津波の大きな被害や、原発事故の先の見えない状況への人々の大きな悲しみや苦しさに、宗教は寄り添うことができるのか。震災によって突きつけられた、「これまでの生き方でよかったのだろうか」という問いにどのように答えていけるのか。人々の生活実感に根ざした、まさに臨床哲学が、今求められているのだと思います。
若い世代を育てる立場としては、疲れてしゃがみこむ人たちに「立ち上がれ」と言うことに、ずっと迷いを抱えていました。しかし震災が起きてからは、それでも「グローバル・エリートを目指せ」と言うべきだと、私は腹をくくりました。 そのためには、激烈な競争社会にあって必要な「ジモト」という新たな共同体を増幅させていく必要性を確信したのです。
最近は、「社会学者」と呼ばれたりしますけど、社会学に固執しているわけではないし、面白いなと思った研究を自分なりにしているだけです。「研究」って、別に特別なことではないんです。「今、ここ」に生きている自分を含めた社会を、少しだけ遠くから見ること。それって、誰もがどこでもいつでもできるとだと思います。
ケインズ等の一流経済学者も、実際に恐慌を目の当たりにし、それに対する深い洞察から経済理論を構築しました。大震災と原発事故という国難の中にあって、現実の社会や足元の地域を見ない研究では先がない。原発事故の起きた福島に住む意味を問うことは、日本に住む意味を考えることでもあります。
宇宙を研究したいという若い学生に、何からはじめてもいいんだよ、と言っています。 生物学ならば宇宙生物学、機械工学であればロケット、放射線をやっていたら宇宙線の研究に繋がります。医学ならば宇宙医学。私のように天文学から入った人間も、放射線や電力問題にまで幅を広げてきました。人文・社会系ならば、宇宙人類学、宇宙産業論や文明論まで含めた、壮大な挑戦を行おうとしているのです。
天を恨んでも仕方ない~開拓者としての人
佐藤 文隆
(甲南大学/理論物理学)
大事なのは「何をやりたいか」よりも「何をやれるのか」。“プロフェッショナル”になれ!
本田 由紀
(東京大学/教育社会学)
大震災とともに考える~優先順位の組み換えが生み出す新たな「価値」
野家 啓一
(東北大学/科学哲学、現代哲学)
街は必ずもっとすばらしく再生する~神戸復興に携わって
盛岡 通
(関西大学/環境工学)
学校で学ぶと奇蹟が起こる~すべてはよりよく生きるために
橋爪 大三郎(東京工業大学/理論社会学)
人の世を動かす「なぜ」を考える
楠木 建(一橋大学/経営学)
政治学という学問と震災~政治の力が問われる今
山口 二郎(北海道大学/行政学)
技術の結果をわかりやすく伝える力がいのちを守る
信岡 尚道(茨城大学/土木工学)
研究室を飛び出し、放射線被ばくについて情報発信中
田内 広(茨城大学/放射線生物学)
被災現場で大転換の必要を痛感。工学分野の災害研究
鵜飼 恵三(群馬大学/地盤環境工学)
文明の転換点に立って~3/11以降の世界の新たな構築
高橋 世織(日本映画大学/イメージ論、言語芸術論)
風景は人間の原点~風景の理解は復興への道標
齋藤 潮(東京工業大学/風景論)
言葉は時に無力で空疎、されど人間を立て直すのも「言葉」
紅野 謙介(日本大学/日本近代文学)
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