シェーグレン症候群(指定難病53)
1. シェーグレン症候群とは |
シェーグレン症候群は1933年にスウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンの発表した論文にちなんでその名前がつけられた疾患です。日本では1977年の厚生労働省研究班の研究によって医師の間に広く認識されるようになりました。 |
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか |
2011年の厚生労働省研究班のデータでは、1年間に病院などを受療した患者さんは約68,000人とされました。しかし、潜在的な患者さんを含めると、この数よりも多いことが推測され、アメリカのデータを当てはめると10~30万人と推定されることもあります。 |
3. この病気はどのような人に多いのですか |
この疾患の年齢層は50歳代にピークがあります。少数ですが、子供から80歳の老人まで発症することもあります。男女比は男1人:女17人で、女性に多く発症します。関節リウマチの患者さんの約20%にシェーグレン症候群が発症します。その他の膠原病の患者さんにも発症することがあります。 |
4. この病気の原因はわかっているのですか |
自己免疫による疾患で、自分の身体の成分に対して免疫反応を起こすことによる疾患です。遺伝的要因、ウイルスなどの環境要因、免疫異常、更に女性ホルモンの要因が考えられています。これらの4つの要因が複雑に関連し合って発症するものと考えられ、どれか一つの原因で発病するわけではありません。 |
5. この病気は遺伝するのですか |
同一家族内に膠原病が発症する率は約8%で、シェーグレン症候群が発症する率は約2%位とされています。これはそうでない人と比べ少し多いですが、単一の遺伝子の変化が原因で発症するいわゆる遺伝病ではありません。 |
6. この病気ではどのような症状がおきますか |
以下のようなものがあります。 |
1. 目の乾燥(ドライアイ) |
・目が乾く ・目がごろごろする ・目がかゆい ・目が痛い ・目が疲れる ・物がよくみえない ・まぶしい ・目やにがたまる ・悲しい時でも涙が出ないなど。 |
2.口の乾燥(ドライマウス) |
・ 口が渇く ・ 唾液が出ない ・ 摂食時によく水を飲む ・ 口が渇いて日常会話が続けられない ・ 味がよくわからない ・ 口内が痛む ・ 外出時水筒を持ち歩く・夜間に飲水のために起きる・虫歯が多くなったなど。 |
3.鼻腔の乾燥 |
・ 鼻が渇く ・ 鼻の中にかさぶたが出来る ・ 鼻出血があるなど。 |
4. その他 |
・ 唾液腺の腫れと痛み ・ 息切れ ・ 熱が出る ・ 関節痛 ・ 毛が抜ける ・ 肌荒れ ・ 夜間の頻尿 ・ 紫斑 ・ 皮疹 ・ レイノー現象 ・ アレルギー ・ 日光過敏 ・ 膣乾燥(性交不快感)など。 |
7. この病気はどのようにして診断されるのですか |
1999年に厚生省の診断基準が改定され、 (1)口唇小唾液腺または涙腺の 生検組織 でリンパ球 浸潤 がある この4項目の中で2項目以上が陽性であればシェーグレン症候群と診断されます。 |
8. この病気ではどのような治療があるのですか |
現状では根本的にシェーグレン症候群を治癒させることは出来ません。したがって治療は乾燥症状を軽快させることと疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことにあります。目の乾燥、口の乾燥はひどくなると著しく生活の質(QOL)を障害しますので、毎日の点眼、口腔清潔を心がける必要があります。エアコン、飛行機の中、風の強い所、タバコの煙などに注意が要ります。皮膚に対して、石鹸の使用、頻繁に風呂に入ること、特に熱い湯は良くありません。膣の乾燥の原因については、アンケートでは20%の患者さんに性交不快感があり、エストロジェンの内服やエストロジェン入りのクリームなどを使用することが必要となりますので、婦人科を受診するのが良いでしょう。規則正しい生活、休養、バランスのとれた食事、適度の運動、ストレスを取り除く等の注意が必要です。 |
1.眼乾燥(ドライアイ)に対する治療 |
治療法は(1)涙の分泌を促進する、(2)涙の蒸発を防ぐ、(3)涙の排出を低下させる方法がとられます。 |
2.口腔乾燥に対する治療 |
シェーグレン症候群の患者さんは虫歯になりやすいので、口内を清潔に保つことが非常に大切です。 まず、口腔乾燥作用を持つ薬剤を服用しているときはこれを中止することも必要ですが、担当医にご相談下さい。その他(1)唾液の分泌促進、(2)唾液の補充、(3)虫歯の予防や口内の真菌感染予防、(4)口腔内環境を改善することなどです。 |
(1)唾液分泌の刺激、促進 |
3.全身病変(涙腺、唾液腺以外の臓器障害)に対する治療療 |
重要な臓器(肺、腎臓、筋肉、神経、血管など)の活動性病変(病気の勢いがある、あるいは進行を認める)を伴う場合には、中等量以上のステロイド、免疫抑制薬を使用します。関節痛・関節炎に対しては、痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)を用い、効果不十分あるいは関節炎が高度の場合には少量のステロイドを考慮します。皮疹に対しては、ステロイド外用を用い、重度の場合にはステロイドの内服を考慮します。 |
4.病気の正しい理解と心構え |
シェーグレン症候群は長期間にわたる慢性疾患です。以下のことが大切だと思います。 |
1. 病気の理解(医師、本、患者会で学ぶ) |
(1)自己免疫疾患である |
2. 心構え |
(1)病気と共存する |
3. 日常生活で気をつけること |
1. 規則正しい生活 詳しくは、後に示すような患者さんのために書かれた本を参考にしてください。この病気を正しく理解し、病気に打ちひしがれることなく強く生きて欲しいと願っています。 |
9.この病気ではどのような取り組みがあるのですか |
患者会として「シェーグレンの会」があり、毎年1回開かれています。 日本には「日本シェーグレン症候群学会」があり、学会のホームページは<http://sjogren.jp/>です。ご覧下さい。 また、国際的な研究会は「国際シェーグレン症候群シンポジウム」が2~3年に1回開かれ、世界中の多くの医師がこの疾患にとり組んでいます。病気の原因の解明と新しい治療の開発が確実に進んでいます。 |
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。 |
該当する病名はありません。 |
研究班名 | 自己免疫疾患に関する調査研究班 研究班名簿 |
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情報更新日 | 令和4年12月(名簿更新:令和6年6月) |