明会なるものにも参加させていただきました。説明会に至っては、伊達市、室蘭市の住民に広く説明するという状況にはありませんでした。しかも参加者に資料は全くなく、PCのスライドで説明するだけという非常に不親切なものでした。まさかとは思いますが、これで住民の風車拡張計画の合意を得たとするのではないことを貴社に確認したいと思います。
貴社との懇談の中で、今年の秋の渡りの調査は実施しないとのことですが、方法書の十分な検討をしないまま、エコ・パワー(株)の調査をそのまま引き写して評価書を作成するという非常に乱暴なやり方をしています。まず方法書をしっかり検討しなければ、今回の拡張計画の環境影響評価を正確に作成することができません。当支部の8月1日付けの再意見書にきちんと対応してから新たな調査を実施すべきと考えますがいかがでしょうか。
この拡張計画のこれまでの経緯から貴社の経営姿勢が垣間見えてきます。まず拡張計画ありきで、先に陣取りをして、それから必要最低限の手続きをすればいいのだという姿勢だと判断されます。あの東日本大震災以降、貴社としてはまたとない業務拡張のチャンスととらえているのでしょうが、風車建設は地域生態系、住民の生活に大きな影響を与えるものです。
貴社の今回の準備書の対象事業の目的にすら『本事業では環境負荷の少ない風力発電所の設置を推進し・・・』とあります。原発爆発を経験し、企業の社会的責任は今後さらに重大になっていきます。環境を大切にすることを目的とするならば、十分な調査と、将来を見つめた公正な判断が求められます。日本で最大の風力発電の企業であるならばなおのこと、日本における指導的な立場として、風力発電のあり方を示していくことが求められています。そうであるならば、貴社の経営姿勢として今回の伊達市における拡張計画のやり方そのものを再検討し、これまでの調査から拡張計画そのものの可否についても再検討に入ることが求められています。

2準備書の基本的な部分についての意見
準備書の詳細についての意見は別項目でいたしますが、準備書についての基本的なおさえについて述べていきます。
今回の拡張計画の準備書は平成20年8月「伊達ウインドファーム事業環境影響評価案」
が基本的なベースになっています。この計画はエコ・パワー(株)が伊達牧場内に10基の風車を建設するというものでした。平成19年秋、当支部も9月から11月上旬まで10回にわたって伊達牧場で野鳥調査を実施し、エコ・パワー(株)と協議を続けてきました。伊達牧場での気象協会と当支部の調査資料を付け合わせ、鳥の渡りに影響がないよう検討してきました。その協議の中で、小鳥の渡りのルートを確保すべく、高速に近い風車建設数を減らすか、位置を変更するよう話し合いがもたれました。エコ・パワー(株)はあくまで10基にこだわり環境影響評価案を出すところまで行きましたが、諸般の事情により計画を断念しました。その後平成21年3月再び風力発電計画がユーラスエナジー(株)により引き継がれることとなり、当支部との話し合いの中で、「鳥の渡りの影響を最小限にするため」10基の計画を5基にして実施したいと説明を受けました。当支部の意見もある程度反映されていると判断し、建設後の事後調査を確約していただき、話し合いを終えました。
ところが今回は、十分な協議もなく、次々と先走った計画遂行です。
その姿勢は非常に問題で、即刻改めて頂き、はじめから仕切り直ししていただきたいと考えます。貴社の今回の準備書がエコ・パワー(株)のものをベースに作成されていますが、エコ・パワー社の事業環境影響評価案(平成20年8月)の中では以下のように記載されています。
P233
(c)評価の結果
「 ・・・・・風力発電機が設置される区域外にも迂回するための空間が十分確保されていることから、風力発電機に接近接触する可能性は極めて低いものと評価される。・・・」
P234
(2)環境保全のための措置
(a)計画規模の縮小
「当案では30基の建設を計画していたが、環境への配慮から最終的に10基に規模を縮小した。」
今回の貴社の準備書はエコ・パワー(株)の評価案をベースに若干付け加えて作成さています。貴社の準備書においてもP194からP237まで野鳥の渡りの調査資料が掲載されています。ところがP238の渡りの考察において、主要な渡りのルートには該当していないとしています。当該地区が絵鞆半島を中心とする渡りの中継地の交差点的な役割を持った地域であり、渡りに影響がないと断定することは調査資料からはできません。
さらにP319の第7章環境影響の総合的評価の中では鳥の渡りのルートについては一切触れないというたいへん不自然は評価となっています。
拡張計画実施を可とするため意図的に評価していないと判断されます。
エコ・パワー(株)ですら当初30基の予定を10基に減らしたのは、環境に対する影響が大きいと判断したためです。貴社は「環境の負荷の少ないよう・・・」という目的のもとに計画を立案しているはずです。エコ・パワー(株)の影響評価案を再度検討し、計画の見なおし、拡張該当地域全域及び周辺での鳥の渡りのルートを確定するために詳細に調査し直すことから始めるべきです。社会的責任を持った経営責任者として伊達市における風力発電拡張計画を再検討することを求めます。

3「(仮称)伊達風力発電事業拡張計画環境影響評価準備書」の各項目に対する意見
<P2>
2.1 対象事業の目的
本事業では環境負荷の少ない風力発電所の設置を推進し・・・・
<意見>
事業自体に環境の負荷を少なくするという目的・理念を貫いた事業計画を立てること。

<P41>
(c)生態系
<意見>
該当地域の生態系の説明は理解できるが、生態系に風力発電所設置がどのような影響を与えるか詳細な調査と客観的な評価をすること。

<P73~P75>
(3)騒音~(4)振動
伊達市及び室蘭市において・・・・都市計画法用途地域に応じた地域の・・・が、対象事業実施地区周辺における指定はない。
<意見>
この文言を騒音、振動の項目で使用しているが、風車建設該当地区はもともと都市計画法に基づく該当地区ではなくこの法に基づく騒音規制、振動規制時準値を持ってくるのは意味をなさない。もともと静かな山村集落であり、そこでの騒音振動が問題とならないかを調査し、評価すべき。

<P87>
4.1 方法書についての住民の意見等の概要及び事業者の見解
(1)地域への情報提供の手法
・・・・方法書に関する縦覧を実施し・・・・室蘭民報の朝刊において
<意見>
エコ・パワー(株)の「伊達ウインドファーム事業環境影響評価案」(平成20年8月)
P98に書かれている(1)地域への情報提供の手法によると、対象地域全域に6紙に新聞折り込みを実施している。今回の方法書縦覧の地域への周知徹底がされていない状況があり、室蘭民報に掲載しただけでよしとした理由を説明すること。

<P88>
表4.1-2(1)住民等からの意見の概説及び事業者の見解
事業者の見解(2段目)
本事業の推進にあたっては既設の風力発電所の稼働後の・・・現地調査を実施し・・
広く公開してまいります。また・・・環境影響調査準備書については、国等の審査を介し、より専門的な立場からの技術的検討が加えられる見込みです。
<質問>
原発爆発以降さらに社会的責任を持った企業の経営姿勢が厳しく問われている。
このような状況下で、自らの事業に対して、社会的責任を全うできるのかの自己判断をわざと放棄して、無謀な建設計画を作成しそれを丸投げして、うまく審査を通ればよしとする貴社の経営姿勢と解釈してよいか。

<P94~P98>
5.2調査、予測の手法
(4)調査地点
・・・・、図5.2-1に示す4地点において、騒音を測定した。
(5)調査期間等
・・・夜間窓を開ける・・・夏季2日間として、平成24年7月4日(水)~6日(金)に測定を実施した。
<意見>
既存の5基の低周波音を含む騒音調査については風車が最大出力を出す状況下で測定をしなければ調査の意味がない。風車での風速、風向のデータをそろえその条件下での騒音、低周波の測定を行うこと。
既存の5基が最大出力で稼働するのは主に北西の季節風が吹く冬季間であり、その風下にあたる室蘭地域での測定を3キロ圏内で測定地域をさらに数か所増やし、気温、風向、風速の様々な条件のもとに詳細な測定をすること。
地形、気温、風向、風速により音の伝わり方の違いも考えられ、調査期間も長期にわたって実施すること。
室蘭の風下側には、近くに酪農家、知舞龞浄水場付近にウズラ園、3キロtd
16℃―24℃
圏内には学校、病院、白鳥台団地等があり既存5基の測定調査は今後のために必要不可欠。

<P108>
(b)注目すべき種及び・・・・
(ア)鳥類の渡りの時の移動経路に関する調査
平成17年度及び平成19年~平成20年度の調査・・・・
・・・・・・・・
平成23年度の調査
・・・・・
平成24年度の調査
<意見>
平成17年~平成20年の調査は伊達牧場の敷地内に10基の風車建設を想定した調査であった。平成23年の秋の調査は5基試運転開始後の10月19日~10月21日、11月10日~12日。平成24年春の渡りの調査は4月26日~4月28日、5月30から6月1日となっている。
今回の25基の増設計画は広大な地域いっぱいに建設が想定されている。既存の5基を建設する時も、鳥の渡りの影響を最小限にとどめるという目標・理念のもとに行われた。かつて30基の増設も検討されたが環境に影響が大きいと計画は変更されている。平成19年~20年の調査によってエコ・パワー(株)の伊達牧場の鳥の渡りのルートの概略が示されているが、今回の計画はさらに建設地域を広げ明らかに渡りのルートの障壁となることが懸念され、建設予定地域及び周辺地域での渡りルートの正確な把握、この地域の鳥の渡りに果たす役割を明らかにすることが、計画立案前の前提条件となる。
平成17年から平成24年度の調査結果では今回の建設計画を正当化する鳥の渡りのルート解明がされていない。ルート解明のため調査地点の再考、調査期間の検討が必要、特に既存5基が稼働している状況下での渡りの詳細な調査が必要。23年の秋の調査は10月19日からであり、ハチクマ等の渡りが終わっていて調査不十分。さらにオジロワシ、オオワシの渡りは11月中旬~12月上旬を調査しなければ正確な資料とならない。
平成24年の春の渡りの調査に至っては、オジロワシ、オオワシは2月中旬から下旬、
オオハクチョウ、コハクチョウ等ガンカモ類は3月下旬から4月上旬が渡りの時期となっている。夏鳥も3月下旬から始まり5月上旬にほとんどの鳥の飛来が終わる。それを考慮するととても春の渡りの調査とは言い難く春の渡りの資料とはならない。
25基増設計画はこれまでの調査と、極めて不十分な追加調査では鳥の渡りへのルートへの影響評価ができる状況ではなく、環境への影響評価をするにあたってはさらに厳しく対応しなければならない案件である。

<P140>
5.3評価の手法

<意見>
評価の手法
騒音・・・既存5基周辺の住民、酪農、養鶏、ウズラ園等の聞き取り調査の実施。
冬季最大出力時での測定、測定地点の拡大。
既存の30基規模の最大出力時の騒音データの添付
地形による反射増幅、風速、風向、気温条件を明示し人体、家禽、家畜等に影響がないか評価する。
低周波・・・騒音と同じ手法による正確な影響評価をする。
シャドーフリッカー・・・特にゴルフ場でのプレイヤー、従業員に対する影響が懸念され
その点の評価を明確にすること。
建設該当地区及び周辺地域の鳥も含め生物への影響を調査すること。既存の他の30基程度の風車での生物影響調査資料を参考資料として添付し総合的に評価を行うこと。
動物・・・・該当地区及び周辺地域の生物を定量的に調査し、風力発電施設の設置により
地域生態系にどのような影響を与えるのかを既存30基程度の生物調査資料を添付して評価を行うこと。
当該地区及び周辺地域は鳥についてはオオジシギの繁殖地域でもあり、繁殖に対する影響を量的に明確にし、鳥の渡りのルートとしてどのような役割を果たしているのかの解明評価を行うこと。
生態系・・・両生類、昆虫、野鳥、動物に騒音、低周波音、シャドーフリッカーがどのように影響し、生態系全体にどのような影響を与えるのかを既存30基程度の生物資料を参考として評価すること。
景観・・・5基ですらかなりの威圧感があるが、合計30基ともなると周辺住民の忌憚ない意見交換が必要と考えられ、風車建設に対する十分な住民合意を評価に入れること。
人と自然との触れ合いの活動の場・・・ゴルフ場での影響を入念に検討すること。

<P141>
6.1騒音
<意見>
先にも述べたとおり、騒音測定の調査が7月4日~5日とされ、風車側の風向、風速、気温、測定地での風向、風速、気温の資料が明示されてなく、騒音レベルのデータだけではまったく意味をなさない。最大出力時での風下での、様々な条件下での測定が必要であり、気温、地形での反射増幅も考えられ特に風下地域での測定地点の拡大のもとに全体を書き直すこと。

<P143>
(b)予測の結果
最大出力時での風下地域での測定、測定地点の拡大、既存30基程度の実測データをもとに地形での反射、気温条件での音の伝わりをも条件に入れより実際的な予測を行うこと。

<P144>
図6.1-2
<意見>
最大出力、気温、地形での反射、増幅効果も条件に入れた予測図を作成すること。
またどのような条件下でのものかを明示すること。

<P145>
(2)環境保全のための措置
実施に伴う環境影響・・・・景観影響も提言される
<意見>
事業者側の主観による判断であり客観性に欠けるので見直すこと。

(3)事後調査に必要性の有無・・・
事後調査はしない
<意見>
地形、気象条件により、想定外のことも考えられ、建設後の事後調査は企業の責任として当然の義務であり、実施することを明記すること。

<P146>
6.2 低周波音
<意見>
騒音と同じく最大出力時での実測、測定地の拡大、様々な気象条件下でのデータをとるため、調査期間を再度検討作成し直すこと。
低周波音については周波数及び音圧の調査結果を風車及び、調査地点の風向、風速、気温等の気象条件をも明示して調査結果表を作成すること。

<P148>
(b)予測の結果
<意見>
6.2低周波音についての意見と同じく、測定方法を見直し、さらに正確な予測をするため既存の30基程度の風車で実測されたデータをもとにより正確な予測をすること。

<P149>
図6.2-2
<意見>
最大出力時の30基程度の実測値をもとに地形による反射増幅、気象条件による音の伝わりをも考慮した図を作成すること。

<P166>
(2)表6.4-1シャドーフリッカーに係る環境保全措置
内容 ・・・・設置位置を居住地域から700m以上隔離する
実施に伴う環境影響・・・・周辺居住地域において・・・景観影響も低減
<意見>
事業実施予定地区にはゴルフ場があり、直接シャドーフリッカーの影響を受ける。それに対する記述が全くなく、この項目が不完全な記述となっている。景観影響も低減の表記は奇異。
(3)事後調査の必要性の有無・・・
この項目も、ゴルフ場への影響が欠落しているので追加すること、さらに懸念されるのは、一部西側の養鶏場に影が投影されることが示されており、その点も調査の必要がある。

<P167>
6.5動物
①鳥類
下から10行目・・・・これにより、対象事業実施区域周辺には、鳥類の渡りの移動
経路、または中継地などが存在し、また繁殖地としての機能が備わっていることが示唆される。・・・・
<意見>
この指摘からどのような事が予測されるのかが抜け落ちている。
合計30基になる計画ではどんなことが予測されるのか明確にすること。

<P173>
②哺乳類
<意見>
哺乳類の調査で、コウモリの調査が不足している。意外とコウモリが生息しており、種名と生息数を詳細に調べること。北海道にはコウモリの研究家もおり、その援助を受けること。
最近、ヒグマの生息が室蘭岳で確認されており、ヒグマに対する風力発電施設の影響も調査必要。風車稼働でヒグマへの追い出し効果が働いて、人家に現れることがないように注意が必要。

<P180>
表6.5-6
<意見>
チョウの項目で「アサギマダラ」が抜けている。平成19年秋の伊達牧場の野鳥調査時確認済み。

<P182~183>
(1) 注目すべき鳥類
<意見>
表6.5-8に使用されている資料はこの地域の野鳥を正確に把握したものではなく、当地域での野鳥の調査は当支部の資料が一番信頼できるものである。当支部30周年記念誌、及びここ数年にわたる観察記録が当支部HPの鳥情報に掲載されている。それを資料とすることでより正確な地域の野鳥の把握ができる。

<P185>
<意見>
9行目のオオジシギの確認が出来なかった理由づけについては調査を継続し、早計な判断は避けるべき。

<P186>
<意見>
コウモリの生息が予想され事業予定地域及び周辺地域での調査を詳細に実施すること。

<P196>
下から6行目 以上から対象事業区域及びその周辺は・・・
<意見>
平成19年から平成20年の調査はエコ・パワー(株)の10基建設計画のための調査であり今回の広範囲の地域での鳥の渡りのルートを確定するものではない。伊達牧場上空を通過する鳥の調査を秋、春にかけて実施したものでそれによってこの地域の渡りのルートを確定し判断するのは非常に乱暴である。
すでに5基が稼働する中、さらに鳥の渡りのルート調査、5基の稼働による鳥の渡りの影響について詳細に調査する必要がある。しかし、貴社は今シーズン秋の渡りの調査を実施しないとしている。当支部では今年も調査活動を実施し、正確な影響調査資料を作成する。地域の環境保全、生物多様性を確保するため様々な法が制定され、これから取り組みが始まろうとしている状況下、短期的な経済的な利益優先ではなく、長期的な国際的、国家的な課題をになう社会的責任を貴社の理念とすることが求められている。

<P238>
<対象事業実施区域およびその周辺における渡りについての考察>
<意見>
平成19年から20年にかけての渡りの調査はまだ不十分ながらも、絵鞆半島を中継地とする鳥の渡りの傾向が明らかにされた。今回の準備書はエコ・パワー(株)の環境影響評価案で掲載されたものをそのまま使用しているが、この項目での考察は、P167で鳥の渡りの経路、または中継地が存在しの記述と矛盾する考察となっている。作成された資料、作図からどう考えてもP167での記述しかできない。さらには対象事業区、及び周辺でも渡りのルート調査がまだ不十分で経路、役割の評価が出せない。P198からP237まででの資料から今回の対象事業区の半分(伊達牧場)が鳥の渡りのルートであり、絵鞆半島の中継地との関連もあり、中継地としての役割も担っていると考えられる。そこに合計30基の風車建設を計画するにあたってはよほど慎重に、詳細な調査をしていかなければ重大な影響を与えかねない。
この項で環境影響を出来るだけ小さく見せようとする意図的な表現となっている。
科学的に、客観的に、生物多様性を守るスタンスに立って公正な考察をすること。

<P239>
(ii)希少猛禽の生息状況
<意見>
希少猛禽の生息調査は時期と時間が必要とされる。調査の時期、回数から早計な判断は避けるべきである。オジロワシ、オオワシは11月下旬から2月中旬までこの地域で越冬する。
渡りの時期等がずれていれば、確認数は激減する。

<P243>
○ケアシノスリの生息状況(夏鳥、一部留鳥)
<意見>
記述の間違い(夏鳥、一部留鳥)→(冬鳥)
この地域ではケアシノスリは冬鳥として数羽が越冬する。
ハヤブサの記述について・・ハヤブサは対象事業実施区域付近でも頻繁に観察され、高圧電線の鉄塔で休む姿も観察される。この地域は野鳥も多く狩り場として利用していると判断される。調査をしっかりすることが必要。

<P252>
12行目・・以上により、猛禽類については一部についてわずかながら生息環境の変化が生じる可能性があるものの、営巣地と採食環境及び周辺を含めた行動圏全体としての生息環境の減少や喪失はほとんどないものと予測される。
<意見>
オオタカ、ハイタカ、ハヤブサ、ケアシノスリの採餌行動が確認されているのに、何故このような記述になるのか、まったく論理的に破綻している。
事実を正しく捉え、良心に従って客観的に評価を出すことが環境影響評価書の役割ではないのか。まったく評価準備書の体をなしていない。
また騒音による生息環境の悪化、騒音による餌資源の逃避・減少、・・P253までの希少猛禽に対する影響についての記述は全く科学的ではなく出来るだけ影響がないような表現
になっており、まったく事実に基づいた科学的な分析とはなっていない。
あまりにもひどすぎる記述であり全面的に書き換えること。

<P255>
7行目・・対象事業実施区域周辺には、迂回するための空間も十分に確保されていることから・・・
下から9行目・・風力発電周辺には迂回する空間も広く確保されていることから、あらかじめ風力発電の存在を認識し、移動経路の変更あるいは分散を促すことは十分に可能であると予想される。
<意見>
この記述はエコパワー(株)の環境影響評価案のP233(c)評価の結果の文章の中にもある。これは伊達牧場に10基建設するという計画で、当支部との協議の中でそれでも鳥の渡りに影響があると論議になった点である。今回の計画は、既存5基の建設時、渡りの影響を考慮し10基を5基に減らして建設したいと説明した貴社の自己矛盾ではないか。
渡りのルートを完全に遮断し、広大な生息域を風車によって奪ってしまっても、迂回する空間があるとどうして言えるのか。
あまりにも自己都合な解釈であり、このようなこじつけで風車建設拡張計画を遂行しようとする貴社の強引さ、準備書の無意味さが明らかになっている。

<P259~P261>
③対象事業区域及び周辺を営巣環境とする注目すべき種
<意見>
この項目についても、エゾライチョウが周辺で確認されており、事業区域周辺でも繁殖の可能性がある。調査継続が欠かせない。
希少猛禽の項目とパターンで、どの項目も利用頻度が低い、騒音に慣れてくるなどという言い訳を連ね、最終的に影響は小さいものと予測されると結論付けている。
綿密な調査から引き出された説得力のある結論を出すこと、主観的な予測という便利な、ごまかしの言葉で結論を示す表現をすべて書き換えること。そうでなければ科学的な環境調査とはならない。勝手に都合のよいように解釈するのであれば環境調査は意味がない。環境調査の信頼性を失い、環境調査を冒涜する行為で、環境調査の自殺行為である。

<P297~P299>
<意見>
前項と同じく風車の生物に与える影響について、定量的な調査と既存の他施設での事前、事後の生物生態調査の資料から科学的な判断をすること。

<P302>
下から7行目・・さらに。風力発電機が設置される区域外にも迂回するための空間が十分に
確保されていることから・・・・
<意見>
希少猛禽の項目でも指摘したように事業実施区域も含めて周辺は希少猛禽の採餌場でもある。鳥についてだけでも渡りのルート・中継地として、夏鳥の繁殖場として、冬鳥の採餌場として重要な役割を担っている地域であり、25基増設が環境与える負荷は甚大であると予想されるが故に詳細な調査が必要である。

<P314>
(4)評価の結果
<意見>
景観の評価については伊達市、室蘭市の住民のアンケート等意見を集約して、景観の評価を出すべきで、地元で生活していないものが評価を出すものではない。

<P316>
(b)予測結果
シャドーフリッカー、騒音、低周波音がゴルフ場の従業員、プレイヤーにどんな影響を与えるか詳細に調査予測すること。

<P319>
7章環境影響評価の総合的な評価
<意見>
評価者が事業実施区域に行ってみて客観的に認識しての判断とは思われないような総合評価であり、かなりのページを割いて鳥の渡り調査資料を掲載しながら鳥の渡りのルートとしての評価が全くされていないことは、資料自体を理解していないのではないかと思われる。
地域生態系、鳥の渡りのルートに重大な影響を与える懸念があるこの計画に対して、環境影響評価をする当事者として責任ある評価をしているとは思われない。
調査資料に基づき、また不足であればさらに調査を追加するなりして、科学的にまた客観的な環境影響評価書を作成し、計画が環境にどのような影響を与えるか公正なものを作成すること。

~後述 気象協会代表者、及びユーラスエナジーホールディングス社長殿~
エコ・パワー(株)の調査姿勢は客観的なものを作成しようとする姿勢がありました。

今回(株)ユーラスエナジーホールディングスの作成する準備書はあまりにも計画実行のために作為的に作成されたもので気象協会の環境調査の信頼性を喪失させるものです。
あまりにも杜撰な準備書を縦覧してしまったのではないでしょうか。
気象協会もユーラスと協議をし、このような姿勢で環境影響評価書を作成してよいのか再検討していただきたいと思います。
今回の準備書は、環境に与える影響評価を客観的に記述することなく、
環境のことは全く配慮せず、計画を強引に推進しようという姿勢が丸見えです。
形式だけ整えて、自然再生エネルギーの波が来ている今を業務拡大のチャンスととらえ強引なやり方で計画を立案していると見受けられます。
ほとんどの人は風車の環境に対する負荷について、まだ十分に理解している状況にはありません。その状況下、十分な調査検討をすることなく、地域生態系に大きな影響が懸念される計画を実施しようとすることは地域住民に対する背信行為です。
正々堂々と、良心に従って社会的責任を全うする企業経営をめざしてください。
どうしても企業は短期的利益追求で縛られていますが、であるならばなおのこと、企業のトップとして企業が日本で果たしていく役割を、理念を持って貫いていくことが一番大切な事と思います。社員が誇りを持って、自信を持って、仕事ができる企業であってください。
強引な経営方針は、環境に大きな負荷を与えるだけでなく、それに係わる社員や気象協会の担当者を苦しめることとなります。大震災以降原発爆発で企業のあり方が問われています。
日本の将来を見通して国民のために何ができるか、企業に求められる責任は大きいと思います。今回の準備書を読み込んで明らかになってくることは、拡張計画そのものに無理があるということです。気象協会および、ユーラスエナジーホールディングスの経営責任者が直接現地を見ていただき、計画そのものの可否について再検討にはいることを要請いたします。