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大地と生きる住まい

開墾地にみる農村住宅の近代化


小沢 朝江 著 / 長田 城治 著 / 野村 渉 著

単行本 ¥3,850

刊行年月日:2024/12/11
ISBN:978-4-422-50134-5
定価:3,850円(税込)
判型:A5判 210mm × 148mm
造本:並製
頁数:264頁

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内容紹介

米騒動から昭和に至る農民生活の実像に迫る

 近代初期の開墾・開拓は、新たな農地や町を開発する殖産興業に加え、士族授産の意味が強かった。住宅の建設は一部を除いて移住者に委ねられ、入植者は厳しく過酷な住環境に置かれていた。
 だが、米騒動を契機に政府は食糧増産のため耕地拡大策に着手する。入植者が開墾事業に専念し、事業を速やかに進めるためには住環境の充実が不可欠なため、開墾地の住宅や共同施設に対する改善支援を展開した。開墾地は最新の農村住宅と、公会堂や共同食堂、作業場など共同体としての設備を備えた「理想村」を目指した、まさに「農村の社宅」ともいうべき存在だった。
 開墾地は往時は全国で4000地区弱、総戸数1万2000戸余りにのぼったが、すでに建設から80年以上が過ぎ、住宅の建て替えや世代交代も進み、当時の姿は消えつつある。
 本書は長年の実地調査に加え、農林省刊行物や各地に残る開墾関係の公文書、図面資料を渉猟し、明治から大正期の米騒動を経て昭和に至る農民生活の実像を、具体的な生活の場となった建物を通して連続的に捉え直す。
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目次

はじめに

第1部  近代開墾と農村生活改善

第1章 開墾地の住宅施策――農村住宅改善の先進地として(小沢朝江)
 1 明治日本の開墾事業と住まい
 2 農林省による開墾施策の転換
 3 開墾地移住奨励制度と住宅改善

第2章 開墾地移住奨励制度の運用と実績(小沢朝江)
 1 開墾地移住奨励制度の規程
 2 開墾地移住奨励制度の実績

第3章 農林省が目指した「理想の農村」像(長田城治)
 1 共同建造物の建設奨励
 2 共同建造物の実態と役割
 3 移民招致に活かした宮崎県
 4 農林省が目指した「理想の農村」像


第2部 開墾地の住まいと生活

第1章 模範農村の先行例――山形県営萩野開墾地(小沢朝江)
 1 軍馬育成から模範開墾地へ
 2 東北の農村住宅改善の先進例として
 3 萩野開墾地の住まいと生活

第2章 『婦人之友』が報じた共同生活像――岩手県営岩崎開墾地(小沢朝江)
 1 岩手県の農山漁村経済更生事業
 2 「理想的農村」の実現に向けて
 3 進む移住家屋の改善

第3章  東北更新会が理想と評した新住宅――宮城県営広渕沼開墾地・短台耕地整理組合(小沢朝江)
 1 宮城県の農村復興と東北更新会
 2 広渕沼干拓と短台谷地の開墾
 3 理想的農村住宅の建設と小倉強の評価

第4章 農村指導者教育と開墾――福島県矢吹原開墾地(長田城治)
 1 日本三大開拓地矢吹原
 2 昭和期の県営開墾と国営開墾
 3 社会情勢を反映した開墾地の様相
 4 福島県立修練農場と連携した農村づくり

第5章 伝統民家から近代住宅への変貌――長野県常盤村中部耕地整理組合(小沢朝江)
 1 安曇野の近代開墾
 2 移住家屋の変化と長野県の指導
 3 移住家屋の実像

第6章 松田喜一が指揮した共存共栄村――熊本県営南新地干拓地(長田城治)
 1 指導者松田喜一による農村
 2 移住者による理想農村の創生
 3 共同建造物を活かした農村計画

第7章 地区を超えた住宅改善の成果――兵庫県小束野耕地整理組合・西光寺野耕地整理組合(小沢朝江)
 1 兵庫県の近代開墾
 2 華僑による開墾地の小作人住宅からの変貌
 3 地区を超えて継続される住宅改善

第8章 今和次郎・竹内芳太郎設計による「理想的農家住宅」の実現――茨城県新興農場(野村渉)
 1 「理想部落」実現のための「理想的農家住宅」
 2 今和次郎・竹内芳太郎が設計した移住家屋
 3 移住家屋での新しい暮らし
 4 今和次郎・竹内芳太郎の設計作品としての位置づけ


第3部 農村住宅改善の普及啓発を担う

第1章  農村指導者教育が担った住宅改善の普及(野村渉)
 1 住宅改善と農村指導者養成
 2 山形県立国民高等学校の「標準農家」
 3 岩手県立六原青年道場の「模範農家」
 4 富山県農民道場の「農家」
 5 秋田県立青年修練農場の「模範農村住宅」
 6 農村住宅の改善像の普及啓発を担う

第2章 開墾地移住奨励がもたらしたもの(小沢朝江)
 1 移住奨励制度が変えた開墾地の住環境
 2 開墾地移住奨励制度がもたらしたもの
 3 戦後に受け継がれた農村住宅改善の手法


あとがき
参考文献一覧
既発表論文一覧

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著者紹介

[著]小沢 朝江(オザワ アサエ)
1963年神奈川県生まれ。東海大学建築都市学部建築学科教授。神奈川大学大学院工学研究科建築学専攻修了。博士(工学)。1998年度日本建築学会奨励賞受賞。専門は日本建築史・日本近代建築史。著書に『明治の皇室建築―国家が求めた〈和風〉像』(吉川弘文館、2008年)、『日本住居史』(共著、吉川弘文館、2006年)、『住まいの生命力―清水組住宅の100年』(共著、柏書房、2020年)、『和室学―世界で日本にしかない空間』(共著、平凡社、2020年)など。

[著]長田 城治(オサダ ジョウジ)
1983年山形県生まれ。郡山女子大学家政学部生活科学科建築デザイン専攻准教授。東海大学大学院総合理工学研究科総合理工学専攻修了。博士(工学)。専門は日本建築史。著書に『占領下日本の地方都市―接収された住宅・建築と都市空間』(共著、思文閣出版、2021年)、『図説付属屋と小屋の建築誌』(共著、鹿島出版会、2024年)など。

[著]野村 渉(ノムラ アユミ)
1991年福島県生まれ。(株)山手総合計画研究所・所員。東海大学大学院総合理工学研究科総合理工学専攻修了。博士(工学)。専門は日本近代住宅史。2016年 日本建築学会優秀修士論文賞受賞、2023年度日本建築学会奨励賞受賞。

※著者紹介は書籍刊行時のものです。
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