政府、5兆円経済対策決定 レアアース確保策など盛る
政府は8日の閣議で、2010年度補正予算案に盛り込む「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を決定した。対策は5兆500億円規模。地方の公共事業財源などに使える約3500億円の「地域活性化交付金」の創設や、日中関係の緊張で輸出が滞ったレアアース(希土類)の安定確保策などを盛り込んだ。新卒者就職支援策や中小企業の資金繰り対策などで雇用や景気の下支えも狙う。
中小企業向け融資が焦げ付いた場合の保証枠なども合算した対策の「事業規模」は21.1兆円程度。政府は経済対策を盛り込んだ今年度補正予算案を今月末にも開会中の臨時国会に提出し、会期中の成立を目指す。
閣議に先立ち、菅直人首相(民主党代表)は国民新党の亀井静香代表との党首会談を開催。当初4.8兆円規模とした経済対策を2500億円上積みすることで合意した。国民新党の呼びかけで、合意には社民党と新党日本も加わった。両党の合意を取り付けたことで補正予算案の会期内成立の可能性は高まった。
海江田万里経済財政担当相と民主党の玄葉光一郎政調会長は7日夕から、国民新党の下地幹郎幹事長らと断続的に協議し、経済対策の規模などを最終調整していた。
対策は当初1.3兆円の地方交付税の増額分も含めた4.8兆円規模としていた。財源には10年度の税収見積もりからの上振れ分の約2.2兆円や、国債利払い費の不用分の約1.4兆円などを充てる方針だ。
上積み分は、来年度予算で実施する公共事業などを前倒しで契約する「国庫債務負担行為」として2000億円程度、予備費を減額して500億円程度を充てる。玄葉氏は「国債発行しないとの原則は曲げない」との方針を強調している。
今回の対策は公共事業や中小企業対策による雇用創出や、医療・介護・福祉分野への支援策などが柱だ。地域活性化交付金は当初3000億円を予定していたが、国民新党との協議を経て3500億円に増やした。
新成長戦略の推進策では、レアアースの中国依存度を下げるため、権益獲得や代替品の開発などに約1000億円を計上する見通しだ。潤沢なドル資産の一部を国際協力銀行(JBIC)を経由させるなどし、海外の大型資源開発プロジェクトなどにも資金拠出する。住宅エコポイントの対象を太陽光システムなど住宅設備に拡充する。
民主党の緊急経済対策では盛り込まれた、政府が世界の企業などに投資する「国家ファンド」(SWF)創設については、今回の政府の対策では「引き続き党でも中身を精査してもらう」(経財相)との理由で見送った。民主党は、運用資産が100兆円規模の外為特会などを活用するSWF創設を目指すとしていた。
金融政策ではデフレ脱却が政府と日銀の課題との認識を共有し、引き続き緊密に連携していくとした。
経済対策の閣議決定を受け、野党の自民党は主張がどの程度盛り込まれているかなどを政務調査会の作業チームで検証したうえで、補正予算案への賛否など今後の国会対応を検討する考えだ。